<書評>高齢化社会を読み解く最良のテキスト「日本長寿の記録」(内田 啓明著、善本社)
「日本長寿の記録」(内田 啓明著、善本社、550P 平成21年7月刊行、3619円)
書評子 ・前坂俊之
書評子 ・前坂俊之
「世界一の長寿国」となった日本の長寿の秘密を医薬、医療の進歩、健保制度の充実、食生活などの中に総合的に探って、各道府県、市町村別の長寿順位とその推移をはじめて明らかにした本であると同時に550Pにおよぶ大作であり、名著である。

著者の内田啓明(うちだ・けいめい)氏は共同通信社記者で、経済部、整理部長、編集委員、共同通信社出版局次長などを歴任されたベテランの農政ジャーナリストであり、その幅広い農政の知識から、次のような視点から長寿の社会学的な解明に取り組んだ。
①長寿と経済の発展の相互関係、栄養十分な食事、医学の飛躍的な進歩
と長寿の相関関係を把握する。
②国民の食生活の変化を生鮮肉類を食べる洋食化、外国産肉類の輸入量、
米作中心の伝統的な日本農産物などを年次的各県別の食品購入動向調査データと比較しながら把握、比較する。
③長寿化は地域差、都道府県差が大きく、大都府県の長寿順位は次第に低 下傾向にあり
、同一県内の地域長寿順位の変動も大きい。
、同一県内の地域長寿順位の変動も大きい。
④長寿の原因は多種多様であるが、伝統的な食生活とその背景の県民性の相違、変化が大きい。
こうした視点の考察から「日本長寿歴史学総論」と言っていい内容に仕上がっている。
最新データが入って豊富な分析内容となっている。
最新データが入って豊富な分析内容となっている。
第1章 昔の寿命は30年―「人生50年、貧窮食生活で栄養不良、乳児死亡率が高かった、明治の寿命は40年、肺炎、結核が最大死因率、医療進歩、充実の効果」
第2章 食生活が寿命を左右―「貧しかった食生活、健康的な伝統食品、血液をサラサラに納豆は若返り効果、豊かな食生活に、もはや戦後ではない」
第3章 死亡率大幅に減少―「60年間に3分の1に、死因比率が大変動、若年層減り、高年人口増加、年齢調整死亡率」
第4章 急速に寿命伸長―「100年間に寿命倍増、女性は男性より長生き、寿命伸び年数が縮まる」
第5章 寿命は経済力に比例-「日本は世界の最長寿国、豊かな国ほど長寿、食生活に大きな格差、先進国は社会保障比率高い、」途上国は医療も貧困
第6車 生活習慣病が増加―「豊かさのマイナス効果、ガンは最大の死亡率に、
喫煙肺ガン説には多くの矛盾、肥満症は生活習慣病を誘発、糖尿病は多病を誘発、高血圧症は動脈硬化を促進、酒で多くの疾患、死の四重奏、先進国の生活習慣病
第7章 長寿化にブレーキー「不健康な欧米食、死亡率減少から増加に、自殺が増加」
第8章 年代別死亡率―「高年ほど死亡率高い、20歳代は結核が激減、30歳代は結核減り自殺増加、40歳代はガンが死因トップ、50歳代男性は自殺が大幅増加、60歳代男性はガンが多い、70歳代はガンと心疾患多い、80歳代はガンと肺炎が多い、90歳代は老衰と肺炎が多い」
お年寄りも、これから老人の仲間入りする人たち、若い人も、医師、介護士、病院関係者、地方自治体関係者、厚生労働省、老人問題を考えるすべての人に役に立つ資料ブックである。
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