速報(66)『日本のメルトダウン』★☆『日本の原発依存症を生む補助金中毒文化』②―『ニューヨーク・タイムズ』(5月30日)
★☆『日本の原発依存症を生む補助金中毒文化』②
前坂 俊之(ジャーナリスト)
・日本では、欧米と異なり、原子力発電所の建設が、地元の徹底的な反対で白紙になるケースが少ないのは何故か?それは、政府、霞ヶ関からの巨額の補助金と、地元優遇の財産税が原子力三法の元で、地元に還元されるからである。
現ナマの威力で、地元コミュニティの人々の安全への希求を麻痺させ、リスクの最大化に直結する原子炉増設に狂奔させるからである。一度、事故が起きれば、奈落に落ちるのは自治体地元民であることを、札ビラで忘れさせている。
・日本は、この言わば国策であった原子力エネルギー供給体制の拡充を、再点検すべき時が来ている。国が地方自治体の原発建設の意思を、金で買う仕組みは、本当に国民の為、国の為になるのだろうか?原点に戻り、デモクラシーの良識が発揮される仕組みに戻さなければいけないのでは?と言っています。
・今回の福島大災害は、原発の危険性について、草創期から地元自治体の心配、不安を無視、過小評価せず、中央からの上から目線でなく、地元目線を大幅に重視して計画、設計されていれば、被害は相当防げたはずである。
・地元自治体の意思、良識を最大限尊重し、時間が掛かっても、主役は、国や電力会社では無く、原発のリスクを120%被る自治体であり、この良識から積み上げて行かなければいけないのでは?と言っています。地方自治体・地元不在の現状は絶対に是正しろ、と言っています。
この記事を読んで感じることは
・過去40年の東京主導型の誤ったプロセスが、福一の大事故に直結したのですよ、これを変えるのは今ですよ、と言っています。
・事故は直ぐに国際問題になる、日本国民の民意を集約した議論が必要。欧米と同様、国民投票も緊急事項と思われます」
2011/5/30 NYT by MARTIN FACKLER 、N. ONISHI
日本では、原子力発電への依存(従属)を促す(助長する)文化がある ②
確かに、鹿島町の様な町では今でも、沈黙の掟が支配している様に思われる。鹿島は5年前に隣町の松江市と合併しているが。
63才の漁師、アダチ・ツネヨシは、1970年代、1980年代に 2号原子炉建設に反対する大きな抵抗運動に参加した。彼は云う、当時大勢の漁民が、1974年に操業開始した1号原子炉のプラントのポンプから塩素が出て、元々の漁場の海草や魚を殺したので、怒りに燃えたと。
しかしながら、とアダチは云う、ひとたび2号原子炉からの補償金支払いが流れ始めると、仲間は彼に冷たい視線を浴びせ、それから彼を無視し始めた。1990年代の始め、3号原子炉が提案された頃には、足立も含めて誰もプラント建設に反対して、進んで主張する者は居なかった。更に彼はいう、ここでは多くの人達を怯えさせてはいたが、この福島原発事故の後でさえ、同じ様な「同等集団圧力」があった、何故なら彼等は島根原子力プラントの数マイル以内に、住んでいるから。
”確かに、島根原発で福島と同様の災害が起きるか如何か、我々は皆心の中で心配している”、しかしながらとアダチは云う,”この町は最早、原子力発電プラント無しでは経済的には生き残っていけない事を知っている”
公然とそう発言するものが少ない一方、多くの住民もまた、彼等の町が嘗て栄えた漁業をどうやって捨てたか について静かに語る。スポーツパークの様な派手なプロジェクトは、継続的、経済的な利益を殆どもたらさない、とも云う。
3号原子炉だけでも、この町(鹿島町)に 9千万ドル、約75億円の公共土木事業をもたらした。 そしてひとたび原子炉が運転開始となれば、その翌年には15年以上に渡り、財産税収入が別枠で合計6億9千万ドル、約560億円、約束される。
1990年代において、2号原子炉からの財産税収入は、鹿島町税収の3/4に相当した。結局、収入が減少しょうとしている事実が、町を3号原子炉の要求に駆り立てる一つの要因となった、と当時の町長、アオヤマ.ゼンタローは云う。
福島原発事故が、ここでは大勢の人々を驚愕させた事は、アオヤマ氏は認めた。それでも、と彼は云う、コミュニティーは島根原発を受け容れた事を後悔していない、原発によって生活水準を向上させ、多くの日本の田舎を過疎化させた人口減少を防ぐ事ができた、と。
原子力プラントが無ければここはどうなっていたか?73才のアオヤマ氏は云う, この町は1960年代後半、1号原子炉からの最初の補償金支払いを使って、屋内ポンプを設置した、と。
発電プラントは電力を殆ど遠方の都市部へ供給する一方で、プラントは孤立した不毛の田舎に建設された。
ナカムラ・カズヨシ、84才は、 日本海の荒海に面した鹿島町内の小さな漁村、カタク村の子供時代、その生活が如何に厳しいものであったか、を憶い出す。彼の父親は、小さな木製ボートを操ってやりイカやタイをとっていた。彼の母親は、その魚を背負って、草鞋を履いて細い山道を歩き、市場へ運んでいた。
いまだに、最初から居る地元の漁師は、原子力プラントの側の海草や魚の漁業権域を放棄する事を頑なに拒んでいると、当時カタク漁協の組合長であったナカムラ氏はいう。漁師達は、結局、漁師各人にトータルでは60万ドル、約5千万円になる補償金支払いを受け取った。
結局、我々は金に屈服した、とナカムラ氏は言う。
今日、ナカムラ氏の少年時代の床が土の小屋は、車道付きの特大の家屋にとって変わり、トンネルも出来て鹿島町中心地まで、5分でドライブ出来る。 しかし、新しい富は約300戸の小屋を意外な方法で変えている。約30人の年寄りの住民だけは、今だに漁業で生計を立てている。その他の多くは、原発プラントに今は勤務し、ガードマンや掃除人で働いている。
”金がまさしく、至って容易に流れて来たから、これ以上働く必要は無かった”、と反原発で町長選に2度出て落選した前町議会議員はいう。
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この現金の流れの大半は、電源開発三法の産物であった。この法律は、1974年に田中角栄 によって作られた政府補助金の複雑なシステムである。このパワフルな総理大臣は、日本の原子力発電事業の展望を描き、大規模な公共投資プロジェクトを使って、戦後日本の最も恐るべき政治組織を作り上げた。
この法律は、日本の全ての電力利用者に、公共料金の一部として、税金を払う様要求し、その税は原子力プラントと共に、地元に集約され支払われた。原子力産業を規制し、補助金を監督する経済産業省の役人は、補助金に頼る様になっている地元の数はどの位有るのか、について明示する事を拒否した。
" 原発立地の受け入れを促進するのは金である "、と資源エネルギー庁の長官官房、ナカノ・タツミ氏は云う。東通り原発を運転中の東北電力、そのスポークスマンは云う、電力会社は補助金の対象には含まれない、福島事故以来、原発の安全性を社会に約束する事に集中している。
政治的な専門家は云う、補助金はプラント建設の容認を促進するだけでなく、その後の拡張にも効き目がある。それは、補助金が、プラントや原子炉が運転開始となった後直ぐにピークが来る様に、それからその後で下降して行く様に制度設計されている、と。
"多くの場合、貴方が目にするのは、人口が減少し続け、課税標準が非常に少ない町が、恐ろしいほどのお金の氾濫を手にする事である" と 法律も研究したパデユー大学の政治学者、Daniel P. Aldrichが云う。
補助金が、原子炉の存続期間を通じて減り続けていくので、地元のコミュニティは新しい原子炉の建設を受け容れたいと云うプレシャーを受ける、とAldrichは云う。
"最初の原子炉で得た消費に慣れると、地元のコミュニティは第2、第3、第4 、第5と原子炉の建設を続けさせる様になる、と彼は付け加えた。
批評家は、双葉町のケースを指摘する、この町には、福島第一発電所の5号、6号の原子炉があり、それぞれ1978年、1979年に運転を開始している。
福島大学の清水教授によれば、福島第一とすぐ側の第二発電所は直接、間接的に双葉町を含めた地元コミュニティーで、11000人位を雇用し、これは約2家族に1人の割合である。
1974年以来、福島県の地元コミュニティーは、電気設備全体での補助金、約33億ドルを受け取っており、その大半は、二つの原子力発電設備からのものである、と清水教授は云う。
これら巨額の補助金にも拘らず、大半は1970年代に支出されており、最近、双葉町は財政問題を経験し始めている。鹿島町で起きた様に、補助金は、固定資産税も含め、原子力プラント関連の他の収入と共にやせ細ってきた。2007年までには、双葉町は日本でも財政的に最も難題を抱えた町の一つになり、殆ど破産同然になった。町の役人は、溢れんばかりの補助金があった早期に建てられた公共施設の維持費と、補助金はいつまでも潤沢にあると信じたお粗末な経営を嘆いた。
1988年から2006年まで福島県知事に就任し、原子力産業の批判者になったサトウ・エイサク氏は云う、1号原子炉が運転開始してから30年、双葉町はもう町長の給料も払えなくなったと。
1原子炉、1世代、約30年なので、1原子炉で、地元コミュニティーを生き残らせて維持する事は難しい、と佐藤氏は云う。
双葉町の財政危機に対する解決策は、政府と福島第一原発のオペレーターである東京電力に、二つの新しい原子炉を建設する様依頼することであった、これは結局福島第一に、原
子炉の数を8基にまで増やさせた。この要請は直ぐに双葉町に新しい補助金を齎した。
佐藤氏は云う、「 "薬 "が正しい表現かどうかは別にして、貴方がもし一度でもこれを口にすれば、絶対に再度口にしたくなるはずだ」と。
鹿島町の町長選で敗れた ナカムラエイジ 氏は云う、地元の町は、経済的な理由は勿論、政治的にも補助金のコンスタントな流入に依存する様になったと。そして、県や町のリーダー達は公共工事からの仕事と金を使って、建設業界や漁協の様な主要な選挙ブロックの支持を獲得した、そこには町の労働人口の約1/3が属していた、と。
"皆は原子力発電プラントとよぶが、実際には政治力プラントと呼ばれるべきだ"、とナカムラ氏は冗談を言った。
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ー " 失うべき多くのもの "ー
この補助金依存症があるので、菅総理が原発推進運動を遅らせる話をしても、本州北部の孤立した地域、下北半島同様、悩む所が殆ど無いのは何故かと云うことが説明出来る。
この半島の最初の原子炉は、2005年に完成し、2号機は現在建設中、更にまだ2つの原子炉が計画されている。日本はまた、そこで大量の核廃棄物処理と再生施設を建設している。原子力発電への新参者として、下北の主要な地元コミュニティは、今非常に多くのものを失おうとしている。(東北電力、日本原燃)
東通村を考えると、この村では原子炉が一基稼働し、これからの10年で、運転開始が予定されるのが更に3基ある。4基の原子炉の計画から補助金と他の収入が得られる事で、
地元の役人達は、20年前に、全く新しいタウンセンターの建設を開始した。(東北電力、東京電力)
急速に減少しつつある7300人の人口に奉仕して、この タウンセンターでは今では 、三角形、円形、正方形などの形をした、3つの巨大な、しかし殆んど使われていない建
物が聳え立っている。この建物は、東京に本社のあるデザイナーによると、男性、女性、子供をシンボライズしたものであると云う。
その近くでは、2つの陸上競技場、2つの大きな体育館、8つのテニスコートそして屋内野球場を備えただだっ広い学園キャンパスが有り、600人に満たない小学生と中学
生が使用している。2010年には、この町の予算、94百万ドル、約75億円のほぼ46%が、原子力関連の補助金と固定資産税から得られている。
原子力を監督する町の公務員、ササタケ・シゲノリ氏は云う、東通村は、福島でリスクに晒されたにも拘らず、日本政府とプラントのオペレーターが躊躇せず約束して、更に3基の原子炉をそこに建ててくれることを望んでいると。
"リスクがあるからといって、東京に原子炉を建設するという道は無い、こういう田園地帯でしか有り得ない"、とササタケ氏は云い、更に町の公務員等は、この様な壮大な建設
プロジェクトを引き受けたことを、内心後悔していると云うことは全く無いと付け加えた。
しかし、東通村の建設浮かれ騒ぎは、半島のもう一つの町で6300人の住民が居る大間町の眉を顰めさせた、この大間町では、2014年の操業開始予定で、原子炉1号機が建設中であったが、福島大災害の後、工事停止となった。(電源開発 )
大間町に原子力プラントを導入するに当たり、重要な役割を果たした前市長、アサミ・ツネヨシ氏は云う、この町は、将来 財政上の問題を生み出す様なゴテゴテして役に立たない
建物にこだわる積りはない、と。今の所、大間町は補助金を使って新しいタウンホールを作ることには反対し、その代わり、老人ホームは勿論、教育施設や漁業施設を建設しようとしている。
" 普通の人達や町議会議員達は、他の地域のコミュニティーで、原子炉1基の建設で終わっている所は無い、常に2基、3基とある、そこでもっとお金を使うべきだ " と言い続けたとアサミ氏はいう、" しかし、私は、それは駄目だ、と言った"。
いまだに、大間町でさえ、福島大災害が、その原子力プラントの建設を無期限に遅らせていると心配している。大間町のケースは、原子力プラントを拡大増設させる為に日本が創り上げた補助金とその依存症が、地域の地元が進路を反転することを非常に難しくさせているまさしく最新のケースとなっている。
大間町商工会議所の会頭、マツヤマ・ヨシフミ氏はいう、" 我々にはこれが絶対に必要だ、この場所にお金を齎すのは原子力プラントをおいて他に無い、それだけは確かだ、この
様な過疎地で、原子力プラントを招いてもてなす以外に、何が出来るのか? "
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