広島マスコミ9条の会 講演会レジメ―『戦争(原爆)と憲法とメディアを考える』(資料データー満載)―
2021/04/23
広島マスコミ9条の会 講演会レジメ 2008、7,5 前坂 俊之
―『戦争(原爆)と憲法とメディアを考える』―
① イラク戦争5年目の現在は・・―ブッシュ・米国の大失敗。米国のイラク戦費と今後の出費は300兆円―500兆円の巨額に。米国発のサブプライム問題、住宅バブルの崩壊、石油高、資源高のトリプルパンチで、世界はインフレ、同時不況に。世界を不幸に巻き込んだその責任は・・・
② 世界史の中で日本の戦争を考える(第2次世界大戦の中のアジア・太平洋戦争)
③ 広島原爆はなぜ落とされたのかー戦略爆撃思想の発展、重慶爆撃が引き金に。
④ ポツダム宣言(7月26日)の受諾をめぐって日本政府は『国体護持』で回答をせず、広島原爆(8月6日)、長崎原爆(9日)、ソ連参戦、満洲侵攻、ポ宣言受諾、終戦(15日)とこの20日間、決断できず約38万人が犠牲になった。政府がさいごまでこだわった『国体護持』とは一体何か・・
⑤ 自民のいうGHQの押し付け憲法はなぜできたのか。現憲法が果たした役割。9条が戦後の経済発展を作った。大日本帝国憲法と現憲法の比較、
⑥ 日本は果たして近代市民国家か、戦前の無責任国家体制から真の議会制民主国家に脱皮できたのか。立法、行政、司法の3権分立が機能せず、憲法が遵守されていない。中央集権、官僚独裁支配が続いている。説明責任なき政府、官僚。責任を負う権力中枢も作戦司令室もない、なりゆきまかせ、問題先送りの漂流国家日本。
⑦ 果たすべきメディア・ジャーナリズムの役割と責任について
⑧ 迫りくる地球環境破壊と日本の国家破産をどうする
⑨ とめ
(1)イラク戦争から5年、これまでの被害総計は・・
イラクで戦死した米軍兵士の人数 4,000人超(8年3月末まで)
戦闘で負傷した米軍兵士の人数 2万9,203人
戦闘以外の負傷、病気扱の米軍兵士の人数 3万1,325人
イラク・アフガンの戦闘で聴覚障害を負った米軍兵士の人数 7万人
治療が必要なイラク・アフガン退役米軍傷病兵の人数 33万人
殺害されたイラク治安部隊兵士の人数 7924人
開戦以来今日までのイラク市民の推定犠牲者数 最低8万→ 最大112万人
イラク国内の難民数 340万人
イラク国外に脱出した難民数 220万人-240万人
2008年1月24日までに米国が受け入れたイラク人難民数 5,742人
イラクに駐留する米軍兵士の人数 15万5,000人
―イラク国内の公共的なインフラは破壊され、治安と生活の安定は悪化しているーーーーー
○イラク国民の70%は水道水を利用できない。
○イラク国民の80%は公衆衛生サービスが受けられない。
○イラク国内の180の病院の90パーセントが基礎治療、外科治療をできない。
○イラク国民の80%は今後も事態が悪化するとみている。
(2)イラク戦争による経済的損失、石油パニックで世界経済は不況に・・
ノーベル経済学者・ジョセフ・E・スティグリッツ教授は共著『300兆円戦争』(邦文名『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』)でイラク戦争での戦費、経済的な損失を計算した。
・イラク戦争費用のうち、すでに支出した金額5,260億ドル(約53兆8,297億円):
・1日あたりのイラク駐留費用2億7,500万ドル(約280億8,951万円):
・1ヶ月あたりのイラク・アフガニスタン駐留費用160億ドル(約1兆6,530億円):
・アメリカ国民1世帯あたりのイラク戦争負担金額4,100ドル(約41万8,915円):
・イラク戦争の長期的費用見積額(経済学者ジョセフ・E・スティグリッツ教授による)3兆ドル(約306兆5,240億円):にのぼり、イラク、アフガン戦争の総コストは、最終的には5兆ドル(500兆円以上)を超えるのではないかと見ている。
・特に、退役軍人の今後増加していく長期的な医療費や高額な民間請負兵の割合が増えており、これを借金でまかなっており、財政赤字の増加と、サブプライム問題、石油高、資源高などのトリプルパンチが米国経済をさらに悪化させ、世界経済を巻き込んで恐慌の危険水位が高まっている。
(3)<なぜ広島に原爆は落とされたのか>
『戦略爆撃』とは実働部隊ではなく、戦略的な要地、都市、工業地帯や交通拠点に爆撃を加え、生活基盤、産業基盤を破壊する事などで、相手国の経済力や国民の戦意を削ぐ爆撃。無差別爆撃。現代では誘導爆弾や巡航ミサイルなどを用いた爆撃がある。
『戦略爆撃→無差別爆撃→原爆投下→劣化ウラン弾、クラスター爆弾へ』
<第一次大戦で> 飛行機、戦車、毒ガスの大量殺戮兵器の登場
①937年4月26日―スペイン内戦 ドイツ軍によるゲルニカを空爆1600人以上死亡
<日中戦争から太平洋戦争まで>
②1939年5月―43年8月、日本軍による重慶(四川省各地)爆撃218回、1万5千人、負傷者2万人、損壊家屋1万7千棟
③1940年5月10日―ドイツ軍によるロッテルダム爆撃 4千人死亡、3千人負傷
④1944年6月15日 中国四川省・成都からルメイ指揮の米B29が北九州・八幡製鉄を初爆撃
④1945年2月13、14日、米英によるドレスデン爆撃3万5千人から13万5千が死亡。
<太平洋戦争>
⑤同年3月10日 米軍による東京大空襲 死亡8万、負傷4万人 被災家屋:26万
⑥同年5月25日 米軍による東京大空襲、死傷者は7415人、被害家屋約22万戸。
⑦同年8月6日 米軍による広島への原爆投下 死者十数万―30万人
⑧同年8月9日 米軍による長崎への原爆投下 約7万4千人―15万人が死亡、
<ベトナム戦争>
⑨1970年 ベトナム戦争 米軍によるホーチミン・ルートへの爆撃 、アメリカ軍による北爆
<湾岸戦争>
⑩1991年1月17日-2月28日、湾岸戦争、米英軍は95万発(劣化ウラン320トン)を使用。米軍兵士だけでも43万人が放射能汚染地帯に入り、劣化ウラン粒子で被爆した。25万人が治療を求め、18万人が「疾病・障害補償」を請求し、すでに9600人以上が死亡。「隠されたヒバクシャ」(00年4月)。劣化ウラン症状は白血病や肺がん、腎臓や肝臓の障害、関節痛などで、彼らの子どもたちの間には先天性障害を抱えた子も多い。米・英は原因不明の「湾岸戦争症候群」として、劣化ウランの被害を認めない。
⑪1999年3月 コソボ紛争 NATOによるセルビア全土への空爆。ボスニアで約1万発、コソボでは約3万発の劣化ウラン弾を使用
<イラク戦争>
⑫2003年3月、米軍による空爆で劣化ウラン弾500トンが使用。劣化ウランによる白血病やガン、経済制裁による伝染病や栄養失調で、湾岸戦争のあと160万人の子どもが命を落としている。
『クラスター爆弾』
1個の親爆弾に多数の小さな子爆弾を詰めたもので、航空機からの投下。空中で子爆弾がばらまき、広範囲を攻撃できる。子爆弾の数は数百個に及ぶ。一定の割合で不発弾が残り、戦闘後に民間人が死傷する危険性が高い。65年からこれまで、24カ国・地域で約4億4千万個の子爆弾が使用、5〜30%が不発弾として残り、推定10万人が死傷。日本を含む34カ国が製造、73カ国が備蓄。日本も賛成した全面禁止条約が5月に採択。
延べ1000万人の兵士が戦争に参加し、失われた兵士数は約200万、非戦闘員まで含めると約300万の人命が失われた。焼失住宅戸数は310万戸。太平洋戦争における日本側の死者はー陸軍戦死者数:約144万人・海軍戦死者数:約 42万人・軍属:約 9万5千人 ・一般国民:約 69万人・合計:約250万人
(5)≪日本軍戦死者の実に60%、140万が餓死者であった≫
一橋大学名誉教授・藤原彰氏の調査によると、アジア太平洋戦争における戦死230万人の内、その約六割、約140万人が「餓死」と推定している。
その出典『餓死した英霊たち』(藤原彰著 青木書店)では「餓死」とは、栄養失調による「不完全飢餓」によって病気に対する抵抗力を失った結果としての戦病死をもふくむ広義の規定である。
「ガダルカナル島の場合、方面軍司令官は死者2万、戦死5千、餓死1万5千と述べている。ブーゲンビル島では、死者約2万はほとんど餓死。 …ソロモン諸島の死没者の四分の三にあたる 6万6千名が餓死したと考えられる」。
「厚生省の調査では、東ニューギニアの戦没者は12万7千。いずれも死者の九割以上、実に11万4840名が餓死だったとしている。
インパール作戦をふくむビルマ方面軍でも死者の78%、14万5千人かそれ以上が餓死者と推定。中部太平洋では、サイパン、グアム、テニアン、ベリリューなどの諸島では日本軍は上陸した米軍と戦って「玉砕」した。全体では12万以上が病死・餓死していたと見られる。
日本軍が最も多くの死者を出したフィリピン戦線で、8割の40万人が餓死と推定。中国戦線での死者は45万5千だが、
栄養失調に起因するマラリア、赤痢、脚気などによる病死者は死因の三~四割を占める。中国戦線での全死者の約半数が
栄養失調にもとづく病死であり、22万以上である。合計では 1,276,240名に達し、全体の戦没者2,121,000名の60%強。77年以後の
戦没軍人軍属230万という総数に対して換算すると 140万前後が戦病死者、そのほとんどが餓死者ということになる」と結論づけている。
栄養失調に起因するマラリア、赤痢、脚気などによる病死者は死因の三~四割を占める。中国戦線での全死者の約半数が
栄養失調にもとづく病死であり、22万以上である。合計では 1,276,240名に達し、全体の戦没者2,121,000名の60%強。77年以後の
戦没軍人軍属230万という総数に対して換算すると 140万前後が戦病死者、そのほとんどが餓死者ということになる」と結論づけている。
(6)≪太平洋戦争でのアジア各国の犠牲者≫(約1800万以上)
国、地域名 戦争犠牲者数(人) 出典、参考資料
・ タ イ 8,000 ( 図説ユニバーサル新世界史資料(帝国書院)
・ シンガポール・マレーシア 100,000以上 (キーワード日本の戦争犯罪(林博史ほか著)
・ インドネシア 4,000,000 (サンフランシスコ講和会議でのインドネシア政府見解)
・ ベ ト ナ ム 2,000,000 (1945年のベトナム独立宣言から)
・ 中 国 10,000,000以上 (中国国務院「中国の人権状況について」から)
・ ミャンマー(ビルマ) 150,000 (キーワード日本の戦争犯罪)
・ 韓 国・北朝鮮 200,000 (キーワード日本の戦争犯罪)
・ フ ィ リ ピ ン 1,110,000 (フィリピン政府調査から)
≪引用及び表作成の参考:中日新聞(2005.8.7) 中日サンデー版
世界と日本大図解シリーズ№695「戦後60年アジア太平洋戦争の戦跡」≫
【本土爆撃の実態】
全国の被災地は215都市 計約645平方キロ、犠牲者は47年1月結成の全国戦災都市連盟が113都市を調べた分だけで51万人、被災人口は964万人。当初は、軍需工場が専ら狙われたが、東京大空襲以降は、中低空で大量の焼夷弾を投下し市街地を焼き尽くす無差別爆撃が始まった。東京は45.3.10の東京大空襲で約27万戸を焼き、約8万4千人が死亡した。
1941年1月、戦陣訓とは、
当時の陸軍大臣・東條英機が示達した訓令(陸訓一号)で、軍人としてとるべき行動規範を示した文書。現在ではこの中の「生きて虜囚の辱を受けず」という一節が軍人・民間人の多量の無駄な討ち死に・自殺の原因となったか否かが議論の中心となっている。アッツ守備隊玉砕戦死 2638名(戦死率99%)、サイパン島玉砕、戦死約21,000、自決約8,000、捕虜921。
(7)<1945(昭和20)年、敗戦は決定的なのに、国体護持のためだけに50万以上の
国民を犠牲にしたのはなぜか>
国民を犠牲にしたのはなぜか>
6月24日 義勇兵役法
連合軍の日本本土侵攻に対処するため、全国民の軍事組織化を意図、15歳以上~60歳以下の男子、17歳以上~40歳以下の女子を義勇兵、役として必要に応じて国民義勇戦闘隊に編入できることとした。すでに沖縄戦では、全住民を軍の道連れにしていたが、この法律は、沖縄の本土化を意味した。国民皆兵によって竹やりなどで米軍にたちむかっていくというアナクロニズムで皇国護持を唱えていた。
7月26日 ポツダム宣言で米英中の連合国が署名した内容
① 日本を世界征服へと導いた勢力の除去(6条)
② 日本国は本州、北海道、九州、四国と諸小島に局限される(8条)
③ 戦争犯罪人の処罰(10条)
④ 全日本軍の無条件降伏と日本国政府によるその保障(13条)
⑤ 全日本軍の無条件降伏と政府がそれを保障する事を受け容れられない場合は、(ドイツ同様の)迅速且つ完全なる壊滅あるのみ)と声明。
7月16日 アメリカのアラモゴルドで初の原爆実験に成功
7月26日 和歌山県由良町 、愛媛県松山市の空襲
7月27日 鈴木貫太郎首相は記者会見し「黙殺声明」、斷固戰争完遂に邁進する」こ「黙殺」は同盟通信社で「ignore it entirely(全面的に無視)」と翻訳される。
7月28日 青森大空襲、広島県呉軍港攻防、大分県日出町、改装空母「海鷹」爆撃
鳥取県大山町の大山口列車銃爆撃
7月29日 京都府舞鶴市、舞鶴軍港空襲、静岡県浜松市、浜松艦砲射撃
7月31日 静岡県清水市 清水艦砲射撃
8月1日 新潟県長岡市 長岡空襲
8月2日 富山県富山市への大空襲、茨城県水戸市への水戸空襲
8月6日 広島市へ原子爆弾投下、死者12万人から約30万人(現在まで)
8月9日 長崎市へ原子爆弾投下、死者75000人-15万人(現在まで)、ソ連が対日参戦、満州国へ侵攻、御前会議で「国体の護持」を条件に受諾を決定。
8月10日 連合国に「国体の護持」の条件でのポツダム宣言の受諾を打電。
8月11日 米国は「降伏時より、天皇および日本政府の国家統治の権限は連合軍最高司令官に従属する(subject to)」と。この訳について「制限の下におかれる」とする外務省と「隷属する」とする軍部の間の対立。福岡県久留米市への空襲
8月13日 千葉県成東町の成東駅爆破、山梨県大月市の空襲
8月14日 御前会議開催、天皇再び受諾決定。群馬県伊勢崎市、埼玉県熊谷市の空襲、大阪市の大阪城空襲、山口県岩国市の岩国大空襲、山口県光市の光海軍工廠、
8月15日 終戦
<9>「大日本帝国憲法」(施行明治23(1890)・11・29)
「勅語=朕カ祖宗ニ承クルノ大権ニ依リ現在及将来ノ臣民ニ対シ此ノ不磨ノ大典ヲ宣布ス、我カ神聖ナル祖宗ノ威徳ト並ニ臣民ノ忠実勇武ニシテ国ヲ愛シ公ニ殉ヒ以テ此ノ光輝アル国史ノ成跡ヲ貽シタルナリ、」
第1章 天 皇(第1条から17条まで)
第1条 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第2条 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス
第3条 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス
第4条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ
第5条 天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ
第6条 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
第7条 天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス
第11条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第13条 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス
第57条 司法権ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
第2章 臣民権利義務 (18条から32条) (★市民、国民ではなく臣民)
第18条 日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第19条 日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所、文武官ニ任セラレ、公務ニ就クコトヲ得
第20条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
第21条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税ノ義務ヲ有ス
第22条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
第24条 日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルヽコトナシ
第25条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外、住所ニ侵入、捜索セラルヽコトナシ
第26条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第27条 日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルヽコトナシ
第28条 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス、義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス
●天皇君主制である。天皇主権(大権)、統治権、立法、行政、司法、軍の全権を握る。前近代的な王権神授説。あとは日本臣民のみ(主権在民、国民主権ではない)、
●臣民は君主に直接に支配されるものとしての人民、君主国の国民をいう(共和国の国民を「人民」)。国家権力の行使を受ける客体としての人民の意味。(それに対して国家に対して参政権を有する主体としての人民を市民ないし公民という)。
<10>日本国憲法(施行昭和21(1946)・11・29)
<前文>政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
第1章 天皇(第1条から8条)
第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴で、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第4条 天皇は、国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
第6条 天皇は、国会の指名で総理大臣を任命、内閣による最高裁判所長たる裁判官を任命する。
第2章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
第3章 国民の権利及び義務(第10条ー40条)
第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第11条 国民はすべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は永久の権利として、現在将来の国民に与へられる。
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならない、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重を必要とする。
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有す。
第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。(賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。労働基準法)
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。(労働組合法)
第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これ発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
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