ジョーク日本史・禅語は落語以上におもしろいー『仙厓(せんがい)はジョークの達人だよ」
2016/03/30
★(好評につき再録)ジョーク日本史・禅語は落語以上に
おもしろいー
ー仙厓(せんがい)はジョークの達人
仙厓義梵(せんがいぎぼん)
<(1750~1837)臨済宗。美濃の生まれ。月船禅慧に参じ、のち聖福寺の盤谷に師事した。その瓢逸な絵でよく知られている>
①ー仙厓が美濃(岐阜)の清泰寺に住職していた時のこと。金森美濃守による藩政は乱脈を極めていた。そこで家老職を更迭してなんとか刷新を図ったが、いっこうに政道は改まらない。
- これを見ていた仙厓はさっそく狂歌一首を詠んだ
- 『よかろうと思う家老が悪かろう 元の家老がやはりよかろう』
これが、早速、その悪家老の耳に入ったからたまらない。
「清泰寺の坊主、僧の身にありながら、ご政道に口出しするとは不届き千万」
と、国外追放の厳罰を言い渡した。しかし、仙厓はいっこうに平気の平左の屁の河童。使いの役人を前に、また狂歌一首をひねった。
傘(からかさ)をひろげて見れば天(あめ)が下
たとえ降るともみのは頼まじ
仙厓は飄然(ひょうぜん)と美濃国を出たが、それ以来、二度も美濃に戻ることはなかった。
②・・・・ある時、仙厓は江戸から博多への帰途、箱根の関所にさしかかった。ところが、どう見間違えたのか、番所の役人が和尚を「尼僧か、面を上げい」と問いただした。
すると、仙厓は無言のままやにわに衣のすそをたくし上げて、股間の一物を突き出しては、カッカッと大笑。度肝をぬかれてロあんぐりの役人を尻目に、すたすたと関所を通りすぎていったとさ・・・。
③・仙厓は博多の聖福寺の住職となっていた時のこと。福岡の藩主・黒田播磨守は、菊の花が大好きであった。このため、城中の庭園には色とりどりの菊花が栽培しては楽しんでいた。もし、誤って家臣が菊の花を折りでもすると、厳罰を下していた。家臣たちは菊にさわらぬ神にたたりなしで戦々恐々としていた。
ところが、小姓のひとりが誤って大輪の枝を折ってしまった。案の定、黒田侯はカンカンに怒り、さっそく閉門を申しつけた。小姓は悲観のあまり、切腹を決意した。この話を聞きつけた仙厓は早速、この小姓を訪ねて言い渡した。
「武士たる者が、菊、の花一本ぐらいで犬死にして何になる。ここはわしにお任せあれ」と自決を思いとどまらせた。
その夜、こっそりと城中の菊園に忍び入ると、何を思ったか、今を盛りと咲き競う菊花を片はしからカマで切り倒してしまった。
あやしい物音に気づいて出て来た黒田侯は、びっくり仰天、刀を引き抜いて、
「おのれ曲者、何やつじゃ」
と切り殺す勢いで迫ると、何と日ごろから敬愛している仙厓和尚ではないか。
「和尚、気でも狂うたか。何をしておるか」と怒り、ただすと、仙厓は平然として
「こんな草でも、こうして刈り取って積んでおけば、何かの時には埋草(城攻めの時、堀を埋めるのに使う草のこと)ぐらいにはなりますぞ」
<足軽小者であっても、日ごろ目をかけておけば、必ずいざという時には役に
立つものだ、と諭したのである。>
明君といわれた黒田侯はすぐに悟って、
「いや、和尚、わしが間違っていた」
と、さっそく閉門を許し、その後は好きな菊の栽培もやめてしまった。
④・・仙厓和尚が、ある壇家の新築祝いに招かれた時のこと。祝宴の席上、その家の主人から、「和尚さん、新築祝いに何か一枚書いていただけませんか」
と揮毫(きごう・毛筆で何か言葉や文章を書くこと)を頼んだ。よしよしと快諾した仙崖は、きっそく筆を取ってサラサラと書いた。
ぐるりつと家を取り巻く貧乏神
主人はこれを見ると、
「何です、この句は。縁起でもない」
とむっとした顔をした。和尚はニコニコしながら、
「まあ、怒るな。今すぐ、下の句を書いてやろう」
と、その下に1行を書きそえた。
七福神は外へ出られず
とたんに、主人は相好を崩した。
⑤・ある人がやってきて「何かおめでたいことばをかいてくれ」と仙厓に所望した。
早速、
祖死 父死 子死 孫死
の8文字を描いて与えた。これを見た本人は驚いて、
「和尚、いくらなんでもこんな縁起の悪い文句はかけられません」
と文句をいうと、仙厓は・・・・
「そんなことはあるまい。爺さんがまず死んで、父親が死に、子が死に
そのあとで孫が死ぬのが世の中の順当じゃ。こんなおめでたいことはない。
これが逆になればそれこそたいへんじゃよ」
これを聞いて大いに安心して、この墨蹟を家宝として大事に保存した。
⑥・・ある者が仙厓にいった。
「詩を作る時には太鼓の音はドーン(漢字)などと書きます。
和尚はたいへん絵がお上手ですが、いくら上手でも太鼓の音は描けますまいな」
すると仙厓は何くわぬ顔で、
「なに、たやすいこと。見ていなされ」
というやいなや、スラスラと筆を走らせて、一人の侍が長い槍を空に
向けて突き上げているところを描いた。何やらキツネにつままれた思いで
見ていた男は、
「これは何です。太鼓の音ではありませんよ」
というと、和尚は、
「天突(テンツク)く、天突(テンツク)くじや」
とカッカ大笑した。男もつられて大笑した。
⑦・・・瓢逸な和尚の画は大変な人気で、日ごろ、挿竜ぜめにあっていた仙厓は
うらめしや わが隠れ家は雪隠(せつちん)か
来る人々に紙おいてゆく
⑧・・仙厓和尚に「老人六歌仙」という、老いを戒める言葉がある。
- しわがよる、ほくろは出来る,腰まがる、頭は禿げる、髪白くなる
- 手は震う、足はよろめく、歯はぬける、耳は聞こえず、目はうとくなる
- 身に添うは頭巾、襟巻、杖、眼鏡、タンポ、温石、手便、孫の手
- くどくなる、気短になる、愚痴になる、出しゃばりたがる、世話やきたがる
- 開きたがる、死にともながる、淋しがる、心がひがむ、慾ふかくなる
- 又しても同じ話に孫ほめる、達者自慢に人はいやがる
関連記事
-
晩年長寿の知的巨人たちの百歳学(111)戦後の高度経済成長の立役者・財界の巨人「電力の鬼」 の松永安左衛門(95歳)の長寿10ヵ条ー「80歳の青年もおれば、20歳の老人もおる、年齢など気にするな」
晩年長寿の知的巨人たちの百歳学(111) 戦後の高度経済成長の立役 …
-
『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』ー『感染症を克服した明治のリーダーたち②』★『後藤新平と台湾統治と中国のねじれにねじれた100年関係』(5月15日)
後藤新平と台湾と中国 前坂 俊之(ジャーナ …
-
★10 京都/【超絶景】紅葉めぐりの旅(11/18)ー日本美の極致・宇治の平等院鳳凰堂『イチョウの万華鏡』
★10 京都/【超絶景】紅葉めぐりの旅(11/18)ー日本美の極致 …
-
「今、日本が最も必要とする人物史研究➅」★『日本の007は一体だれか→福島安正中佐➅』★『ウクライナ戦争と比べればロシアの侵略体質は変わらない』★ 「福島はポーランドの情報機関と協力しシベリア単騎横断でシベリ鉄道の建設状況を偵察した』★「福島をポーランド紙は「日本のモルトケ」と絶賛した』
ホーム > 人物研究 >   …
-
『オンライン講座/今、日本に必要なのは有能な外交官、タフネゴシエーター』★『日本最強の外交官・金子堅太郎のインテジェンス④』★『日露戦争勝利の秘密、★『『武士道とは何かール大統領が知りたいー金子のハーバード大での名スピーチ④』★『マカロフ大将の死を悼み、新聞に賞賛される』★『日露戦争は正義のための戦いで日本は滅びても構わぬ』★『ル大統領は「日本が勝つが、黄禍論を警戒せよ」と忠告』
2017/06/23 日本リー …
-
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』⑳「伊藤博文統監の言動」(小松緑『明治史実外交秘話』)⑤ハーグ密使特派事件の真相ー韓人韓国を滅す事態に
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』の …
-
百歳学入門(76)日本長寿学の先駆者・本邦医学中興の祖・曲直瀬道三(86歳)の長寿養生俳句5訓を実践せよ
百歳学入門(76) 日本長寿学の先駆者・曲直瀬道三(86歳)の長寿養 …
-
『リーダーシップの日本近現代史』(263 )/『東日本大震災/福島原発事故発生の3日前の記事再録(2011/03/08)』★『ガラパゴス/ゾンビ国家になってはいけない』★『ロジスティックで敗れた太平洋戦争との類似性』★『1千兆円の債務を抱いて10年後の2020年以降の展望はあるのか?」
(2011/03/08)記事再録―日本リーダーパワー史(130) 『自 …
-
『オンライン憲法講座/憲法第9条(戦争・戦力放棄)の発案者は一体誰か④』★「マッカーサーによって押し付けられたもの」、「GHQだ」「いや,幣原喜重郎首相だ」「昭和天皇によるもの」―と最初の発案者をめぐっても長年論争が続き、決着はいまだついていない』★『憲法問題の核心解説動画【永久保存】 2013.02.12 衆議院予算委員会 石原慎太郎 日本維新の会』(100分動画)
2006年8月15日/『憲法第9条と昭和天皇』記事再録 …
-
日本リーダーパワー史(187)『世界史上空前の宰相としての桂太郎―「日英同盟』破棄と「日独・日中同盟」を孫文と密約!?―
日本リーダーパワー史(187) 『世界史上空前の宰相としての桂太郎 ―「日英同盟 …
- PREV
- 日本メルトダウン脱出法(863)金正恩は側近に殺される?米研究者がリアルに予測(古森義久) ● 『中国史が指南する、南シナ海の次は尖閣奪取』●『日本を圧倒的に強くする「執行型教育」の勧め 文理融合など絵に描いた餅はやめ、実務に長けた人材育成を』●『米広告市場、まもなくネットがTVを追い抜く見通し 従来メディアは軒並み不振』●『ブラジル政治危機:今が潮時 (英エコノミスト誌 2016年3月26日号)』
- NEXT
- 日本メルトダウン脱出法(864)『大阪自由大学の読書カフェ「人工知能は人間を超えるか(動画60分)」(3/2)』●『消費増税がやはり延期されるべき現実的な理由』●『安倍政権が真にやるべき政策を 米国の経済学者に聞く必要はない』●『アマゾン決済採用で成約率7割に改善の凄さ』●『 人工知能ブームの火付け役、 ディープラーニングとは何か』