前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

記事再録/『世界史の中の日露戦争』㉚『開戦1ゕ月前の『米ニューヨーク・タイムズ]』(1903(明治36)/12/31)の報道』-『朝鮮分割論』(日本はロシアに対する「緩衝地帯」として朝鮮を必要としている。半島全体が日露のいずれかの支配に帰さなければならない。分割は問題外だ)

   

 『世界史の中の日露戦争』㉚『開戦1ゕ月前の『米ニューヨーク・タイムズ』 1903(明治36)年1231日の報道

『朝鮮分割論』(日本はロシアに対する「緩衝地帯」として朝鮮を必要としている。半島全体が日露のいずれかの支配に帰さなければならない。分割は問題外だ)

ロシアが何を考え,期待しているかについての「内幕ニュース」は,ペテルプルグよりパリから得られるとわれわれが思うのは当然のことだ。

露仏同盟を極東に延ばしたり,またはロシアがそれを望む可能性すら、きわめて考えにくいが,ロシアは少なくともフランスの好意的な中立を請求する権利があり,それが裏切られることはなさそうだ。

そして,露日間の懸案に関してパリから出てくる「ベテラン外交官筋」などの無記名の情報は,他のどこの首都からのものより.根拠があるようだ。その多くはフランス外務省発の刻印をつけている。

 パリのエクレール紙に掲載された,これらの情報の1つによれば,ロシアは日本に朝鮮南部で「行動の自由」を与える用意が十分にあるという。ロシアが戦って守るに値する利益は半島の北部にしかないと考えられている。

ロシアはウラジオストクと旅順の2大基地を直接に結ぶ地上ルートを維持するため,北部に「通行権」を要求している。しかしこの情報に直接に答えるかのように,ロンドンのモーニング・ポスト紙は,やはり内部情報によるものであることをうかがわせる記事を掲げ,日本がどんなことがあろうと,半島のいかなる部分にもロシアの拠点を認めるのに同意するはずがない理由を説いている。

 それらの理由は数多く,つじつまが合っている。朝鮮の一部をロシアが領有するなら,対日作戦の足場を得ることになる。脅威が重なることになる。しかもこの紛争の行方は日本の存立にかかわると日本が見ていることが,忘れられ過ぎている。

軍事的な比喩を借りれば,日本のやり方が戦術的攻勢である場合でも,戦略的には防衛なのだ。

その「賢明で慎重な恐怖」が「安全の母」であり,それこそが実は日本の指導者を支配している動機なのだ。彼らは自分の国が独立国として地図から抹殺されるのを見ようなどとは夢にも思っておらず,中国が外部から助力を得られるにもかかわらず,抹殺の道を進んでいるかに見えるのとは異なっている。

大きな違いは,中国では愛国心などという感情が見られないのに日本にはそれが煮えたぎっていることにある。ついでながら,この違いは,次のような哲学者たちの注意を引くかもしれない。

 それは,文明への感情は必要ないと主張し,また中国こそ純粋に非宗教的,合理的な基盤に立った国家ながら,他に劣らずやっていけていると引合いに出す癖がある,ないしは1895年まではその癖があった者たちだ。

だが日本人が自衛のために一撃を与え損傷を覚悟することなく、自国をばらばらにされ,抑圧され,金のために.各自ご勝手に分割に「おいでなさい」と招き入れることをしないから,中国人より上等か否かはともかくとして,日本人は,事実の問題としてそのような国民ではない。

日本人は,各自の個人的な理由から,1椀のあつもののために家督相続権を売渡しはしない。

 それはそれとして,朝鮮をロシアと日本の「地区」に分割することには,実際的な反対理由があり,それが決め手になるようだ。それは「境界決定」の難しさ,つまり線引が不可能だということだ。

しかもその線が厳然と明確に引かれなければ,慢性的な紛争の元になるだけだ。ロシアは対日攻撃の基地として,朝鮮を必要としている。

ロシアの同半島の支配に,他の圧倒的な動機を想定することはできない。

日本はロシアに対する「緩衝地帯」として朝鮮を必要としている。半島全体が日露のいずれかの支配に帰さなければならない。分割は問題外だ。

 - 人物研究, 健康長寿, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(77) 『超高齢社会日本』のシンボル・107歳平櫛田中翁に学べー<その気魄と禅語>

日本リーダーパワー史(77) 『超高齢社会日本』のシンボル・107歳平櫛田中翁に …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(81)◎「講和条約記念式典 「4月28日」は、沖縄屈辱の日』

 池田龍夫のマスコミ時評(81)   ◎「講和条約記念式典  …

no image
日本メルトダウン脱出法(766)「中国バブル崩壊「世界大恐慌」の可能性(大前研一)」●「TPPを取り巻く不穏な政治(浜田宏一)」●「残り任期3年、安倍政権に打つ手なし(大前研一)」

  日本メルトダウン脱出法(766) 東証一部上場へ、郵政3社の未来絵図ー大前研 …

『Z世代のための国会開設、議会主義の理論を紹介した日本最初の民主主義者・中江兆民講座①』★『兆民、大久保利通に知られる』★『 自由民権運動の演壇に股引と印ばんてんの服装で登場』★『伊藤、大隈、山県らの元老たちを罵倒す』

逗子なぎさ橋通信、24/06/30/am700]梅雨の合間の夏空に富士山はお隠れ …

no image
速報(293)『日本のメルトダウン』◎『全原発停止」へカウントダウン(池田龍夫)』●「福島とチェルノブイリ ~虚構と真実~ 」

速報(293)『日本のメルトダウン』   ◎『全原発停止」へカウントダ …

no image
日本リーダーパワー史(332)空前絶後の参謀総長・川上操六(45)日清戦争の遠因となった清国水兵の長崎事件とは何か。

日本リーダーパワー史(332) 「坂の上の雲」の真の主人公「日本を救った男」 空 …

no image
日本リーダーパワー史(529)「安倍首相は17日消費増税先送り、解散を発表するらしい。 結果は果たして吉か凶か!」

  日本リーダーパワー史(529)   安倍首相は …

no image
「東京モーターショー2013」(11/23→12/1)開催-世界にまだない未来を競え」② TOYOTA、HONDA、MITSUBISHI,YAMAHA

         ★「東京モーターショー2013」(11/23&rar …

『ある国際ビジネスマンのイスラエル旅行記➂』★『イスラエルの嘆きの壁レポート』★『わがメモアールーイスラエルとの出会い、Wailing Wall , Western Wall 』(嘆きの壁)レポート(1)』

     2016/02/16『F国際ビ …

no image
日本風狂人伝⑮ 日本一の天才バカボン宮武外骨・「予は危険人物なり(上)は抱腹絶倒の超オモロイ本だよ。

生涯、やることなすこと、権力をからかい、既成の権威や習慣に挑戦して、筆禍や名誉毀 …