『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉕ 「日本亡命中の金玉均から朝鮮王への嘆願書」(「ノース・チャイナ・ヘラルド」)
2015/01/01
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』
日中韓のパーセプションギャップの研究』㉕
壬申事変<1882年(明治15)>の後、甲申事変<1885年(明治18)は
朝鮮独立党の金玉均が主犯で事件を起こしたが、3日天下に終わり、
金らは日本に亡命し、福沢諭吉らが庇護した。
朝鮮王宮は李鴻章とも協力して、金を逆賊として刺客を日本に送り込み、
金の暗殺の機会を狙った。それから、10年後の1894年3月28日、
金は上海に謀略で誘い出されて閔妃が送り込んだ刺客の手でピストル
で暗殺される。
遺体は日本に引き渡さず、朝鮮に送られてバラバラにされた。
これに日本の世論が憤激して、中国への敵愾心が高まったのが、
日清戦争への1つの原因になった。
金玉均
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E7%8E%89%E5%9D%87
日清戦争
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%B8%85%E6%88%A6%E4%BA%89
1886年(明治19)7月30日英紙「ノース・チャイナ・ヘラルド」
日本に亡命中の金玉均から朝鮮王への嘆願書
亡命中のもと朝鮮の大臣金玉均は,自国の王に対して,興味深いと同時に有益な嘆願書を提出した。彼は,また,李湾章に書簡を送り,自分が考える朝鮮政策について,そして,現在の東アジアの状態と,将来の政治的展望について意見した。
読者はもうご存じだろうが,金は,日本大使館が襲われ,数人の日本人が命を失った1884年12月の事件(甲申事変)で大臣に就任したが,結局は,日本に避難するはめに陥った経緯がある。
当時.この事件は,日本人によって扇動されたものだと言われていたのだが,日本の友人たちはこれを強く否定した。
金を信じるのであれば,日本はこの事件に深くかかわっており,金の嘆願書に朝鮮が今悩まされている悪事の大半は,閔一族の覇権が原因だとも述べられている。
「陛下も,閔一族が,裏切り.不忠に長け.恥も外聞もなく.中国に依存していることは.とうにお気づきだと思います。なにしろ,陛下ご自身,私に対して,彼らの無節操な厚かましさをどうにかするようにと命令なさったことがあるくらいなのですから」と金は言う。
1年半前の流血を伴う事件は.それを実行に移したものなのかもしれない。朝鮮では,どういう手段が合法とみなされるのか(あるいは「当然」といった言葉を使った方がいいのかもしれない)は,金が嘆願書の最初で暴露している王の金に対する2つの処置を見れば推察できる。
金いわく.「最近,池運永なる男が来日しましたが,この男は,私を殺すため.陛下がよこした刺客だという情報が入り,彼の行動をつぶさに観察することにしました。その結果,私は,陛下に対して少々助言を申し上げずにはいられなくなりました。
陛下の命令で,池運永のような男が海外に送られてくるとあっては,陛下の評判に傷がつきませんでしょうか?」。
金は,このように淡々と語り,金を暗殺せよという王の命令が本当だったかどうかは,結論づけようともしていない。
しかし,金が昨年,神戸にいたとさも,ほかの名前の男(金はこの男の名前もはっきり書いている)が,やはり同様の命令を王から受けていたと言われる。もって回ったような言い方はやめて,金が李鴻章あてに送った書簡をご紹介するとしよう。
彼はこの中で,朝鮮の中国代表が,金を殺すために,だれかをよこすよう政府に提案したこと,それに,池遅永が「殺人命令」をもって東京に送り込まれたこと,そして.これが,池の持っていた(というより彼から没収した)「指令書」でわかったことなどを書いている。
怒りよりは悲しみの方が強い文章だ。朝鮮の政治は,暗殺さえたくらんでいる陰謀そのものなのだ。金は.今の朝鮮の窮状は,閔一族が主たる原因だとみなしている。
彼は1884年に,この窮状を中和するため断固とした手段をとって,危険な者の手から政治を取り戻すべきときだと考えた。そしてそれに失敗すれば陛下は「将来,抹消された国の忘れ去られた支配者の1人として数えられることになることでしょう。
私と私の同僚は,ある外国の力に依存したことで非難されていますが.その行為はあくまでも,陛下もご存じのとおり,当時の切迫した必要に迫られた末のことでした」と言っている。
このように,日本の朝鮮における陰謀を漏らした彼は,自分の疑いを晴らしてくれと王に頼み込み,臣下の当てにならない言葉には一切耳を傾けず,国を救ってほしいと嘆願する。
金玉均の言葉ばかりを盲目的に信頼しても良くないが,これを見る限りでは,朝鮮は,中国と日本の無節操な陰謀の舞台となっており,その両国のどちらの政策も全く選ぶに値しないと見ている人たちの意見が正しいことになる。
1884年(甲申事変)の事件に,日本がかかわっていたことを金が明らかにしてしまった以上,天皇の政府は,彼を追放することはできないだろう。それどころか.日本の名誉のためにも.彼には避難場所を提供し.完璧な保護を与えなければならなくなる。
秘密を漏らしてしまった金の行動は,無分別なもので.それによって友人の数が増えることはあり得ない。彼は.王と朝鮮の大臣.それに中国と日本を責め,朝鮮から巨文島を買ったイギリスも非難している。
彼は,こういったことを,落胆しきった男のようにくだくだと書き連ねているのだが,それがあまりにひどいので.本来彼の故国での地位を考えれば権威あるものとして受け止められる意見も,受け入れられない状態にある。
それでも.彼は朝鮮がさいなまれている内なる悪を見抜いており,朝鮮が東アジア政治において(一弱小国としてではなく)考慮の対象となるには,この悪を退治しなければならないことを知っている。この地域に利害を持っている国々すべてが,ほかの国々の占領をなんらかの手段で防がなくてはならないのだ。
特権階級の貪欲さのために,人々や産業界がどれほど苦しんでいるかについて華,彼も,税関の長官並みの素直さで書いている。
そして公正を重んじるチェンバレン氏が喜びそうな過激な治療法をいくつか提唱している。
以前の朝鮮はどういう状態だったのか,そして,今はどういう状態にあるのかについては,金玉均自らの口で語ってもらうことにしよう。
「古代,朝鮮は,極東の国々の中では.手工業,産業の面で,いちばん進んだ国でした。
だが,これも官吏や特権階級の人々の強制取立てによって破壊されてしまいました。朝鮮をまともな状態に戻すには.王が,無知な大臣たちを解雇し,家柄を重んじる貴族制度を廃止し,人々を教育して,教育の補助として,外国の宗教を取り入れなければならないのです」と金は言っているが.これはどう見ても,フランス人からの受売りで.彼らに「買収」されたのではないかと思うほどだ。
李鴻章への手紙は,王に提出した嘆願書よりはるかに辛辣だ。金は,朝鮮での中国の政策を,現在の代理人に任せてしまったのは間違いだとして,中国総督を責めている。
彼は,その代理人を,子供じみた人物だと非難している。彼は李鴻章が朝鮮で採用した政策を,中国人を混乱に陥れ,彼らがけんめいに実現しようとしでいる目的を失敗させる危険なものだと指摘する。代わりに,すばらしい助言をしているのだが,これ堕.トンキンや安南で起きた事件の場合と同じく,手遅れにならない限り採用されないだろう。
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