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日本興亡学入門⑪ー『2010年世界はどうなる』ーアジア共栄圏のビッグチャンス到来!

   

日本興亡学入門⑪ 
 
2010年世界はどうなるーアジア共栄圏のチャンス到来!
 
前坂 俊之( (静岡県立大学名誉教授
 
 
鳩山内閣5D不況の到来か?
 
久しぶりにかつての仲間と会ってね。大手の新聞記者OB。1人はワシントン特派員だった経済記者と、もう1人は北京支局長という米中両ウオッチャーの対決。「2010年の世界は果たしてどうなるのか、奈落の底におちるのか、回復に向かうのか」をテーマに喧々諤々のてい談とあいなった。いずれも団塊世代の還暦越え組、いずれも糖尿病予備軍なのにすっかり飲みすぎて2日よいならね3日酔い。酔眼朦朧とした頭で、記録した泥酔、思い違いの「日米中やぶにらみ3国志」レポートとじゃ。

「リーマンショックから1年余、世界はすっかり変わったね。日本も大不況に突入、民主党に政権交代した“鳩山ど素人内閣”が3ヵ月ではやくも死に体に、鳩山不況の<5D不況(デフレ、ディルージョン〈気薄化〉、democratic party(民主党)、ドル安、ドバイショックの5つのD)の到来だね。オバマ米大統領の訪日も日本は1日で、中国は3泊4日、オバマは日本を離れて3日後には米中は世界で最も重要な2国間関係と宣言したよな。鳩山が日米同盟堅持をうたっても、沖縄の米軍の移設問題でも迷走中で、鳩山首相のリーダーシップのなさが混乱に輪をかけている」
 
「いや、そうでもないのでは・・。半世紀ぶりの初めての政権交代なんだ、鳩山内閣は健闘している。もっと長い目で見る必要があるよ。マスコミはいつもせっかちだが、世界は21世紀のパラダイムシフトの大転換の真っ最中なので、価値観が全く変わりつつある。過去の記憶で判断すると間違う。マスコミは官僚、自民党同様に旧体制そのものなので既成の枠組みを壊すことに異を唱えがち。眼先の経済の変化に一喜一憂せず、せめて10年から,50、100年単位で文明の変化をマクロに複眼的に見ていないと、誤った政策の繰り返しになるのがオチじゃ〈笑〉」
 
『中国が世界経済を牽引する』(ジョージ・ソロス)
 
「世界的な投資家のジョージ・ソロスが『中国はいち早く早く世界不況から立ち直り世界経済を牽引する。中国の経済発展モデルが世界経済を崩壊から救うと表明したね。アメリカ流の自由市場原理が崩壊し世界経済は中国式の国家管理型に移行する。この中国型の世界経済運営は、国連と連携した「グローバル・ガバナンス」(世界政府)やる必要があるとソロスは主張しているよ』
 
「確かに、確かに中国の成長率は8%台に回復、このペースで行けば日本は1年後には追い越し、2025年には米国に肩を並ぶ勢いだ。一人当たりでは中国の年収(GDP)が3200ドル、日本は4万ドルだが、国家ベースでは間もなく日本を抜く、すでに中国株式市場(A株)は東京株式市場を抜き去っているよ」
 
「だから、G2、『チャイメリカ』(中国+アメリカ)とか、『チャイネシア』(チャイナ+インド+インドネシア)で人口は合計27億人と世界の半分をしめる『アジアの世紀』だとかカシマシイ。インドの経済成長も8%台に回復しているし、約1年たった今、先進国の低迷とドバイ不動産バブル崩壊、石油資源国(ロシアなど)の立ち直りの遅さをみると、中国、インドの堅調さが余計に目立つことは確かだね」
 
「多くの識者が口をそろえる中国の勃興、2050年には遠からず中国が覇権を握る。『中国の時代の到来』との大合唱だが、ホントはどうかな。これも米国の識者で疑問を呈する者が多い。『中国が世界経済を牽引する』というのは幻想ではないのとね。人民元は、いまだにドルにペッグしている。中国のトップが世界をリードしていこうとは考えてもないし、世界の経済を率いていこうという気概もない。

世界最大の貿易国になっていても、今後、ドルに代わって元を世界の基軸通貨にしていくリーダーシップなどさらさらない気がするよ。中国当局は、世界不況の影響で自国経済が悪化を何とか最小限におさえることしか考えていない。米国は世界の警察官として行動をしているが、中国はあくまで自国の利益最優先の後進国、社会主義独裁体制での経済覇権国なのよ」

 
香港系の新聞もオバマの訪中を『世界を統率したいというのは米国の一方的な願望。中国は自国の政治的安定と周辺の安全にしか関心がない。米国とは平和な関係を維持していきたいが、国益を損なうことはしないので期待しないでほしい。イラン問題で米国が行き詰っていようが、中国はタッチしない』との本音を伝えたとの記事が載っていたね」

21世紀もアメリカの覇権は続く
 
アメリカのベストセラーで、『影のCIA』といわれる情報機関ストラトフォーの創立者ジョージ フリードマン著で「100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図」(早川書房、2009年10月刊)という本を読んだが、これがなかなか面白かったね。地政学を元に20年刻みで世界を予測。2020年までの世界はアメリカの意外な強さを目の当たりにする、2040~60年で米国が宇宙での太陽光発電技術の実用化に成功し再度アメリカの覇権が来るというんだ。
一方、米国への次の挑戦者は中国ではなく、多くの人が予想するpowerfulな国にはならない。中国は日本企業の進出などを通じて市場主義が共産統制を崩壊させ分裂していくのではないかと予想している」
 
「逆に、日本についてはポジティブに評価しており、短期間の内に、秩序正しいやり方で頻繁に方向転換が出来る国、それが日本である。日本はいずれ再軍備して、トルコが同盟を組んでアメリカと戦争する。今世紀半ばには、新たな世界大戦が引き起こされるだろう、と恐ろしい予言を書いている。結局、21世紀中期の世界戦争の勝敗を左右するのはエネルギー技術、宇宙軍事開発であるというシュミレーションだね。」
 
『オバマの国際戦略の影のブレーンのブレジンスキーも『世界的な政治覚醒』という論文で『これまで500年間、世界の中心は大西洋諸国(欧米)で、アジア、アフリカは植民地支配で抑制されてきたが、中国と日本などの新たな台頭によって、その状態は終わる。その次にはインドやロシアも勃興するかもしれない』と、同じことを言っている。総悲観論の日本は地政学的に最もいいポジションにいることを再認識すべきだ、そうすれば道は開かれる』
 
ドル暴落、基軸通貨の交代はあるのか
 
「どうなんだろう。アメリカ資本主義の没落、財政赤字の急拡大、ドル暴落、基軸通貨の交代というシナリオについても見方は完全に分かれている。ドルがいつ基軸通貨から転落するかについては、今年が二番底をつけるダウとドルの暴落が本格的に始まるという見方。
その一方で、結局ドルに代わる通貨がまだないこと、当分出てる状態でないことで、米国はタカをくっているんだね。

2番手のユーロはあれだけ多数の各国通貨がくっついており、交換のインフラ、国債市場もないので、ドルの足元にも及ばない。人民元にいたっては地域通貨にもなっておらず、50年早い。社会主義の通貨がもともと国際通貨の大役などできるわけがない。

だから今、さかんに論議されている国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)は米、ユーロ、円、ポンドの通貨バスケット制。ロシアはこれに代わって「ユーロ、人民元、ドル一、円、ルーブル、ポンドの新SDRを、提言しているがこんなものがまとまるはずない。

結局、基準通貨を牛耳っている米国はドル決済市場、機能を死んでも離さずがっちり握っている状態。不安定な通貨に代わって金へ金へとなびいているわけさ。いずれにしても、21世紀を主導するのはアメリカか中国か、という論考を読んでみると、アメリカの衰退も中国の台頭もいずれも誇張されているきがするよ」

 
「世界の動向、アメリカの外交戦略を知るには国際政治外交誌『フォーリン・アファーズ』は不可欠だが、この最新のレポートでは、21世紀のグローバル・ネットワーク社会では『国家パワーはいかにネットワークを形成するか。価値あるつながりをどれだけ多く作り出せるかだ。次に重要になってくるのが、共通の目標を達成するためのパワーを支える知識とスキルを持っているかどうかだ』、と言っているが、まさにこの通りと思うよ。」
 
過去の思考形態から脱却せよ
 
「われわれの論議はどうしても20世紀の世界観、古い記憶、知識に基づいている。大国の条件として人口、国土面積、大企業、大集団、ハードパワー(軍事、経済力)などを重視するのは、19、20世紀の工業社会の現実を前提にした古い考え。21世紀の情報社会においては人口が少ない国ほど有利になる。
 
人口の多さはむしろ負担になる。20年前のインターネットの出現以来、パワーシフトはモノから情報へ、リアルからバーチャルへ、ハードからソフトへといま180度転換しつつある。大国から小国へ、ピラミッド〈垂直型〉からフラット〈水平型〉の対等な関係、マスからパーソナル(個人)、ナノへ、WEB2,0,グローバルウェブ、クロウドコンピュータの時代へ大変化の真っ最中だ。21世紀の世界は新しいネットワークパワーを構築できる若い世代が主役になるのはいうまでもない、いわゆるデジタルネイティブというやつさ」
 
「インターネット社会のエンジンを生みだしたのはアメリカ社会の成り立ちである世界中からの移民を受け入れて、多民族異文化混合国家、多言語、バイリンガル、多宗教の人々の混合とコミュニケション、共生の産物で情報の流れが爆発してグローバル・ネットワークを生んだんだ。
 
その行きついた先が金融資本主義で暴走と自爆だが、世界のどの国よりもいまも充満した米国のイノベーション、ベンチャー精神、ダイナミックは衰えていない。若者にこの活力がある限り復活は間違いないし、長く低迷はしないと思うよ」
 
「中国を長年見てきたものとして、反論もしたいが、同意の部分も多いね。中国の弱みは普遍的な価値観がいまだないのと、秘密体質を強くい残っていること。インターネットによる情報開示、イノベーション、ベンチャー精神という点では全く後進国から脱していない。中国が最も恐れているのはインターネットの普及であり米国のソフトパワーだ。5万人のネット警察隊をつくって必死に反中国情報を取り締まって、体制批判を抑えているが、万里の長城と同様に防ぎようがないを早く自覚してもらいたいね」
 
ジャパンプロブレム(日本問題)はどうなる
 
「そして、ジャパンプロブレム(日本問題)はどうすればよいのか、どの方向に進むのか。新しく船出した鳩山丸は迷走して、どちらに向かうのか行き先を未だに明示していないね。米中の蜜月と日本の沈没の処方箋は・・・」
 
「アメリカ、中国の対極にあるのが日本だね。人口沈没、借金の雪だるま、少子化、急速な老齢化は町に出れば誰でもすぐ分かる。経済の変化の予想は難しいが、人口変動はより確実に予測できるんだね。

日本の10,20年後に絶対起きることは人口減少と労働力不足によって製造業立国は成り立たなくなることだ。日本の入口は2055年に9000万人弱、人口の40%が65歳以上となる。10年後には「働き盛り」の20~39歳の人口は今に比べて600万人減少する。

この解決策は移民受け入れ、日本開国しかないんだね。10年前に奥田碩,経団連会長が大胆な移民開放政策を唱えていたが、先送りにされてしまった。
 
他の先進国と同じように移民に大勢来てもらって働き手を増やして日本を多民族国家にチェンジするしか、日本沈没を防ぐ方法はないと思うね」
 
移民による人口増をめざせ
 
「確かに、外国人を『働かせてやる』という差別意識が強い日本。日本の経済大国からの転落で、外国人に来てくださいと頼みこんでも見向きもされない時代が迫っているのに。『高度人材から見た世界の労働市場の魅力度』の調査では、日本は中国や韓国を下回っており先進国では最低ラインの44位、世界からみて働きに行きたい魅力ある国ではすでになくなりつつあるんだ」
 
「中国の大学生の留学先をみてもヨーロッパ、アメリアが多くて日本は5%ほどの志望者しかない。頼み込んでも中国人留学生がきてくれない状況になっている。一方、経済的な理由もあるが、日本では海外旅行、留学しようという外向き指向の大学生がどんどん減っており、内向き志向が増えているのが気になるね。日本の将来に若者が不安をもって引きこもっているは日本の現状をネガティブに象徴している」
 
●『どっこい生きている』の精神こそ大事じゃよ
「先日の『男女共同参画社会に関する世論調査』で、20、30代では結婚しても6割が子供は必要ないと答えていたのにはショックを受けたね。これではますます子供のいない老人国になってしまうよ、ホントに」
「では本日の結論・1本しめじゃ。『どっこい生きている』の精神にもどれ。107歳まで元気に生きた彫刻家・平櫛田中先生の『60.70鼻たれ小僧、80、90男盛り』の言葉ではないが、われわれは定年を75歳までにして元気にシコシコ働いて、『今やらねばいつできる。おれがやらねば誰がやる』の気概で不況をのりこえるのよ」(笑い)

「そうじゃ、全くじゃよ」(3人ウンウンと大笑い)

 
 

 - 現代史研究

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