前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『地球環境大異変の時代へ②』ー「ホットハウス・アース」(温室と化した地球)★『海面がそびえ立つほど上昇する地球の気温の上昇がギリギリの臨界点(地球上の森林、海、地面が吸収するCO2吸収のフィードバックプロセス)を超えてしまうまで、あとわずかしかない』

      2018/09/04

 

「ホットハウス・アース」の未来

 

世界の気候科学者は現在の地球の状態を「ホットハウス・アース」(温室と化した地球)と呼んでいる。この8月、日本でも記録的な猛暑、豪雨が続いている。同23日には台風19号、20号が同時に日本列島を襲い各地で集中豪雨をもたらし河川が氾濫した。今年の台風の数はこれまでの最高を記録した。ハワイでも最大瞬間風速は、55メートルに達する大型ハリケーン「レーン」は、26年ぶりにハワイ島に接近し、大きな被害を出した。

「東京江東5区、水害で2週間以上の浸水、250万人の域外避難計画」

8月22日夕刊の新聞各紙に「江東5区、水害で2週間以上の浸水、250万人の域外避難計画」とのギョットする大見出しが踊った。

このハザードマップは、長時間の集中豪雨で荒川と江戸川が同時に氾濫し、巨大台風による高潮も起きるという最悪の事態を想定した場合、海抜ゼロメートル地帯が広がる墨田、江東、足立、葛飾、江戸川の五区の住民の九割以上の250万人が浸水被害にみまわれる、そのうち二週間以上、水が引かない地域の人口は百万人にものぼるというショッキングな内容だ。

この記事では、建物の2,3階、上階にとどまる「垂直避難」は勧めていない。浸水が長く続けば、電気、ガス、水道などの供給や食料が途絶える恐れがある。このため、移動が難しい高齢者らを除き、自宅に居続けず広域避難するよう求めている。しかし、公的な広域避難場所は確保できておらず、隣接県などと協議中で「各自で確保した親戚や知人宅などに避難を」と呼び掛けている。最大5メートルもの洪水の場合、逃げる手段は救助船、ボート、上空からの救助ヘリコプターなどによる外なく、約250万人もの洪水被災民を避難させるのは到底無理な話であろう。

ちょうどこの日、私は東京湾内にある東京ビッグサイト(国際展示場)に「第20回国際水産業展」を取材に行った。北海道漁連や、各漁協の関係者から話を聞いたが、北海道では、漁業の水揚げが激減している、海水温の上昇、黒潮、海流などの変化でサケ、サンマ、スルメイカなどの漁獲高は記録的な不漁が続く。魚だけでなく、毛ガニ、タコ、ナマコ、ウニなどの海生物も軒並み減少している。一方、これまで定置網などにかかったことのないトラフグやブリ、サワラなどが暖かい地域の魚たくさん獲れて、海の大異変に漁業関係者はショックを受けていた。

人間と違って、国境や領海などに縛られていない海の生物は環境激変に対して、自由に最適の海をもとめて逃げだしているのである。東京下町の洪水は今後の最悪のケースの予測だが、このような100年に一度か、過去に経験したことのない大災害の発生リスクは今後、飛躍的に高まると気候科学者は警告している。

加速する海面上昇によって危険な世界の大都市は東京、ニューヨーク、ロンドン、上海など136都市

 

米国ニューヨーク市はすでに大洪水を体験している。2012年10月29日の超大型ハリケーンサンディーによってマンハッタン島南端が4,2mもの高潮に襲われ43人が死亡、被害総額は190億ドル(約2兆円)に上った。

今後、加速する海面上昇によって危険にさらされている世界の大都市はニューヨーク、マイアミ、ロンドン、東京、べネチア、上海、バングラディッシュ、など136都市にも及び、被災住民は約4千万人、被害資産は3兆ドルにのぼるという。「沈む地球―海面上昇が止まらない」(「ナショナルジオグラフィック日本版」2013年9月号)

地球温暖化はこうした海面上昇のほかに、ドミノ倒し的にさまざまな悪影響を及ぼす。気温が上がれば水分の蒸発量も増えるので、地面の乾燥化、砂漠化、干ばつが進み、農作物に大きな被害を与える。竜巻も増え、熱波が増加、洪水や、巨大ハリケーンによる水害が増える一方、人口の増加によって水の供給不足、水資源をめぐる争いの水戦争や食糧戦争,資源戦争が各地で勃発するとみられる。

米国CIAの調査では「現在の米中貿易戦争による覇権権争いや各地の戦争以上に今後の世界秩序にとって最大の脅威は地球温暖化の影響である」と分析している。

パリ協定からの離脱を表明したトランプ大統領とその支持者を除いて、科学者をはじめ誰もが地球温暖化の危機を今回の世界的な熱波の襲来でより深刻に受け止めている。温暖化は地球にとって何百万年の歴史における最大の変化であり、人類の生存にかかわる緊急の最重要課題であろう。

2017年6月、国連気候変動枠組条約UNFCCC事務局長クリスティアーナ・フィゲレス氏は「気候変動から人類を救えるかどうかはパリ協定で定められた地球温暖化対策が始まる2020年までの次の3年間が勝負で、これを逃すと危険を及ぼすレベルの気候変化を防ぐことが不可能になる」と警告した。

今回のストックホルム大学と各国大学が連携した国際研究チームが発表した「ホットハウス・アースの未来」よると「今後、数百年にわたってこのうだるような暑さが続き、海面がそびえ立つほど上昇する地球の気温の上昇がギリギリの臨界点(地球の上の森林、海、地面が吸収するCO2吸収のフィードバックプロセス)を超えてしまうまで、あとわずかしかない。たとえ世界各国がパリ協定によるCO2削減目標を達成したとしてもなお、我々はこの「不可逆な道」に転がり込んでしまうかもしれない。」と再度、警告している。

 - 人物研究, 健康長寿, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本メルトダウン(1003)―『トランプ「IT会談」全詳細/官邸ホットラインはティール主導で』●『「世界で最も影響力のある人物」ランキング プーチン大統領が4年連続の首位』★『世界のIT長者 日本からZOZO前澤社長が資産2,600億円で初ランクイン』●『東京23区「平均年収ランキング」圧倒的1位は902万円の……』●『東京23区「平均年収ランキング」圧倒的1位は902万円の』★『「英語力ランキング」日本30位で韓国下回る 政府の教育支出が低すぎ?』●『「世界人材調査」日本は61カ国中26位(語学力ワースト2位)、韓国総合31位、中国40位』

     日本メルトダウン(1003) トランプ「IT会談」全詳細 官邸ホットラ …

●『三井三池炭鉱炭塵爆発から60年』敗れざる者の豊かさ──「三池」を抱きしめた「半未亡人」たち」ジャーナリスト 池田 知隆著<『現代の理論36号』(23年11月刊)>

戦後最悪の炭鉱事故・労災事故とされる三井三池炭鉱の炭塵爆発。死者458名、一酸化 …

日本リーダーパワー史(680) 『日本国憲法公布70年』 『吉田首相のリーダーシップと憲法論と神学論争』吉田が偉大なリアリストであり国際政治経済への「先見の明」があったことは確かだ

日本リーダーパワー史(680) 『日本国憲法公布70年』 『吉田首相のリーダーシ …

日本リーダーパワー史(712) 陸軍軍人で最高の『良心の将軍』今村均の 『大東亜戦争敗戦の大原因』を反省する②「陸海軍の対立、分裂」「作戦可能の限度を超える」 「精神主義の偏重」「慈悲心の欠如」 「日清日露戦争と日中戦争の違い」「戦陣訓の反省」

  日本リーダーパワー史(712)  『良心の将軍』今村均(陸軍大将) …

no image
『オンライン/真珠湾攻撃(1941)から80年目講座➂』★『日米インテリジェンスの絶望的落差』★『ルーズベルト米大統領は、カントリーリスクマネージメントの失敗を是正するため新しい情報機関(CIA)の設置を命じた』★『一方、日本は未だに情報統合本部がな<<3・11日本敗戦>を招いた』★『2021年、新型コロナ/デジタル/経済全面敗戦を喫して、後進国に転落中だ』(下)』』

    2011/09/17  日本リー …

no image
名将・川上操六⑪の『最強のリーダーシップ』とは(3)<元老、先輩など眼中に置くな」>

名将・川上操六⑪の『最強のリーダーシップ』とは(3) <頭山満の評「川上は偉い。 …

no image
速報(131)『田中三彦氏、中手聖一氏と小出裕章氏が講義 (第2回 核・原子力のない未来をめざす市民集会)』

速報(131)『日本のメルトダウン』     『田中三彦氏、 …

「知的巨人の百歳学」(145)―『世界史を変えた「真珠王.御木本幸(97歳)の長寿健康法」★『「ないないづくし」の三重県の田舎の海で、日本初代ベンチャービジネス王に輝いた御木本の独創力をエジソンも大絶賛。ノーベル賞級の大発明!』★『ミキモトパールの発明が20世紀・中東の「石油の世紀」きっかけとなった』

世界史を変えた「真珠王.御木本幸(97歳)の長寿健康法」   &nbs …

『オンライン/ベンチャービジネス講座』★『日本一の戦略的経営者・出光佐三(95歳)の長寿逆転突破力、独創力はスゴイよ④』★ 『国難に対してトップリーダーの明確な態度とは・・』★『終戦の『玉音を拝してー➀愚痴を止めよ。愚痴は泣き声である②三千年の歴史を見直せ➂そして今から建設にかかれ』★『人間尊重の出光は終戦であわてて首切りなどしない。千人が乞食になるなら、私もなる。一人たりとも首を切らない」と宣言』

  国難に対してトップリーダーはいかにあるべきか。 1945年(昭和2 …

no image
<日本最強の外交官・金子堅太郎③>『ルーズベルト米大統領、全米を説得したーその驚異の外交力の秘密』

<日本最強の外交官・金子堅太郎③> ―「坂の上の雲の真実」ー 『ルーズベルト米大 …