前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『Z世代のためのトランプ米大統領講座㉔』★『ChatGPT対ディープシークのパラドックス』★『AIは今世紀における最も重要な地政学上の戦場』★『ディープシーク「ディスティレーション(蒸留)」の疑惑』

      2025/01/31

中国の人工知能(AI)スタートアップ「DeepSeek」(ディープシーク)が低コストで高性能のAIモデルを開発したというニュースで1月27日、ニューヨーク証券市場がAI関連業種を中心に急落した。AI主導株のエヌビディアは前取引日より3.07%も急落、1万9341.83で取引終了。 時価総額は5890億ドル(約91兆2479億円)も吹き飛んだ。米株式市場で史上最大の暴落となった。

●「ディープシーク」とは何か

「ディープシーク」(深度求索)・梁文峰氏CEO)は、中国・浙江省の杭州に拠点を置くAI(人工知能)のスタートアップです。 「AIが世界を変える」が信念の梁氏は2023年5月に数学とAIを活用するクオンツヘッジファンド「High-Flyer」を共同でつくり、米国の輸出規制前にエヌビィデアのハイエンドGPUを約1万個調達してLLMの開発を進め、「中国のサム・アルトマン」と呼ばれるまでになった。

ディープシークが2024年12月に発表した「V3」モデルの開発費用は560万ドル(約9億円)で、開発に数十億ドルが費やされてきたグーグル、ChatGPTなどと比較すると、約10分の1以下の低コストである。
ディープシークのラーニングに使用されたエヌビィデオの型落ちのチップ2000個以上だが、これまで同規模のモデルを作るには数万個のチップが必要とされており、このチップ数の十数分の1以下が低価格、価格破壊につながった。
1月20日にディープシークの最新の言語モデル「R1」はリリースされた後、アップストア無料アプリのダウンロード数でグーグルのGemini、オープンAIのChatGPTのモデルを抜いてトップになった。グーグルやオープンAIの強力なライバル 登場である。

創業わずか1年余のディープシークは、世界トップクラスのチャットボットに匹敵する高性能と、その数分の1の低価格を達成したことに、シリコンバレーはショックを受け、ニューヨーク証券市場のAI関連業種は大暴落したのです。

1月20日、ディープシークの市場デビューに対して、オープンAIのサム・アルトマンCEOは「新たな競争相手がいるのは刺激的だ。特にその価格で提供できる性能を考えると非常に優れたモデルだ」と称賛した。

●AIの『スプートニク的瞬間』

米シリコンバレーのベンチャーキャピタリスト、マーク・アンドリーセン氏はディープシークを「AIにおける最も驚くべき、そして印象的なブレークスルーの一つ」と称賛。「AIの『スプートニク的瞬間』」と呼んだ。旧ソ連が1957年に世界初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功したことになぞらえた。

トランプ米大統領は「中国企業によるディープシークAIのリリースは、わが国の産業に対し、勝つためにはレーザー光線のように競争に集中する必要があるという警鐘を鳴らすはずだ。金をそれほどかけなくて済むので良いことだ。素晴らしいAIの進歩」だと称賛した。

●「AIは今世紀における最も重要な地政学上の戦場」

昨年12月4日、米国国務長官元首席補佐官(2013〜15年)のデービッド・ウェイド氏は米国の人工知能(AI)は『スプートニクの瞬間』を迎えた」と題して

「AIは今世紀における最も重要な地政学上の戦場であり、(中露のような)修正主義国家もそれを認識している。北京は軍民融合、保護主義、国家主導の資本主義を採り、人権や法の支配を犠牲にして急速な技術進歩を遂げている。中国とのAI開発競争に絶対に負けてはならない」と呼びかけている。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/86262?page=5

 

●ディープシーク「ディスティレーション(蒸留)」の疑惑

1月29日、ロイター通信配信によると、ディープシークの開発について、「トランプ米政権の複数のアドバイザーは「ディスティレーション(蒸留)」と呼ばれる手法で米国の競合AIの先行技術を盗み取った可能性がある」と報じた。
ディスティレーションとは、より洗練された対話型のAIモデルに、新しいAIモデルからのディープラーニングを数万、数十万回繰り返し学習させて、従来モデルの学習内容を高度化する仕組み。ディープシークのこのモデルが、幾つかの米国のモデルの学習成果を転用した可能性がある」とみている。AIの分野でこの手法はごく普通の技術だが、オープンAIを含めて近年米企業が投入した先端的モデルで定められたサービス利用規約には違反する、という。

一方、この指摘に対して、サンフランシスコに拠点を置くデータブリックスのAI担当バイスプレジデント、ナビーン・ラオ氏は、AI業界でライバルから学習するのは「当然のこと」だと説明し、自動車メーカーが他社の車を買ってエンジンを詳しく調べる行動になぞらえた。
「全く公平に言えば、これはあらゆる状況で起きている。競争は実在し、抽出可能な情報があればそれを取り出して勝利しようとする。われわれは良き市民たろうとするものの、同時に誰もが競争している」(ロイター同)

 - 健康長寿, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(104)/★『記事再録/<まとめ>日本最強の外交官・金子堅太郎ーハーバード大同窓生ルーズベルト米大統領を説得して、 いかに日露戦争を有利に進めたか、その驚異のディベート・テクニック』★『『ルーズベルト大統領は「旅順陥落」に大喜びー黙っていると”Silence is Consent”。 どしどし反論せよ』⑤』

     2015/01/22の連載記事 …

『葛飾北斎の「富嶽三十六景」を追跡ー『外国人観光客のための新幹線からの富士山撮影法ー東京行きの上り東海道新幹線では「左側の座席」に座れば、窓越しに富士市の富士川鉄橋前から富士山のパノラマ全景が見える(動画)」★

12月23日(~27日まで)に故郷の岡山に新幹線で帰省した。この日は青空がクリー …

no image
百歳学入門(62)「財界巨人たちの長寿・晩晴学①」渋沢栄一、岩崎久弥、大倉喜八郎、馬越恭平、松永安左衛門―

百歳学入門(62)   「財界巨人たちの長寿・晩晴学」①  ―渋沢栄一 …

『Z世代のための世界現代史入門講座』(23年4月20日まで)ー『混迷する世界と「チャットGPT」●『トランプ前米大統領の裁判』●『プ―チン氏の戦争犯罪』●『習近平氏と台湾有事』●『日本の話題はWBCと大谷選手に集中』★「チャットGPT」が日本の救うのか』

  混迷する世界と「チャットGPT」   『米国+NATO+ …

『稲村ヶ崎サーフィン・モンスターウエーブ動画特集⓶』★『稲村ケ崎ビッグサーフィン(2018/9/29am720-8,30)-台風24号の大波を乗りこなすサーフィンーテクニック①』★『台風19号接近中の鎌倉稲村ヶ崎サーフィン (2019/9/10am7)-ついに来ましたビッグウエーブ、約50人の命知らずのサーファーが『決闘中!』

  稲村ケ崎ビッグサーフィン(2018/9/29am720-8,30) …

日本メルトダウン脱出法(617)『ヨーロッパのイスラム教は今まさに重大な局面」『世界最速の自動車 時速1000マイル」など6本

    日本メルトダウン脱出法(617)   &n …

no image
日本メルトダウン脱出法(792) 「ついに来た米国利上げ 、世界経済と為替への影響は?」●「軽減税率合意で消費税の矛盾はむしろ拡大した」●「バブル期の日本人と同じ? 「爆買い後」に中国人が向かう先」

  日本メルトダウン脱出法(792) ついに来た米国利上げ 、世界経済と為替への …

no image
世界/日本リーダーパワー史(957)ー『狙われる東京五輪とサイバーセキュリティー』★『「五輪ハッキング計画―無知な大臣が率いる五輪を狙う中国」』

世界/日本リーダーパワー史(957) 『狙われる東京五輪とサイバーセキュリティー …

no image
日本メルトダウン脱出法(819)『日本株が間もなく「落ち着き」を取り戻す理由―底打ちを示唆するシグナルが出揃いつつある』●『資源価格下落は日本への未曾有のボーナス(野口悠紀雄)』●『中国AIIBは、のっけから課題が山積しているー「格付けなし」で、どう資金を調達するのか』●『人民元安でも中国の輸出は拡大しない』

  日本メルトダウン脱出法(819)   今回の下落相場は、まだ下げき …

『Z世代のための明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破力講⑫』★『杉山の「バカとアホウの壁」解説②」★『約三千人の宮女に家の中で駈けっこをさせたいと「阿房宮」(長さ百里)を作ったのが「阿房(あほう)の語源』

明治末期の今の時代には、権力者や富豪の前へ出ても、違った事にも頭を下げ、「ご無理 …