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『Z世代のための米大統領選挙連続講座⑥』★『シーソーゲームの選挙戦』★『ほぼトラから確トラへ、バイデン撤退か?』★『トランプ氏は共和党全国大会で大統領候補指名受諾』★『バイデン撤退しハリス副大統領を指名』

   

前坂俊之(ジャーナリスト)

トランプ前大統領は7月18日に共和党全国大会で大統領候補指名の受託演説をおこなった。まず暗殺未遂事件に触れて、「銃弾が1インチ外れたのは全能の神のご加護があった」とし自らを「殉教者」「奇跡の復活」とした。いつもの攻撃的な姿勢を抑制し、融和色を全面に打ち出した。「私は米国の半分ではなく国全体の大統領になるために立候補した。この国を確実な破滅から救うことができるのは私だけだ」だとアピール、「国民の融和と団結」を呼びかけた。会場全体はトランプ批判派も一体となって、総立ちで「トランプ!」「トランプ!」を大合唱で「トランプ1色党」に染まっていた。

もともと「国民の団結」の呼びかけはバイデン氏のキャッチフレーズで米議会占拠事件後、繰り返していた言葉だ。暗殺未遂事件で自身に神風が吹くと予感した同氏はこのキャッチフレーズを逆用した無党派層、民主党層の票を取り込む戦術に切り替えた。

しかし米大統領選挙史上、最長の93分にのぼる演説後半に入ると、

いつもの激しい攻撃口調に戻り、米国が分断、崩壊しているのはバイデン現政権のせいだと批判。自身が起訴されているのは民主党の陰謀の一環だと「エビデンス」(裏付け、根拠となる客観的事実)を欠いた主張を連発。続けざまに、バイデン大統領が「第3次世界大戦」を引き起こすとか、メキシコとの国境を移民が越えてくることを「侵略」だと非難するなど、虚偽の口撃を繰り返す「いつもの<お前は首だのトランプ節に逆戻りした。

トランプ氏の公約の概要はーー

  • 米国史上最大の(移民の)強制送還を実行する。南部メキシコ国境の管理は、「国境を封鎖し、移民の侵入を阻止、不法移民を強制送還するとした。
  • 「「産業政策」の変更と反自由貿易主義―「米国をエネルギー生産国にする」「電気自動車(EV)推進策を取り消す」「米国を製造大国にする」を目標に 国内石油、石炭業界の新規採掘事業に対する規制を撤廃、逆に、風力、ソーラー発電などのグリーン革命事業に対する国の支援は削減する。
  • 中国に対しては、優遇関税での輸入を認める「最恵国待遇」を撤回、自由貿易主義にもブレーキをかけ、国内産業保護のため中国には輸入関税を60%に引き上げ、中国EVには100%の関税を課す。世界各国からの輸入にも10%の輸入課税を実施する。
  • 外交・安全保障では「同盟関係を強化する」と明記し、離脱を警戒する声もある北大西洋条約機構(NATO)加盟国に一定の配慮をし「同盟国が共同防衛義務に投資するよう徹底する」とも記し、欧州各国に国防費のさらなる増額を求めている。
  • 人工妊娠中絶など世論の賛否が割れる政策では「妊娠後期の中絶に反対する」と明記しつつ、具体的な規制には踏み込まず、各州の半断に委ねることで、選挙の争点化を避けたーなどなどだ。
ノーベル経済学賞を受賞した16人のエコノミストは「2025プロジェクト」に反対

 

ジョセフ・スティグリッツ氏らノーベル経済学賞を受賞した16人のエコノミストは6月25日、「トランプ政権が誕生した場合のアメリカ経済の行方に悪影響がある」との懸念を表明した。

① トランプ前大統領の行動は安定性を欠いている。

② インフラや製造業、気候変動対策は米国経済の生産性や成長率を高め、長期的なインフレ圧力を低下させ、クリーンエネルギーへの移行を促進する。

③ トランプ氏が財政的に無責任な予算でインフレを再燃させる懸念がある。バイデン政権の経済政策はトランプ氏よりもはるかに優れている。

―以上から、今回の選挙の結果は、今後何十年にもわたって米国経済に悪い影響及ぼすーと警告している。

●しかし・・・

すでに、米市場関係者や投資家たちはトランプ前大統領の再選を果たすシナリオに賭ける「トランプ・トレード」が活発化している。

オンライン賭けサイト「プレディクトイット」の掛け金に基づくトランプ氏の再選確率は7月16日時点で69%と、1カ月前の53%から上昇。バイデン大統領は28%と、6月半ばの44%から低下した。

また、ロイター/イプソスが7月15─16日に行った調査では、登録有権者の間での支持率はトランプ氏が43%、バイデン大統領は41%と、小幅にリードしていることが分かった。 市場が織り込み済みのトランプ氏再選の銘柄の小型株から暗号資産に至るまで幅広く上昇している。その一方で、長期的に財政悪化につながるとの懸念の双方を織り込む動きとなっている。政府借り入れが10年間で4兆─5兆ドル増加すると試算。インフレが加速し、国債価格の重しとなる可能性があると指摘する。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-07-15/SGO1MRDWLU6800

●バイデン大統領の逆転撤退、ハリス副大統領(59)を支持、指名

一方、党内の撤退論が強まっていたバイデン大統領は、遅まきながら7月21日、選挙戦から撤退すると表明。「民主党や国にとっては私が選挙戦から退き、大統領としての残りの任期のまっとうに集中する」として、後任の大統領候補にはカマラ・ハリス副大統領(59)を支持、推薦した。

現職大統領が選挙戦の途中で撤退するのは1968年のジョンソン大統領以来、56年ぶりのこと。米ニューヨーク・タイムズは「2024年の大統領選を大混乱に陥れた」。英国のBBCは、「すでに歴史的な事態が起きている大統領選挙は未知の世界に突入する」と報道した。

ハリス副大統領は西部カリフォルニア州出身の59歳。父親はジャマイカ出身、母親はインド出身で移民の2世として生まれ育った。カリフォルニア州の司法長官を務めたあと、2017年に上院議員となり、女性として、黒人として米国史上、初めての副大統領となり、多様性を重視するバイデン政権の象徴となっていた。ハリス氏は副大統領指名に対して「私は民主党を結束させ、国を団結させ、ドナルド・トランプ氏を倒すために全力を尽くすつもりだ」と述べた。民主党内ではハリス支持者が多く、対抗馬が出るかどうかが注目されている」

 

 

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