日本風狂人列伝(31) 日本奇人100選②大町桂月、岩元禎、松崎天民、佐々木蒙古王、田淵豊吉、伊藤晴雨・・・・
前坂 俊之(ジャーナリスト
父は、自分で自分を批評した。文士でもない。学者でもない。教育家でもない。まあそん革うし村夫子というのだろうと言った。私らが飢えなかったのは、ただ一本の筆の力に依ったのみであった。しかし、父は、単なる村夫子ではなかった。キリストに救われてたまるか、日蓮に助けられてたまるかと、土佐靴をそのままに、意気地を叫んだ」(大町芳文「父を懐う」中央公論一九二五・九)
で、カントやケーベル博士にならって、一生独身であった。鹿児島の藩士の家に生れ、西郷幕下の部将で城山で戦死された岩元恒成の甥に当る先生は、老母と姪御さんの三人暮しであった。その潔癖さはトイレが約二時間、着物を全部署換えて行かれる。入浴が約二時間。その上食物がやかましい。飯に蝿が一匹とまっても捨てさせられる。大の愛書家で、一切の本は本箱に立てないで風呂敷に包んで横に置かれる。本が傷むからである。そうして、
食い「ウマイ」とそのまま持っていく。店でも宣伝と心得てか怒りもせず、タバコをくれたり、驚くのは通行人ばかりだったらしい。しかも蔭では時々金を払ったというから要領の好い男である。大食と義眼では逸話も多いが、奇とするに足りない。一九三四年没、五十七歳。
め、一躍世に知られた。昭和初年には武州高尾山に庵室を構え、ケーブルカー設置に猛反対して工夫の一隊に襲撃されても屈しなかったが、ついに敗れ「宗教の山に遊覧地とはなにごとだ。大道も廃れた」と谷底に向けピストル一発、下山した。のち郷里に隠れ独身で一九四四年没、六十歳。
帰国してからは吊鐘マント、後には友人のお古や菜葉服を着て銀座を漫歩、友に会えば「カモ来ル」と連呼してコーヒー、酒をおごらせ狂っては再び古手拭に尺八、菅笠に日和下駄の姿で全国を流連、街頭漫才までやって酒代を稼ぎ、戦時中は配給物しか手に入らず栄養失調で一九四四年穀、五十九歳。蔵前札差の家に生れ、翻訳、著書多数。号陀仙。
丁未クラブを率して永井柳太郎、鶴見祐輔と張り合い、ドイツに留学しては二度も帰国を延期し(二回とも送別会には出席)七年後に帰朝。一九一七年以後、代議士五回の間には始終、羽織ヒモを忘れて登院、野次と大酒で名を売った。謝罪、謹責数知れず、除名問題も何度かあり、求婚広告を出したり宿代を踏倒しで告訴されたり、問題の男として終始したが一九四三年没、六十二歳。本名豊吉。
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