『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑬『開戦4ヵ月前の英タイムズの報道』ー『「緊迫する極東」ーロシアは戦争もあえて辞さない。日本は中国との 最初の勝利に刺激され,帝国主義の熱狂に鼓舞され,際限もなく得意になって,世界競争に突入した』●『これは手ごわい同盟(日中)であり,黄色人種の団結,ヨーロッパ支配の中止を必至とし,やがてはフンやモンゴルの先例にも似た侵略の野蛮な喜びをも招来しかねない。』
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑭
1903(明治36)年9月3日 『英タイムズ』
『緊迫する極東』ー『ロシアは戦争もあえて辞さないだろう。日本は中国との
最初の決闘の勝利に刺激され,帝国主義の熱狂に鼓舞され,際限もなく得意になって,世界競争に突入した」
(本社特派員記事)
パリ 9月2日
今朝のゴーロ・ワ紙はトップ2段を「黄色ブロック」と題したアムールスキー署名の記事に充てているが,この名はロシア系と見られる。
筆者はロシアの方針と見解に精通しているようで,ペテルプルグでは敵対国が朝鮮で地歩を築いたり,旅順を満州経由でシベリアと結んでいる線を切断したりするのを許さないことを正式に決定したと述べている。
これら3点にロシアの注目は集中しており,これらは同国の今後のはきわめて明確かっ重大だから,それを放棄すれば敗北となろう。
ロシアはこれら3点で断固勝利する構えだ。有利な機会を求めて辛抱するのにやぶさかではないが,その機会を逃きぬよう,何事もおろそかにはしないだろう。平和的手段,力の威信,堅い決意によって勝利を収める方がよいが,戦争もあえて辞さないだろう。
難局が迫っていると筆者は言う。
スラグ世界の前進の印であり証である闘争活動の定期的な復活の1つがやってくる前兆がすでに見られる。
スラヴ世界はまたも突進の前夜にあり,征服地を回めるとともに,生存と行動の自由のため,また大陸をゆっくりと渡ってあこがれの外海に至るために必要欠くべからざるものを,一撃のもとに取るだろう。
それがロシアの歴史の宿命的な法則であり,その膨大な努力の変わらざる目的なのだ。近東危機とベルシア情勢に簡単に触れた後,筆者はさらに,ロシアがついに到達したアジアの極北で爆発の脅威が進行中で,この方が早く発生しそうだという。
ウラジオストクは立派な軍港だが,北極海の氷に妨げられた袋小路に過ぎない半面,旅順と大連は太平洋への自由な出口を形成し,すべての大洋に通じる。
中国のキリスト教に対する凶暴な反乱にかんがみ,ロシアはその義務を自覚した。同国はシベリアの最果てに,1日でなく,数世紀にわたる地歩を築いたのだ。
これを追い出そうとする者はだれか?日本
この不敵な企てを謀っているのは,数年前にはろくに知られてもいなかった小国民だ。日本は旺盛な戦闘性で突如目立っようになったが,バルト海から来た強力な隣国の犠牲になっていると自らを考えている。日本は中国との最初の決闘の勝利に刺激され,帝国主義の熱狂に鼓舞され,際限もなく得意になって,世界競争に突入した。
記事はさらに「中国の日本化」の記述におよび,中国における外国軍隊の駐留が「黄色ブロック」を固め,4億の中国人を4000万の日本人に軍事的に引きつけることを促したという。
かつてのイタリアにおけるピェドモント,ドイツにおけるプロシアのように,日本はかくて,無数の中国人を団結させる首唱者,教授,舞台監督となろう。今後は日本により,古来の不活発が変革され,混沌に筋道がつき,惰性的な混乱が収まり,大衆の屈従的な敵意は国民的規律へと転換されるだろう。
中国は最初,日本の剣を身に染みて感じたが,同国に悪意を抱いてはおらず,日本は中国を幾世もの眠りから覚ます熱烈,猛如一つ猛進的な兄弟なのだ。
中国はその日本の助けを拒むどころか,双手をあげて歓迎し,学校教育と軍隊の訓練を任せている。これは手ごわい同盟であり,黄色人種の団結,ヨーロッパ支配の中止を必至とし,やがてはフンやモンゴルの先例にも似た侵略の野蛮な喜びをも招来しかねない。
筆者の結論は.われわれの目前で目下進行中なのは急進的な革命であって,その結果をヨ一ロッパはほどなく感じるだろう,というものだ。ロシアは中国との7000キロの国境を維持しなければならないことにうろたえてはいない。
農民,コサック,兵士,艦隊を進出させて「われわれの文明」を「黄色ブロック」(黄禍)から守ろうとしている。
アレクセーエフ海軍中将を極東総督に任命したことは.すべての重要決定を緊急に行わなければならないことを示している。ロシアは早急に防衛措置をとるため,懸命な努力をしている。
アレクセーエフ提督は中央政府から独立し.隣接の諸国と外交交渉を行うことを委任され.陸海軍を統率しており,戦争を行う権限もある。ロシアの利益と威信を損なわせてはならないと,皇帝から命令されている。黄色人種はアレクセーエフが脅迫にも欺瞞にも屈しないことを知っている。
黄色人種は正体を暴露するだろうか?
権威筋は,彼らはためらうだろうが,あえて危険を冒す決心をしているという。最後にゴーロワ紙の筆者は,彼らを押さえるのは英日条約ではないという見解を述べる。もしイギリスの都合に日本が合わせていたら,まさにゲームはすでに始まっていただろうと著者は言う。「必ずそうなる」と言う。
ジョレス氏はプチト・レビュプリク紙に寄稿し,英日同盟に関する一部の論議に答えて,次のように述べている。「イギリスは日本と条約によって同盟を結んでいる。したがって日本がロシアと紛争を起こせば,イギリは介入せざるを得ないだろう。
イギリスがその介入を嫌い,紛争参加を余儀なくされることを恐れているなら結構なことだ。その場合は紛争回避に全力を尽くすだろう。同盟国の日本に対して影響力を用い.一切の挑発を控えさせようとするだろう。
またイギリスがロシアの同盟国のフランスに接近して,フランスがロシアに対し同様の穏健工作をするよう望むなら,われわれは懸念する必要があろうか?フランスも極東で平和を維持することに重大な関心はないだろうか?日露間に戦争が勃発し,日本の同盟国のイギリスがそれに引き込まれた場合,ロシアの同盟国フランスはどうなるか?
こうした可能性はフランスにとって,少なくともイギリスと同程度に脅威であり.フランスがロシアの同盟国およびイギリスの友好国として,両国のショックの防止に貢献できるなら,文明のみならず自国のためにもなるだろう。
それをイギリスがわれわれに期待するなら.われわれは警戒するどころか,われわれ自身と世界のために慶賀しなければならない」 ジョレス氏は今フランスで絶大な影響力を持っていることを忘れてはならない。
関連記事
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(327)★『コロナパニックなど吹き飛ばせ』★『超高齢社会日本』のシンボル・世界最長寿の彫刻家/平櫛田中翁(107歳)に学ぶ」<その気魄と禅語>『2019/10月27/日、NHKの「日曜日美術館ーわしがやらねばたれがやる~彫刻家・平櫛田中」で紹介』★『百歳になった時、わしも、これから、これから、130歳までやるぞ!』と圧倒的な気魄!
<世界のコロナパニック戦争で「長寿大国日本」の底力(長寿逆転突破力)を発揮して …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(102)』「パリぶらぶら散歩」②モンパルナス地区のカラフルでアートな商店街を楽しむ
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(102)』 「パリぶらぶら散 …
-
-
日本リーダーパワー史(635)日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(28) 『川上操六の日清戦争インテリジェンス①「英国の文明評論家H・G・ウェルズは明治日本は『世界史の奇跡』 と評価」。そのインテリジェンス・スターは川上操六である。
日本リーダーパワー史(635) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(28) …
-
-
日本メルトダウン( 969)●『トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実』●『トランプが敗北しても彼があおった憎悪は消えない』●『預金が下ろせなくなる?国の借金1000兆円を国民に負担させた「預金封鎖」とは』●『そして預金は切り捨てられた 戦後日本の債務調整の悲惨な現実』●『尖閣問題も五輪ボート会場問題も「ノーベル賞マインド」で(李小牧)』●『東芝と日立、なぜ両巨艦の明暗は分かれたか 世間が決める「成功」にとらわれるな』
日本メルトダウン( 969) トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」 …
-
-
ヨーロッパ・パリ美術館ぶらり散歩』★『ピカソ美術館編➅」ピカソが愛した女たちー《ドラ・マール》の傑作2点の明暗
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(117)』 &nb …
-
-
『Z世代のための日本世界史講座』★『MLBを制した大谷翔平選手以上にもてもてで全米の少女からラブレターが殺到したイケメン・ファースト・サムライの立石斧次郎(16歳)とは何者か?』 ★ 『トミ-、日本使節の陽気な男』★『大切なのは英語力よりも、ジェスチャー、ネアカ、快活さ、社交的、フレンドリー、オープンマインド 』
2019/12/10 リーダーシップの日本 …
-
-
知的巨人の百歳学(144)/『天才老人・本多静六(85歳)ー「70,80歳になっても元気で創造する秘訣―『人間は老衰するから働けなくなるのではなく、働かないから老衰する』★『② 「忙しさ」が自分を若返らせる、忙しいことほど体の薬はない』
記事再録/ 2012/05/12/   …
-
-
「Z世代のための日本最強リーダーパワーの勝海舟(75)の研究②』★『勝海舟の健康・長寿・修行・鍛錬10ヵ条」』★『余裕、綽綽(しゃくしゃく)として、物事に執着せず、拘泥せず、円転・豁達(かったつ)の妙境に入りさえすれば、運動も食物もあったものではないのさ』★『学問に凝り固まっている今の人は、声ばかりは無暗に大きくて、胆玉(きもったま)の小さい。まさかの場合に役に立つものは殆んど稀だ。』』
2021/06/28   …
-
-
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日本側が伝えた日英同盟の分析」⑤『機密日露戦史』谷寿夫著より』日露協商か、または日英同盟か』★『桂太郎首相の意見は、ロシアは満州の占領のみで最終とするものではない。満洲が手に入れば韓国にもその手を伸ばす、結局、日本が手を出す余地がなくなるまで、その侵略はやまないであろう』
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日本側が伝えた日英同盟の分析」⑤ …
-
-
日本メルトダウン脱出法(697)『コラム:日本の平和主義後退の「暗い影」『コラム:なぜ米国は中国軍を「訓練」するのか』
日本メルトダウン脱出法(697) コラム:日本の平和主義後 …
- PREV
- 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑬『開戦5ヵ月前の『英ノース・チャイナ・ヘラルド』報道―『開戦の直接原因となった『鴨緑江の竜岩浦(朝鮮領)に軍事基地を建設したロシア』●『英タイムズが報道した『ロシアの極東総督に強硬派のアレクセーエフ提督が就任』
- NEXT
- 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑮』『開戦4ヵ月前の「英ノース・チャイナ・ヘラルド」の報道』ー『 朝鮮の危機ー日本民衆の感情ーもし朝鮮政府がロシアに対して,竜岩浦の利権を与えるようなことがあれば,日本の民衆感情は激化し,日本政府は戦争以外に選択がない』●『ロシアに朝鮮を取らせるようなことがあれば,日本の隆盛にある歩みは不面目な結末を迎えるだろう。世界史上最も驚嘆すべき進歩を遂げ,絶対の自信を持って偉大な未来を夢見ている日本国民は.このように認議している』