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世界/日本リーダーパワー史(955)ー米中間選挙(11/6)後のトランプ大統領の対外政策は一層エスカレートするのか(下)『米中冷戦下のサイバー戦争の勃発か』★『中東問題の新たな紛争の火種ーサウジのジャーナリスト殺人事件』

      2018/12/02

世界/日本リーダーパワー史(955)

米中貿易戦争の裏では情報、スパイ、プロパガンダ(シャープパワー)が進行中

米中サイバー戦争の勃発か

「もう1つ指摘すると、この新戦略のもとになったのは8月に米国議会をから提出された2019度の国防授権法(米政府が国防総省に対して予算権限を与える法律)で、この千ページを超える膨大な文書の多くは対中国政策です。

対米外国投資委員会(CFIUS)の権限強化(1701条)、リムパック(環太平洋合同演習)に中国を参加させない(1259条)、中国の情報通信設備等を政府調達から排除する(889条)1261条は「中国共産党による以下の諸活動について戦略的評価と対応策」で、「政治的影響力、情報操作、検閲、プロパガンダなど民主主義の制度と過程、言論と学問の自由を弱めるもの」を列挙し、そういった政治干渉や、研究開発に関わる諜報活動、重要技術をもつ米企業への経済手段を駆使したアクセス、サイバー攻撃を防ぐような措置を求めている内容です。

佐橋 亮・神奈川大学法学部教授『アメリカと中国(悪化するアメリカの対中認識)』https://www.tkfd.or.jp/research/uync9f/0kl0z

 

★「トランプ大統領の電話を中国側が盗聴していたと『ニューヨークタイムズ10月24日付』が報じたが、米国司法省は中国のハッカーや盗聴部隊、諜報機関のスパイ活動を防衛するために中国国営の新華社通信とCCTV(中国中央電視台)の国際放送部門CGTNは中国共産党の世界進出のためのプロパガンダ機関と認定し.9月に外国機関登録法に基づく登録を命じた。

同時に、中国軍の特殊機関と軍高官に対し資産凍結などの制裁を科した。中国人民解放軍の兵器管理と調達を担う共産党中央軍事委員会装備発展部とそのトップ、李尚福部長をその制裁対象に指定した。李は、中国軍の宇宙利用を担う戦略支援部隊の副司令官。習近平国家主席の側近だ。

すでに、8月にはトランプ米大統領が国防権限法にサインし、中国2大通信企業であるファーウェイとZTE(中国通信)の製品の米政府機関での利用を禁止したが、これも対中国情報戦争の一環ですね」

●「中国への軍事圧力としたもう1つ大きいのはトランプ大統領は10月20日、米国が旧ソ連との間で結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄したこと。ロシアが条約に違反しているのと同時に、同条約に加盟していない中国の戦力増強への対抗措置でもある。同条約では弾道・巡航ミサイルの開発や保有、配備を禁じているが、加盟していない中国は沖縄の嘉手納飛行場など太平洋地域の主要な米軍施設を攻撃できる弾道・巡航ミサイルを保有。ステルス戦闘機の開発を進め、南シナ海での中国の軍事基盤を拡張してきた。

米国はINF条約から脱退して、地上配備型の中距離弾道ミサイルを太平洋地域の島々に配備して中国に対抗する方針で、米中貿易戦争の裏では軍事戦争(ハードパワー)、情報、スパイ、プロパガンダ戦争(シャープパワー)が同時行中なのです」

中国版御用Googleをひそかに開発

◎「これに関連してもう1つの問題はグーグルが中国へ進出したいがために、中国当局の検閲体制に屈服して、中国当局の逆鱗にふれる禁止用語が検索できない中国版御用Googleをひそかに開発して、中国市場への再入を狙っているというスクープ記事(ニューズウイーク日本版、11月6日号)に出ていて、驚いたね。

この記事によると、10年前に中国の検閲体制を批判して、中国市場から締め出され撤退したGoogleが、今度は極秘裏に中国の検閲許可版Googleを開発して、すでに何回も中国当局にプレゼンテーションしながらパス寸前であるというからショッキングなニュース。言論の自由を守り、情報を無料で世界中に提供し、世界中の人々の情報格差をなくしていくという崇高なミッションを、金のために放棄するのは世界への裏切り行為ですね。」 

中東問題の新たな紛争の火種ーサウジのジャーナリスト殺人事件

★「サウジアラビアのジャーナリストがトルコの大使館で殺された事件は中東に激震が走った。そのサウジのジャーナリスト・カショギ氏の殺害を指令したとの疑惑がもたれているムハンマド・ビン・サルマン皇太子(32)の“今後”の去就が注目されている。ムハンマド皇太子の進退でサウジ、トルコ、イラン、イスラエル、アメリカなどの中東の勢力図ががらりと変わる。もし、サウジアラビアで内戦が起きて、シリアのようになれば、日本の石油輸入はストップし石油パニックが起きるでしょう。

トランプ大統領の娘婿でユダヤ系のクシュナー(元大統領上級顧問)は影の外務大臣として中東問題に取り組みムハンマド皇太子とも親密な関係を築き、イスラエル、サウジの提携を画策し、イランに対抗する戦略だったが、この事件ですっかり台無しとなった。トランプ素人外交の失敗です」

●「サウジは最大の石油産出国であり、今後の石油の動向と、トランプ大統領がイランとの「2015年の核合意」を破棄して、イランに石油輸出禁止経済制裁ををかけているだけに、何かあればい一触即発の危険な状況にあることは間違いない。偶発的な1発が怖いね」

◎「トランプ大統領は、事件の最初のころは事件の真相を明らかにせよとサウジに迫っていたが、その後は沈黙を守っている。サウジと米国は同盟関係になっており、アメリカの戦闘機などを何兆円も買ってくれてるムハンマド皇太子が娘婿のクシュナー氏と大変仲が良く、水面下でイスラエルとの協力関係を築いたこと 、対イラン強硬派であることなどなどで大変なお気に入りなのです、そのため殺人事件を「皇太子の愚行」と知りながら、何とか穏便に済ませたいと思ているのでしようね」

★「一方、トルコのエルドアン大統領はこれをチャンス到来とばかり、ムハンマド皇太子の責任追及、追い落としに力を入れている、事件について「サウジ政府の最高レベルから指示が出たのを知っている」と録音テープまで米側に提出し、情報をリークしてサウジ側に圧力をかけている。トルコ、イランとアラブ諸国が「共通の敵」としてのイスラエルに当たるという中東・イスラム世界の伝統的な構図の復活めざしており、中東での自らの影響力を強めようとする主導権争いです」

 

「日本は、石油輸出国機構(OPEC)の「盟主」ともされるサウジから、原油の3割以上を輸入する。米国のイラン産原油の禁輸措置を受け、さらにサウジ依存が強まるとみられる。石油化学に加え、娯楽や医療などの分野でも協力を進めており、ムハンマド皇太子の肝いりで、サウジの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は、運用額10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」に約5兆1000億円を出資することで合意しており、皇太子の今後の去就によっては、この計画は中止になる可能性もある。

また、イランは古くからの親日国で、世界の原油生産量では4位という原油輸出大国。日本の原油輸入量全体に占めるイラン産は5.5%(2017年度)まで縮小しているが、取引を続ける価値は高い。米政権のイラン制裁再開で先行きの不安が高まっている」

マクロン氏「悪魔が再び」とナショナリズムに懸念 

〇「第1次世界大戦終結100年の記念式典が10月11日、パリの凱旋門で開かれた。フランスのマクロン大統領は3800万人が犠牲となった悲惨な歴史を振り返り「古い悪魔が再度目覚めつつある。大戦後に誰もが平和を誓ったが、ナショナリズムや全体主義の高まりが2度目の大戦を生んだ。歴史は繰り返す。愛国主義はナショナリズムとは正反対の位置にあるものだ」と世界中で吹き荒れるナショナリズムとポピュリズム(大衆迎合)に強い懸念を示した。これに対し、出席したがトランプ氏はマクロン氏を「非常に侮辱的だ」と批判し、他国のトップと凱旋門での同道や会議には欠席した、という」

★「第一次大戦後のパリ講和会議では議長役のウイルソン米大統領が平和創設の国際機関として国際連盟の創設を提言し結成が決まった。ところが言い出しっぺの米国で議会で米国第一主義を唱えるトランプのような上院議員の反対などがあり承認されず、結局、アメリカは参加しなかった。日本は加盟国は42カ国中で、英国・フランス・イタリアとともに常任理事国となり、新渡戸稲造が事務次長になった。

しかし、最強は建国のアメリカ不在でグローバルガバナンス(国際統治)が発揮できず、20年後の第2次世界大戦につながった。孤立主義のアメリカは2度にわたって世界戦争に巻き込まれたが苦い経験から、第2次世界大戦後に国際連合を創設して、アメリカの富と、軍事力を世界平和維持のために気前よく提出し、世界の警察官となった。トランプはこの100年のアメリカの世界平和への貢献をぶち壊し、世界を再び「弱肉強食」のジャングルに戻そうとしている」

◎「安倍首相に今こそ国際主義・多国間主義の旗をマクロン氏とともに高く掲げて、世界をリードしてもらいたいね。100年前のパリ会議の日本代表団(西園寺公望代表)元首相(元老)は同会議ではほとんど発言せず「サイレントパートナー」と揶揄された。牧野伸顕元外相(吉田茂の義父)がアジア、アフリカなどを代弁して「人種差別撤廃法」を盛り込むように提案したが、あっさり否決された。安倍首相はサミットメンバーでは最古参となり、TPP、EPA(日EU経済連携協定(EPA)日EU経済連携協定(EPA)を締結し、自由貿易を守ってきた。今こそ、安倍首相の真価が問われるときです」

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