終戦70年・日本敗戦史(109)日本兵はなぜ「バンザイ突撃」「玉砕」「餓死」など 「死んでも戦った」のか。その秘密は「戦陣訓」と「内務班」の日本兵残酷物語にある。
2015/07/15
終戦70年・日本敗戦史(109)
日本兵はなぜ「肉弾突撃」「バンザイ突撃」「玉砕」「特攻」
「餓死」など「死んでも・死んでも戦った」のか。その秘密は
「戦陣訓」と「内務班」の日本兵残酷物語にある。
内務班での日常化した「暴力・リンチ訓練」で上官の命令に
絶対服従の非人間的な殺人マシーンに仕立て上げられた。
外国人捕虜の虐待、虐殺、日本兵の大量死、餓死、虐待には
「生きて帰れない、死を強制された兵士への人権無視にあった。
この狂信的集団マシーン陸軍の大暴走が「大東亜戦争の悲劇」である。
日本敗戦史(48) 「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』の内幕——
無謀な大東亜戦争での日本兵残酷物語の「内務班」
<兵士たちは召集令状「赤紙」1枚(1銭5厘の命―現在の値段で約100円)とただ同然で
集められ、旧式の38歩兵銃1つを貸し出され、消耗品として戦場で大量死。
その教育現場/内務班での「恐るべき暴力装置」の実態を野間宏らが語る
http://www.maesaka-toshiyuki.com/war/5763.html
大江志乃夫「天皇の軍隊」(小学館、1982年)によると、
「軍紀とは服従であり、完全服従兵士に人格を改造することが軍隊教育」
映画「真空地帯」では「内務班」のリンチ実態が克明に描かれている。
初年兵として入営すると地獄の「内務班」生活をおくることになる。
「1銭5厘」(現在の貨幣価値で約100円)で無尽蔵に、徴兵された初年兵の生活は「ラッパで整列して日朝点呼をうけ、ラッパで三度の食事をし、ラッパで日夕点呼をうけ、ラッパで消燈するという、時間に追われる生活がはじまる。軍隊生活のリズムと独特の軍隊用語を身につけるまではマゴマゴするばかりである。
このマゴマゴが致命的である。いつまでも〝地方″すなわち一般社会の気分がぬけないということで古兵が新兵に暴力をふるう最初の口実となるからである。
初年兵はその日一日の何かの落度を口実に、私的制裁という暴力にさらされなければならなかった。
軍隊において、上級者が下級者にたいして暴力をふるうことは制度上は禁じられていた。しかし、このの禁止ほどまもられなかったものはない。兵営生活に暴力はつきものという常識が公然とまかりとおっていたし、私的制裁とよばれる兵営内暴力がしばしば初年兵の自殺や逃亡の原因であることも広く知られていた。
兵営内の暴力が必然であった原因は、徴兵制軍隊の制度そのものに根ざしていた。徴兵制軍隊は、青年を、当時の軍隊が〝地方″とよんでいた一般社会から強制的に隔離し、一般社会の価値観とはまったく異質の価値観にしたがうことを強制する組織であった。質の価値観にしたがうことを強制する組織であった。その異質の価値、軍隊を律する最高の価値が「軍紀」であった。
軍隊内務書や綱領には「軍紀は軍隊の命脈なり,軍紀の要素は服従にあり。故に全軍の将兵をして身命を君国に献げ至誠上長に服従し、其の命令を確守するを以て第二の天性と成さしむる」とある。服従を第二の天性として身につけるように人格を改造することが軍隊教育の目的の一つであった。そこには批判的精神の存在や知性の存在は全く許されなかった。
訓練、雑用に追われる初年兵にはゆっくりと食事をするひまもなく,「早めし」を要求された。
銃の手入れー官物である兵器の手入れには度をこした厳密さが要求され,わずかの過失も私的削我の絶好の口実とされた。
タバコ・ハガキ等日用品の借用、酒保における飲食の饗応、物品の贈与、金銭の借用、活動写真劇場・温泉等に同行しその支払いをさせる。これらの苦痛が直接に本人にくわえられるだけでなく、本人に非常な苦痛をあたえるように環境をつくりあげることも陰湿な軍隊内暴力の特徴である。
精神的苦痛をあたえる方法として、他人の秘密をあばく、罵倒侮辱とも多い肉体的苦痛をあたえる方法として、殴打(拳、上靴、帯革)などである。
肉体的苦痛をあたえる方法については
拳でほおをなぐるビンタは日常的である。皮製のスリッパである上靴でおこなうビンタ、幅広の皮製ベルトである帯革や銃腔掃除用の鋼製の細い棒である洗矢・携帯テント用の樫の木製のとがった細い杭をもってするむち打ち、
初年兵同士をむかいあわせてなぐりあいをさせる対抗ビンタなども初歩的な暴力であった。武技の悪用でもっともふつうの方法は銃剣術用の木銃で突きたおすことであった。
そのほかの、いじめとリンチと屈辱をあらゆる陰惨な(漫画チックでサディスティックな方法が日常茶飯事に加えられた。
寝台を背負わせてその上に二年兵が上がる。銃などの重い物を前に突き出した手で保たせ、下ろしたら叱責する
・腕立て伏せでひじを曲げたままの姿勢を長時間とらせる。足のつま先を寝台の上にのせてこれをさせるのを急降下爆撃という。
- 寝台を一つおきにくぐり乗越えさせる(うぐいすの谷渡り)。
- 柱にのぼり片手で鼻をつまみセミの鳴き声をまねさせる(せみ)。
- ひもを結び合わせた靴を首に下げ四つんばいで各内務班をまわらせる。こういういじめの手法が全国の兵営に伝えられていた。
- 海軍では精神注入棒と称するバットで尻を強打するのが普通の方法であった。
以下は証言『日本軍前線部隊の内実』<新兵いじめ>による体験談ー
http://www.d8.dion.ne.jp/~judebu/papa/papa4-7.html
犬の拾好で各内務班を廻ってくるように言われました。
「今度は私自身のことですが、一期の教育も終り原隊復帰して幾月かたった頃でした。靴の踵を減らして営庭を歩いていたところ、他の班のモサクレに捕まりました。
古兵達の靴の修理は、修理技術を修得した縫工兵が直しますが、新兵の場合は、自分で修理するよう言われていたので、当然、自分の怠慢に当るわけで、早速その場で靴をめがされ、靴を靴ひもで結び四つんばいになってひもの中心を食わえ、犬の拾好で各内務班を廻ってくるように言われました。
「この野郎」と、腹の底から口惜しさは込み上げてくるが、抗することはできず、四つんぱいのままひもを結んだ靴を食わえたみじめな恰好で
「井ノ口二等兵まいりました。井ノ口二等兵は履いている軍靴の手入れが悪く、◯◯一等兵の命令で、各班にあいさつ廻りするよう言われ、ただ今参りました。」 新兵らしくはきはきと、精一杯の声で口上を述べます。すると暇をもて余している古兵達の供笑をかい、とり分け三年兵の中でも進級が望めない「ワル」で、中隊内の厄介者になっている、通称「モサクレ」と呼ばれている連中が、各班には一人や二人は居りまして、その者達の餌食になることは、覚悟しなければならなかった。
「ワンと鳴け」
モサクレからの容赦のない第一声がとんできます。私は言われるままに犬の鳴き声をまねます。するとモサクレから第二声がとんできます。 「声が小さい」
私は更に大きな声をはり上げて、モサクレの怒声に答えます。次には 「チンチンをやれ」
私は今度は両手を前に出し、両足をそろえてピョンピョンととんで犬のまねは終ります。犬に飽きたモサクレは、今度は急に声を落とし猫なで声で 「お前東京に彼女がいるだろう」
とか
「手紙は月に何通ぐらいくるか」
とか、特に女性問題では下劣な質問が多く、うっかりその手に乗ったりなどして、ニヤニヤしようものなら、相手の仕掛けた罠にはまるようなもので、その後には手荒い体罰が待っており、その手にうっかり乗るわけにはいかないのです。でも、その手のたぐいに乗らなくても、最後には握り拳で両ほはをなぐられ、外へ突きとばされました。
犬にされたのですから手は使えません。口の周りを泥だらけにしながら、再び地面に転がっている軍靴のひもを、懸命に食わえようとしながら、自分がなんとも哀れでやり切れず、こんな行為をさせられた口借しさで、靴の上に涙がポタポタと落ちたのを、今でも思い出すことがあります。」
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