前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『リーダーシップの日本近現代史』(141)再録★<提言>『教育改革に①「英語の第2国語化」②「プログラミング」③「世界旅行【海外体験)を取り入れる』

   

 

   

前坂俊之(ジャーナリスト)

教育改革に「英語の第2国語化」「プログラミング」「世界旅行』

「教育無償化」の論議が盛んである。

先の衆院選で各党は幼児教育の無償化、大学など授業料減免、奨学金の拡充などを一斉に公約に掲げた。これを受けて安倍首相は「2兆円規模の教育無償化政策を2019年10月の消費税率の10%へ引き上げの増収分から充てる」の方針を示した。

この「大学、高等教育無償化」は苦しい借金財政の中でのさらなる「ばらまき行政」、「天下の愚策」と批判する人が多い。

ちなみに、世界の中の「日本の大学」のレベルを比較すると、このところ低下の一途である。

 イギリスの高等教育専門誌「THE(Times HigherEducation)」の18年版世界大学ランキングでは1位はオックスフォード大、2位はケンブリッジ大、3位はスタンフォード大とカリフォルニア工科大で、トップ10はほぼ英米の大学が並ぶ。

アジアのトップは22位のシンガポール国立大、中国の北京大と清華大はそれぞれ27位、香港大が40位などで、なんと東大は46位、京大は74位の低位で日本の大学は前回調査より大幅に順位を下げた。「国際化」「外国教員数」「英語論文の数」「引用数」『資金力』などが劣っており、中国、アジアの大学に抜かれしまった。

このランキングは日本の国際競争力、1人当たりのGDP、IT競争力の低下と比例した『日本衰退カーブ』を反映していると思う。

日本の大学数は国公立私学を含め合計777校。その内、私立は600校と8割を超える。このうち、少子化による学生数の減少により私立、地方校などの3分の1が定員割れとなり、4割の私立大学赤字経営に転落している。

一方、2016年度の高校生の大学の進学率は56.8%、短大、専門学校の進学者も含めると約75%である。

無試験で入学できる大学が増えた結果、大学の一層の低レベル化が進み「Fランク大学」という『教育困難大学」が増加している。小中学生レベルの授業内容で寝ている学生も多く、まるで『幼稚園大』のひどさという。

もともと学校とは何か。

学校意味する英語のschool語源スコレー 」(scholē) で元来は「閑暇」「ひま」を意味する古代ギリシャ語古代ギリシアで自然哲学から始まるギリシャ哲学の形成に寄与した時間的な「ゆとり」で、精神活動や自己充実する時間で、やがて人々が集まって話を聞き討論しながら学習する場所の「学校」になった。

この「スコレー 」(自由時間)からソクラテス、プラトン、アリストテレスの哲学が生まれ西欧思想の源流をなした。

西欧では十七世紀に小学校に相当する普通学校が誕生し、十八世紀には小中の義務教育体制が確立した。 

日本の義務教育は200年以上遅れて1880年(明治13)にこの制度を導入した。西欧式の「考える、哲学する、科学的教育」とは180度異なり、考える授業ではなく、中国の科挙をまねた過去もの、答えのある問題の暗記詰め込み主義、偏差値教育、共通一次試験で、東大を頂点とする学歴優先(学力・実力ではない)システムの受験競争方式を文部省が完成した。

ここで大量生産された画一的なマニアル卒業生がサラリーマンとなって企業序列社会に学歴順に組み込まれて、日本の高度経済成長からバブル崩壊までの約30年間の『日本経済大国』「日本株式会社」への坂道を企業戦士となって登っていったのである。

日本の有名大学が世界で通用しなくなったのと同じく、バブル以降相次いだ政治の混乱と大企業の不祥事と信用失墜、リーダーシップの欠如は表裏一体である。日本の教育制度の失敗である。大学教育無償化によって赤字経営の私立大学を救済し、幼稚園大落生を増やすだけであろう。

天才やトップリーダーは学校で作りだせない、その逆である

西欧の3千年の教育の歴史の中での教訓は、天才やトップリーダーを学校で作りだせないということだ。

答えのある問題は解ける優等生は作れても、大発明や国の難題を解くトップリーダーになる天才は「貧乏」病気」「逆境」『修羅場』などの実体験とその克服の思考力、人間力から熟成される。

相対性原理の天才・アインシュタインは先生がサジを投げた最低の生徒だ。学校嫌いで、学校の教育方針に従わず、先生たちからひどい目にあった。(『天才の通信簿』1978年刊)

20世紀の最大の天才・トーマス・エジソンも小学2年生の時、先生から「きみの頭は空っぽだね」と叱られた。教室からとびだして家に戻り「もう学校は行かない」と母に泣きながら訴えた。小学校を退学しあとは母が教育して、一緒に本を読み仕事をしながら独学で『発明王』に成長した。

L2014年のノーベル物理学賞の中村修二(カルフォルニア大学教授)も四国の徳島大大学院卒、日亜化学工業(同県阿南市)には入り、金食い虫、奇人変人と仲間外れにされる逆境を克服「自分したいことだけをする」研究に没頭し、世界初のLEDの製品化に成功した。

いま義務・大学教育・社会教育に必要なのは①英語の第2国語化②プログラミング学習③世界を旅して地球を知るー教育の徹底であろう。 

 - 人物研究, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(488)アジアが世界の中心となる今こそ100年前の 大アジア主義者・犬養毅(木堂)から学ぼう

   日本リーダーパワー史(488)                       …

 『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座】㉞」★『120年前の日露戦争勝利の立役者は児玉源太郎、山本権兵衛』★児玉の電光石火の解決力と開戦へ

 児玉源太郎の電光石火の解決力と開戦へ 児玉は持ち前の馬力で山済みの難 …

『Z世代への昭和史・国難突破力講座⑮』★『松永の先見性が見事に当たり、神武景気、家電ブームへ「高度経済成長」へと驀進』★『92歳でアーノルド・トインビーの「歴史の研究(全24巻)」の日本語版を刊行』★『トインビーは松永翁を「織田信長、秀吉、家康を超えてた、昭和の一休禅師のような存在と激賞した』

2021/10/06  「日本史決定的瞬間講座⑫」記事再録再 …

no image
『Z世代のための日中韓外交史講座⑧』★『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉓ 西欧列強下の『中国,日本,朝鮮の対立と戦争』(上)(英タイムズ)」★『朝鮮争奪戦の内幕、西欧列強の砲艦外交、策略と陰謀と暗躍の外交裏面史」をえぐっており、「日中韓戦争史」を知る上では必読の記事』

  2015/01/01『日中韓150年戦争史』㉓記事再録編集 日中1 …

no image
速報(89)『日本のメルトダウン』 小出裕章情報2本『玄海原発の圧力容器の脆さ』『放射性物質を「無毒化」できない』

速報(89)『日本のメルトダウン』     ☆『玄 …

『オンライン/日本リーダーパワー史講座』★『明治維新から152年ーこの間に最高のリーダーシップを発揮した人物は一体誰でしょうか?、答えは「西郷隆盛」ではない、弟の西郷従道ですよ!ウソ、ほんとだよ』★『『バカなのか、利口なのか』『なんでもござれ大臣」「大馬鹿者」と(西郷隆盛は命名)『奇想天外』「貧乏徳利」(大隈重信いわく)』

 2015/01/01日本リーダーパワー史(512)記事再録 ★「フリ …

日本メルトダウン脱出法(626)「世界に衝撃を与えた南極トッテン氷河の溶解縮小」「グーグルは結局検索以外で稼げないのか」

日本メルトダウン脱出法(626)   ◎「世界に衝撃を与えた南極トッテ …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(338)-『昭和戦後宰相列伝の最大の怪物・田中角栄の功罪』ー「日本列島改造論』で日本を興し、金権政治で日本をつぶした』★『日本の政治風土の前近代性と政治報道の貧困が続き、日本政治の漂流から沈没が迫っている』

    2015/07/29 /日本リーダーパワー …

no image
『オンライン/75年目の終戦記念日/講座②』★『ガラパゴス国家・日本敗戦史②』150回連載の16回~30回まで』『日本の最も長い日(1945年 8月15日)をめぐる死闘―終戦和平か、徹底抗戦か①』 ★『終戦を死闘の末になんとか勝ち取った首相官邸と外務省』★『問題は「サブジェクト・ツー」の解釈』★『『大日本帝国最後の日 -かくして「聖断」は下った!』

      2017/07/09&nbs …

no image
★『緊急スーパー台風19号の進路速報!、神奈川県逗子から②』★『逗子市の高潮警報発令で、田越川周辺の住民に自主避難所を開設(動画)』★『台風19号、静岡か関東上陸へ=7都県に大雨特別警報-1人死亡、10人重軽傷 (10/12/pm16/)』

          &nbsp …