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地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

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「トランプ関税国難来る!ー石破首相は伊藤博文の国難突破力を学べ④』★『日本最強の外交官・金子堅太郎のインテリジェンス』『ルーズベルト大統領をホワイトハウスに訪ねると、「なぜ、もっと早く来なかったのか、君を待つていたのに」と大歓迎された』★『米国の国民性はフェアな競争を求めて、弱者に声援を送るアンダードッグ気質(弱者への同情)があり、それに訴えた』

   

   『オンライン講座/日本興亡史の研究 ⑰ 』記事再編集

金子の外交戦略の秘訣7ヵ条とは・・・

①金子は18才の時に米国に留学してハーバード大に進みその英語力は傑出していた。高校では卒業生代表でスピーチしたという優等生で、渡米後、彼は、その博識と機智とに加えて、抜群の英語と巧みな演説方法を駆使して説得にあたった。
②金子はルーズベルト大統領とはハーバードの同窓生だが、学部も違い大学時代には付き合いはなかった。ルーズベルトが海軍次官から政治家となって活躍していたころに知り合いハーバード同窓生、同じ政治家として意気投合、互いに尊敬する親友となった。その親友が米大統領になったのだから、このパイプは強力である。
③ 個人の付き合いも、政治家同士、国の付き合いも要は同じである。人間関係の良し悪しで決まってくる。この場合の外交の要諦は「良き友を持て]と言うこと。
④ ハーバード人脈を最大限活用したこと主として同国の知識層の多く居住する東部を活動地域にした。
⑤『敵を知り、己れをしれば百戦危うからず』(孫子)も外交の要諦である。忍者さながらにわずか1名の随行員ともに、なんらの武器弾薬も持たず、単身で大アメリカに渡り、その弁舌と英知によって大統領からアメリカ国民を日本の味方につけようと言うまさに千両役者であり大説得者だ。
⑥そのアメリカの歴史と成り立ち、移民による多民族国家の風土、国民性をよく知っており、それにもづいての勉強し研究したこと。その恐るべき知恵と大陸を駆けめぐる行動力は抜群だった。。
⑦ アメリカ人のフェア、半官びいきに訴えた。アメリカの国民性、対人意識の根底には、フェアな競争を求めて、弱者に声援を送るアソダードッグ観(負け犬に対する同情心)があり、それに訴えた。
 

米国到着、ルーズベルト大統領は金子特使を大歓迎

それから私は行李(こうり、旅行カバン)を整えて、二月二十四日に随行員阪井徳太郎(米ハーバード大学卒、外相、首相秘書官。その後三井財閥の最高経営者)、鈴木純一郎の二人をつれてアメリカに向いました。しかし伊藤公の話、陸海軍当局者の話を回想してみれば、十八日間サンフランシスコまでの航海というものは、じつに惨澹たるもので、将来どうなるかわからぬ。
アメリカはいかなる有様であるか、いかにしようかとただ計画を工夫するだけであった。
それから3月10日にサンフランシスコにつきました。総領事はただいまの宮内省大膳頭(だいぜんのかみ)の上野季三郎君であった。その報告によれば開戦の当初は小さな日本の国が、あの膨大なロシアに向かって戦をするということはじつに偉い勇気だといって一時は大分日本に同情をしました。
アメリカ人はご承知のとおり、Under dog=(アンダー・ドッグ)というほうにいつも賛成する。弱い小さい犬と大きな強い犬と途中でかみ合うというと、通行者はその犬の性質や犬の所有者は分からぬが、弱いほうの犬をかばって大きな強い犬をステッキでなぐる。そうしてアンダー・ドッグを保護する。日本がちょうどアンダー・ドッグに当たるから当初は同情を寄せておったが、困りましたことは三月の十日、すなわち私が着く前の目にアメリカ合衆国の大統領が局外中立の布告を出した。
それがアメリカ全国の新聞に載せられた。その局外中立の布告によれば、今度日露の戦争が始まって露国といい日本といい、いずれもアメリカの修交国である。ゆえにこの両国いずれか一方に加担し、又応援するというような言論行為は一切厳禁である。
陸海軍の武官はもちろん、文官も国民も、両方にひいきしてはならない。もし一方にひいきすれば一方に悪感情を起さしめてついに国交に影響を及ぼすから一切そういう行為は慎めという厳正中立の声明であった。そこでいままで日本に寄せていた同情が、この声明によって止んでしまったという。それを聞いたときに私は落胆した。かってハーバード大学の同窓関係から懇意なるルーズベルト氏が大統領になっておるから、ワシントンに行って、援助してもらおうと頼みに思って上陸した。
しかるに前の日にアメリカ国民は一切日露両国にたいして、援助又は片手落ちのことをしても、厳正中立の布告を出した発頭人に、日本に加勢を頼むといったところが承知しないにきまっている。私はじつに失望した。そこでともかく、サンフランシスコを立ってシカゴ行った。
シカゴの富豪はご承知のとおり皆ロシア人と婚姻関係がある。故大統領グラント将軍の一家も又ポックー・パーマーの一族もそうである。彼らの娘が露国の貴族のところに嫁いでいる。又ここかしこの商売人は、旅順・ウラジオストックに商品を売りこみ、商業関係が結ばれている。日本から運動してもとても手を出す余地がないから、早くここを立ってニューヨークに行けと清水領事が言われた。そこでシカゴを立ってニューヨークに参りました。ところがニューヨークには総領事なり、正金銀行なり、三井物産なり、大倉組なり、高田商会なり、高峰譲吉氏(工学博士、タカジアスターゼ発明者)なり、多数の日本人がおったが、それらの人びとが私の宿屋に来て、
「さて日露の関係はどうなりますか。」
と言う。どうなるか誰もこの先は分からない。「しかし一体アメリカはどうか。」
と聞くと、
「私共はじつにこの戦が始まって以来ただ心配して寄り合って、どうしたらよかろうと額を集めて協議しているのですが、貴方がおいでになったから、どうか御指導を願いたい。」
「いや僕に指導を願うと言われても僕にもどうしようという見当はまだつかぬ。」
と答えるのみで、じつにニューヨークにある同胞の在留人は皆落胆しているのみ。後でこそ連戦連勝で偉い勢いがついたけれども、私が飛び込んで行った当時の日本人の顔色というものはみられたものではなかった。それはそうでしょう。外国にいる者の身になれば、ああいう大戦争が本国に起れば心配するにきまっている。
そこでつらつらニューヨークの模様をみますと、どうもじつに日本が不利の立場にあった。私がホテルに到着したところが、新聞記者が続々来訪しました。これを一室に集めて、日露開戦の起因につき日清戦争後の三国干渉から説き出し、現時にいたるまでの沿革と国民の決心の情況を詳述したから、各新聞は翌日の紙上にこれを掲載しましたから、多少戦争の真相が米国人に分かったようであった。
私が泊まっていたところはホランド・ハウスといって、ニューヨークのフィフス・アベニューにありますが、その一軒先にウオルドーフといって有名な人や立派な外交官などの泊るホテルがある。私が着くと間もなく、それはかねて計画してあったものとみえてニューヨークの交際社会で花形といわれたヒチコック夫人が主催となり、当市の富豪や有力な紳士の夫人が賛成人になって、一大夜会をウオルドーフで催す企てがあった。
その夜会の入場切符の売上金はロシアの赤十字社に寄付して傷病兵の手当てに使用するという触れこみである。すなわちこれは親ロシアの宴会であって各新聞は筆を揃えて書き立て、いよいよその夜は数百名の紳士淑女が寄って大舞踏会を催した。その席に招待されたロシアの大使カシニー伯自身は出席しなかったけれども、参事官をわざわざワシントンからニューヨークによこして、宣言書をその席上で読み上げしめ、日本が開戦したことは国際法違反なりとさかんに攻撃して米国人の同情を惹起するよう巧妙なる言辞をもって聴衆に訴えた。これが翌日の新聞に載った。これはすなわち私に対する脅威の第一でありました。
●ロシア大使と対決
このときに当たり露国大使カシニー伯はワシントンにおいて新聞記者を毎日大使館に招いて優待し、茶を飲ませる、ハバナの葉巻、タバコ、エジプトの紙タバコをやる、シャンパンを飲ませるというようなことをしてしきりに新聞記者の機嫌をとり、今度の戦争は日本のけしからぬ陰謀である。わがロシアは少しも戦意がないのに、突然、仁川においてわが軍艦を沈没させた。宣戦の布告をせずしてただ国交断絶だけで戦争を開始するという日本の態度は、国際公法違反であるとしきりに宣伝する。
そうしてニューヨークヘラルドという新聞が先鋒となってさかんにロシア大使の言うことを受売りして同紙に発表する。のみならずロシア大使は今度の戦争は宗教戦争であってキリスト教と非キリスト教の戦である。ロシアはキリスト教国で日本は非キリスト教国である。
ゆえにヨーロッパ・アメリカのキリスト教国はこぞってこの非キリスト教国の日本を撲滅しなければ、キリスト教が東洋に伝播せぬ。よって欧米のキリスト国は連合してロシアを助けろという。のみならず大使いわく、日本は何だ、ロシアに比べてみるとじつに小っぽけな国である。一“Yellow little monkey”(黄色の小猿)に何ができるか。なぜかというとロシアは世界無比の強国であって、ヨーロッパの強国といえどもロシアに指一本さすことができない。国土も膨大で人口も多い。陸海軍も整っている。それに小っぼけな黄色な小猿が戦をするということはじつにおこがましい。みておれ、二、三ヵ月のうちには日本の国を撲滅させてみせるぞ。気の毒なものであるというてしきりに日本を攻撃した。そこで新聞記者がその記事の切り抜きをもってきて私に見せて
「これにたいする貴下の意見を聞きたい。」
と言う。それで私はいちいちこれを見て、
「これは弁駁すればいくらも弁駁ができるが、簡単に言えば、第一ロシア大使は宣戦の布告なしに戦をしたのが国際法に背くと言われるが、今日では国交断絶すればすぐ戦端を開いてよいということは国際公法の常例になっている。宣戦の布告は後でもよい。現にロシアが先年トルコと戦をしたときに、国交断絶の後ただちに戦闘行為に出でて、その数日後に宣戦の布告をしたではないか。露国自身の歴史をみてもそういう先例がある。日本は決して国際法に違反したことは行っておらぬ。」
とこれは向うの歴史をもって説明した。
つづく

 
 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

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