高杉晋吾レポート⑧☆衝撃内幕レポート!!『民主党が原発撤退を言い出せない訳は?、なぜ!』
高杉晋吾レポート⑧
☆衝撃内幕レポート!!
民主党が原発撤退を言い出せない訳!
高杉晋吾(フリージャナリスト)
●どうしてこんなに「土下座」する?異様な光景の背景に
最近、私には理解できない光景があります。
東電社長などが原発被害住民の抗議に対して、土下座して謝罪する光景です。土下座する彼等の内面にどのような思いが走っているのかということ、電力会社の社員たちがこの光景を見てどのように思っているだろうかということです。
私は彼等の頭の中では、「電力が国を動かしている。産業を動かし、国民の生活基盤を支えている。原発は国の支えなのだ」という考えがこびりついていると思いますね。
土下座している連中は、
「今は、自分が謝っているように見えるが、電気なしの国家も国民生活もないのだから、やがては自分を批判している連中も、自分の誤りに気がついて謝ってくるさ」
そういう考えが脳裏を走り廻っていると思いますよ。
そこでもう一つ、その問題を考える例を上げたい、それは中国の内モンゴルで石炭輸送のトラックがモンゴル人あるいは満州族の人をひき殺したという事件がありました。幾つも情報が乱れ飛んでいるので真相はわかりませんが、モンゴルの地域住民が国の進める石炭開発によってどんどん環境破壊にさらされていることに抗議した。石炭産業で働く人と地域のモンゴル住民の間で衝突が起きた。
この衝突で思いますのは水俣事件でチッソの会社員が水俣病被害住民と衝突した事件です。あれとそっくりですね。モンゴルのひき殺し事件は開発と環境の矛盾によって衝突が起こった。このことでモンゴルの人々は抗議デモを展開したのです。
この事件の背景には中国における電力事情があります。高度成長を誇る中国では電力が不足し、停電が頻発しているようです。産業がこのことで停滞しては高度成長が怪しくなる。そこで原発が頼りの綱だが、それでも電力は不足している。巨大ダムも開発しているが、中国で豊富な石炭が頼りになっている。
モンゴルにおける石炭開発は中国の電力不足を補う重要な柱にならざるを得ない。抗議デモはこうして起こった訳です。自治区トップの胡春香党委員会書記は「炭鉱事業と住民の利益との関係は、住民の利益を守ることを根本的な出発点とする」と言っているようです。意味深長な発言です。
住民の利益という場合、石炭開発を進めるのも住民の利益、環境を守るのも住民の利益です。胡さんの発言はどちらでしょうか?
●「原発の電気は抗議するお前たちも使っているだろう?
原発開発はそのために行っている。文句を言えるか?」
しかし中国当局も石炭開発の企業も開発を止めるはずがありません。なぜなら
「石炭開発は電力事業振興のためだ。それは抗議するお前たちのためでもある。電力不足で停電が頻発し産業が止まる事象が多発しているが、それは雇用にも響くし、家庭の停電も起きる。だから石炭開発は緊急に必要なのだ。電力あって産業だ。産業あってのお前たちだ」
そういう論理は原発開発と同じです。土下座する東電幹部や社員たちの頭に固執されているはずです。事故を起こした福島第一原発の廃炉をいい、浜岡原発の停止を言った管首相の頭にもそういう考えが固執しているから、全原発のストップなどは考えないでしょう。
現に民主党のなかの旧民社党のグループは、 「東電が賠償金を支払うにも限度がある。国が税金で支払え」と主張しています。
★民主党内部の原発勢力
この中心は大畠章宏前国交大臣。彼は日立製作所で原発のプラントの設計者だった人物です。ちなみに民主党の中枢には原発関係・電力会社関係に直接関係した人脈がどの程度関わっているかを見てみると、
・加賀谷健参院議員・・・東電労組出身。
・小林正夫参院議員・・・東電・電力総連副会長。
・松岡広隆衆院議員・・・関西電力出身。
・大畠章宏衆院議員・・・日立で原発プラント設計・建設に従事。
・藤原正司参院議員:・・元関電労組執行委員長。
・与謝野馨衆院議員・・・日本原子力発電出身。
・笹森清・・・・・・・・《2011年5月4日死去》元連合会長、東電労組委員長、民主党内閣特別顧問。
等がおり、彼等は、同調したり影響下にあるグループと連絡を取り合い、様々な影響を民主党内部に及ぼしています。
与謝野馨経済財政担当相は、ある閣議後の会見で、東電福島第1原発事故は「神様の仕業としか説明できない」と発言し、同原発の津波対策に関しても「人間としては最高の知恵を働かせたと思っている」と語り、「東電に事故の賠償責任を 負わせるのは不当だ」と強調しました。
wikipedeiaによれば「与謝野氏は、大学卒業後、日本原子力発電に就職し、その後原発推進の中心だった中曽根康弘元首相の秘書をへて政界入りしました。
1963年を卒業。母の知人・中曽根康弘の紹介で日本原子力発電に入社しました。日本原子力発電では、当初技術部に配属され、英語専門文献の翻訳などを手がけ、後に事務系に転じ、米国での資金調達や原子力保険といった金融業務に従事していました。さてこれからが注目すべきところです。東京大学法学部
会社の命で、民社党の核拡散防止条約に関する訪欧調査団に原子力の専門家・通訳として同行、スイス、ユーゴスラビア、イギリス、イタリア、ドイツなどを訪問した。調査団メンバーは後の委員長佐々木良作を始め曽祢益、岡沢完治、渡辺朗。与謝野にとっては政治家と深く関わった第一歩であり、こうした民社党の面々とは政界入り後も親しい関係が続くことになる。
佐々木良作と共にドイツ滞在中には中曽根康弘と邂逅、2人の政治家の食事のお供などをしたが、このことが政界入りの直接の契機となりました。
(高杉注)この佐々木良作は元電産の中心幹部でした。その後電産レッドパージの先頭で推進し、民社党の委員長になった人物です)
1968年日本原子力発電を退職し、中曽根の秘書となる。1972年12月の第33回衆議院議員総選挙に旧東京都第1区から自由民主党公認で立候補するが落選。1976年12月の第34回衆議院議員総選挙に東京1区から立候補し初当選。中曽根派に所属する。
衆院科学技術委員長、通産大臣などを歴任し、原発建設を推進してきました。
何と、自民党の原発推進の中心人物であった中曽根康弘、電産の裏切り者の佐々木良作等与謝野氏の母体は原発漬けです。中曽根のおひざ元から、その秘書だった日本原子力発電出身の与謝野氏が、唐突に民主党に鞍替えして大臣になるなどという珍妙奇天烈な怪喜劇が起るのも、与謝野wikipedeiaを読んで、こういう民社、中曽根との関係が分かれば、直ちに理解できます。
民主党が福島第一原発や浜岡原発は駄目だが、ほかの全原発のストップなどと言いだせない理由もこの事実から考えれば当然です。だが、この歴史上の根源を探れば、朝鮮戦争特需による日本資本主義の復興という現実に突きあたります。
朝鮮戦争に前もって日本最強の労働組合の電機産業労働組合《電産》とその中核を担った日本共産党の勢力をアメリカ占領軍(特に占領軍の公然たるヒットラー崇拝、日本軍部の戦い崇拝=絶対反共を持って任ずるウイロビー将軍)と共同で、米軍対敵諜報部CICと日本の労働局等の緻密きわまる情報網と武力で総力を挙げた壊滅させたレッドパージという歴史につきあたります。この歴史を少し見渡してみると::。
○1950年から1953年の時期は注目すべき転換期
私は原発やダムの出発点として1950年代初頭を重要視しています。1950年代初頭は、現代のエネルギー問題を知る上では、インターネットで総合辞典(wikipedeia)を引くようなエネルギー史の原点を見る時代です。なぜ、そういうのかと言えば、有馬哲夫早稲田大学教授の著作の次の部分を読めば納得されると思います。それには次のように書かれています。
1950年(有馬哲夫「原発、正力、CIA」新潮社P42より)
(1950年代当時の)「日本は産業を発展させようにも電力が不足していた。吉田総理が七年越し(高杉注、1946年以来)の交渉の末、やっとアメリカの輸出入銀行から電源開発のために総額4200万ドルの借款を得たのは1953年10月のことだった。もちろん、これで十分なはずはない。日本の復興と経済発展のためにはもっともっと多くの電源が必要であった。しかし大がかりなダムを作る水力発電では、立地が限られ、いくらでも造れるというわけではない。又人里離れた山の奥にあるダムの発電所では、電力を必要とする工業地帯から離れ過ぎていて、送電コストもかかった。その点、火力発電所は、規模はそれほど大きくなく、平地に作れるので、電力供上、都合の良いところに作ることができる。原子力発電はこれと同じ共通性を持つうえ発電コストが火力発電よりもかなり低くなると云われていた」
有馬氏のこの鳥瞰が、簡にして要を得た日本のエネルギー問題の出発点での事情を物語るものです。
★まずダムで儲け、それから原発へ
では日本のエネルギー政策はダムを通り越して原発へと直ちに向かったかというと1950年代初頭では、そう簡単ではない。第一着手としてダムの整備を行い,その間に現発の準備というのが手順と段取りです。
「取り合えず、まずダムで儲け、次いで原発で儲けようぜ」
これが当時の経営者たちの考えだったたろうし、現実にそのように進んできました。
実際、原発がエネルギーの中心になるまでの歴史はダム全盛の時代が続きました。
1950年当時、首都圏産業等に電力を送る発電所は日本全国でも福島県猪苗代湖を中心に流れ出す日橋川周辺の発電所群が、当時では最大の発電所群だったのです。
だから当時の最強の労働組合は、発電所を握る電器産業労働組合(電産)であり、かつその特異な存在は猪苗代分会だったのです。この最強の分会にGHQも吉田内閣も朝鮮戦争前夜に総力を挙げた組合つぶしを図ったのです。松川事件、三鷹事件、下山事件と今では冤罪事件として知られるでっち上げ事件を起こし、労働組合や共産党が起こしたテロ事件として宣伝し、カービン銃で武装した米軍やCIC(GHQの対敵諜報部隊)、中曽根康弘や田中清玄らを中心にした徹底した情報網、暴力組織などを総動員したレッドパージが行われました。このレッドパージで批判勢力を一掃した後に生まれたのが電労連という会社の生産性方針の言いなりになる勢力です。
猪苗代を中心にした発電所群は、猪苗代湖から流れ出す日橋川(にっぱしがわ)から新潟に流れる阿賀野川を経て、尾瀬方面から流れてくる只見川を遡上して奥只見ダム群へと開発がすすめられ、利根川へと開発の手が広げられます。このあたりが河川による電力埋蔵量が大きいので電力企業が注目していた地帯だったのです。
しかし、当時はまだ巨大な機械力による開発が不可能でした。なぜなら、巨大な開発のための重機等がまだなかったからです。その後アメリカからの巨大重機などが輸入によって山岳地帯の河川開発が可能になりました。
こうして1960年代から1980年にかけて信濃川、利根川、とダム群が首都圏に縦横無尽に広げられてゆき、止めを刺すように、八ッ場ダムが最後のダムとして開発されて行ったのです。
その後原発が CIA分子である読売新聞社主、日本テレビ社主である正力松太郎やアメリカに渡った中曽根康弘が主導して開発され始めました。
●原発は揚水ダム開発と一体、超高額電力
原発は電力需要が夜間と昼間で変動しても出力を変動できない。夜間電力が不要な時も空の電車を走らせるように、一定の出力で発電を続けなければならない。無駄な発電システムです。だから揚水ダムという上池ダムと下池を持つ対のダムによって夜間余剰電力を使って下池から上池に水をくみ上げ、需要のピークに達した時に上池から下池に水を落として発電するという揚水ダムを百基造りました。
一基数千億円を二基対で50基も作るのですから原発は数兆円の揚水ダム建設費を伴う高額なものです。原発は安いというのは全くの嘘です。
だから水力発電のダムは常に原発開発と双頭の龍のように結びついて、自民公明の政治資金を生み出す政治の主要課題なのです。
●レッドパージと生産性向上運動、民主党内民社勢力の意味
こういう日本産業の復興のためのエネルギー問題の出発点に、ダムや原発の政策を自由自在に操って資本家の利益になるように動かすためには、批判勢力は追放しなければならない。そのために口実を設けて邪魔になる人々を一掃しようと云うのが繰り返しますが、レッドパージです。
レッドパージその物の詳細は省きますが、様々なに日本の経営者たちがこのレッドパージを教訓に労働組合をどのようなものに育てようとしていたのかという総括文章、日経連の(労働七原則)(1953年6月)という文章につきあたります。
その前文を紹介してみます。
「 国際経済に対処する生産コストの引下げは絶対必要でありコスト高の原因には原料高、高金利、技術と設備の立遅れ、労働能力からみた賃金高などが指摘され、これを労働対策の面から採り上げるならば、企業の合理化と労働の生産性向上の二点である。労使関係の基調もまた国際経済に通ずる国民経済という共通の基盤に立つ事実を直視しなければならない。
国民経済の面からみた場合、生産指数が二七年において基準年次の一三九に達しており、実質賃金数もまた一〇二となっている。わが国の賃金水準はすでに戦前に回復した事実を労働者は率直に認め、その上に立って労使間の諸問題を解決すベきである。このように国民経済をみるとき、わが国の労使関係は従来の力関係による調整の方途をもっては打開できない。わが国労働運動のゆき方である階級闘争主義によっては、当面の経済的難局は解決できない。労働対策は国民経済の上に立った画期的な施策の転換を必要とする。」
この生産性についての経営者の『原則』について、レッドパージされた側の労働者はどう考えているのか?
中曽根康弘や田中清玄ら名うての反共の指導部を中心に、カービン銃を持って集結した手下らが、暴力団や機動隊、MPなどによって発電所に電産労働者締め出しのバリケードを築き、最も激しいレッドパージが福島県猪苗代などに吹き荒れました。猪苗代の発電所労働者は「発電所のレッドパージ」(光陽出版)という本で次のように記録しています。
「日経連はパージから三年後の1953年6月、『労働対策七原則』の中で、『合理化による生産性向上と産業平和の確立』(資本の儲けを大きくするために生産性を高めることに労働者の積極的な参加を求める)「産業破壊分子の排除」(共産党員とその支持者を職場からパージを続けて行うこと)等の方針を掲げました。
その一年後には『日本生産性本部』が発足し、『人間関係管理』(ヒューマンリレーションズ)の研究、実験が進み、それが各産業の職場にとりいれられました。雇われている者は自分の生活を丸ごと会社に捧げるのが当たり前という風潮が造られました。
出稼ぎ、低賃金、長時間労働はもちろんのこと、賃金差別、不同意転任、単身赴任、過労死、リストラ、自殺など、労働組合の右傾化と相まって、労働者の多くは、自分と家族の希望にそむく生活を余儀なくされました」と。原発の促進、レッドパージ、生産性の向上は労働者の権利を奪う三点セットです。
★☆「会社あっての労働者、家庭も地域もかえりみるな」
こうした中から電産の戦いにそむいて、日経連の志向する会社あっての労働者だという論議に完全に呑みこまれた民主化同盟《民同》が生まれました。その中軸は電力労働組合連合会(電労連)が電力労組の主導権を圧倒的に握り、その他の労組の主導権を握りました。
その周辺に総同盟、全労会議など生産性向上運動を軸にした(企業あっての労働者)という考え方の主流をなし、その流れが社会党右派であり民主社会党の流れを作りました。その後民主党になだれ込み、現在の民主党内部の民社系の勢力を形成し、中曽根を媒介に与謝野らと手を組んで自民、民主の原発推進をたくらんできたのです。
「電力会社の賠償責任を軽減し、住民の犠牲を無視する。そして国民の税金で電力会社の賠償責任を背負わせる」と云う考え方はこの流れを見れば納得できるでしょう。
この生産性向上勢力が自民と民主の中では、このように強固なのです。これらのグループは主として電力会社と癒着する電力労組の支援を受ける旧民社党系のグループです。
民社系思想の特徴は企業至上主義です。だから労組役員だった人が、次の瞬間には、その会社の重役になってゆくなどはごく普通のことで会社との癒着がものすごいのです。というよりは会社との癒着が彼等の存在そのものです。
この人たちの考え方は「電力あっての産業だ。工業あってこそお前たちは雇われている。会社あっての労働者だ」という企業至上主義です。生産性向上、コスト至上主義、会社への忠誠心での労働者管理等々、会社の思想にまみれ、会社と一卵性双生児のような思想で凝り固まっています。
これが、管政権が福島第一原発や浜岡原発など危険が国民に明らかになりすぎてどうにもならない原発だけを止めるというパーフォーマンスをやって見せて、「すべての原発から手続きや時間をかけても数年後には撤退する」とは言い出せない本当の理由です。
福島第一原発の現場で被害者に土下座をして見せても、一方では原発推進勢力に手を回し、賠償は国民の税金でやらせろと言わせている連中がどうして本気で国民に謝罪するということなどありえないことではないですか?
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