前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-「日英同盟はなぜ結ばれたのか」②1902(明治35)年2月12日『ノース・チヤイナ・ヘラルド』 英日間の協約(日英同盟の締結)●同2月13日付「仏ル・タン」『極東で』『

      2016/12/01

    ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-

「日英同盟はなぜ結ばれたのか」②

 1902(明治35)212日『ノース・チヤイナ・ヘラルド』

英日間の協約(日英同盟の締結)

 

本日午後,届いた電報ニュースによれば,大英帝国と日本は,中国と朝鮮の保全および極東の平和の維持を目的とし,また,もし同盟国の一方が1国より多くの国と戦争に入るなら,他方は共同行動をとるという協約を締結した。

ほぼ攻守同盟に近い今回の協約が確保しようと意図する諸日中を望んできた人々は皆,この協約を大いに満足して受け入れることだろう。

この協力の獲得こそ,日本が1895年に中国と講和を結んで以来の,日本の目標だったわけであり,日本は大英帝国をその同盟国とすることをずっと切望し続けてきた。そして今や日本の最も偉大な政治家,伊藤侯爵が長期間にわたる交渉を勝利で終わらせることに成功したのだ。

この新同盟は何人をも脅かすものではなく,平和と万人への門戸開放を旨とするものだ。これが合衆国に好意的に受け取られることは間違いない。われわれはランズダウン卿と伊藤侯爵とに協約の成立に関し心からなる祝意を述べたい。

 

いかなる列強の現実性のある連合も大英帝国と日本の連合艦隊に立ち向かうことは不可能だ。ロシアといえども,海上を封鎖されれば中国や朝鮮に軍隊を送り込むこともそれを維持することもできない。

西洋と東洋の2つのイギリスが極東の平和の維持を主張し,合衆国が好意的中立の立場をとれば,極東の平和は必ず保たれるのだ。

 

1902(明治)35213日、

「仏ル・タン」『極東で』パリ212

 

1898年の4月,イギリス内閣-外相でもあったソールズベリ卿が主宰し,現在の内閣とすでにほとんど同じ顔ぶれ-が威海衛の租借を発表したとき,同政府はこの取引の国際的,戦略的,海事的な重要性を高めることに心を砕いた。

 

 それは,ドイツが,カトリックの宣教師1人が殺されたことへの補償という口実で膠州と山東を手に入れ,極東地域に領土的な紛争と敵対の時代を始まらせたばかりのときのことだった。

シベリア横断鉄道の延長ということですでに満州に入っていたロシアは.これまた租借という名目で,2つの港,すなわち軍港の旅順と商業港の牛荘の獲得に急いで乗り出した。

 

 イギリスが威海衛をわがものにしようとしたのは,この動きに対抗して均衡を図るためだった。しかも,行為はともかく,外交用語を支配する奇妙で.ときにはまことに皮肉なロジックによって,イギリス政府は,中国のアーティチョークの花托を新たに1枚むしり取っておきながら,これはその領土の保全を保障するためだと称したのだ。

 

政治にはこのような秘儀がある。人が皿に手をつけないようにするという高潔

な意図から,西洋の大国が,渇望の息をつきながら自ら皿に手を突っ込むのは,これが初めてでもなければ,最後でもあるまい。

 

 ソールズべリ卿にこの行為を働かせた底意が何であったにせよ,内閣とその機関紙は,新たに手に入れたものの比類なき価値を祝って,力いっぱいラッパを吹きまくった。

威海衛は渤海湾すなわち北部中国の鍵にあたるところであり,戦略上この港は大艦隊の海軍基地となり得るのだ。それは,この広い内海の向こう岸に位置する旅順をあざ笑い,その重要性を台なしにしてしまうだけの価値を持つ。

 

 なるほど,ドイツがイギリスからむしり取った小協定によって,イギリスは膠州一帯での鉄道,鉱山などで競争関係に入ることを明確に放棄しており,この企ての商業的な利点は皆無になっていた。しかし,それにもかかわらず,威海衛の租借を取りつけだけでも,ロシアの闖入のためにイギリス艦隊が旅順から撤収しなければならなかったことによる士気上の打撃を補って余りあると言われた。

これはロシアにとってはストレート・パンチであり,中国にとっては,調子の悪いボクサーの鼻の下にセコンドが差し出す気付け薬の瓶のように,またとない力づけだった。

 ちょっとの工事を施すだけで,この港は難攻不落の極東のジブラルタルとなる。そして,イベリア半島の先端からマルタへ.ついでナイル河口からスエズ運河,アデン.セイロン,シンガポール,香港,劾海港へと続く戦略拠点の鎖が,3大陸を鉄のベルトで結ぶ。

 

威海衛のすばらしい停泊地は第一級の梅軍基地となり最強の諸艦隊が悠々と遊弋(ゆうよく)するようになる,と人々は語ったものだ。

それに,ヨ一口ッノヾ人教官の訓練のもとに,現地人の小さな軍隊を作らねばならない,とも言われた。

この点では,すでに英中両国人による最初の連隊が発足して訓練を受けており,最近の中国の戦いの際にも作戦に参加してよい成績をあげた。

 

 ロシアが満州とモンゴルに対して強い野心をあからさまに示すようになった結果.極東の動きへの関心がここ数か月来また高まってきた。したがって,イギリスはこれまでにも増して,新しい護得物を最大限に利用しようとする公算が大きいと思われた。

 

それだけに,威海衛の責任者が民事・軍事の両面を兼ね持つ高等弁務官,サー・

AF・ドーワード少将から,これまで香港の植民地書記官であった単なる文民行政官,スチュワード・ロックハート氏に変わったとの突然の知らせは,大きな驚きを呼び起こした。

 

 世間一般の好奇心に対する反応は,上下両院に表れた。植民地次官のオンスロウ卿と陸軍大臣のブロードリック氏が同時に,まことに思いがけない発表をしたのだ。

 

2人は語った。新しく検討をした結果,威海衛を第1級の港に改造することは不可能なことが分かった。これは海軍当局の一致した見解であり.この有名な砦はせいぜい数個中隊の宿舎としてなら使うことができる。英中連隊は解散しなければならない。

帝国主義者たちの多大の夢の跡にはサナトリウムを設置する,と。

 

 

 最後の一撃はローズべリ卿の心を打ち,第一級の要塞が湯治場になると嘆かせた。ゴーシェン卿は1898年に海軍大臣として威海衛港の綿密な調査を行わせたが,そのときの結論は今回のものとは違っていたと,いくぶん恨みの念をこめて語った。

 

 この急転換の理由について,さまざまな憶測がなされている。財政的な理由ではあり得ない。なぜなら,イギリスは南アフリカの戦争で巨額の出費をしているが,その野心のためにはなお支払のできる態勢にある。

 

だから.分からないのだ。中には,香港でさえも,今のように大商業港となり,

揚子江地域での大英帝国の前哨となる前には,軽視され,ほとんど放置されていた時期があった.とうなずく者がいる。

 

 そのはか,外交の舞台裏に転換の説明を求めようとする者もいる。事実,イギリスと日本の間でこのほど調印されたばかりの防衛同盟条約は.イギリス政府が極東で新しい政策をとろうとしていることを示しているようだ。

 この協約は,過去約1世紀の間に類を見ない革新だ。カニングとノヾ-マトン以来,イギリスは協約上の義務を負うことを一切逃れ.「フリーハンド」政策を教条としてきた。

 

しかし,イギリスは変わり,今では逆に「手を結ぶ」システムを採用したのだ。この外交的革命と,威海衛でイギリスが見せた「手を空にする」政策へのおずおずとした,なお不完全な復帰との間には,たぶん.同時性ということ以上のもっと直接的な関係があるだろう。

 

 - 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(295)★『芥川龍之介の文学仲間で、大正文士の最後の生き残り作家・小島政二郎(100歳)の人生百歳訓ー 『足るを知って分に安んずる』★『いつまでもあると思うな親と金、ないと思うな運と借金』★『起きて半畳、寝て一畳、天下取っても、二合半』 

    2012/11/23  百歳学入 …

『オンライン講座/明治維新は誰が起こしたか』★『高杉晋作の国難突破力②』★『明治維新は吉田松陰の開国思想と、その実行部隊長の「高杉奇兵隊」(伊藤博文、山県有朋も部下)によって、倒幕の第一弾が実現した」★『英外交官パークスに自分のフンドシをプレゼントした高杉晋作の剛胆・機略縦横!、②』

  2012/10/29  リーダーパワー史(33 …

no image
速報(165)『日本のメルトダウン』<小出裕章情報>☆『どうにもならない現実を説明する責任が国、東京電力、マスコミにもある』

速報(165)『日本のメルトダウン』 ★<小出裕章情報>   ●『小出 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(198)ー『日本敗戦史』㊱『来年は太平洋戦争敗戦から75年目―『日本近代最大の知識人・徳富蘇峰(「百敗院泡沫頑蘇居士」)の語る『なぜ日本は敗れたのか・その原因』②―現在直面している『第二の敗戦』も同じパターン』

    2014/12/03 /『ガラパゴス国家・ …

『Z世代のための米大統領選挙連続講座①』★『バイデン大統領(81歳)対トランプ前大統領(78歳)の「老害・怨念デスマッチ」

材木座通信24/07/09pm600影絵の富士山とウインドウサーイン 2024/ …

no image
「陸羯南の日清戦争論」➁韓国問題が日清、日露戦争の原因である『我東洋問題の起因』(『日本」明治27年11月12号)

          …

no image
速報(169)★<小出裕章情報>『足立区小学校のホットスポットと工程表』☆『現在の除染が「犯罪者が犯罪の上乗せ・・』

速報(169)『日本のメルトダウン』★<小出裕章情報>   ●『子供た …

no image
 日本メルトダウン(996)ー『プーチン大統領12/15来日』●『安倍総理の「歴史に名を残したい!という功名心、前のめり姿勢がロシア側に見透かされている』(江田憲司)★『対露経済協力に前のめりになる安倍首相の突出が目立った。 安倍首相が対露経済協力相を新設し、世耕弘成経済産業相に兼務させたことも異例だ』

   日本メルトダウン(996) 北方領土交渉。ロシアの腹芸にだまされた?・・・ …

no image
日本メルトダウン脱出は可能か(596)●『世界経済を苦しめる需要低迷の呪い- 英FT紙)◎「1937年」の真の教訓とは何か」

    日本メルトダウン脱出は可能か(596) & …

『世界史を変えるウクライナ・ゼレンスキー大統領の平和スピーチ』★『日本を救った金子堅太郎のルーズベルト米大統領、米国民への説得スピーチ」★『『日本最強の外交官・金子堅太郎のインテジェンス⑧』★『ル大統領、講和に乗りだすーサハリン(樺太)を取れ』●『外交の極致―ル大統領の私邸に招かれ、親友づきあい ーオイスターベイの私邸は草ぼうぼうの山』 ★『大統領にトイレを案内してもらった初の日本人!』

     2017/06/28日本リーダーパワー史 …