前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

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『観光立国・日本』ー『2020年には外国人旅行者4000万人、その消費額8兆円の目標に一歩近づいた』★『日本観光のメリットは『世界一の多様性に富んだ自然環境(デービッド・アトキンソン氏)』●『観光の語源とは「国の光を観る」こと』★『伊藤博文は100年前に日本の地理学的、自然的な特徴から世界的な観光地になれる『観光立国論』を提言』

   

    観光とは「国の光を観ること          

今年は国際観光年に当たり、政府は成長戦略の柱の1つとして、「観光大国」「観光産業の育成」に官民一体で取り組んでいる。その結果、観光産業は昨年度3兆7406億円の規模に成長、今や自動車や化学製品に次ぐ輸出産業に発展した。

  • 世界最大級の観光の祭典『ツーリズムEXPOジャパン2017(9/22-24)』が東京ビッグサイトで開催されたが、世界140カ国全国の自治体企業・団体1,181社が出展し、総入場者数は185,844人にのぼる大盛況であった。

そのせいもあってか、観光庁の9月20日の発表では、訪日外国人旅行者は、今年1月から今月15日までで2000万人を突破した。年間で過去最高の2404万人だった去年よりも、45日早い過去最速のペースという。これで2020年には外国人旅行者4000万人、その消費額8兆円の目標に一歩近づいた。

各国別の訪日外国人数(2016年度)をみてみると、1位は中国(637万人)、2位は韓国(509万人)、3位は台湾(417万人)、4位は香港(184万人)、5位は米国(124万人)の順。

 

今年4~6月に日本を訪れた外国人の中で、1人当たり最もおカネを使ったのは、中国人ではなく、英国人だった。英国人1人当たりの支出額は、25万円。2位はイタリア人(23万円)、中国人(22万円)の順で、ひところの中国人観光客の『爆買い』は影を潜めている。

観光とは一体何か。もともと、日本では観光を『物見遊山』『温泉旅行』『買い物旅行』と理解している向きが多い。本来の観光の意味、語源については、こういう話がある。

今から二千数百年前の中国の戦国時代(BC403年-221年)宋・斉・梁・陳の4つの王朝が江南地方を支配していた。南北朝時代末期に隋は陳を滅ぼし天下を統一した。その陳の国王は属公、王子が敬仲といった。

ある時、周の都から、占いの大臣が来たので、敬仲は自らの将来を占ってもらった。すると「国の光を観よ」という。

敬仲に対して「他国を旅行して、各国の制度、文化、生活の光を観るがよい。そのすぐれた制度や文物を採り入れ、自国を改革すれば、国の興隆は間違いない」とその大官は説いた。

この言に従い、敬仲はただちに諸国へ「観光」の旅にでて視察を続け、国王となり明君として徳政を施したと言われる。

つまり、『観光』とは他国の美点を観察し、研究をすることをいうのである。奈良、平安時代の「遣隋使」「遣唐使」は、この『観光』による国外留学、国外研究、海外視察であった。

 

『平民宰相』原敬はこの「観光」の意味をよく理解していた。自らも外交官としてフランス公使館に駐在、明治31年(1898)には大阪毎日新聞(現毎日)社長に就任した。大正10年、原敬首相の時代に皇太子(昭和天皇)に欧州観光旅行を勧めて、断行した。周囲は猛反対し、特に枢密院から強烈な反対が起きた。

しかし、当時の日本は国際連盟の常任理事国で、新渡戸稲造が事務局次長(実質的な事務総長)をつとめており、将来元首となるべき皇太子はヨーロッパを知っておかねばならぬという帝王学の一環であった。

原首相は「万一、旅行中に、異変があれば、直ちに自匁して、罪を天下に謝す」との遺書を認めて、大反対の中で皇太子を半年間の欧州親善旅行に送り出した。。

さて、話を戻す。

『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』『新・観光立国論』などの著者・デービッド・アトキンソン氏は「日本政府観光局」特別顧問として大活躍している。日本は観光客への『おもてなし』のサービスとか「日本文化や日本食」をアピールしているが、それに異を唱えて、欧米人へのアピールは『世界一の多様性に富んだ自然環境』だと唱えている。

日本最強の観光資源は「自然」であり、「観光大国」というのは、自然・気候・文化・食という4条件を満たしている国のことで、客層の幅が広い長期滞在の観光客が来日するという。

日本の「自然」は、世界がうらやむほどの多様性に満ちており、日本はそれを活かしておらず、宝ももちぐされ』とも指摘している。

このアトキンソン氏と同じ発想を、なんと100年以上前に伊藤博文初代総理大臣は力説している。

その豊富な海外旅行体験じて伊藤博文は日本の地理学的、自然的な特徴から世界的な観光地になれる『観光立国論』を唱えているのだ。

昭和11年版『伊藤博文直話』(千倉書房)=2010年、復刻・新人物文庫収録)の中の伊藤は講演『名所古墳の保存』で次のように話している。

  • 外国人は日本を世界に比類なき名所として見物にくる。大きな風景は、西欧にもその他の大陸にもたくさんあるが、日本の風景は小さい区域に美しい風景が詰まっている『箱庭的な美』である。
  • 西欧からの観光客はいずれも裕福で、家族旅行、友達連れの大勢の旅行者なので、長期にわたって滞在周遊し、多くの金を使う。
  • 旅行ビザの問題、制限はしないほうがよい。
  • ホテルでの外国人の扱いは簡単。ただ親切に、何事も騙さず、信用を得えればよい。
  • 異文化への寛容な心をもつこと。
  • 自分の国に金を落とさせる仕組みを考えること。
  • 結論として、日本は温帯湿潤気候で四季があり、海、山、森の自然環境に恵まれ空気も水もきれい。さらに独自の古い文化、神社仏閣もある。この天然、自然の風景、文化で」金を余計に儲けることが出来る国である-というのである。なるほど、伊藤博文の目からウロコの卓説である。

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