前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

知的巨人たちの百歳学(122)作家・里見弴(94歳)「90歳になっても欲張った方がいいね」文章の極意は「過不及なし」、『〝老醜”の”醜〃を恐れちゃだめ』

      2015/09/14

知的巨人たちの百歳学(122)

作家・里見弴(さとみ とん)(94歳)

文章の極意は「過不及なし」、「文章はその時の言葉

で話すように書きさえすれば良い」

『〝老醜”の”醜〃を恐れちゃだめ』

「90歳になっても欲張った方がいいね」

里見弴(さとみ とん)1888~1983年(明治21~昭和58年)94歳

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8C%E8%A6%8B%E3%81%A8%E3%82%93

神奈川県横浜生まれ。実兄の有島武郎(作家)と有島生馬(洋画家)影響で文学に親しむ。東京帝国大学英文科を中退後、1910年武者小路実篤、志賀直哉らと同人雑誌『白樺』を創刊。1916年に「善心悪心」で作家としての地位を確立。代表作に『多情仏心』など。心理描写、会話の妙に定評がある。「文筆の仕事は道楽仕事」と言われた。

1914年(大正3年)、27歳になった里見は自分自身を確立させるため志賀直哉と別れ、家族の反対を押し切って芸者と結婚する。そして恋愛や友情など、自分自身の経験を綴った作品をつぎつぎに発表した。

親父に小説を書いていることがバレて、「文筆の仕事なんていうものは道楽仕事』と昔の人は言って、それで「髪床とかタイコ持ちのするような真似を、なにもお前がしなくていいじゃないか』と非常に怒られた。

そこで筆名、偽名を使っれ、小説を書き続けた。その時のペンネームの電話帳広げて、そこに錐を落したら里見という所だったので、そうして、トンはべつにつけたという。

里見に最も影響を与えたのは、「白樺』の同人で5歳年上の志賀直哉だった

志賀とは生涯の友だが、作家同士の友情と、尊敬と嫉妬、ライバルとしての反発がないまぜになって「往来で会ったって顔を背け合って」の8年間も絶交したり、また友人関係が復活したりのつきあい続いた。

里見の文章のうまさには処女作の時から定評があったが、それに人間観察の確かさが加わり、里見は独自の文学世界を構築したした。

文章の極意は「過不及なし」

その文章道についても89歳の時にこう語っている。三文作家の筆者にとっても大安心の発言である。

「文章というものはだね、その時の言葉で話すように書きさえすれば能事おわれるんだと。いちばんわかりやすいということが文章の目的で、美しく書こうとしたってわからないんじゃしょうがないからね、わかるためには口で言う通りにけた書けばいいんだよ。

「じゃ上手な話し方というのはどういうものかというと、『過不及なし』ってんだよ。「過』は過ぎる、『不及』は及ばずだね。そうでなけりやいいんだよ。余計なことを言ってくどくなったら『過』だね。過ぎるんだ。『不及』というのは、肝心な言わなくちゃならないところを抜かしちゃうんだね。それじゃお話にならんわな。だから心がけるとすれば過不及なく話そうと。その通り書こうと。これだけで良いんだよ、簡単なんだ。」

『〝老醜”の”醜〃を恐れちゃだめ』

同じく89歳の時の長生きについての質問にはーーー

「『90にもなって欲張るな』と言う人もあるかも知れないけど、そういうことは欲張った方がいいね。何かこれから先、楽しいことがあるとかないとか、そんな余計なこと考えなくていいんだ。ただ生きてれば良いと思うね。まあ人によっちゃあ”老醜〃と言う。『醜い』という字を書くな。『老醜』を人にさらすぐらいなら早く死んじやったほうがいい」なんてね、口ばかりじゃなく、いくらかそういう気持ちのある人は早く死んじゃうからね。少々〝醜〃になってもかまわずに。“醜〟を恐れちゃだめだよ。そりゃ多少歯は抜けるし、目はショポショボしてくるし、頭の毛はなくなっちゃうし。そういうことを〝醜〃だと思えば.醜だけど。そんなにみっともなくはないだろ……(笑い)」

出典「あの人に会いたい」NHKあの人に会いたい刊行委員会編 新潮文庫 平成20年刊(48-57P)

 - 健康長寿

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『オンライン/渋沢栄一(91歳)の百歳生涯現役講座』★『50歳からの第2の人生へ出発』★『不断の活動が必要で、計画を立て60から90まで活動する』●『煩悶、苦悩すべて快活に愉快に、これが私の秘訣です。』★『90歳から屈身運動(スクワット)をはじめ、1日3時間以上読書を続けていた』

    2017/08/09 &nbsp …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(60)記事再録/『高橋是清の国難突破力②』★『「明治のリーダー・高橋是清(蔵相5回、首相)は「小さな 政治の知恵はないが、国家の大局を考え、絶対にものを恐れない人」 (賀屋興宣の評)

  2013/11/11    …

no image
『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『2021年東京五輪は是が非でも開催、成功させて、日本のデジタル底力を発揮し世界の未来を明るくしよう』★『1964年東京オリンピックを成功させた田中角栄のリーダーシップと突破力』(7月1日)

1964年東京オリンピックと田中角栄    前坂 俊之(ジャーナリスト …

人気リクエスト記事再録『百歳学入門(199)』★『関精拙、原坦山、仙厓ら<禅の巨人>の往生術から学ぶ』★『よりよく生きるためには、いかに死ぬかを学ぶ必要がありますね。「ピンピン、コロリ」(PPK)が理想といわれていますが、現実はなかなかこうはいきません」

 2010/01/21  再録 百歳学入門①ー知的巨人たちの往生術から学ぶ① 前 …

no image
知的巨人の百歳学(143)知的巨人たちの往生術から学ぶ②-中江兆民「(ガンを宣告されて)余は高々5,6ヵ月と思いしに、1年とは寿命の豊年なり。極めて悠久なり。一年半、諸君は短命といわん。短といわば十年も短なり、百年も短なり」

    2010/01/21/百歳学入門②ー知的巨 …

『鎌倉版<老人と海>動画散歩を楽しむ』★『シーカヤックでオーシャンブルーの鎌倉海でさかなクンとカモメと遊んで昼寝をすれば、すっかりいやされるよ』

2019/11/01  記事再録 『秋の鎌倉海で波と風と青空 …

『オンライン/日本農業改革講座」★『植物工場紹介動画』★『最先端企業「パソナ」は会社全体が植物工場に、オフィス内で植物栽培の驚異!』★『エコプロダクツ2014ーFUJITYU『植物工場」(会津若松AKIsaiやさい工場」』★『スマートコミュニティJAPAN2014ー成電工業の植物工場プラント』★『鎌倉長寿仙人朝食ー植物工場のレタスは新鮮、シャキシャキ、超旨いよ』

   最先端企業「パソナ」は会社全体が「植物工場」オフィス内で植物栽培 …

no image
記事再録/知的巨人たちの百歳学(134)『本田宗一郎(84歳)』ー画家シャガール(97歳)に会ったいい話「物事に熱中できる人間こそ、最高の価値がある」

2015/03/11 / 百歳学入門(105) スーパー老人、天才老人 …

no image
『 オンライン動画<2012年5月7日・連休!鎌倉カヤック・ハッピー日記>『沈黙の鎌倉海で―「釣れなければよし、生物を殺生するなよ、地球環境破壊の外道たちの未来を考える』★『2021年連休、地球温暖化で鎌倉海の生物は絶滅中だよ,ホントの動画❣・・・』

    2012/05/07  <鎌倉カ …

『Z世代のための百歳学入門』★『昭和戦後の高度経済成長から世界第2位の経大国へ復活させたプロデューサー「電力の鬼」・松永安左衛門(95歳)の長寿10ヵ条①』★『80歳の青年もおれば、20歳の老人もおる、年齢など気にするな』

 2015/08/13 晩年長寿の知的巨人たちの百歳学(111)記事転 …