『 2025年は日露戦争120年、日ソ戦争80年とウクライナ戦争の比較研究②』★『日露戦争でサハリン攻撃を主張した長岡外史・児玉源太郎のインテリジェンス②』★『山県有朋や元老たちの判断停止・リダーシップの欠如』

日露戦争当時は、今のように経済上の統計というのはまだ無かった。総力戦という言葉が出たのは昭和に入ってからである。日露開戦はしたものの、金が足りぬ、兵隊が足りぬ、大砲が足りぬ、弾丸が足りぬ。足らぬことばかりであった。どうしたらよかろうと政雷脳が苦慮して生れたのが、「足らぬ会」であった。長岡次長が総長室つまり大本営で行なわれている「足らぬ会」に偶然飛び込んだのは、山県総長に用事があったからだ。9月16日午後三時過ぎであった。そこには伊藤博文、井上馨、松方、正義の三元老、桂太郎総理・小村寿太郎外務、寺内正毅陸軍、曽爾荒助大蔵の各大臣が山県総長をとりまいて、何事かを相談していた。
「この場合、ぜひ総長のお名前で外務省において立案した訓令を出していただきたい。これは全く国家のためである。そうでないと、外債募集の困難は救われないし、諸外国の誤解を解くことはむつかしい。ぜひとも総司令官宛の訓令を出していただき、これを中外に発表することに致したい」
小村が山県につめ寄っている。だが山県は黙して語らない。名案もなさそうだ。元考大臣連はいらいらしている。このとき山県は、チョッキのポケットから金側時計を出して「実は、わしは人に会う約束をしている。後は次長の長岡に頼む」と白い三角ひげをなでながら、逃げてしまった。
国家存亡のこの大事なときに、参謀総長が逃げ出すこと自体おかしい。元帥、侯爵、元首相という肩書をもつ元老のすることではない。
重臣たちは今度は長岡次長につめよった。
「よろしうございます。訓令を出させましょう」
元老はじめ大臣たちは、ほっと安心して帰りかけたが、小村外相は長岡に「外務省においては、既に準備ができていますから、直ぐ海外の使臣あて打電させますからご承知を……」といって、そのやせた身体を玄関に運んだ。

「百年に一人の戦略家」児玉源太郎大将の指示に、元老、政府首脳連は驚いて態度を一変させた。
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(607)日本国難史にみる『戦略思考の欠落』③「高杉晋作のインテリジェンスがなければ、明治維新も起きず、日本は中国、朝鮮の二の舞になっていたかも知れない」
日本リーダーパワー史(607) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落 …
-
-
日本リーダーパワー史(789)「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、リスク管理 、インテリジェンス⑥』★『この戸水寛人の日露戦争1年前に出版した『東亞旅行談』●『支那ハ困ッタ国デス 何処マデモ 亡國ノ兆ヲ帶ビテ居マス』★『もし日本の政治家が私の議論を用いず、兵力を用いることを止めて、ただ言論を以てロシアと争うつもりならば失敗に終る』
日本リーダーパワー史(789) 「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利 …
-
-
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など 外国紙は「日韓併合への道』をどう報道したか⑥ 「英タイムズ」<明治40年7月19日付>「朝鮮・ハーグ密使事件』
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など 外国紙が報道した「日韓併合への道 …
-
-
現代史の復習問題/記事再録/百歳学入門(84)大宰相・吉田茂(89歳)の政治健康法②「こんな面白くない<商売>をしていて、酒やタバコをとめられるか」★『総理大臣当時、いやな問題が起こると、血圧が20や30すぐにとび上がった。あるとき、気分が悪いので測ったら、最高230で最低が120もあった』
2013/11/05 百歳学入門( …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(52)記事再録/日本風狂人伝⑳日本最初の告別式である『中江兆民告別式』での大石正巳のあいさつ
『中江兆民告別式』での大石正巳のあいさつ …
-
-
日本メルダウン脱出法(636)「日本の政府債務は太平洋戦争末期に匹敵」「『安全策を取り、将来を危険にさらす欧州」など6本
日本メルダウン脱出法(636) 『本当のところ、どの程度危ないのか?日本の政府債 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(32)記事再録/ 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』⑧日中韓はなぜ誤解、対立,衝突を重ねて戦争までエスカレートさせたのか』★『<日中韓のパーセプション【認識】ギャップ、歴史コミュニケーションギャップ、文化摩擦が発火点といなった>』
2015/11 …
-
-
★新連載<片野 勧の戦後史レポート>①「戦争と平和」の戦後史(1945~1946)①『婦人参政権の獲得 ■平和なくして平等なし』(市川房枝の活躍)
「戦争と平和」の戦後史(1945~1946)① 片野 勧(フリージャーナリス …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(891)ー金正恩委員長からの会談を要請に飛びついたトランプ大統領、「蚊帳の外」に置かれた安倍首相、大喜びする文在寅韓国大統領のキツネとタヌキの四つ巴のだまし合い外交が始まる①
世界/日本リーダーパワー史(891)ー 平昌オリンピックは2月25日に閉幕したが …