日本リーダーパワー史(874)『日中韓、北朝鮮の関係はなぜ、かくも長くギグシャクともめ続けるのか➀』★『130年前の朝鮮をめぐる日中の対立・戦争が今回の件も含めてすべての根源にある』★『憲政の神様・尾崎行雄の名解説「本邦の朝鮮に対して施すべき 政策を諭ず」を読む』★『日本公使館を焼き打ちした壬午軍乱の賠償金40万円(現在の金に換算して約5兆8千億円)を朝鮮発展のために還付した日本政府の大英断』
2018/02/15
日本リーダーパワー史(874)
平昌オリンピックを前に日本と韓国、北朝鮮、中国の関係が再び揺れている。
南北合同チームの出場は決定したが、北の美女応援団の人数をめぐってひと悶着あり、韓国側が金正恩のポスター写真を焼いたことに反発して、五輪不参加をにおわせるなど、いつものすったもんだの、かけ引きが続いている。
一方、慰安婦問題をめぐる日韓合意に対して、韓国の文在寅大統領は日韓合意を反故にする「新方針」を示した。また、韓国の鄭鉉栢女性家族相は23日、2015年の日韓合意に基づき設立された「和解・癒やし財団」の、年内の解散を望む考えを明らかにした。
これに対して、日本側の菅官房長官は「今までも韓国はゴールポストが動かしてきた。日韓合意は国と国の約束だ。1ミリも動かさない」と激怒し、安倍首相も「受け入れることはできない」と断固抗議するとの姿勢で、平昌五輪の開会式出席を拒否する態度を示した。
ところが、これには自民党内、公明党などから出席を求める声が相次ぎ、24日に一転して安倍首相は出席を決めるなど、2転3転の外交駆け引きが続いている。
一方、このところ雪解けがみられる日中外交では,今春までに日中韓の首脳会議開催を東京で行いたい意向で、日本側が両国に強く働きかけている。そんな中で、1月11日、中国の原子力潜水艦と中国海軍の艦艇、尖閣周辺の接続水域に進入するという事件が起きた。
政府は11日、潜水艦と中国海軍の艦艇が尖閣諸島(沖縄県)周辺の日本の接続水域に入ったと発表、日本側は「重大な懸念」を表明するとともに、中国側が日中関係改善の流れを阻害しないよう要求した。
日中間では外務、防衛、海上保安当局などが一体となった「高級事務レベル海洋協議」を上海で12月に会合を開き、東シナ海での偶発的な衝突を防ぐ防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の構築と早期運用の話し合いを続けており、この件に影響しないように対応している。
一触即発の米朝戦争はオリンピック中は軍事訓練その他は控えるということで、ひとまず休戦状態だが、以上の日中韓、北朝鮮の東アジア情勢の緊迫度は低下していない。
「なぜ、こんなに長い間、日中韓、北朝鮮」の関係はギグ癪、もめ続けるのか」は私の一貫して研究テーマとなり、その原因をいろいろ考えて、過去の論説を読んできた。
今年は明治維新から150年だが、これまでなんどか目を通している「憲政の神様」尾崎行雄全集の『朝鮮編』の論説を読んで改めて啓発された。130年前の朝鮮をめぐる日中の対立が今回の件も含めてすべての根源にあることをあらためて再認識したのである。
飼いとは1882年(明治15)7月23日のソウルにあった日本公使館への焼き討ち、在留邦人殺害の暴動事件だが
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%AC%E5%8D%88%E8%BB%8D%E4%B9%B1
尾崎は福沢諭吉の弟子だが、明治15年(1882年)報知新聞の論説委員となり、立憲改進党(大隈重信)に参加し、朝鮮独立の論説を書き続けていた。
その1つが次に紹介する「本邦の朝鮮に対して施すべき政策を諭ず」である。
この長文の論説では現在起きている東アジアの➀台湾問題②南シナ海、東シナ海領海問題③朝鮮問題のすべての論点が含まれ、当時の明治外交、東アジア戦略が論じられて、括目すべき論説である。
明治17年12月「本邦の朝鮮に対して施すべき
政策を諭ず」(報知新聞掲載)
支那、(中国)朝鮮は、地政学的、歴史からみても日本とはお隣同士の唇歯輔車(しんしほしゃ/一方がだめになると、他方もだめになってしまうような、お互いが助け合うことによって成り立つ関係のたとえ。もちつもたれつの関係をいう)の国である。
支那にしても真誠(いつわりやごまかしのないこと。まこと。真実。国会のある国)の政治を施し、その国力を養成すれば、一朝、欧米諸国と事(紛争、戦争)があると、われわれと共に東海(東アジア)を扼守 (やくしゅ、要所をおさえて守ること、防衛すること)し、欧米諸国の戦艦を、一歩も台湾以内にはいることができないようにできる。
ところが、清国(中国)は政府も、人民も腐敗して、その独立さえ維持することが出来ない悲境に沈んでいる。
私がもしその支那の内情を詳しく知らず、支那を助けて共にアジアの大計を立てようとする妄念(誤った思いから生じる執念。妄執)を抱けば、他日必ず痛悔(つうかい、 大変に悔やむこと。非常に後悔すること)になるであろう。
現に、清仏戦争<1883(明治)年8月と1885年4月にかけて起きた、ベトナム(越南)領有を巡るフランスと清との間の戦争>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E4%BB%8F%E6%88%A6%E4%BA%89
の勃発により、清宮廷は事毎に破綻を現わし、台湾の如きも、まさにフランスの侵略、植民地になろうとしていた。
もし、フランスが台湾を今日に略奪,領有すれば、他の欧洲諸国も必ずこの地を争奪するであろう。
清国が東アジアの関門たる台湾を保守維持する能力があるかどうかは識者もわからない。ただし、台湾が他国の保有することになれば、日本が琉球諸島を保有することも極めて難しくなり、外交上で紛争があれば、たちまち外国に略奪される危険もある。
かりに日本が琉球諸島を保有することができても、東海(東アジア)を扼守 して、欧米諸国の軍艦が縦横にここに侵入してくると、これを防ぐことはできない。そうなれば東アジア(中国、日本、朝鮮)は遠からずフランス、英国の植民地となることであろう。
この時にあたって、日本の独立を維持し、わが水師(海軍)を全うする戦略はただ、朝鮮を助けて充分、その独立を保持できる地位を達成し、これと共に日本海の開門たる対馬の東西海峡を扼して、有事の日に備えて、外国の戦艦を一歩も日本海に入れないようにすることだ。
ところが、現在の朝鮮の情勢を案ずるに、その民度はまだ開けず、その経済力も未だ豊かならず、その兵力も未だ弱体である。一旦、朝鮮が外国との紛争となれば、その独立を保持することは極めて難しい。
故に、私の考えでは第2の台湾たる対島を扼して、雄を日本海に称せんすれば、先づ朝鮮と提携、誘導して、その独立を保持する地位に進展させることが必要と思う。
先づ、朝鮮の日本への猜疑心を解きほぐし、その歓心を博する戦略を立たなければならない。
その戦略とは何か。
今回、わが政府が朝鮮政府より受けとるべき償金の残余、四十万円を朝鮮政府に還付、贈呈することは、その猜疑心を除く一つの方法なり。
この風説(ニュース)を聞いて、直ちにこれを論評する軽挙を戒めて筆を止めて今日に至れるに、一昨六日の官報でこの風説が真実なることがわかり、その外報欄内において朝鮮国填補金返遠に係る照合、及び回答の全文を読むことができた。
私はこの報告を得て、大変喜ぶと同時に政府に向かって朝鮮のために、これだけにとどまらずさらに尽くすことを希望する。
『各国新聞からみた東アジア日中韓150年対立史①』
http://www.maesaka-toshiyuki.com/war/1511.html
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131年前の日韓第一次戦争(1882年の京城事変、壬午軍乱)の日本側の「郵便報知」『朝日』の報道内容②http://www.maesaka-toshiyuki.com/war/1508.html
『中国紙『申報』が報道した『明治日本』―『朝鮮対策(上)朝鮮の壬午事変で、日本をどうなだめるか』(明治15年8月)❸
http://www.maesaka-toshiyuki.com/war/418.html
回顧すれば、一昨年の明治15年7月22日に朝鮮の頑固党(大院君の保守派)が蜂起して日本公使館に放火して、わが居留人民の多数を殺傷した。このため、日朝関係は大変、不穏な形勢となったが、談判の末路に条約を結んで、今後の紛争を避けることとなった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%AC%E5%8D%88%E8%BB%8D%E4%B9%B1
その第二条には「朝鮮政府は相常の礼を以て被害者を葬り、その遺族扶持のため5万円を払うこと」
第三条には「朝鮮政府は、我邦人民のために生じた費用を賠償するがため、五十万円を毎年十万円まで年賦にして払うこと」
被害者の遺族扶持料五万円は、当時これを領収し、五年賦(分割)で受けとるべき損害費用賠償金五十万円の内、十万円もすでに領収しているが、朝鮮政府は財政困難であり、毎年十万円を支払うことはできなかった。また、わが日本政府も曲げてこの支払いを猶予する態度だったので、朝鮮政府は今日になっても弁償しておらず、その未払い額は40万円に達している。
日本政府が今回、朝鮮政府に還贈することになったのはこの40万円である。
(コメントーこの40万円という金額が現在の貨幣価値に直すと、実に6兆円弱なのには驚く、この計算は明治平成値段史に掲載された明治15年の国家予算が6300万円であり、これの40万円では0,006%である。平成27年度の国家予算は約97兆円なので5兆8千億円ということになる)http://sirakawa.b.la9.jp/Coin/J077.htm
わが公使が還贈する照会書の中に明治天皇の次の1文がる。
「朕、深く大朝鮮国 大君主、宇内(世界)の大勢を察し、制度を更革し政教を作新し、肝励精以て開明の治を図るを喜び、茲(ここ)に填補金50万円の内40万円をもって朝鮮国に還迭す、望らくはこれを以て、凡そ開明の用に資するに碑補(ひほ、記念碑の塗りつぶし)せんことを。汝往きてこれを伝えよ」と。
又、朝鮮国督餅交渉通商事務金氏は照復書中に次のようにいっている。
「本大臣、業に我が君主の填補還送の1事、深く大日本国 犬皇帝、誠を友邦に推すの至意に感ず」と。
又日く、「本大臣諭を奉ずるの下、欣喜に勝へず、茲に来文を以て遍く我政府諸大臣に告げたるに、同声讃嘆せざるはなし。庶幾くば此の厚誼に托し、日月邁征し共に到隆に帰らん、これ区々の望なり云々」
この数語について、私は特筆大書して、我が皇帝(明治天皇)・友邦(日本)に対する至意を天下に表章し、朝鮮政府、人民は長くこれを忘れないことを望む。
つづく
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