前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(157)『江戸を戦火から守った西郷隆盛と勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟の(三舟)の国難突破力①』

   

日本リーダーパワー史(157
 
『江戸を戦火から守った西郷隆盛と勝海舟、高橋泥舟、
山岡鉄舟の(三舟)の国難突破力①』

 前坂 俊之(ジャーナリスト)
6月2日の内閣不信任案の否決の後も、首相の退陣の時期をめぐって、永田町の混乱は一層ひどくなり、亡国の惨状を呈している。かつて「首相になった後は政治家を引退する」と公言した鳩山前首相は「ウソツキ、ペテン師」「男として、人間として、あるまじき態度」「国難を乗り切れない」と感情をあらわに、菅首相を最大級に罵倒する。
もう1人の影のボスの小沢は不信認案に賛成すると断言したのに、本会議には棄権し、その夜は派閥の子分をつれてカラオケバーで、慰労のパーティーで気楽に遊ぶ。
真面目に働いて税金を払っている国民、大震災、原発の被害者からみると怒り心頭どころではない。この痴的レベルの政治屋集団(民主党)である。
自民党(自分党)の政策も政治力もないないづくしの無能議員たちも国難(敗戦)を倒閣のチャンスとしている亡国の政治屋に変わりはない。
まさに、【売家と唐様で書く三代目】(初代が苦労して作った家屋敷も、 3代目となると売りに出すことになる)である。日本の国家倒産はカウントダウンに入った。
残念ながら、この連中には「国難を突破するインテリジェンス」も「突破力」も「胆力」もありはしない。
 
 
 
 西郷南洲(隆盛)は、「大西郷遺訓」で、こう言っている。
 
『変事(国難)がにわかに起こった時に、少しも動揺せずして、その変に応ずるものは、事の起こらぬ前に、しかと心に決するところがなくてはならぬ。しかして一朝変起こらば、ただそれに応ずるだけのことにいたさねばならぬ。』
 
古人いわく、『大丈夫の胸中は、「々落々(しょうしょらくらく)、光風霽月(せいげつ)の如く、その自然に任す。何ぞ一毫の心を動かすものあらんや」と、こういう覚悟さえあるならば、変に逢うて、動揺するはずはない」
現代訳すれば、こうである。
 
古人いわく、『大丈夫(りっぱな男子)の胸中は、「々落々(しょうしょらくらく)・雨や風の音などがもの寂しいさま」。光風霽月(せいげつ)・雨が上がったあとの月。転じて、曇りがなくさっぱりとした心境」の如く、その自然に任す。何ぞ一毫(いちごう)1本の細い毛ほど』の心を動かすものあらんや」と、こういう覚悟さえあるならば、変に逢うて、動揺するはずはない
これは、翁が薩人・岸艮真二郎に教えたところである。
 
 付焼刃は、すぐに剥がれる。
 
勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟の『幕末三舟』の巨人を点検するに、彼らは禍乱のうちに、突如として現出したる風雲児である。しかし、南洲翁がいうが如く、事の起こる以前において、大丈夫の心田を培うことを忘れなかった。
もしこれがなければ、大難局を収拾することができたであろうか。海舟の神、泥舟の気、鉄舟の力。これみな平生無事の際において養成したるところ、しかして一朝有事の際において発揮した。
 
 
日本丸は、無事に航海をつづけているのじゃない。いつ嵐に出会うかわからぬ。
 
このとき、船長となり、機関長となるものは、何人であるかは知らぬが、三舟の行蔵趨舎(こうぞうすうしや)(行蔵】: 進んで世に出て手腕を振るうことと、隠れて世に出ないこと。 … しゅしゃ【趣舎/趨舎】: 進むことと止まること。進退のこと)によって、この危局に善処し、船を転覆せてはなるまい。それには、なによりも次代に三舟の風神を伝えることが談じて必要じゃ。ことに、彼らが平生いかなる用意のもとに、人物をつくりあげたか、その1点を明らかにすることが緊要だと考えた。(頭山満『幕末三舟伝』(講談社、昭和五年)
 
明治維新と関東大震災の比較
 
明治維新では西郷隆盛と勝海舟の話合いによって、官軍が江戸城を攻撃し、東京が戦場になるかどうかの最後の交渉は、平和裏に解決し、江戸城の無血開城がきまり、江戸は戦火を免れた。西郷、勝海舟は明治維新を少ない流血によって達成した日本の大恩人であり、近代のリーダーでは最も傑出している。
 
◎明治元年三月十三日(幕末・江戸城攻撃中止命令)
●大正十二年九月一日(関東大震災)
 
この両日は、東京市民の心奥に刻みつけておかねばならない。すなわち前者は、
西郷南洲、勝海舟両人の会見した当日であって、江戸攻撃中止の命令が下ったのだ。後者はいうまでもなく、関東大震火災当日だ。1は戦火を防ぐことをえ、他は天火を防ぎえなかった思い出の日である。
わが東京を火の海から救い出した三巨人の遺霊に対して、深く感謝する必要がある。
 
三舟の修養
 
 幕臣中に、三舟あり。官軍中に南洲の如き大器あり。相いまって初めて時局を収拾し、外圧をふせぐことができたので、もし凡人庸才が、この活舞台に登場したとすれば、維新の終局は、あれほど円満な解決をつげずして、いっそう混乱したかもしれない。三舟の立場にしても、まったく容易でなかった。主家の安全を期し庶民の困苦を救い、すすんで尊王の至誠を披涯しようとしても、周囲の守旧派がこれを遮っている。この際、一死を賭して、自刃の間を往来した態度は、尋常人の企て及ぶべきところでない。(『幕末三舟伝』)
 
 
時代が英雄をつくるというが、活躍すべき時に出会っても十分に腕をふるいうるだけの修養ができておらなかったら、これに善処することはむつかしい。だから平生の修養が、まずもって大切である。
 
 
剣禅一致の猛修行である
 
勝が精神修養し、修羅場でも『生死を超越して』活躍できたのも剣と座禅の修養のたまものであった。
 
『剣道の力と、坐禅の功とは、後年、大いにためになった。幕府瓦解の時分、万死の境を出入して、ついに一生を全うしたのは、この修養のお蔭であった。あの時分、たくさんの刺客に脅かされたが、いつも手取りにした。おこがましいが、この勇気と胆力は、これによって養われている』
 
 海舟は、京都でも、よく刺客にねらわれた。一日、四条通を通過の際、覆面の奴が物蔭から銃口で狙っている。彼は、素早く見て取ったが、敵はまさに引き金を引こうとしている、間一髪である。
 
海舟は平気で、そやつの前にぬっと立って、
『それでは、オレの体は射てんぞ。まるで照準がはずれておるが……』
 冷やかに、こう浴びせかけた。
 この一言に、度胆をぬかれて、刺客は逃げうせた。なんでもないことのようであるが、この芸当は、胆がすわっておらぬとできるものでない。
 
 幕府瓦解の際、いつ自刃のもとに、倒れるかわからなかったような場合にも、彼は護衛をつけなかった。どこへでも単独で出かけて行った。彼の家には、乱暴者が押しかけたが、壮士は一人もおらず、女子供がいるばかり。いざという時になっては、虚心坦懐、事にあたってさわがず、焦らず、死中、活を求めたところは、禅機の妙用を体得していた。(『幕末三舟伝』)

高橋泥舟は槍の名人である

泥舟の兄、号は静山で非常な達人であったばかりか、立派な人格者であった。平生、二尺足らずの木刀を帯びていたが、その木刀の片方には『人の短をいうなかれ、己の長を説くなかれ』と記し、裏の片方には、『人に施して慎んで念とするなかれ。施を受けて慎んで忘れるなかれ』と刻んであったという、
 
 その山岡静山はいうてる。
『人、戒むべきは、驕傲(きょうごう)である。一心に入れば、百芸皆廃す』
 これは、武道家ばかりじゃない。いかなる職業の者も、同じだ。ところが、芸が未熟なうちは、少しばかり名が出ると、俺は天下一だと自惚れくさる。この自惚れが出るときは、もうおしまいだ』
 
 
 
 
 

 - 人物研究 , , , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための生き方死に方講座』★『生死一如ー 鈴木大拙師(96歳)の老生学』★『今日から明日へ、今年から来年へと、将来に希望をかけることが私の九十三歳の健康法だ』●『特別に健康のことを考えて暮らすわけではないが、過去のことは考えんな。いつも未来のことを考えておる。あれをしなくてはならぬ、これをしなくてはならぬとな』

2017/03/30   百歳学入門(171)-「 …

no image
日本リーダーパワー史(584)「エディー・ジョーンズ・ラグビー日本代表HCの<世界に勝つためのチームづくり>日本ラグビー界は「規律を守らせ、従順にさせる練習をしている」●「選手のマインドセット(心構え)し、自分の強みを把握して最大限に生かすこと」

  日本リーダーパワー史(584)  エディー・ジョーンズの必勝法ー …

no image
★『リーダーシップの日本近現代史』(77)記事再録/ 『 朝鮮宮廷(政府)の「親清派(事大党)対「朝鮮独立党(日本派)」 の争いが日清戦争へ発展!,50年後の太平洋戦争への遠因ともなった』

 2015年7月11日/終戦70年・日本敗戦史(108) <歴史とは現 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史]』(19 )記事再録/『韓国併合』(1910年)を外国新聞はどう報道したか①』<『北朝鮮問題』を考える参考記事>

      2012/01/01&nbs …

真紅の夕焼けの鎌倉湾に黒影の絶景の富士山が浮かぶ、カヤックが2隻(2023年5月9日午後6時ー材木座海岸より撮影

真紅の夕焼けの鎌倉湾に黒影の絶景の富士山が浮かぶ、カヤックが2隻(2023年5月 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(308)★関 牧翁の言葉「よく生きることは、よく死ぬこと」★『一休さんの遣偈は勇ましい』★『明治の三舟とよばれた勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟の坐禅』

関 牧翁のことば「よく生きることは、よく死ぬこと」 関牧翁(せき ぼくおう、19 …

『オンライン講座・日本戦争外交史➂』★『日露戦争・樺太占領作戦①―戦争で勝って外交で敗れた日本』★『早くから樺太攻略を説いていた陸軍参謀本部・長岡外史次長』★『樺太、カムチャッカまで占領しておれば北方問題など起きなかった?』

★′日露戦争・樺太攻撃占領作戦 ルーズベルト米大統領も勧めた樺太占領作戦は日露の …

no image
日本リーダーパワー史(833)(人気記事再録)『明治維新150年』★『日露戦争勝利の秘密、ルーズベルト米大統領をいかに説得したかー 金子堅太郎の最強のインテジェンス(intelligence )⑤』★『ルーズベルト大統領は「旅順陥落」に大喜びー 黙っていると”Silence is Consent”(同意した) とみる。どしどし反論せよ』★『  日本は半面はサムライ、半面は文明の国民だから強い』●『黄禍論と戦う、旅順の戦闘、日本海海戦の大勝利』★『旅順陥落―ル大統領は大喜び 』

<日本最強の外交官・金子堅太郎⑤> ―「坂の上の雲の真実」ー 『ルーズベルト大統 …

no image
世界リーダーパワー史(943)トランプ対習近平の『仁義なき戦い」★『米中貿易戦争から、いよいよ全面対決の「米中冷戦時代」へ突入か

世界リーダーパワー史(943) 米中貿易戦争から、いよいよ全面対決の「中冷戦時代 …

Z世代のための100歳学講座』近藤康男(106歳)の「七十歳は一生の節目」「活到老 学到老」(年をとっても活発に生きよ 老齢になるまで学べ)』★『簡単な健康法を続ける。簡単で効果のあるものでなくては続けられない。大切な点は継続すること。★『驚異の106歳を達成した毎晩、全身を10分間「ぐっすり熟睡できる指圧法」を一挙大公開!

   2018/07/21百歳学入門(237) 『リーダーシ …