前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(801)ー『明治裏面史』★ 『「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス⑰杉山茂丸の『伊藤博文を日露戦争開戦の死者第一号にする』

      2017/05/04

 日本リーダーパワー史(801)ー『明治裏面史』★

『 「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、

リスク管理 、インテリジェンス⑰

杉山茂丸の『伊藤を日露戦争開戦の死者第一号にする』

杉山其日庵(茂丸)著『山県元帥』(博文館 1925年)追録四六六貢以下に、「正真正銘真実である」として、その内幕を書いている。

 『杉山は、桂に辞表を提出して葉山に引籠りをすすめて、桂もその通り実行してしまったが、それからは、さてどうしてよいか、皆目、見当がつかなかった。思案にくれてやや自棄気味になった杉山は、一夜、一杯飲んで、歌舞伎座へ立寄った。

芝居を見る気もなく、舞台も見ずに、ひっくりかえって天井を見つめて、あれやこれやと思案にふけっていた。そのうち、舞台がすこぶるやかましくなり、笛、太鼓も加わって何だか始まったらしいので、やおら身体を起して舞台を見ると、奴(やっこ)を踊っていた五代目菊五郎が、見る見る奴凧(奴だこ)になって、踊りながら天井に釣上っていった。

はたと妙案がうかんだ杉山は児玉のところへ飛んで行って話した。伊藤を奴凧にしようというのである』

『児玉もこれは妙案とばかり、直ちに実行に移して工作した結果、伊藤を枢密院議長という雲の上にまつり上げて、政友会からも手をひかせることになった。元老たちの取まとめは、山県が当ることになり、松方、大山、井上らに山県の案として出したところ、一も二もなく賛成した。

一方、猫の首に鈴をつける役を引受けた杉山は、伊藤を訪れて、その面前で、伊藤に枢密院議長受命の「承り書」を書かせた。伊藤は、それでは、政友会総裁の後任は誰にしようかと相談したので、杉山は西園寺公を推したところ、伊藤はすぐ西園寺を呼びにやり、これで西園寺の総裁就任の段取りが決まった。

そこで山県が参内して、あらかじめこのことを上奏し、七月六日には、あらためて、山県、松方がお召しを受けて御諮諭になり、伊藤の枢密院議長就任につき奏上し、天皇は二人に、桂慰留を命じられた。

同日、天皇は伊藤を召し、内外時局につきいろいろ諮諭された後、枢密院議長親任の勅語御書付を与えられた。伊藤は暫時熟考の余裕を請うて退出した。」という。

『明治国家の参謀役、モグラ』として、山県、児玉の影の走り回った杉山は伊藤のリーダーシップとその人格について『伊藤の「光風霽月」【こうふうせいげつ】=心がさっぱりと澄み切ってわだかまりがなく、さわやかなことの形容。日の光の中を吹き渡るさわやかな風と、雨上がりの澄み切った空の月の意から。また、世の中がよく治まっていることの形容に用いられることもある』と手ばなしで賞賛している。

伊藤のそのあっさりした性格は、こうまでされても、自分が同意して一たび決まった以上、それに従うのみならず、進んで協力するのは、余人のまねのできることではないと感歎する。この性格をのみこんで交渉、説得する『杉山は、まさに魔人というべきであろう』とも、一又は書いている。

 

明治期において伊藤博文への評価は決して高くない。

『鹿鳴館外交』『軟弱外交』『恐露派』『腰抜け外交』『平和主義者』『好色宰相』など、散々だが、宰相として、元老としてのこの清濁飲む「さっぱりとした性格」が明治発展のキーポイントの1つになったことは間違いない。

 伊藤と山県とは同じ長州で吉田松陰の『松下村塾』での幼馴染であるが、明治の二大元老に上り詰めた。政治的な意見は正反対であり、しばしば感情的な対立もあった。しかし、さすがに国家の大局を誤るようなことはなかった。

この場合も全く同じで山県は、「君が枢府議長になったら自分もまた枢府に入って、国家のために鈍馬に鞭打積もりだ」と言って、伊藤を動かした。伊藤は山県、松方正義、井上馨が共に枢府に入ることを条件として、枢密院議長になることを承諾した。

十二日伊藤は勅旨を奉戴する旨奏上し、翌日枢密院議長に任ぜられた。山県も松方も枢府に入った。政友会総裁には、伊藤の推挙により西園寺公望が後任となった。

こうして、『挙国一致体制」が築かれて政友会からは、もはや妨害なく、軍艦補充費が通過し、日露戦争海戦のポイントになった巡洋艦「日進」、「春日」のような新鋭艦2隻をチリから買入れることができたのである。

『「明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破力に学ぶ」

今こそ杉山の再来の<21世紀新アジア主義者>が必要な時」』①

http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/323.html

 

日本リーダーパワー史(518)「明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破力に学ぶ」

日露戦争の決定的場面に杉山の影

http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/317.html

 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本メルトダウン脱出法(844)『米海軍トップが新たな戦略構想を発表ー「情報」をさらに重視し、ロシアと中国を警戒』●『尖閣諸島防衛、やってはいけないこと、やるべきことー安易な自衛隊投入は国の破滅、まずは海保の強化を』●『中韓露にも遅れる日本、3Dプリンター軍事転用を急げ 兵站が脆弱な日本には必須技術のはず』● 『「田中角栄は米国につぶされた」説は正しいのか? ロッキード事件「米国謀略」説を当時の取材統括者が否定(古森義久)』

 日本メルトダウン脱出法(844)   米海軍トップが新たな戦略構想を …

no image
『オンライン/真珠湾攻撃(1941)から80年目講座④』★『日米リーダーシップ/インテリジェンスの絶望的落差』★『東京五輪開催で日本は2度目の新型コロナ/ワクチン/経済敗戦につながるか』

  2015年5月19日/日本リーダーパワー不在史(568)再録 &n …

no image
速報(257)<原発事故民間事故調報告書『世界を震撼させた3月の7日間」①<菅元首相のリーダーシップは?!

速報(257)『日本のメルトダウン』   <福島原発事故独立検証委員会 …

no image
日本リーダーパワー史(704)「福沢諭吉はなぜ「脱亜論」に一転したか」⑩『林董(ただす)外務次官の証言する朝鮮防穀令事件の真相』防穀令により朝鮮地方官がワイロを貪った。

日本リーダーパワー史(704) 日中韓150年史の真実(9) 「福沢諭吉はなぜ「 …

no image
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1053)> 『パリ協定を離脱した米国の孤立化』★ 『トランプの連続オウンゴールで中国が『漁夫の利』を占めた』●『PM2.5などの大気汚染、水質汚染、土壌汚染、汚染食物など史上最悪の 『超汚染環境破壊巨大国家」中国に明日はない。』

 ★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1053)> …

no image
知的巨人たちの百歳学(111)-明治の大学者/物集高見、高量(106歳)の大百科事典『群書索引』『広文庫』の奇跡の長寿物語➂→「(人間に必要なのは)健康とおかねと学問・修養の三つでしょうね。若い時は学問が一番、次がおかね。健康のことなんかあまり考えないの。中年になると一番はなんといってもおかね。二番が健康、学問なんかどうでもいいとなる。そして年取ると・・・」

物集は膨大な日記を書いている。 それは「百歳は折り返し点」の自伝の「年表の総まく …

no image
昭和外交史④  日本の一番長い日  陸軍省・参謀本部の最期

1 昭和外交史④  日本の一番長い日  陸軍省・参謀本部の最期 <阿南陸相の徹底 …

no image
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』㉒「伊藤博文統監の言動」(小松緑『明治史実外交秘話』)⑦『前代未聞の退位と即位』

  「 英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が 報道した「 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(295)★『芥川龍之介の文学仲間で、大正文士の最後の生き残り作家・小島政二郎(100歳)の人生百歳訓ー 『足るを知って分に安んずる』★『いつまでもあると思うな親と金、ないと思うな運と借金』★『起きて半畳、寝て一畳、天下取っても、二合半』 

    2012/11/23  百歳学入 …

no image
日本リーダーパワー史(590)『世界が尊敬したグレート・マン』現代日本の指針となる2人―イチローと孫正義(上)『指針のない人間に成功の扉は開かれず、戦略のない国は亡びる」

日本リーダーパワー史(590)  『世界が尊敬したグレート・マン』現代日本の指針 …