日本リーダーパワー史(708) 日中韓150年史の真実(11) 「福沢諭吉はなぜ「脱亜論」に一転したか」⑪<記事再録>『福沢諭吉の「脱亜論」と時事新報の主張に全面的に賛成した』上海発行の英国紙「ノース・チャイナ・ヘラルド」1884(明治17)年5月2日
2016/05/26
日本リーダーパワー史(708)
日中韓150年史の真実(11)
「福沢諭吉はなぜ「脱亜論」に一転したか」⑪
<記事再録>『福沢諭吉の「脱亜論」と時事新報主張に全面的に賛成した英国紙』上海発行の英国紙「ノース・チャイナ・ヘラルド」1884(明治17)年5月2日
<次の記事は2014/07/04に執筆したものの再録である>
中国の習近平主席は2014年7月3日、韓国を訪問、韓国の朴(パク)槿恵(クネ)大統領との首脳会談に臨み、歴史認識問題などで共闘し、対日圧力を強めている。以下の130年前の「ノース・チャイナ・ヘラルド」の記事は、ヨーロッパ、日本から見た『近代化』を拒否した遅れた中国政治システムと軍備増強、農奴の状態で搾取と支配維持をしていた清国皇帝政治を厳しく批判している。
130年たった現在の中国共産党一党独裁・習近平体制も自己改革できていないのが、「中国の悲劇」であり、新たな『黄禍論』であることが、この記事を読むとよくわかる。
習近平共産党指導部は議会制、政治の民主化を拒否している世界で数少ない独裁国家であり、人民が稼いだGDPの多くを共産党幹部と国営企業のトップが不正利得として蓄財している腐敗体制で、人民のインターネットからの批判、世界の知識へのアクセスを拒否し、人権弾圧を繰り返している封建的な中国歴代王朝とかわりはない。
この英国紙は福沢諭吉の『脱亜論』を全面的に支持しているのだが、現在の日本の歴史学者や世論、マスコミのおおくの、また『中国』『韓国』側の福沢諭吉を「侵略主義者」とするプロパガンダに同調している人々は、「日清・日露戦争への道」を外国の新聞の報道とともに多面的に検証していくことが必要で、この連載はそのためのシリーズなである。
130年前の今も全く変われない中国と、習近平体制
「ノース・チャイナ・ヘラルド」の指摘
① 中国は世界最大の国の1つだが、不幸なことに,きわめて尊大な国民なため,西洋諸国との賢明な関係を持つことを拒否している。
② 何千年もの間、中国人はほとんど、あるいは全く知的進歩をとげておらず.「たくさんの魂のない自動人形」のように暮らして,世界を知らずにぼんやりと過ごしている。
③ 中国の慢性的な保守主義は、戦争で負けるまでは直らない。
④ 中国は長年にわたり「軍艦や鉄砲,水雷」の製造に莫大な金を費やしている。
⑤ 現在.中国が陥っている「進退きわまった状態」は,金が誤った使い方をされ浪費されたことによるものだ。軍備も軍需品も先進文明における本質的な要素では決してない。
⑥ 地方行政の失政,おそまつでみすぼらしい道路,財政制度に見られるきわめて不適当な財政上の原則.未発達な貨幣制度-中国の内政は最悪の状態にある。
⑦ 中国に今必要なものは要塞や銃ではなく,政治上.行政上の改革だ。が、そのような博愛主義の計画が少しでも考慮されているとはとうてい思えない。
上海発行の英国紙「ノース・チャイナ・ヘラルド」1884(明治17)年5月2日付
『福沢諭吉の「脱亜論」と時事新報の主張に全面的に賛成した』
日本は,お隣の大国の政治的苦境に関する指導者とまでは言わないまでも,説教者ぐらいの役割を果たすことにやぶさかでないようだ。今回のトンキン事件(清仏戦争)の間中,天皇の顧問たちによって厳正中立が.それをやめさせようとする誘惑にもかかわらず.守られたことは,絶賛に値する。
だからといって,人々がその問題について広く自分の意見を述べなかったということはない。日本の政治記者の意見の中には.洞察力に富み.風変りでおもしろいものがある。
これらの記者によると,日本はある一連の主義に転向した人のようなもので,その実践は今までのところ大成功を収めてきたが,一方同様にその主義を必要としている中国は一貫してそれらを拒否し.その結果,最も良質な油の不足のため,持っているランプが消えかかっている愚かな娘のような状態にあるということだ。(※文明開化を目指した明治維新のリーダーや福沢諭吉の『脱亜論』<明治18年3月)>の主張・行動を支持し、封建的な中華思想に閉じこもって文明化を拒否している中国を批判している)
したがって日本人記者が自分たちの方針に都合のいいように,明白な教訓を引き出すという誘惑に負け,中国が日本の例に倣い,進歩に向かって足を踏み出そうとしない愚かさについて.中国人に説教したい気分になるのは当然のことだ。
時事新報の記事の中に,そういったことがすべて興味をそるように説明されている。学者ぶった知恵とすぐれた徳の持主であるかのような態度をした記者によって書かれたその記事は,それを読んだ中国人読者に(もし中国人読者がいたならの話だが)しかるべき感銘を受けてもらいたいと思う内容だ(※この時事新報の主張は福沢諭吉の『脱亜論』と中国の遅れた封建主義、中華思想の華夷秩序、「冊封体制」
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1434709419
を批判した『反中国論』「反朝鮮論」である。)
彼の言によれば.中国は広大な領土を有し.肥沃な土地.大森林地帯,豊かな鉱山に恵まれた世界最大の国の1つだ。しかし不幸なことに,彼らはきわめて尊大な国民なため,西洋諸国との賢明な関係を持つよりも孤独を好んでいる。
何千年もの間、中国人はほとんど.あるいは全く知的進歩をとげておらず.おびただしい数の人々が記者が言う一には「たくさんの魂のない自動人形」のように暮らし,「国境のすぐ向こう側の大きな世界を忘却のかなたに追いやって.ぼんやりと過ごしている」のだ。
こういう考え方がすぐれた筆の力で展開されており,われわれはその後に続く主張,すなわち中国の慢性的な保守主義は「中国人が立ち向かおうとしている抵抗不可能な力に.彼らが強制的で不愉快なやり方によって気づかされるまで」直らないだろうという主張を全面的に支持する。
そして時事新報の信じるところでは,中国は現在.徐々にこのことに気づかされ始めている。事実,記事の見出しは「仏国ハ支那ノ恩人ナリ」というもので.中国は.いやいやながらも正しい方向へ1歩踏み出すことを強要したフランスに恩義を感じるだろうというのが,記者の意見にほかならない。
しかし,わが日本の友人は,自身の原則を適用するさい重大な過ちがあった。中国がフランスから学ぶよう記者の望んでいる教訓は,より良い自衛手段に不可欠な軍事的なものに限られているのだ。
訓練された優秀な陸海軍が絶対不可欠だと思われるときには,「最も平和的な心の持主でも,軍艦や銃砲,水雷の製造に注目しなければならないだろう」というのだ。
ところで,これは決してよい忠告とは言えない。実際のところ,中国は長年にわたり「軍艦や鉄砲,水雷」の製造に莫大な金を費やしている。
そして大げさな表現で言うならば現在.中国が陥っている「進退きわまった状態」は,金が誤った使い方をされ浪費されたことによるものだ。軍備も軍需品もすべて大いに結構だが,先進文明における本質的な要素では決してない。
時事新報が「現在の国内通信の悲惨なる非能率さ」に触れているのは.おおむね的を射ている。最新式の軍備と頑迷固陋な保守主義とは相いれるもので,事実,軍備は保守精神の結果や表現だろう。確かに,中国はもっと平和的な改革を導入すれば.真の利益を図れるだろう。
地方行政の失政,おそまつでみすぼらしい道路,財政制度に見られるきわめて不適当な財政上の原則.未発達な貨幣制度-中国のいわゆる文明に見られるこういった特徴やその他多くの特徴は.クルップ製大砲の購入や水雷の製造より,もっと注目すべきものだ。
中国全土に広がり,国全体の士気をくじいているように見える。この奇妙で宿命的な無気力さはいったい何だろうか?いっもこうだったわけではない。中国が活動的で.繁栄し,進歩したすばらしい国だった時代もあった。
唐朝の中国はすばらしい国だったに違いない。中国のいたるところに見られる過去何世紀にもわたる遺跡、たとえば精巧な彫刻を施したすばらしい石で造られた大建築,無数の獅子とアーチのついたみごとな橋,立派な水道.巨大な城壁などはすべて,過去の壮麗な雰囲気だけではなく.その進歩ぶりをも物語っている。現在の不潔な古い首都に対して当初立てられた壮大な計画,すなわち建物の正確な方位.幅の広い立派な通り,公園.湖.庭園,宮殿,寺院.ぞしてとりわけすばらしい比類なき水道などを見れば,創建者たちの当初の目的がどういうものだったか知ることができる。
もしマルコ・ポーロの時代に鉄道が世に知られていたとしたら.中国は現在のように鉄道を嫌疑と疑惑の対象としてみなす代わりに,喜んで取り入れただろう。暗い影が支配者と人民両方の心の上に覆いかぶきってしまっているようだ。彼らは改革に対し異常なくらい嫌悪の情を示している。
北京のある門の道路は,雨が降ると泥の海と化し.空気が乾くとロンドンの霧のような土煙をまい上がらせている。この道路の敷石は,荷車として知られている不格好な箱の往来のため.ところどころすり減っており.約30センチの深さのでこぼこがあちこちにできている。数週間前,ある裕福な官吏が自費でこの道路を修理する許可を求めたが,それは皇帝の仕事であり,そのような申出をするとは不届き千万な振舞いであるという返事を受け取った。
この小事件は現在の中国の政策全体を反映しており,非常に小さな事件でありながら大きな教訓を含んでいる。
中国の内政は最悪の状態にある。中国に今必要なものは要塞や銃ではなく,政治上.行政上の改革だ。もしフランスがそのような改革をなしとげるため何かをするならば,実際にフランスは中国の恩人と呼ばれるに値するだろう。
しかし,そのような博愛主義の計画が少しでも考慮されているとはとうてい思えない。
関連記事
-
速報(122)『日本のメルトダウン』<日中百年の難題?『放射能 福島原発は廃炉にできない』『中国は「乱世」突入の前兆か』
速報(122)『日本のメルトダウン』 <日中百年の難 …
-
『リーダーシップの日本近現代史]』(28)-記事再録 2014/12/09 /安倍首相は「土光臨調」で示した田中角栄の最強のリーダーシップを見習えー『言葉よりも結果』
2014/12/09 /日本リーダーパワー史(533) …
-
『リモートワーク/世界文化遺産/京都・東寺に参拝した観光動画(2017/12/28/30分)『京都・東寺の「五重の塔」を拝みに行く』★『境内に入り教王護国寺、毘沙門堂を見てまわる』★『庭園からの見事な「五重の塔(国宝)」の眺めに感動する』
日本の代表的古寺百選(12/28)ー京都 …
-
★5 日本リーダーパワー史(754)–『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争を英国『タイムズ』米国「ニューヨーク・タイムズ」は どう報道したか」②(11-20回)★『 戦争とは外交の一手段。<恫喝、罵倒、脅迫、強圧のケンカ外交で相手は参ると思って、日本を侮ったロシアの油断大敵>対<日本の礼を尽くしてオモテナシ、臥薪嘗胆、無言・沈黙・治にいて乱を忘れず、天機至れば『一閃居合斬りも辞さぬ』とのサムライ外交との決戦が日露戦争で、両国の戦略論、パーセプションギャップ(認識ギャップ、思い違い)をよく示している。』
日本リーダーパワー史(754) 『世界史の中の『日露戦争』ー (英国『タイム …
-
『オンライン/『日中韓500年/オンライン世界史講義①』★『世界的権威ベルツの日韓衝突の背景、歴史が一番よくわかる講義①』★『明治天皇のドイツ人主治医・ベルツ(滞日30年)の『クイズ『坂の上の雲』ーベルツの『日本・中国・韓国』五百年の三国志①<日露戦争はなぜ起こったのか>
<2011/02/27 記事再録> クイズ『坂の上の雲 …
-
片野勧の衝撃レポート㉕ 太平洋戦争<戦災>と<3・11>震災 ー第4の震災県青森・八戸空襲と津波<2>
片野勧の衝撃レポート 太平洋戦争<戦災>と<3・11> …
-
日本リーダーパワー史(790)ー 「国難日本史の歴史復習問題」★「日清、日露戦争に勝利」 した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス⑧』 ★『元勲伊藤博文と巨人頭山満の日露開戦の禅問答』「伊藤さん、あんたは今日本でだれが一番偉いと思いますか」と意外極まる一問を放った。
日本リーダーパワー史(790) 「国難日本史の歴史復習問題」ー 「日清、日露戦 …
-
「終戦70 年」ージャーナリスト高杉晋吾氏が「植民地満州国」での少年体験を語るー防空壕に退避の母、姉、自分など7人が爆弾直撃で、ただ1人生き残る。
「終戦70 年」歴史ジャーナリズムージャーナリスト高杉晋吾氏が 「植民地満州国」 …
-
★人気動画記事再録―『文豪菊池寛と直木三十五の友情物語』●『直木三十五-「芸術は短く、貧乏は長し」と詠んで『直木賞』に名を残す』★『 菊池寛・文壇の大御所を生んだのは盗まれたマント事件』
お笑い日本文学史『文芸春秋編」① ●直木三十五-「芸術は短く、貧乏は長し」 と詠 …
-
世界/日本リーダーパワー史(962)ー『2019年は『地政学的不況』の深刻化で「世界的不況」に突入するのか,米中貿易協議(3/1)の行方はどうなる!?』➀
世界/日本リーダーパワー史(962) 前坂俊之(ジャーナリスト) 2018年12 …