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日本リーダーパワー史(392) 対中韓外交をどうすべきか② 尾崎行雄の「支那(中国)滅亡論」を読む(上)

   

  

   日本リーダーパワー史(392 

日中韓150年対立・戦争史をしっかり

踏まえて対中韓外交はどう展開すべきか➂

ー尾崎行雄の「支那(中国)滅亡論」を読む(上)

1901年(明治3411月「中央公論」掲載)

 

前坂 俊之(ジャーナリスト)

 

 

この『清国滅亡論』の全集第4巻(1955年)収録の【解説】によると、次のように書いている。

1884年(明治17)年秋、尾崎行雄は25歳で、報知新聞特派員の名義で支那(中国)に遊び、上海を中心として支那及び支那人(中国人)を観察して帰国した結果、征清論(日中戦争論)を主張した。

支那(中国)は当時清朝の支配下にあったが、その実体の無力、無秩序なるにもかからず、支那人は尊大自負(中華思想)で、一方の日本人は過度な支那心酔(中国崇拝)に陥っていた。尾崎が征清論を唱えたのは清国(中国)と一戦を交えてその無力、無秩序を暴露すれば、支那人の尊大自負と日本人の過大な支那心酔とを一挙に是正する効果ある、と考えたためであった。

 しかし、尾崎の征清論は当時一笑にふされ、熱心にこれを唱えた尾崎はクレイジー扱いされたほどであった。ところがその後十年を経て日清戦争が起ると、日本軍は大勝し、果して尾崎の観察の正しかったことが証明された。

 この文章は支那観に関して行われた演説の大要であって、1901年(明治3411月号の中央公論に掲載された。(尾崎咢堂全集第4巻に収録、1955年刊)尾崎は愛国心、戦闘力、政治能力の三つが国家発展の基であるが、清国にはその何れもないので滅亡への途をたどらざるを得ないとの結論を下して、まさにその通りになったのである。

 

さて、この尾崎の対中国論が発表されてから、現在110年を超えた。

今再び、日中関係は尖閣問題をめぐって軍事緊張が続いている。110年前の中国認識は大きく変わったのか、清国の中華思想、中華優越思想は未だに続いているのか、
一党独裁共産主義国家(非議会民主主義)皇帝支配の封建主義と変わりないではないのか、国際法を相変わらず順守せず、大国意識丸出しの、汚職大国の恐るべき実態も改善されたのか、張子の虎の軍隊の実態も変わったのかー『日本議会政治の父』「憲政の神様」尾崎が中国にわたって上海に2ヵ月間、生活した中での迫真の対中国レポートである。

 


『下宿の二階から支那(中国)視察』

 

今日諸君にお話ししようと思う第1の問題は支那の運命とでもいうべきごく古い問題であります。

 

これは今を去ること十六年程前、明治十八年(1885)に私が考へを定めた問題であって、爾後今日に至る迄その経過が愈々ほぼ私の考への誤らぬといふことを証明しておる問題である。

 

わずか十五六年に於ける時日に於て兎も角も私の考へが誤らぬといふことを証明されて居る。将来二十年、三十年又は五十年の後にわたっても亦誤りますまいと私は信ずるのであります。

 

故に寧ろ新しき問題よりか少しカビの生へすぎて居るかも知れぬけれども、多少経験を頼んで誤りの少い古い問題を御話するの安全なるにしかずと考へました故に、これを諸君の前に訴へて御判断を仰ぎたいとお思います。

 

 丁度明治十八年にフランスと支那が南方に於て小競り合いをして居ることを聞きまして、私は戦争を見たいと思って支那に一寸参ったのであります、

 

参りましても澤山戦争の見物をせず、上海の下宿屋の二階で二月ばかりごろついて、何もみもしないで、戦争を見に行ったけれども神田あたりの下宿屋に居る如く、支那の下宿屋に二月ばかり居って眼を閉ぢて、支那の有様を見たのであります。眼を開いて見ているとしても、

 

四百余州の形勢、三千年にわって居るところの歴史的の関係のある国を、たった二ヵ月位で如何に見ればとて見ることは出来ませぬ故に、短日月の間に眼を開いて見るよりは、眼を閉づることの必要を感じました故に、私は下宿庭の二階で散歩どころか一歩も出ないで(満場哄笑)二ヵ月間の観察を致しました。

 

 その観察しました結果こういう判断を下したのである。第一、支那は近いうちに滅びて仕舞うに達ひない、若しこの国と戦う所の国はどこの国であらうと必ず勝てる。

 

日本が若しこの国と戦へば、秋風が木の葉を散らすが如く勝つことが出来る。

さういふ有様故に、支那は必ず滅びまするが、滅びましたのち彼の四億の人間は如何になるかというとこれは世界に散乱し到るところに勉強して金を貯めて金持になる。国なしで到る所の人に嫌はれ、即ち国は滅びて第二の猶太(ユダヤ)人となる。而して日本が若しも止むを得ずして戟ふ時には容易に勝てるといふ判断をした、それと同時に日本は之に対して如何にしなければならぬかといふことを考へました。

 

       支那滅亡論の根拠

 

さて、その考へを更に詳しく御話し致し与ると、第1は 支那は何故に国をどうしても維持することの出きない運命に立って居るかというに、私は先づ三つの基礎から考へたのである。

 

国がたって行かうといふには鼎の脚の如く必ず欠くべからざる脚がなければならぬ。国を立てるには、

その第一の足とするところの土地、その国の人民の愛国心といふことの必要を感ずる。

第二の脚というものは敵国外患の攻めてきた時にこれを食い止めるという勢力がなければならぬ、即ち戦闘力がなければならぬ。この二つがなければ何れの国もも必ず減ぶるとい思えるのである。この二つのものが備ったところで、その国内におるところの人民を治めて行くのに太平無事を保たしめるための、平常行政事務といふ、政治的能力が社会のいずれの部分にもなければならぬ。即ち愛国心・戦闘力・政治的能力、この三つのものが鼎の三本の足の如く国を維持して行くには欠くべからざるものである。

彼のトルコ帝国の如きは、愛国心はありますけれどもー宗教に基いておりまする者で、従ってその愛国心は少しく他の愛国心とは違っておるー非常に強い宗教的愛国心がある。又兵馬の間に立って精鋭なるロシアの軍隊も辟易する極めて強き戦闘力がある。此の二つのものが備つても、政治的能力に欠けて居るために、殆ど減亡する程の有様に陥っておる。その他、いずれの国の例を以ても三つの中一つが欠けても早晩減ぶるといふ考へである。

 この三つを支那の国にあてはめるに、支那人は第一、愛国心といふものが私は無いと見た。第二には戦闘力といって敵の攻め来る時にそれを防ぎ止むる力はない。又政治をなすの力がない。どうも支那は鼎の足が三つともない。一つ

無くともその間は必ず滅びるといふものであるのに、支那は、我が隣交たる同胞兄弟にして同文同人種でありまする支那は、不幸にして三つの足が欠けておる。

 

私もにわかに漢籍を学びました、支那人とも交際しまして、国々の関係を極めた後ちに学問的に観察致しましたのであります。にわかにても偏頗狭溢なる考を有っては到底本当の判断は出来ないのであります。故に私は支那の古い所の文学上の貴重なる尊重すべきことを捨てて、公平なる判断を致しまするに、この三つの要素といふものは一つもない。

 

                              つづく

 

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