前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『オンライン60/70歳講座/渋沢栄一(91)亡くなる1年前の名言』★『いくら年をとっても、人間を辞職するわけにはゆかんからね。こんな老いぼれが平素養生しているのは、せめてこういう時にこそ役に立ちたいからだ。もし私が死んでも、20 万人もの不幸な人たちが救われれば本望じゃないか』

   

百歳学入門(233回)

「近代日本建国の父」渋沢栄一の名言

    前坂俊之(ジャーナリスト)

 幕末から明治、大正、昭和にかけて、91歳の生涯を日本の民主主義、資本主義を築くという大事業に捧げた渋沢栄一(18401931)の業績については、いまさら言うまでもなく、すでに公知の事実です。

日本最初の株式会社組織である商法会所を設立(明治元年)したのをはじめ、第一国立銀行、日本郵船、さらに王子製紙、大阪紡績、東京ガスなど500余りの会社を創設、主宰、援助し、社会慈善事業でも600の事業に関わった「日本会社・資本主義の父」「公益事業の父」「近代日本建国の父」といってもいい存在でです。

西欧先進国に遅れること100年余、日本資本主義の建設の先頭に立ち、自らの儒教的教養を背景に「道徳経済合一主義」、「論語とソロバン主義」で、道徳(モラル)を重んじ、社会事業でも前人未踏の業績を上げ、国際連盟、国際自由貿易、民間外交の推進役として「総理大臣を超える」万能リーダーとして結果を残した。海外から「大長老」(グランド・オールド・マン)の尊称で呼ばれた。

 その偉大な足跡は、アメリカ建国の父のベンジャミンン・フランクリンを連想させる。彼の「フランクリン自伝」は米国での超ロングセラーだが、渋沢の「論語とソロバン」「処世の大道」もそれに比肩する。

今、世界の先進国では「人生百歳時代」を迎えようとしているが、渋沢は91歳という当時としては稀有の大長寿を達成した『晩年長寿の達人』であると同時に『生涯現役・臨終定年』を実践し、最期まで社会福祉事業に情熱を燃やしており、高齢者の晩年の生き方のすばらしいモデルとなるであろう。

渋沢は最晩年に次のようなエピソードを残している。

世を去る1年前の1930年暮、渋沢が風邪のため床にふせていると、社会事業関係の代表者約20人が訪ねてきて「窮民20万人の救済のことでお願いしたい」と面会を求めた。主治医と夫人は止めたが、渋沢はどうしても、と五分間の約束で会った。

「寒さと飢えに苦しむ人たちのため、救護法を実効あるものにしていただきたい」という陳情を聞いて、渋沢は答えた。「及ばずながら社会事業に尽くしてきて、皆さんの気持ちはよくわかる。できるだけのことは致します。それが私に与えられた最後の義務だと信じます」

来訪者たちが涙を浮かべるなかで、渋沢は、大蔵、内務両大臣に面会を申し入れ、再び主治医が「ご老体で冬の外出は危険です」とさえぎるのにたいし、翁は冒頭に引用した「いくら年をとっても、人間を辞職するわけにゆかん・・・・」の言葉を静かに述べたという(『明治を耕した話:父渋沢栄一』(渋沢秀雄、青蛙房、1977年)

九〇歳にして、自身が死期が近い病気のときに、これだけの思いやりと愛情を示した例には感動して胸が熱くなる、まさしく大尊敬に値する人物である。

 - 人物研究, 健康長寿, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(152)』『イスラエルに魅せられて再訪(2016/1)」(2)『聖ペテロ教会 とケドゥミーム広場』(ヤッフォ・テルアビブ地区)

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(152)』  『イスラエルに魅 …

no image
日本リーダーパワー史(650) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(43)『三国干渉』に日清戦争の立役者・川上大本営上席参謀はどう対応したか①『余の眼晴(がんせい)が黒いうちは、臥薪嘗胆10年じゃ』と

  日本リーダーパワー史(650) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(43)  …

no image
3/11フクシマ原発事故から3年―フィンランドの 「オンカロ」(高レベル放射性廃棄物最終処分場)部長ら3人の動画会見

  日本のメルトダウン(527)   3/11フク …

no image
日本リーダーパワー史(363)明石元二郎ー「日本版国家安全保障会議(NSC)」の創設に明石の<インテリジェンス>を学べ。

      &nbs …

no image
世界/日本リーダーパワー史(916)日本興亡150年史―外国人が日本を救う』★『➀明治維新→坂の上の雲を登る→昭和戦前の戦争で敗戦亡国②廃墟から立ち上がり独立、奇跡の高度成長で世界第2の経済大国にのし上がるが、一転、バブルがはじけて転落、第3の敗戦へ』

日本興亡150年史―外国人が日本を救う。 日本はついに移民政策を変え始めた。 政 …

『リモートワーク動画/(Kyoto Sightseeing)』★『世界文化遺産・平安神宮へ参拝(3/29)★『明治28年に創建の豪華絢爛の「平安神宮」応天門から本殿に向かう』★『平安神宮神苑」(池泉回遊式の日本庭園・国指定名勝)の蒼龍池を臥龍橋から観賞、桜はまだだが庭園美の傑作』

世界文化遺産・平安神宮へ参拝(3/29)ー明治28年に創建の豪華絢爛の「平安神宮 …

片野勧の衝撃レポート(79)★『 原発と国家―封印された核の真実⑫(1985~88) 』 チェルノブイリ原発事故30年(下)

 片野勧の衝撃レポート(79)★ 原発と国家―封印された核の真実⑫(1985~8 …

『オンライン/世界史の中の日本史』オープン原典講座』★『近代日本の父・福沢諭吉が<親の敵(かたき)でござる>とした徳川時代の差別構造(現在以上の超格差社会)の実態(身分差別/男女差別/上下関係/経済格差)を告発した『旧藩情』(全文現代訳9回連載)を一挙公開します(下)』

 日本一の「徳川時代日本史」授業、福沢諭吉の語る「中津藩で体験した封建 …

no image
速報(324)『日本のメルトダウン』●『橋下徹・大阪市長よりすごいぞ、千葉の熊谷俊人市長」●『総選挙で確実となる民主党の終焉』 

速報(324)『日本のメルトダウン』   ●『橋下徹・大阪市長よりすご …

『2023年【令和5年』正月の長寿お年玉プレゼントです』★『百寿者の<長寿健康名言>のクスリを一服を進ぜましょう』

   前坂俊之著「百寿者百語 生き方上手の生活法」海竜社 2 …