『リーダーシップの日本近現代史』(209)-『W杯ラクビ―の勝利と「モンスター」井上尚弥の世界一の共通性』★『「できない理由」を探すよりも「何ができるのか」を考える』★『日本社会と同じようなチームを作っても世界では負ける、他のチームの物まねをしてる限り、チームは強くならない』(下)
W杯ラクビ―の勝利(準決勝進出)と「モンスター」井上尚弥の共通性
前坂俊之(ジャーナリスト)
日本初開催となったラグビーワールドカップが大成功をおさめたのはなんといっても日本が勝ってベスト8に進出したこと。コーチ陣や選手、スタッフが一丸となって「ワンチーム」をつくり、フアンの大声援があと押して「ジャパン・ウエー」を切り開いたことだ。
エディー・ジョーズ前HCは秩序、礼儀を守り、ガンバリズムで、結果よりもプロセス重視のこれまでの日本ラグビーを根本的に変える。そのためには「W杯で勝つことがすべて。勝って日本のラグビーの歴史を変えよう」と」と明確な戦略目標をたてた。
その上で綿密に準備、チームの勝つ戦略、選手の使い方、攻撃、スクラムの技術戦術、対戦チームの研究、試合環境など総合的な調査研究を重ね2ヵ月ごとに進捗状況をチェック、超ハードな練習を長期間続けてきた。
エディーの勝つための名語録は示唆に富んでいる。
-
①ラグビーで勝つために体格差は関係ない、自分の体力メリットこそ最大に活かせ。
-
②「できない理由」を探すよりも、「何ができるのか」を考える。
-
➂勝つことが目標ならば行動を変える。行動を変えるには極端な事をしなくてはならない。
-
④日本社会と同じようなチームを作っても世界では負ける、他のチームの物まねをしてる限り、チームは強くならない。
-
⑤日本一の練習をするチームだけが日本一になれる。
-
⑥コミュニケーションができない選手はダメ。互いに指示(コミュニケーション)を出し、声を出し続けなければいけない。
-
⑦もっと貪欲に、もっと積極的に、もっとボールを欲しがれ!
-
⑧負け癖がついていると「ミスをするかも」と不安がよぎり、体が硬直してミスにつながる。
-
⑨成長したい意欲、強烈な飢餓感、ハングリーな人こそが成功する。
-
⑩リーダーとは、チームにインスピレーションを与える存在であれ。
-
⑪プロコーチは1年で勝てなければ次の契約はないと思え。
まだまだ殊玉の名言はたくさんあるが、エディーのコーチ学は勝つための戦略論、ビジネス経営学、リーダー論としても大いに参考になるものと思う。
2016年9月にこれを引き継いだジェイミー・ジョセフHCは大学で心理学を学んだ経験を活かして選手の気持ちをリラックスさせて選手とのコミュニケーション、チームワークを一層高めて、「ワンチーム」の俊敏性、フィットネス、スタミナを最大限生かした攻撃ラグビーを作り上げてベスト8進出につながった。
さて、世界一になる方法論として、私がW杯ラクビーとともにこの時注目していたのが 日本ボクシング界史上最強の選手とうたわれる井上尚弥選手(26歳)の11月7日の対ノニト・ドネアとの世界統一最強決定戦だった。
井上はこれまでのプロ通算成績は19戦19勝(16KO)無敗。16戦で3階級を制覇、世界統一最強戦(WBSS)の初戦は1R,1分10秒でKO,準決勝では2R1分19秒でこれまたKO勝ちをおさめ、「世界のモンスター」を名を不動のものにした。
11月7日開催の対ドネアとの決勝戦は2Rに井上は初めて右目上部を切り流血(右の眼窩底と鼻の2か所骨折)、顔半分が血に染まる壮絶な展開となり、井上は最後までドネアがかすんで二重に見えたという。両者の激しい打ち合いの1進1退が続き、11Rに井上はカウント9のダウンを奪ったが、ドネアも立ち上がって猛反撃、最終の12Rまでもつれ込んだ。結局3-0判定で井上が勝った。
私は半世紀に上るボクシングフアンだが、最後の最後までハードパンチャー同士の壮絶な撃ち合いが続いた史上最高のエキサイティング試合だったとラクビ―同様に熱狂、感激した。
いうまでもなく、最もハードな激しい格闘技といえば団体ではラクビーで、個人ではボクシングではなかろうか。その世界チャンピオンになる方法論、井上の勝利の秘密はイチローの名言、エディーの名言とも共通していると思う。
-
①まず世界一になる目標を掲げる。弱い相手と戦うマッチメークはやらない。ガチンコ勝負に徹する。それを達成するための努力、ハードな練習を続ける。
-
②ボクシング一家に育ち、父がコーチとして小学生の時から二人三脚特訓した。(イチローの場合と同じ)
-
➂ボクシングの基礎スタイル(構え方、打ち方)スパーリング、ランニングなどの基礎を徹底して身につけた。その単調な練習を毎日毎日継続してきた真面目さ、努力と天性の素質、それに非常に謙虚な性格が勝利につながった」(大橋秀行ジム会長)
-
④井上の身体能力の筋力や反射神経、動体視力の数値は一般人とあまり変わらないが、カウンターのタイミング、ステップ、ディフェンス、距離のとり方、ボディ打ちなどテクニックのすべて満点という。
-
⑤「人は3分間も絶対に集中できない」ので相手の動きをすべて読んで、目の動きとか、呼吸の乱れ、体の動きからその集中力が途切れた一瞬(0、01、2秒)のスキをとらえて必殺パンチを繰り出すテクニックがスゴイ。
-
⑥オーソドックスから臨機応変にサウスポーにスイッチできる万能ボクサーであると同時にKO率(90%)のメガトンパンチの威力と鉄壁のディフェンスの両方を備えた選手は例がない。
井上選手はどこまで伸びるか、今後がますます楽しみだ。
関連記事
-
★『オンライン/新型コロナパンデミックの世界』(2020年12月―21年1月15日)★『 コロナ第3波に襲われた世』★「トランプ大統領の最後の悪あがき、支持者が米議事堂に乱入!』★『バイデン新大統領の就任式(1/20日)★『中国の強権、戦狼外交が続く』★『今年7月に中国共産党は結党100年を迎える』(下)
「トランプ大統領の最後の悪あがき、支持者が米議事堂に乱入!」 前坂 …
-
日本リーダーパワー史(730)<国難突破力ナンバーワン・出光佐三を見習う③ 『石油メジャーに逆転勝利した最強のリーダーシップ』、「首切りなし」「定年なし」「出勤簿なし」という破天荒な「人間尊重」「大家族主義」「独立自治」「黄金の奴隷たるなかれ」
日本リーダーパワー史(730) <記事再録、2011年8,01> 日本リーダー …
-
最高に面白い人物史①人気記事再録★「日本の歴史上の人物で、最大の世界的な天才とは一体誰でしょうか>→ <答・南方熊楠こそグローバル・スーパーマンです>
2015/04/29 発表 「世 …
-
日中北朝鮮150年戦争史(16)日清戦争の発端の1つ甲午農民戦争(東学党の乱)はなぜ起こったのか。『閔族一派専横の時代』の内政の腐敗、紊乱、貪官汚吏の収賄,苛斂誅求に対する百姓一揆だった。
日中北朝鮮150年戦争史(16) 日清戦争の発端ー日本最強の陸 …
-
『鎌倉釣りバカ人生30年/回想動画録』⑲★『コロナパニックなど吹き飛ばせ』★『10年前の鎌倉沖は豊饒の海だった』「釣れない・恋れない・釣りバカ日記③」 ★ 『自然に帰れ』―母なる海に抱かれて、魚と戯れる、また楽しからずや」 『鎌倉沖プライベート・シーで、同窓会ラブを思い出したよ』
2010/07/03 「釣れない・ …
-
『オープン講座/ウクライナ戦争と日露戦争①』★『ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」がウクライナ軍の対艦ミサイル「ネプチューン」によって撃沈された事件は「日露戦争以来の大衝撃」をプーチン政権に与えた』★『児玉源太郎が指揮した日露戦争勝利の秘訣は軍事力以上に外交力・インテリジェンス・無線通信技術力・デジタルIT技術にあった』
ウクライナ戦争でロシア侵攻作戦の要であるロシア黒海艦隊の旗艦・ミサ …
-
日中北朝鮮150年戦争史(18)世界史『西欧列強の植民地争奪合戦』の中での日清戦争勃発〈1894年)『ヨーロッパ列強(英、仏、独、ベルギー、ロシア)のアフリカ、アジア分捕り合戦の同時進行」①
日中北朝鮮150年戦争史(18) 世界史『西欧列強の植民地争奪合戦』 の中で …
-
速報(187)『日本のメルトダウン』『子供に関しては検出限界の低い測定器で将来の発病に備える』ほか
速報(187)『日本のメルトダウン』 ●『子供たちに関しては検出限 …
-
日本リーダーパワー史(439)日米中韓150年戦争史②『征韓論の深淵』大院君は日本の外交関係などへとも思ってなかった②
日本リーダーパワー史(439) 日米中韓150年戦争史をしっかり踏まえて …
-
速報(257)<原発事故民間事故調報告書『世界を震撼させた3月の7日間」①<菅元首相のリーダーシップは?!
速報(257)『日本のメルトダウン』 <福島原発事故独立検証委員会 …