前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑫『英ノース・チャイナ・ヘラルド』/『日露開戦半年前ーロシアは戦う用意ができていること,そして,満州ですでに得ている地位から1インチたりとも退かないことだ。』★『「戦争になるのか,ならないのか,すべては日本にかかっている。日本は朝鮮において守らなければならない大きな利益を持っている』●『ロシアは,木材伐採権を口実に,満州と朝鮮との国境をなす鴨緑江の両岸を要求し,河口の朝鮮側にある竜岩浦の湾を要塞化しているが,朝鮮に対する侵略であり,日本に対する脅威だ。』

      2016/12/30

 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑫

  1903(明治36)724

『英ノース・チャイナ・ヘラルド』

『満州におけるロシア熟考された重要な発言』

 

ウイリアム・H・クラム氏が汽船マンチュリア号で上海に到着した。同氏は鉱山の専門家で,イギリス,アメリカ,ロシアの大きな利益に関連した仕事で最近3回にわたり満州を訪問し,このたびその3回目の訪問から戻ってきたところだ。

 同氏は次のように言っている。

「ロシアの意図が何なのか,私は一時期、心中に若干の迷いを抱いたことがあるが,今回の旅で確信を持ゆに至った。

ロシアは満州を手放す気はない。そして必要なら戦争も辞さない構えだ。

私は次のことからこの確信を得た。ロシアは鉄道や駅の改良に莫大な予算を組んでいる。また迅速に市街地を造成しつつある。市街地の家産の半分は政府の資金で建てられた新家庭だ。それに兵舎も建設されている。総じて国庫から猛烈な勢いで金が注入されつつある。

もし満州を返還する気持が少しでもあるなら,とうていこのような金の使い方はできないだろう。戦争に突入した場合の準備は完璧だ。世間で想像されているほどの大部隊が実際に満州に来ているわけではないと思うが,必要になれば数日のうちにシベリア鉄道で大軍を輸送することができる。旅順半島と内陸を結ぶ狭い地峡部の丘陵の上に,堅固な要塞が築かれていることにも,時勢の流れが端的に表れている。ロシアの陸軍大臣がこの要塞を視察に来た」

「現地でイギリス人やアメリカ人やロシア人から話を聞いたが,彼らの印象では,陸軍大臣その他の役人たちが「視察」に来たのは,戦争準備の状況を確かめるためだろう,ということだ。

「英米がとるべき最良の策は,ロシアに満州を取らせることだ。実際問題として,英米がそれを妨げる方法はないだろう。中国に返還させるよりも,むしろロシアに占領させておいた方がよい。ロシアの鉄の手のみが満州を統制できる。特に満州の諸城塞を荒らし回っている馬賊に対してはそうだ」

「地理的位置からも統治機構的にも,満州を統御する国としては,ロシアが最も適任だ。中国政府がその能力を持たないことはすでに立証されている」

「すでにロシアは満州にかってなかった繁栄をもたらし,満州を立派な市場に変えた。とえばアメリカから満州への輸出はロシア占領が始まってから,すばらしい伸長をみせている。

 「戦争になるのか,ならないのか,すべては日本にかかっている。日本は朝鮮において守らなければならない大きな利益を持っているし,遼東半島を無理やり返還させられたことを忘れそうにもない。

 

だが,日本が何かをなし得るか.となると私は疑問に思う。

今のロシアはナポレオン当時と同様,侵攻軍にとってほとんど難攻不落だ。

 ただし,日本国内で世論が沸騰して,戦争に踏み切るという可能性はある。

 「自分が見たところ,イギリス,アメリカ,日本が取り得る最善の策は,満州をロシアに譲り,その代償としてなんらかの譲歩をロシアから獲得することだろう。

これは中国の解体のように見えるが,中国が改革と進歩に背を向け続けている限り,解体はいずれ避けられまい。アメリカが満州をめぐって敵対行為にまで踏み込むことはないだろう。イギリスもおそらくそうだろう。

満州は実際にはロシアの一部なのだ。満州をよく知っている者なら国籍を問わず,だれでもこのことは分かっているし,認めてもいる。一時的な占領だと考えているのは外交官の世界の中だけだろう。唯一ドイツ皇帝だけがそこから抜け出して,満州に住んでいる者なら国籍を問わずだれもとっくに知っていることは事実であると公式に宣言した。

 

     1903731

『英ノース・チヤイナ・ヘラルド』

『ロシア,中国,日本』

ド・ウィッテ氏がロシアの大蔵大臣の職こある限り,戦争は起こらない,と本紙が断言してから数週間が経過した。その後ロシアの侵略は満州のみならず朝鮮でも続けられており.これに対し日本が朝鮮宮廷に抗議したという

報告が入った。また.ロシア,日本の双方で戦争準備が進められているという確かな情報もある。

ロシアは旅順で会議を開いたが,この会議の結果次のことが決まったと言われている。すなわち,ロシアは戦う用意ができていること,そして,満州ですでに得ている地位から1インチたりとも退かないことだ。

 

3か月前に南満州から撤退するという約束を,ロシアはもはやその約束が記された紙の値うちもないように扱っているが,その評価は多くの人が何か月も前から予想していた通りだ。

旅順会議以後,舞台と観客席との間にはカーテンが下りてしまったが・舞台には主役が5人いる。その中の1人,中国はすでに力を失い,ロシア,日本,大英帝国,合衆国に引きずり回されて右往左往している。とはいえ,中国は私利私欲のない3人の友人が自己破壊から守ってやろうと試みるにもかかわらず,常にロシアの方に傾いている。

日本,大英帝国,合衆国は満州における通商の自由の保持には関心を持ってはいるが,中国における領土や特殊権益の獲得に関しては全く関心がない。中国は自分をロシアに売り渡すような秘密協定に調印した,と本紙が発表したのは,7年あまり前だった。

わが英国外務省は昨年,異例の大胆さで日本と同盟関係を結んだ。この同盟によって.ロシアが日本を攻撃し,どこか他の国がロシアに加担した場合には,わが国は日本を援助しなければならないことになった。もはや退きたくても退くことは許されないが,その結果ロシアは他国の援助を求めることができなくなった。

日本はいまだにロシアの満州撤退を要求している。ロシアに満州から撤退する気は毛頭なく,むしろ日ごとに満州における地歩を固めつつあることは,周知の事実だ。ド・ヴィッテ氏でさえ,満州保持が必要だという意見に変わったと

言われている。

ロシアの永久的な満州占領に日本が同意し,その代りに.日本は朝鮮を取って満足する,というのが大方の人々の考えそうな解決方法だ。しかし,日本は朝鮮の独立を尊重するように,条約で拘束されているし,ロシアは朝鮮でもすでにいろいろ仕事を始めている。

ロシアは,木材伐採権を口実に,満州と朝鮮との国境をなす鴨緑江の両岸を要求し,河口の朝鮮側にある竜岩浦の湾を要塞化しているが,これは朝鮮に対する侵略であり,日本に対する脅威だ。

 - 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
速報(348)『日本のメルトダウン』 日本学術会議が「地層処分」見直しを提言●3.11から1年半、何十年単位で傷が残る」小出裕章(MBS)

速報(348)『日本のメルトダウン』      & …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(115)●「安倍妄言」に、米韓両国も戸惑う(7/30)」○「沖縄知事選の動向を気にする安倍政権(7/28)」

   池田龍夫のマスコミ時評(115)   &nb …

『オンライン講座・吉田茂の国難突破力⑦』★『日本占領から日本独立へマッカーサーと戦った吉田茂とその参謀・白洲次郎(2)★『「戦争に負けても奴隷になったのではない。相手がだれであろうと、理不尽な要求に対しては断固、戦い主張する」(白洲)』

    2015/01/01 日本リーダーパワー史 …

no image
日本一の「徳川時代日本史」授業④福沢諭吉の語る「中津藩で体験した封建日本の差別構造」(旧藩情)を読む④

 日本一の「徳川時代の日本史」授業④   「門閥制度は親の仇 …

no image
速報(313)◎『6月17日電気が足りる、足りないとの議論とは無関係に『原子力は使ってはいけない』小出裕章(大分合同新聞)』

速報(313)『日本のメルトダウン』   ◎『5月26日 小出裕章さん …

『Z世代への遺言 ・日本インド交流史の研究②』★『インド独立運動革命家の中村屋・ボースを<わしが牢獄に入っても匿うといった>頭山満の決断力』★『ラス・ビバリ・ボースの頭山満論』

2023年5月20日、「グローバルサウス」の代表格で核保有国 インド・モディ首相 …

no image
日本リーダーパワー史(834)(人気記事再録)『明治維新150年』★『日露戦争勝利の秘密、ルーズベルト米大統領をいかに説得したかー 金子堅太郎の最強のインテジェンス(intelligence )⑥』★『シベリア鉄道のおどろくべき秘密』●『ドイツ皇帝からの親書を金子が読む、大統領は親友だから見せないが、話すよ』●『日本海海戦勝利にル大統領 は大喜びして、熊皮を明治天皇に プレゼントした』

<日本最強の外交官・金子堅太郎⑥> ―「坂の上の雲の真実」ー 『日本海海戦勝利に …

no image
<『英タイムズ』がみた『坂の上の雲』への道>―今こそ、第3の鎖国を解き、アジア太平洋海洋国家へ飛躍せよー

<『英タイムズ』がみた『坂の上の雲』への道―> ―今こそ、第3の鎖国を解き、アジ …

no image
日中北朝鮮150年戦争史(10) 日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む④日清戦争の原因の1つとなった『東学党の乱の実態と朝鮮事情』〔明治26年6月4日 時事新報』(朝鮮内政の悪政、無法、混乱と財政の紊乱は極まれり)ー現在の北朝鮮と全く同じ

   日中北朝鮮150年戦争史(10)    日清戦争の発端 …

no image
速報(50)『日本のメルトダウン』ー原発メディアリテラシー・何よりダメな日本の新聞の社説

速報(50)『日本のメルトダウン』 原発メディアリテラシー・何よりダメな日本の新 …