前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟の清国への影響」⑦1902(明治35)年2月24日 『申報』『日英同盟の意図は対ロシア戦争ーこの機会に乗じて富強に尽力すべし』★『日本はロシアを仇とし『臥薪嘗胆』しロシアを破ることを誓っているが、自国の戦力、財源は 豊かではないので、イギリスを盾にした。』

      2016/12/01

 

 ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-

「日英同盟は清国にどうはね返るか」⑦

 1902(明治35)224光緒28年壬寅117

申報』『日英同盟の意図は対ロシア戦争ーこの機会に乗じて富強に尽力すべし』

中国人の戦略眼の鋭さが次の論説に表れている。

世界では,ただ利益のあるところでのみ人の争いがある。中国の利権は取りつくせないほどに膨大だ。

②イギリス、ロシア、フランス、日本、アメリカはそれを奪いに来るが、心配なのはロシアの

シベリア鉄道敷設だ。

➂シベリア鉄道が開通すれば英国の航海の利益はロシアに必ず完全に独占されてしまう。

日英同盟はロシアの侵略を阻止するために結ばれた。

日本はロシアを仇とし『臥薪嘗胆』しロシアを破ることを誓っているが、自国の戦力、財源は

豊かではないので、イギリスを盾にした。

日本がロシアと戦うと、中国は必ずいちばん先に災難を被り,人民は塗炭の苦しみをなめることになる。

『遠交近攻』の一言は,日本の座右の銘。だから,日本が本心でわが国と相助け合おうとはおもえないが、わが国はまさにこの機に乗じて,富強に尽力すべきだろう。

ロシアと日本はすでに不倶戴天の敵.シベリア鉄道の完成が1日遅れれば,兵力、兵糧輸送でロシアが1日長く日本より不利になる。

 

本紙が連日掲載する英日同盟とロシア人の条約改訂を読み,感じたところを記す著者は嘆息して言う。ああ,いったい何が各国の懐疑心をかくも深いものとしたのだろうか。

そもそも,世界では,ただ利益のあるところでのみ人の争いがあるものだ。

中国は,すでに弱くかつ貧しいとはいえ,利益を蔵する大きな沢なのだ。鉄道はま敷設され尽くされておらず,汽船もまだ就航され尽くされておらず,各種の金属鉱産物もまだ開鉱され尽くされていない。21省は,まだ開拓され尽くされていないのだ。

もしも,徐々にその利益を整備してわがものとできれば.ほとんど取っても取り尽くすことも.使っても使いきることもないだろう。外国人は,これを欲しがったために互いに対立するようになった。

イギリスは以前から中国における商業の雄だったが,ここ10年来,保守的態度をとり過ぎたため,徐々にその地位を奪い取られそうな趨勢になってきた。

その地位をドイツが奪っても,アメリカが奪っても.日本が奪っても,それはまだよい。心配すべきなのは,ロシアのシベリア鉄道敷設のことだ。

 

いったん汽車がヨ一口ッパとアジアを往来するようになれば,航海の利益は,いきおいロシア人が必ず完全に独占することとなるだろう。イギリス人は,それをよく知っているが.ロシアと対立しようとすれば,英露両雄が共に争うことになるが,イギリスにとって利益とならないことがあるやもしれない。

たまたま,日本はロシアを仇とし,昼夜、臥薪嘗胆しロシア人を破ることを誓っている。しかし,日本は,自国の兵力がまだ十分ではなく,財源もまだ豊かではなく,民は貧しく,土地は狭く,素手で野心を抱いていることを顧みていた。

そこで,相互に中国、朝鮮を保障する同盟を結んだ。ああ,イギリスと日本が中国および朝鮮を本当に大事にしているはずはない。

英日が出しゃばってこれをする理由は.実はロシア人を防御するのに備えているに過ぎない。

また,イギリスと日本はロシア人のアジア制覇を恐れているはずもない。実はロシアが中国,朝鮮の利権を奪い取ることを恐れているに過ぎない。

ロシア人が,ここに及んで,どうしてそれを知らないことがあろうか。それ放,ロシアは中露条約において,その語句に訂正を加え,文字と言葉を斟酌し,穏当適切で平等なものにしたのだ。

 

その第4条の付注の文には,「このたび.鉄道を中国に返還するが,中国は必ず自国でそれを保護し,他国の軍隊の駐屯を許さず,橋を架けて遼河を越えることを許さないこと」と述べている。

 

この文で,ロシアがイギリスと日本を防ごうとする考えはいたって明白で,よく分かる。まことに,イギリスと日本が獲得できる利益があるというのはロシアにとっては不利益なのだ。

故に,ロシアはしかたなく,あらかじめ余地を残してイギリスと日本が遼東で思うままにできなくさせたのだろう。あるいは「イギリスと日本の同盟は実は中国にとって幸福なことだ。

 

考えるに,各国のうち,わが国と国境を接しているのは,ただ日本とロシア

だけだ。顧みるに,ロシアにはすでに領土併合の謀があり,日本もまた,鋭くすきをうかがっている様子がある。

 

他日.両国が中国を欲しがることで,突然,戦争が始まり,必ずや中国の辺境が戦場となるだろう。

日本がロシアに勝とうと・ロシアが日本に勝とうと,中国は必ずいちばん先に災難を被り,人民はますます耐えがたい塗炭の苦しみをなめることになる。現在イギリスと日本の2国はロシアと敵対しているので,ロシアは必ずやおのずと中国侵略の難しいことを知り退くに違いない。

 

これにより,中国の領土は保全され,戦争の脅威もなくなる。どうして,暗に英日同盟の利益を受けないことがあろうか」と言う者もあれば,「そうではない。ロシアは,わが中国の地をむさぼる考えがあるとはいえ,各国が一斉に立ち上がり昔のトルコとの戦争のように、ロシアを攻めるのを恐れているので,あ

えて最初に騒動を起こすことはない。

 

日本は戦争に勝った後に辺境を開拓しようとする気持を持っているのが,これまではただロシア人を恐れており,心中になお恐れ忌むところがあった。

今日,日本はイギリス人を得,これを助けとしたので,ロシアは.必ずや事ごとに撤退をし,中国はついに日本に欺かれ侵略されるところとなるだろう。

『遠交近攻』の一言は,日本が長らく座右の銘としてきたものだ。だから,日本が本心でわが国と相助け合おうとするなどと言えようか」と言う者もいる。とはいえ,わが国はまさにこの機に乗じて,富強に尽力すべきだろう。

 

ロシアと日本はすでに不倶戴天の敵となり.手ぐすねを引かない日は1日もない。現在,争いが起こらないのは,シベリア鉄道の完成が1日遅れれば,兵

力、兵糧の輸送においてロシアが1日長く日本より不便になるからだ。

 

しかも鉄道の完成は,なおすぐにできるはど簡単ではない。もし,イギリスと日本の協調が5年を限りとするものなら,その5年の間は,イギリスは商業を維持することを要務とし日本もまた,以前に結んだ同盟を急に破ることは都合が悪いので,ひそかに野望を潜行させるだろう。

わが中国は,外国人の侮りから暫時逃れることができる。

当然,中国は朝野を挙げて一丸となって,鉄道を新設して列車を走らせ,汽船を購入して権利を獲得し,諸金属鉱山を開鉱し.21省の鉱産資源を開拓することを鋭意図って,それにより国土の利益を引き出し,商況を盛んにするのだ。

ロシアのシベリア鉄道が完成し,イギリスと日本の5年の同盟期間が満期に達するときになれば.次々と変動が生じることで,中国は強大な隣国が周囲で待ちかまえ問題を作り出してくることを免れない。

しかし,そのときわが国はすでに国は富み,兵も強力となっており,どうして,なおまだ外国人がすきをうかがう謀を持つことを憂慮することがあろうか。

そうでなければ,すでにひどくやせ衰えた病人が,第三者の力を借りて,威勢がよくたけだけ猛々しい者と争い続けようとしているのにたとえられよう。

 

その第三者に.甘く見らればかにされなければ,大変幸運なことだ。どうして,第三者が強国を拒もうとする中国を死力を尽くして助けようと望むだろうか。窓の下の書生や井の中の蛙がこの意見をささげるのを,権力者はいかに思うだろうか。

 - 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
 世界、日本メルトダウン(1013)- 「地球規模の破壊力示したトランプ」★ペイパードライバ―・トランプ大統領の『無謀運転』がグローバリズムに新たな中国流『万里の長城』を築くというアナクロニズム(時代錯誤)を強行』★『市民の抗議運動に「感銘」、オバマ氏が入国禁止令で声明』●『  トランプの不法移民対策、みずから「壁」にぶち当たる可能性』●『 トランプ政権の黒幕で白人至上主義のバノンが大統領令で国防の中枢に』

   世界、日本メルトダウン(1013)- 「地球規模の破壊力示したトランプ」★ …

『Z世代のための日中韓外交史講座』⑭』★『中国紙「申報」からみた「日中韓150年戦争史」★『(日清戦争開戦2ヵ月後―「罪言―中国の敗因は旧弊の悪習を改め、汚職官吏を除くこと」(申報1894年10月5日)★『この130年後も習近平主席の終わりなき汚職撲滅の闘いが続く」』

   2015/01/01「申報」からみた日中韓のパーセプシ …

日本リーダーパワー史(630) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(23) 『川上操六参謀次長と日清貿易研究所を設立した荒尾精 「五百年に一人しか出ない男」(頭山満評)ー表の顔は「漢口楽尊堂店長」、実は参謀本部の海外駐在諜報武官。

日本リーダーパワー史(630)  日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(23)   …

『Z世代のための<憲政の神様・尾崎咢堂の語る<日本史上最大の英雄・西郷隆盛を理解する方法論>の講義⑯』★日本リーダーパワー史(84)尾崎行雄の傑作人物評―『西郷隆盛はどこが偉かったのか』★『リーダーシップは力より徳にある>』

    2010/08/09  日本リー …

no image
ウクライナ問題はどうなるのかー日本記者クラブで石郷岡建氏、下斗米伸夫・法政大学教授、ハルチェンコ・ウクライナ駐日大使

 <ウクライナ問題はどうなるのかー日本記者クラブ「研究会」> &nbs …

no image
世界/日本リーダーパワー史(962)ー『2019年は『地政学的不況』の深刻化で「世界的不況」に突入するのか,米中貿易協議(3/1)の行方はどうなる!?』➀

世界/日本リーダーパワー史(962) 前坂俊之(ジャーナリスト) 2018年12 …

no image
知的巨人たちの百歳学(184)再録ー『一億総活躍社会』『超高齢社会日本』のシンボル・植物学者・牧野富太郎(94)植物学者・牧野富太郎 (94)『草を褥(しとね)に木の根を枕 花を恋して五十年』「わしは植物の精だよ」

    2019/08/26 の記事再録&nbsp …

no image
戦争とメディアー「9・11からイラク戦争へ」=現代のメディアコントロールの実態①

現代のメディアコントロール(2001-05年)①                 …

no image
速報(435)『日本のメルトダウン』(MIT)メディアラボの伊藤穣一所長の記者会見』(動画)『三木谷氏の「計画資本主義では出遅れ」

  速報(435)『日本のメルトダウン』   ●『 …

no image
速報(470)『日本のメルトダウン』●『東電福島第一原発事故について船橋洋一氏がその背景を記者会見動画」

   速報(470)『日本のメルトダウン』 &nb …

PREV
日本メルトダウン( 981)『トランプ米大統領の波紋!?』★『「米中新秩序」到来!日本はついに中国との関係を見直す時を迎えた 対抗ではなく、協調路線でいくしかない』●『トランプ支持層と「ナチス台頭時」に支持した階層はきわめて似ている』●『麻生大臣を怒らせた、佐藤慎一・財務事務次官の大ポカ なぜこんな人を次官に据えたのか』★『さよなら米国。トランプの「米国ファースト」がもたらす世界の終わり』★『若者が動画で自己表現するのはなぜ? 古川健介氏が語る、スマホ世代の“3つの仮説”』★『スピーチを自在に編集できる“音声版Photoshop”登場か--アドビが開発中の技術を披露』
NEXT
日本メルトダウン( 982)『トランプ次期米大統領の波紋!』「安倍・トラ会談」が、かなり危なっかしい理由トップ会談お決まりの打ち合わせもなし』●『トランプ氏と安倍首相の初会談、準備段階で混乱、詳細決まらず』●『コラム:貿易やアジア外交、トランプ大統領を待ち受ける危険』●『コラム:トランプ勝利と、米国が主導する「世界秩序の死」』●『オピニオン:トランプ不安、日本の「改憲」後押し=エモット氏』●『TPP失敗なら中国に10兆円もの恩恵 米調査委が試算、トランプ氏の脱退方針に警告』