日本リーダーパワー史(720)ー南シナ海裁定で完敗した中国の強硬姿勢の背景にある『China2049―秘密裏に遂行される世界覇権100年戦略』①『中国の夢』の恐るべき陰謀とはー 中国が世界の覇権を握った「帝国」は「自由より秩序、 法より倫理、民主主義と人権よりエリート による支配に価値を置く」①
日本リーダーパワー史(720)
南シナ海裁定で完敗した中国の強硬姿勢の背後にある
『China2049―秘密裏に遂行される世界覇権100年戦略』①
『中国の夢』の恐るべき陰謀とは・・ー
中国が世界の覇権を握った「帝国」は「自由より秩序、
法より倫理、民主主義と人権よりエリート
による支配に価値を置く」(民主國ではなく
共産主義独裁帝国が夢とは・・)
前坂俊之(ジャーナリスト)
南シナ海の90%の領有権を主張する中国に対して、フィリピンがオランダ・ハーグの国際仲裁裁判所に訴えた仲裁で7月12日、中国の領有権主張を完全に否定する裁定が出された。南シナ海の九段腺(中国が領有権を主張するため地図上に引いた境界線)についても法的根拠なしと否定した。
また、スカボロー礁にあるすべてのリーフは法的には中国のEEZ(排他的経済水域)や大陸棚を生成しない『岩』であって島には当たらないとの裁定を出して全面的にフィリピンの勝訴となった。
この中国対フィリピン(ベトナム、バックに米国、日本)との対立は『国際秩序対中華思想』の衝突―欧米中心の国際システムにいら立った中国の挑戦の構図である。
米ソによる冷戦対立が終焉を迎えてから四半世紀。アジアは再び2つの大国による主導権争いが激化している。
中国の勃興は覇権国アメリカへ挑戦状であり、『ハーバード大学のグレアム・アリソン教授が過去500年の事例を調べたところ、新興大国と既存の覇権国が激しく争った16のケースのうち、75%に当たる12件では戦争が勃発していた。(『ニューズウイーク日本版』7月26日号)というだけに、今後の両国の出方によっては戦争勃発のリスクが高まったといえる。か世界は分岐点を迎えたといえる。
この仲裁裁判所の判決は紛争当事国を法的に拘束する最終的なものだが、この判決を執行する手続はないので、中国の軍事基地化をストップさせ原状回復させることはできない。
しかも、中国は裁定前から、判決には一切従わないといけ猛々しい態度で、埋め立てと軍事基地化を強行しており、裁定後もその強硬的な発言、行動に変化は見られない、今後、中国の国際判決無視『無法国家』の暴走が繰り返されれば、の一触即発の事態が危惧される。
ここまで、なぜ中国は国際秩序を無視して強硬一点張りの姿勢なのか。
こうした中国側の強硬姿勢の背景には習近平主席の『核心的利益政策』がある。中国は世界第2の経済大国に発展し、2030年代には米国を抜いて世界一になるとの見通しのもとに、習近平主席は『核心的利益政策』を一層強化した『中国の夢』がある。
核心的利益とは
① 台湾問題②チベット独立問題③東トルキスタン独立運動④南シナ海問題(九段線、南海諸島)⑤尖閣諸島問題でこれが、国家主権と領土保全、安全維持、経済社会の持続的で安定した発展の最重要国益としているのである。その点では絶対妥協できない領土紛争なのである。
これは清国時代から西欧列強の英国、フランス、ロシア、日本などに清国は大きな被害を受け、それによって奪われた領土、国益、被害の奪還運動でもある。
当時の国際法なるものは、国際法的秩序は西欧列強の植民地、侵略、帝国主義の別名でもあり、中国側の主張はこの恥辱と被害の回復運動であり、侵略される前の大清帝国の領土、領海の復活政策が『核心的利益政策』であり、習近平主席のアメリカで語った『中国の夢』の復活なのだ。
習近平は国家主席就任以前から「中華民族の偉大なる復興の実現」を掲げており、2012年、国家副主席として初めて訪米した際には、ワシントンポストのインタビューで「中国とアメリカとで太平洋を二分すること」というような回答をした。
2013年6月、国家主席になってからの訪米の際には、オバマ大統領に対して、「太平洋には両国(アメリカと中国)を受け入れる十分な空間がある」と『中国の夢』を明言した。
米国・オバマ大統領が「世界の警察官をやめる」宣言をしたことで、習近平はその強硬姿勢を一層鮮明にし。2014年には南沙諸島の埋め立てを隠そうともせず急ピッチに進め、滑走路の建設、軍事基地化を国際裁定のまえに完了させる挑発的軍事行動を続けた。
習近平が中国共産党書記長(主席の前段階)に就任してすぐのスピーチで、かつて中国の指導者が公式の演説で述べたことのない「強中国夢」(強い中国になるという夢)という言葉を口にした点にある。
「中国の夢」については「China2049―秘密裏に遂行される世界覇権100年戦略」(マイケル・ビルズベリー著、日経BP社、2015年刊)で著者は40年間の中国担CIA部員がこう書いている。(以下41-50p)
『中国の夢』の原本は中国国内で出版されてベストセラーとなり国家の統制下にあるすべての書店で「推薦図書」の棚に飾られた。
著者の劉明福は(人民解放軍国防大学の大佐で指導的学者)で『100年マラソン』の理論『100年かけて中国は米国を抜いて世界一の覇権国になる戦略』が書かられている。それが1947年のスタートなので2049年に覇権を目指すというわけである。
『中国の夢』のの巧妙な戦略とは・・
① 毛沢東の「社会主義を奉じるわれわれは、イデオロギーの戦いで最適者として勝ち残るために、あらゆる状況を利用しょう」
② 中国人は世界の頂点の地位を回復するという歴史的野望によって動いていおり、「中国の歴史が語るのは、中国人は自国を世界最強の国にしようとするが、チャンスが訪れるまでその野望を隠すということだ」(鄧小平)の戦略である。
③ 「21世紀における中国の最大の目標は、世界一の強国になることだ。世界のリーダーシップを握るには、国際的レベルの軍事力が必要だ」と劉は言う。
④ 「アメリカの弱みを研究し、西洋が中国の本当のゲームプランに気がついたらすぐアメリカを打倒できるよう、準備しておく」と劉は言う。
⑤ 毛沢東は「アメリカを超すための壮大な計画を練り、アメリカの打倒は人類に対する最大の貢献になると述べた」と劉は讃える
⑥ 現代中国思想の主流派の趨汀陽の『天下体系-歯界制度哲学導論(2005年に出版)では「伝統的な中国の理想像に基づいて世界の構造を作り直すことだ』と述べている。
⑦ この書によると世界(中国流では天下)は「『最も優れた』中国文明を頂点とする、統合された世界システム」とであり、「アメリカなどの他国の文明は「野蛮人」の文明にすぎず、中国には、文明化した世界の中心として、全世界の国家と国民を「調和」させ、「向上」させる(すなわち、中国の価値観や言語や文化を学ばせて、天下により順応できるようにする)責任がある。
⑧ そして、中国が世界の覇権を握ったこの「帝国」は「自由より秩序、法より倫理、民主主義と人権よりエリートによる支配に価値を置く」というのである。
―これこそ、<核心的利益政策>によって大清帝国時代の領土を奪還したいという『中国の膨張政策の夢』というわけで、中国3000年の歴史で強固に作られた『中華思想』『華夷序列思想』の延長線上のものであり、現在の国際秩序(国際連合の思想】とは全く相反するものであることがわかる。
――――――――――――――――――――
日本リーダーパワー史(204)『日本は西洋覇道より,東洋王道を目ざせ』孫文の「大アジア主義」
2011/10/23
http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/2833.html
つづく
関連記事
-
日本興亡学入門⑩ 『企業利益よりも社会貢献する企業をめざせ』ー渋沢栄一、大原孫三郎、伊庭貞剛
日本興亡学入門 ⑩ 09年6月16日 &nb …
-
平井久志 立命館大学客員教授 「金正恩体制をどうみるか-労働党大会を前に」(2016.4.26)
平井久志 立命館大学客員教授 「金正恩体制をどうみるか -労働党大会を前に」 2 …
-
日本リーダーパワー史(828)(人気記事再録)『明治維新150年』★『3・11直後に書いた日本復活は可能か、日本をチェンジせよー明治維新の志士は20歳の若者たちを見習え、を再録』★『今こそ、「ゲームチェンジャー」(時代を変える若者) こそ出でよ、『日本老害社会をぶち壊せ』●『2025年問題」をご存知ですか? 「人口減少」「プア・ジャパニーズ急増」…』★『2025年問題が深刻過ぎる件』
2011、6,14に書いた< 日本リーダーパワー史(160)> 『3・11 …
-
片野勧の衝撃レポート(55)太平洋戦争とフクシマ(30) 『なぜ悲劇は繰り返されるのかー内部被ばくと原発- -6000人以上の臨床体験(下)
片野勧の衝撃レポート(55) 太平洋戦争とフクシマ(30) 『なぜ …
-
終戦70年・日本敗戦史(126)大正年間の日中関係の衝突と変遷ー戦前までの「大日本帝国」は「軍事大国」「外交低国」であった。
終戦70年・日本敗戦史(126) <世田谷市民大学2015> 戦後70年 7月 …
-
『オンライン講座/最強のリーダーシップの研究 ⑪』★『児玉源太郎の電光石火の解決力⑦』★『日英同盟によって軍艦購入から日本へ運航まで、英国は日本を助けて、ロシアを妨害してくれたことが日露戦争勝利の要因の1つである』
2017/06/04 日本リーダーパワー史(820)記事再録『日清、日露戦争に勝 …
-
『リモートワーク動画/京都世界文化遺産/東福寺ぶらり紅葉旅』★『本堂、講堂、経堂、通天橋へ』★『東福寺方丈の国指定名勝「八合の庭」(重森三玲作)』★『本堂(仏堂)、日本最古の三門』★『臥雲橋(重文)、一華院、大機院、霊雲院、 』
201 …
-
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日本側が伝えた日英同盟の分析」⑤『機密日露戦史』谷寿夫著より』日露協商か、または日英同盟か』★『桂太郎首相の意見は、ロシアは満州の占領のみで最終とするものではない。満洲が手に入れば韓国にもその手を伸ばす、結局、日本が手を出す余地がなくなるまで、その侵略はやまないであろう』
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日本側が伝えた日英同盟の分析」⑤ …
-
日本リーダーパワー史(160)『3・11<第3の敗戦>からの復活は可能か?ー明治維新の志士は20歳の若者』
日本リーダーパワー史(160) 『3・11<第3の敗戦>からの復活は可能か?ー …
-
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑪毎日新聞の言論抵抗・竹ヤリ事件の真相④―極度の近視で兵役免除の37歳新名記者は懲罰召集された
長期連載中『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑪   …