前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『Z世代のための百歳学入門』★『日本最長寿の名僧・天海大僧正(108歳)の養生訓』★『長命は、粗食、正直、日湯(毎日風呂に入ること)、陀羅尼(お経)、時折、ご下風(屁)あそばさるべし』

      2024/10/10

 

天海の養生訓『気は長く 勤めは堅く 色うすく 食細うして 心広かれ』

第253世天台座主・山田恵諦(98歳)の説教でいわく
 「いままでの天台僧の中で、l番の長生きの年齢は百八歳です。私も百八歳まで生きて説法をし、見事に-百世紀を飛び越えたいと思っています。人間いくつになっても生きる目標は必要で、それがないと頑張れません。百八歳まで説法をしたいいまから十年ほど前、米寿(八十八歳)を祝ってくださるというのをお断りし、卒寿(九十歳)としてのお祝いならさせていただきたいと思いました。卒というのは、卒業の卒でありますけれども、兵卒の卒でもあって、一兵卒としてみなさんのお役に立ちながら、修行を続けていくという意味も含まれているからです。
 私は一八九五年に生まれで、満年齢でいうと九十八歳ですが、人間として母親の胎内に宿った時から数える、人間としての本当の年齢である数え年でいうと九十九歳、つまり百には一つ足らん白寿ということになる。
 天台僧の中で一番の長命者は、三百五十年ほど前の、天海大僧正です。織田信長に焼かれてしまった比叡山の復興に力を尽くし、百八歳の天寿をまっとうされました。
 天海さんは徳川家康公に長寿法は何かと問われ、『気は長く 勤めは堅く 色うすく 食細らして 心広かれ』と答えたと伝えられています。また、三代将軍の家光公には、次のようにも伝授されている。
 
長命は 粗食 正直 日湯 陀羅尼 時折ご下風遊ばさるべし
 
 
 日湯というのは、毎日の入浴のこと。陀羅尼(だらに)は信仰心を失わず、毎日ご真言を唱えて、禍を転じ福となすように祈念せよ、ということです。
別に「だらり」で、睾丸(こうがん)が悠然とだらりと垂れ下がった状態、ストレスがないことが健康の秘訣との説もある
 ご下風はおならのことで、時折は、腹にたまったガスを放出しなさいという。

ここのところが面白いではありませんか。理想ばかり追い求めて、難しいことばかり言うのではない。私どもは、現実に肉体というものを持っとるのですから、たまにはおならでもして、そのことを思い出さないとあかんと。ただガスを放出するという効用だけではなしに、ユーモアのある、深い教えがあると思うのです。

 天海さんは寛永二十年(1643年)、百八歳でありながら江戸から日光へ行き、東照宮の落慶法要をされて再び江戸に戻り、三カ月ほど寝込まれて亡くなった。
 
 長命のお坊さんとしてもう1人、忘れ難く、深く尊敬申し上げるのが、清水寺の貫主を務められた大西艮慶さんで、やはり百八歳まで生きられ、十数年前に亡くなられました。
お2人が偉いのは、たんに長寿であったというだけではなしに、百歳を超えてなお、最後の最後までご自分のつとめを果たされたことです。良慶さんは、亡くなる三カ月前まで、自坊から観音堂へ足を運ばれ、説法を続けられました。
 
私もこのお二方を見習って、何とか百八歳まで元気で説法をしたいと願うています。実は私にとって百八歳というのは、尊敬するお二方に並ぶということとは別に、もう;野心があるのです。それは坊さんとしての、幅跳びの世界記録です。つまり、私が百八歳になるのは二〇〇二年ですから、二十世紀を見事に飛び越えたことになる。
こんなに上手に一世紀を飛び越える人は、そうはおらんでしょう。人間いくつになっても生きる目標は必要で、こういう野心を持つと、何とか頑張ってみようという気になるものです。
 
「勤めは堅く、気は長く、大欲にして心安かれ」
 
 しかし、この歳になると、そう元気というわけにもいかなくて、今年初めには入院生活もいたしました。いろいろと内臓の方を検査してくれた医者は、「いまのところどこにも異常はありません。まあ、六十代ですな」とおだてたあと、「病気には、よくなるために養生する方法と、悪くならんように養生する方法とがある。あなたの場合は、悪くならんように養生するより仕方がないでしょう」と、なかなかうまい忠告をしてくれました。
 
 何もないということは絶対にないわけで、「養生することを怠られたら、だんだんと深みにはまります。だから養生だけは怠らずにして欲しい」と言うのです。
 
 応えるのは、やはり手足の疲れです。不思議なことに、座っておりましても、立っておりましても、横になってじっとしておりましても、同じように疲れる。ということは、動くより仕方がない。じっとしておったんでは駄目なんだと気づくわけです。動いておれば体の養生にもなるということでしょう。
 
 動くというても、そう簡単に動けるものやありません。私の仕事というのは、どちらかと言えば、じっとしとる方が多いのです。しかし、動けなんだらいくら寿命があっても意味がありませんから、動ける身体を維持できるように、養生せなあかんのです。寿命というのは与えられるもので、いくら頑張ってみたところで、自分で寿命を足すわけにはいかんし、どうなるやわからんことですが、できる限りの養生をせんならん。
 
私は座右銘勤めは堅く 気は長く 大欲にして 心安かれ
 
という言葉に置き代え、座右の銘にしようと思うています。全体の意味としてはそう大きな違いはないのですが、「色うすく、食細らして」ということは、いまの私にはあまり関係がないので除いてある。その代わりに、「大欲にして」という言葉を加えたのです。
 
説明するまでもないでしょうが、大欲というのは、世間で言う己の欲望が深いということではありません。人類全体、宇宙全体の平和と幸せを願うという意味での大欲です。そういう大きな欲を持たないと、大乗仏教の精神に合うた生活ができません。
 
悪事がはびこると寿命が縮むだけ‥
 
世の中に、悪心がはびこっています。こんなふうでは、仏教が言っているよう10歳をもって、人間は壊滅してしまうのではないでしょうか。そうならないためには、自己中心の考え方を改めなけりやならんのです。
 
 人間の寿命は、最初は二万歳であったと、仏教では説いています。善心ばかりで、悪心がなかったから、二万歳まで生きられたというのです。それが悪心が増すと共に、寿命が減ってきた。現在も悪心が増長しておりますから減り続けているわけで、やがて、人寿十歳をもって、人間は壊滅してしまうと教えているのです。
 
 (参考・山田恵諦『和して同ぜず』大和出版、1993年)
 

 - 人物研究, 健康長寿, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(321)若者よ世界へ『日本だけでもてはやされる人間』より『世界が尊敬する日本人』めざそう③

日本リーダーパワー史(321)   日本・世界・地球を救うためにー『日 …

no image
 日本リーダーパワー史(181)<百年前にアジア諸民族の師父と尊敬された犬養毅①>大アジア時代の先駆者

 日本リーダーパワー史(181)   <百年前にアジア諸民族の師父と尊 …

no image
  日中北朝鮮150年戦争史(36)<歴史復習問題>『120年前の日清戦争の真実』- 日清戦争は偶発的な豊島沖海戦から始まった①』

  日中北朝鮮150年戦争史(36) 120年前の日清戦争の真実 日清戦争は偶発 …

『オンライン作家講座②』★『知的巨人の百歳学(113)・徳富蘇峰(94歳)ー『生涯現役500冊以上、日本一の思想家、歴史家、ジャーナリストの健康長寿、創作、ウオーキング!』

    2019/11/20  『リーダ …

no image
『昭和史キーワード』終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「1億総ざんげ」発言の「 戦争集結に至る経緯,並びに施政方針演説 』の全文(昭和20年9月5日)

『昭和史キーワード』 終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「1億総ざんげ論」 (戦争 …

no image
★「ストップ・ザ温暖化で地球を救え、人類を救え!」ー国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPPC)は「温室効果ガス増加による人類の未来は今後数年の対応によって決まる」と声明』★『海が想定の1.6倍も熱を吸収していたことが判明、地球温暖化への取り組みの見直し』

  国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPPC)は「温室効果ガスの …

no image
 『F国際ビジネスマンのワールド・ビジネス・ウオッチ(198)ー『なぜ日本では起業家が育たないのか? 英米メディアの指摘する問題点とは』●『中国のEV市場が驚くほど急拡大した理由–日本はEV冷遇国?支援策で先行する中国』●『会社の未来をつくる「ネットワークの築き方」』★『トランプ大統領のシリコンバレーに対する意味―ニュースの大部分は暗い』★『  日本の科学研究、知られざる深刻な地盤沈下の実態…論文の被引用数の圧倒的少なさ』◎『「動画戦略なきパブリッシャーは生き残れない」:シェアスルー プレジデントの警告』

 『F国際ビジネスマンのワールド・ビジネス・ウオッチ(198)   な …

no image
高杉晋吾レポート(22)ルポ ダム難民⑥<和歌山県新宮、田辺本宮、古座川、白浜、日高川中津、日高美浜町の現場ルポ>

高杉晋吾レポート(22)   ルポ ダム難民 ⑥ 超集中豪雨の時代のダ …

no image
日本リーダーパワー史(342) 水野広徳の『日本海海戦論⑤ 勝利は物的、人的な優秀さのみではなく、天運が大きい」

日本リーダーパワー史(342)  ● 政治家、企業家、リーダ …

no image
日本メルトダウンの脱出法(551)「3つの要素」のバランスで姿を変え行く世界」「女王陛下を人質にした中国「成り上がり外交」

  日本メルトダウンの脱出法(551)   ★<チ …