『オンライン日本金融史講座/総理大臣と日銀総裁の決断突破力の研究』★『アベクロミクスの責任論と<男子の本懐>と叫んだ浜口雄幸首相は「財政再建、デフレ政策を推進して命が助かった者はいない。自分は死を覚悟してやるので、一緒に死んでくれないか」と井上準之助蔵相を説得した』
2022/11/10
『リーダーシップの日本近現代史』(112)』
“Online Course on the History of Japanese Finance/Study on the Decision Breakthrough Power
of the Prime Minister and the Governor of the Bank of Japan”
★”Prime Minister Oyuki Hamaguchi, who exclaimed the responsibility theory of Abecromics and
<boy’s true desire>, said, “Fiscal reconstruction and
deflationary policies will save lives.
No one was saved. I am prepared to die, so please die with me,
” he persuaded Finance Minister Junnosuke Inoue.
政治家の信念とその責任のとり方の比較
↑上の写真は井上準之助蔵相(日銀総裁)
統計不正問題で揺れる国会で2019年2月12日、安倍首相と立憲民主党会派の岡田克也元外相の間で久しぶりに激しい舌戦があった。安倍首相の「悪夢のような民主党政権だった」との発言に岡田氏はかみついて、「自民党の経済、原発政策の失敗に足を取られた。自民党にこそ責任がある。発言を撤回せよ」と詰め寄ったが、議論はすれ違いに終わった。論争のあと、「ちっちゃな首相だ!」と岡田氏は吐き捨てた。
3月末の期限が迫る中で、相変わらずEUとの合意なき離脱問題でもめ続けている英国議会に対して、しびれを切らしたEUのトゥスク首脳会議常任議長(大統領に相当)は2月6日、英国の離脱推進派には「地獄に特等席が用意されている」と発言し、英国議会は猛反発した。
一方、トランプ大統領の言いたい放題、強圧的言動はやまずメキシコ国境のカベの建設を巡って「民主党はテロ、犯罪者、不法移民の擁護者だ」と攻撃はエスカレートし、ついに国家非常事態宣言を発してカベ建設予算の増額した。米議会の混乱はまだまだ続きそうだ。
このように、世界中で大統領、宰相らの過激発言によって、政治不信が高まり、政治家の責任が改めて問われる事態となっている。
今からちょうど90年前の1929年(昭和4)にニューヨーク株式市場の暴落に端を発した世界大恐慌がおこり、世界中が不況に見舞われた「悪夢の1930年代」を思い起こさせる。
この時の『ライオン宰相』浜口雄幸首相の政治力、決断力は日本憲政治史上、稀有のものであった。
1929年(昭和4)7月2日、中国張作霖爆殺事件の責任者の処分をめぐって処分が軽すぎると昭和天皇から叱責された田中義一首相(政友会)は責任をとって総辞職し、野党第一党の民政党の浜口内閣が誕生した。
浜口は外務大臣に幣原喜重郎(国際協調派)、大蔵大臣に井上準之助(貴族院、日銀総裁)を、海軍大臣に財部 彪(条約軍縮派)据えた。 政策として為替相場を安定させるための金解禁の実施、国民生活を犠牲にした英米との海軍力競争に追従すべきでないとの軍縮実現、行財政改革、綱紀粛正、官吏減俸(国家公務員の減俸)などを「改革10大スローガン」を掲げて、翌昭和5年の総選挙では国民の圧倒的な支持を集めて絶対多数の273議席を獲得した。
浜口雄幸は土佐出身の「いごっそう」(快男児、頑固で気骨のある男)で無口寡黙正直一筋の不言実行のひと。板垣退助、吉田茂の宰相の流れの中間に位置する。東大法科卒で大蔵官僚となったが、大臣の予算を上げよとの上司の命令を拒否したため、地方へ飛ばされ左遷に次ぐ左遷となった。その間も英国タイムズの購読を続けて、世界経済を地道に勉強してきた。生来の無口訥弁も演説を猛練習して直した。節を曲げぬ剛直、清貧,知合一致の人格が後藤新平(内相、外相)に見込まれて、政治家に転出する。「政治は国民道徳の最高標準たるべし」を信念としていた。
浜口首相は大蔵大臣は井上しかできないと目をつけていた。「この内閣の最大の使命は財政整理だ。それには財政の専門家が要る、あなたしかいない。デフレ政策を推進して命が助かった者はいない。自分は死を覚悟してやるので、一緒に死んでくれないか」と誠心誠意、口説いた。
最初は断っていた井上もついに「そこまで自分を見込んでもらえるなら、私も命を投げ出しましょう」と引き受けた。浜口首相は実力本位の抜擢人事で派閥、根回しに頼らず、「唯一正道を歩まん」と反対を押さえて正面突破で政策を推進した。ところが、同年10月24日にニューヨーク証券取引所で株価が大暴落、「暗黒の木曜日」がおこり、世界は大恐慌に突入し、日本も深刻な不況に落ち込んだ。
浜口内閣は着々と政策を実行し、翌昭和5年1月11日、金本位制(金解禁)に復帰した。4月にはロンドン軍縮会議で米英日3国での軍備制限条約を締結した。ところが、これに猛反対する海軍の艦隊派の加藤寛治軍令部長の統帥権干犯問題が発生、右翼が一斉に声を上げ、浜口内閣打倒に動き出した。
「暗黒の木曜日」から3週間後の11月14日朝、浜口雄幸首相は東京駅で右翼暴漢からがモーゼル型拳銃で腹部を狙撃された。この時、「男子の本懐!」との有名な言葉を残した。銃弾が体内に残っていたため、三回もの大手術を行ったが、容態は回復せず、昭和6年1月、2月になっても衰弱が続いき、復帰できなかった。
政友会からは『総理が国会に来られない以上、政権を渡せ』と矢の催促。両党の対立が激化し、乱闘事件まで起きた。民政党は『必ず浜口は登壇する』と答えたが、浜口の容態は絶対安静でとても起きられる状態ではなかった。
城山三郎「逆境に生きる」(新潮社、2010年)によると、浜口首相は病床で「会期中に国会に出るという総理の約束は、国民に対する約束だ。自分は死んでもいいから国会に出る。邪魔しないでくれ」と医者、家族に決意を告げた。ところが、浜口は、靴を履くこともできず、靴が重くて、倒れてしまうほどの衰弱ぶり。靴なしで国会へは行けないので、家族で布を靴の形に切って墨を塗って、足につけるという前代未聞の悲壮な覚悟で登院した。
3月10日に開会中の衆議院本会議に出席してあいさつ、以後、連日出席して、鳩山一郎(鳩山由紀夫の祖父)らの長い質問に答え続けた。
疲労困憊、衰弱は限界に達し、4月に再び入院手術したが、現職復帰は困難となり、同13日についに総辞職した。浜口はそれから5ヵ月後の8月26日に61歳で不帰の客となった。この2週間後の1931年(昭和6)9月16日、関東軍が謀略のの満州事変を起した。『ブレーキが故障した軍閥国家」は「昭和15年戦争」(1941ー1に転落、破滅していった。
関連記事
-
速報(133)『日本のメルトダウン』★『野田政権は東電破綻処理を急げー巨額賠償請求の餌食』 『新首相を待ち受けるハワイAPECの罠? 』
速報(133)『日本のメルトダウン』 ★☆『野田政権は東電破綻処理 …
-
片野勧の衝撃レポート(53)被爆記憶のない世代は被爆体験をどう伝えていくか(下)
片野勧の衝撃レポート(53)太平洋戦争とフクシマ(28) 『なぜ悲劇は繰り返 …
-
『百歳学入門』(226)『横山大観(89歳)は最後まで旺盛な創作欲は衰えなかったが、そのエネルギーの源泉は日本酒だった。』★『晩年、大観は老子の言葉「死而不亡者寿」(死して滅びざるもの寿)を揮号』
『百歳学入門』(226) 〝酒仙大観〟は酒で栄養をとりながら八十九の長寿に 横山 …
-
池田龍夫のマスコミ時評(83)『敦賀原発2号機、廃炉の運命(5・24)』●『廃炉の運命、鈴木原子力機構理事長辞任(5・20)』
池田龍夫のマスコミ時評(83) ◎『敦賀原発2号機、廃 …
-
速報(378)『日本のメルトダウン』●『日本の新内閣:未来に背を向けて』●『外国人投資家の「安倍トレード」はまだ続く』(海外紙報道)
速報(378)『日本のメルトダウン』 ●『日本の新内閣:未来に背を …
-
『美しく老いた女性講座/作家・宇野千代(98歳)研究』★『明治の女性ながら、何ものにもとらわれず、自主独立の精神で、いつまでも美しく自由奔放に恋愛に文学に精一杯生きた華麗なる作家人生』『可愛らしく生きぬいた私の長寿文学10訓』
2019/12/06 記事再録 …
-
『オンライン米中外交史講座』★『米中対立は軍事衝突に発展するのか?』★『130年前の日清戦争の原因と同じ』★『頑迷愚昧の一大保守国』(清国)対『軽佻浮薄の1小島夷(1小国の野蛮人、日本)と互いに嘲笑し、相互の感情は氷炭相容れず(パーセプションギャップ)が戦争に発展した』★『トランプの政策顧問で対中強硬派のピーター・ナヴァロ氏「米中もし戦わば」(戦争の地政学)も同じ結論』
2016/06/20 記事再録『リーダーシップの日本近現代史』(161)/日中北 …
-
日本リーダーパワー史(679)日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(58) 『戦略情報の開祖」福島安正大佐ー 明石元二郎の「明石謀略」は裏で英国諜報局が指導、福島、宇都宮太郎(英国駐在武官)がバックアップして成功した。
日本リーダーパワー史(679) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(58) …
-
・人気動画『地上最美の<蓮の花>を見ずに死ねるか!!』★『70代、80代におすすめ→この世で最も美しい「蓮の花」を見に鎌倉鶴岡八幡宮の源氏池に行くぶらり、ゆつくり長生き散歩動画』
『テレワーク、SNS,Youtubeで社会貢献し臨終定年をめざ方法』[ ★「鎌倉 …
-
速報(102)『日本のメルトダウン』●(小出裕章動画情報3本)『最大の犯罪者、東電と国が事故を小さく見せようとしている』ほか
速報(102)『日本のメルトダウン』 ●(小出裕章動画情報3本) …