世界/日本リーダーパワー史(953)ー『米中間選挙後も、トランプの「孤立主義」「単独行動主義」の暴走は収まりそうにない』★『安倍首相はサミットメンバーではメルケルに次ぐ最古参で、TPP、EUとの経済連携協定(EPA)など自由貿易を守る旗手として今こそ、安倍首相のその真価が問われている』
2018/11/18
世界リーダーパワー史(953)
米中間選挙(11/6)は事前の予想通り、下院は民主党が8年ぶりに奪還し、上院は共和党がかろうじて死守した。
今後の米政局はこのねじれ現象で下院ではトランプ氏の弾劾訴迫が提議され、その公約は民主党の反対で、議会は一層混乱するであろう。しかし、トランプ大統領の対外政策の最終的な決定権は上院にあるため、その「孤立主義」「単独行動主義」の暴走は収まりそうにない。
「米中貿易戦争勃発か!?」とメディアが大騒ぎしていた9月30日に緊張の海・南シナ海のスプラトリー(南沙諸島)付近で「航行の自由作戦」を展開していた米ミサイル駆逐艦ディケーターに対して中国人民解放軍の駆逐艦が「出ていけ」と威嚇的な追尾を繰り返し、なんと41メートルまで急接近してあわや衝突寸前となった。
米艦は緊急、両舷停止して危機一髪で衝突を防いだ。海軍の常識では、非友好国の軍艦が2キロ以内に接近すれば、それはもう戦闘行為と考える。41㍍などという距離は常軌を逸している(海上自衛隊海将の話)」(ニューズウイーク日本版11月13日号)。
一触即発の軍事衝突になりかねない中国側の挑発に対して、 ペンス副大統領は10月4日にワシントンで、厳しく抗議し、これまでの「対中政策を180度見直す」長いスピーチを行った。
「歴代米国政府の対中国政策は間違っていた。米国は中国の世界貿易機関(WTO)への加盟を認めて、経済的に発展していけば、国民の政治的自由、人権尊重を拡大することを期待してきた。ところが、中国はむしろ独自の中華秩序、権威主義的な統治モデルを輸出して、独善的、覇権主義的な傾向を一層強めて、西欧側の期待は完全に裏切られた。
日本の施政下にある尖閣諸島周辺で中国海軍が巡回を定例化し、南シナ海の岩礁を埋め立て、対艦・対空ミサイルを配備した軍事基地を拡張している」と徹底批判した。
米中覇権争いは一層激しくなっているが、民主党が下院で多数を占めても対中強硬姿勢は変わらない。中国への警戒論は、民主党も共通しているからだ。こうした米中貿易戦争の背後では、ITの知的所有権、サイバー攻撃、通信網からの盗聴やスパイの熾烈な戦いが行なわれている。
トランプ大統領は10月20日、米国が旧ソ連との間で結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄した。ロシアが条約に違反しているのと同時に、同条約に加盟していない中国の戦力増強への対抗措置でもある。
同条約では弾道・巡航ミサイルの開発や保有、配備を禁じているが、加盟していない中国は沖縄の嘉手納飛行場など太平洋地域の主要な米軍施設を攻撃できる弾道・巡航ミサイルを保有。ステルス戦闘機の開発を進め、南シナ海での中国の軍事基盤を拡張してきた。
米国はINF条約から脱退して、地上配備型の中距離弾道ミサイルを太平洋地域の島々に配備して中国に対抗する方針で、米中貿易戦争の裏では軍事戦争(ハードパワー)、情報、スパイ、プロパガンダ戦争(シャープパワー)が同時進行行中なのである。
そんなおり、第1次世界大戦終結100年の記念式典が10月11日、パリの凱旋門で開かれた。
フランスのマクロン大統領は3700万人の犠牲者を出した大戦の歴史を振り返り「古い悪魔が再度目覚めつつある。大戦後に誰もが平和を誓ったが、ナショナリズムや全体主義の高まりが2度目の大戦を生んだ。歴史は繰り返す。愛国主義とナショナリズムは正反対の位置にある」とファシズムとポピュリズムに懸念を示したが、出席したトランプ氏はマクロン氏を「非常に侮辱的だ」と強く批判した。
第一次大戦のパリ講和会議ではウイルソン米大統領が平和を守る国際機関として国際連盟の創設を提言したが、米議会で「孤立主義」「米国第一主義」を唱えるトランプ的な上院議員などの反対により、国際連盟は誕生したもの結局、アメリカは参加しなかった。
このパリ会議へは有色人種国で唯一、日本は代表団(代表・西園寺公望元首相(元老)、牧野伸顕元外相(吉田茂の義父)、吉田茂、松岡洋右ら)を送り込んだ。しかし、同会義では日本はほとんど発言せず「サイレントパートナー」と揶揄された。ただ1つアジア、アフリカの非植民地国の声を代弁して「人種差別撤廃案」を提案したが、否決された。
発足した国際連盟事務次長には新渡戸稲造が選ばれた。最強国の米国の不参加でグローバルガバナンス(国際統治)が発揮できず、約20年後の第2次世界大戦につながった。他国の戦争に巻き込まれたくない米国の孤立主義は2度にわたって失敗した。
これを教訓に第2次世界大戦後、米国主導で国際連合を創設して、米国の圧倒的な富を軍事力を世界平和のために気前よく提出し、世界の守護神となった。ところが、トランプ氏はこの100年の米国の世界への貢献、平和をぶち壊し、世界を「弱肉強食」のジャングルの世界に再び戻そうとしている。
安倍首相はサミットメンバーではメルケルに次ぐ最古参の首相で、TPP、EUとの経済連携協定(EPA)などで、自由貿易を守る地球儀外交を展開してきた。今こそ、安倍首相の真価が問われる。
サイバーセキュリティー担当大臣にも関わらず「PCを触らない」「USBが何か知らない」日本の政治家に世界中が騒然
https://gigazine.net/news/20181116-japan-cyber-security-minister-sakurada/
関連記事
-
-
新刊刊行。『高校日本史に出てくる歴史有名人の裏話』(共著) 667円、新人物文庫
新刊です。『高校日本史に出てくる歴史有名人の裏話』(共著) 667円、新人物文庫 …
-
-
日本リーダーパワー史(423)『日中韓150年対立史⑨「ニューヨーク・タイムズ」は中国が 侵略という「台湾出兵」をどう報道したか②
日本リーダーパワー史(423) ―『各国新聞からみた東 …
-
-
日本リーダーパワー史(842)★『新刊「世界史を変えた『明治の奇跡』(インテリジェンスの父・川上操六のスパイ大作戦、海竜社 2200円+税)を出版』★『「明治大発展の国家参謀こそ川上操六』★『一大国民劇スペクタクル「日露戦争」は川上操六プロデューサー、児玉源太郎監督、主演は川上の薫陶をうけた情報参謀の福島安正、柴五郎、明石元二郎、海軍は山本権兵衛、東郷平八郎、秋山真之らオールキャスト』
日本リーダーパワー史(842) このほど、「世界史を変えた『明治の奇跡』(イン …
-
-
日本メルトダウン脱出法(615)●[1914年の欧州と2014年のアジア:類似点と相違点] 「燃料電池車と電気自動車、どちらが「真のエコカー」か」他6本
日本メルトダウン脱出法(615) [1914年の欧州と20 …
-
-
『オンライン動画/岩切徹(評論家)が斬る1970-80年の戦後芸能史講座①』★『美輪明宏こそ稀人、本物のアーティスト』★『「若大将』の加山雄三の苦労』★『落語界の天才・立川談志のイケメン』★『「007は二度死ぬ」でボンドガールとなった浜美枝』★『民間版の皇室アルバムの 吉永小百合の人気』→『以上は写真家・佐々木恵子氏の撮影』
この一連の写真は40年以上、週刊誌、雑誌で半世紀以上活躍中の佐々木恵子カメラマン …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(225)』<日馬富士暴行傷害事件の問題点>『急速な少子化、サッカー、野球などの他スポーツへの若者の傾斜、過酷な肉体労働の忌避など、乾坤一擲の策を講じても「日本人中心の相撲界」の将来性は相当厳しいのではと感じられます』
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(225)』 <F国際ビジ …
-
-
『鎌倉釣りバカ人生30年/回想動画録』㉓★『コロナパニックなど吹き飛ばせ』★『10年前の鎌倉沖は豊饒の海だった』★『めざせ!センテナリアン!鎌倉カヤック釣りバカ日記で、カワハギ大漁! 半パソコン半漁の仙人生活、カワハギ尽くしで 地産地消じゃ!
2012/10/24 <百歳学入門 …
-
-
宮本康昭氏(弁護士、元裁判官)が「戦後司法の転換点をふり返るー司法の危機から司法改革」の動画会見【100分】
日本記者クラブのシリーズ「戦後70年 語る・問う」⑬ で弁護士の宮 …
-
-
速報(407)『日本のメルトダウン』『景気認識が好転=「アベノミクス」効果か』『日経平均2万円超え長期繁栄の予兆=武者陵司氏』
速報(407)『日本のメルトダウン』 &n …