日本敗戦史(51) A級戦犯徳富蘇峰が語る 『なぜ日本は敗れたのか』③「米英ソ中のリーダーと東條、近衛の指導者との圧倒的な差」
2017/08/16
日本敗戦史(51)
マスコミ人のA級戦犯指定の徳富蘇峰が語る
『なぜ日本は敗れたのか』③
「第2次大戦中の米英ソ中のリーダーと東條、近衛の指導者との能力差」
「一国は一人をもって興り、一人を以て亡ぶ。」<蘇老泉「管仲論」>
一人のリーダーの出現により、国や企業も発展すれば、
逆に滅亡もするのが歴史の興亡。「終戦70年」老衰国に転落中の日本で
の緊急の課題は次世代のリーダーを作ること。
『なぜ日本は敗れたのか』③「彼割首脳者器量の懸隔」
我国のリーダーたちは、日露戦争の先輩に対して、見劣りがするばかりでなく、米英ソなどの敵国のいずれの
人物に対しても、見劣りがするようである。例えば、米国のルーズベルト
は、何やら桂太郎の性格と、一脈相通ずる所あるようで、桂とならば、少なくとも五分五分の勝負は期待できたろうが、東條英機や近衛文磨では、とても歯が立たぬ代物である。
ルーズベルトには、政治家に最も必要なるオリジナリティー、即ち独自創造の天才は、求められなかったが、衆智を集め、これを選択する才能は余る程あったようだ。ところが、東條には、衆智を集めるという事が出来ず、近衛はせつかく衆智を集めようとしても、それを選択して、わが物とする事が出来ず、一方、ルーズベルトは、情勢変化の波に乗る機敏さには天才的な才能を発揮した。
我国の当局者達には、それが出来なかった。それに自己の信念を、徹底的に押し通さんとする気魄も、認められなかった。ルーズベルトは、巧妙なる仲買人(世論を喚起する)ともいうべき者であったが、東條、近衛の輩は、問屋(国策推進のリーダー)でもなければ、仲買人(それを国民に喚起する)でもなく、全く一個の小売商人(小政治家)に過ぎなかった。
チャーチル(英国の第2次大戦中の首相、指導者)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%AB
は、恐らくは現代における、文化的怪物というべき者であって、父が英国の貴族であり、母が米国の大金持とは行かぬが、相当の金持の娘であり、その合作で出来た者であって、珍らしき漢(男、大人物)である。しかも彼は海千山千、時としてはネズミとなり、時としては虎となり、船頭(船長)ともなれば、水手(船員)ともなり、世の中の、20年代から70年代まで、あらゆる動的の生活をした漢(おとこ)で、智勇弁力(智慧も勇気も言語能力)も兼ね備えたトップリーダーである。
彼は万能に近く、何をしても出来ない事はない。素人芸の絵を描いても、またはレンガ積みの職工となっても、食って行くだけの事は出来る。ポロの競技は、彼がインド生活中で練習したもので、今日では老骨で、これを試みる事も、どうか知れぬが、あっぱれな選手であったと聞く。
まことに弁舌は勿論、文章に至っても、現代の英国に、彼ほどの大文筆家があるかどうか、彼の収入の主要なものは恐らくは著作から得たものであろうと、推察せらるる。
前回の戦争における大作『世界の危機』は、自己を回顧した点も、あるが、それにしても、古典に近い。今回の戦争(第2次世界大戦)についても、すでに十七万何千文字の草稿が、出来上がったという話である。しかもこの男は、渾身戦闘的精神で、闘志満々、恐らくは死に至るまで、老衰とか、老朽とかという事はあるまい。かつてはヒットラーを相手に、総ての人が、ヒットラーに向って、1言をも発せられなかった時に、こちらから喧嘩を挑んだほどの男で、今や再びスターリンに向かって、しきりりに闘かいを挑んでいる。雀百まで踊り忘れず、彼が少壮時代、自党の首領の一人であった、大チェンバレン
にさえも、闘かいを挑み、バルフォアさえも、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%82%A2
父の友であったに関わらず、つっかかるほどの漢であるから、東條、近衛らが、容易に手の出るはずはなかった。
スターリンの老獪さは、チャーチルや、ルーズベルトさえも、一目を置く程であったか、もとより、東條、近衛と比較になるべきはずはなかった。蒋介石さえも、大なる見通しと、堅忍不抜の精神と、清濁併せのむ雅量があり、場合によっては、自党粛正のためには、織田信長がやるような、手きびしい淘汰、懲罰、粛清を、行う事を辞さないのにくらべ、わが当局者の器局の、はなはだ小であった事が、遺憾ながら認められる。このような状態なので、まず人と人との勝負で、こちらは相手に負けたといって、さしつかえない。
(昭和22年1月8日午前、晩晴草堂にて)つづく
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