日本リーダーパワー史(567)戦後70年を考えるー「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』の内幕— <ガラパゴス日本の『死に至る病』は続くのか①
日本リーダーパワー史(567)
戦後70年を考えるー
「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』の内幕—
<ガラパゴス日本の『死に至る病』は続くのか①
前坂 俊之(ジャーナリスト)
今年は「終戦・戦後70年」(1945年から)目に当たります。8月に出される安倍首相の「戦後70年談話」なるものが世界から注目されています。すでにメディアでも様々な角度の特集が掲載されています。
「終戦」「戦後」という言葉は中立的に響くが、「終戦」『戦争の終わり方』のプロセスにも「勝利による終戦」「敗北による終戦」「双方互角での終戦」『原爆による終戦』などといろいろあります。
1945(昭和20)年8月15日の「終戦記念日」は「勝利による終戦」や「日米互角の激戦の結果としての終戦」ではもちろんありません。「太平洋の島々、東南アジアの占領地域での玉砕につぐ玉砕の敗北、撤退であり、日本全土への米B29の無差別空爆によって数百万人の死傷者がでて、その国民の多大な犠牲、家屋財産の破壊と消滅,各都市が焦土廃墟と化した大惨劇の末での全面敗北なのです。
この日本歴史始まって以来の国民の犠牲, 甚大な被害、大惨事の『戦争の大悲劇』を、「終戦」『戦後』のわずか2文字で消し去るのは、「言葉のペテン、欺瞞」以上に『歴史を偽造』そのものです。
戦争中の「大東亜戦争」という正式な名称が「太平洋戦争」にGHQ(連合軍総司令部)によって替えられたように、1945年(昭和20)8月15日は「昭和天皇が国民にマイクをつうじてポツダム宣言受諾による「『無条件降伏(全面敗戦)』と知らせた日であり、この発表が「天皇の聖断」ともすり替えられているのと同じです。
こうした言葉のいい替えは大東亜戦争中には横行し、「支那事変」が「聖戦」『大東亜共栄圏建設』『八紘一宇』、「全滅」が「玉砕」に、「敗北撤退」が『転進』、「特攻隊」が『神風』などと、ウソ発表の代名詞となった「大本営発表」による戦果の誇張、虚偽と、欺瞞が日常化したのです。
敗戦後の東久爾内閣では、戦争を推進したリーダーたちの戦争責任の明確化の前に『一億国民総懺悔』なる声明が出されて、国民にその責任が転嫁された。確かに国民の戦争賛美、昂揚意識にも問題があったことはいうまでもありませんが、それ以上にこの国を愚かな戦争開戦と大惨事の敗戦に先導、失敗した昭和天皇、軍人、政治家、経済人、マスコミの『戦争責任』『敗戦責任』を問う事が先決であったのです。
これを国民の側が自覚してアジアや戦争関係国への日本の戦争責任を追及してこなかったことが、いつまでも歴史のトゲ、傷となって節目節目に痛みだすのです。
戦勝国によるGHQが東京裁判で日本国民への加害者となった指導者たちを裁いたわけですが、廃墟と化した国内で飢餓寸前に追い込まれた多くの国民にとってはまず食べて命をつなぐことが先決であり、戦争責任追及は後回しにされたのです。
そのうやむやになった歴史が70年後の現在で続いており「従軍慰安婦問題」「靖国参拝問題」「中国への侵略問題」などはそのツケであり、日本人の事実に徹底的に追及して真実に迫る思考力の欠如です。明治以降、日本では『和魂洋才』の名の下に、西欧の近代技術だけを輸入して、その肝腎の近代科学精神、論理的な思考力は根付づかなかったといえます。
その意味で、終戦ではなく、『無条件降伏(全面敗戦)』による「惨敗壊滅史」であり、「敗戦70年」がより正確であるとおもいます。
ポツダム宣言による『無条件降伏』が日本に通告されたのは1945年(昭和20)7月26日です。これをファナティック(狂信的)な本土決戦、徹底抗戦を主張する陸軍によって鈴木貫太郎内閣は28日に「黙殺声明」を発します。この結果、広島(8月6日)、長崎(同9日)の2発の原爆が投下され、数十万人もの犠牲者を出したのです。
結局、受諾するまでの3週間、すったもんだの末に御前会議を何度も開催しても終戦を決断できず、米B29の本土無差別空襲、2度の原爆投下により子供、女性、老人ら非戦闘員の多大な死傷者と国土の徹底した破壊、焦土化を招いたのです。「終戦」の虚名のもとに全面、黒こげの累々たる遺体の山、廃墟の歴史を消去してはならなりません。そのために『無条件降伏全面敗戦史』の真実をふり返りたいと思います。
同時代史としての戦争、原発体験の共通性
私は3/11福島原発事故を体験したとき、それまでメディアを通して知らなかった太平洋戦争の経過が、よりリアルに迫ってきて、両者の類似性について深く考えさせられました。まず、この点に触れたいと思います。
- 大地震、大津波は自然災害ですが、戦争と原発事故は人災です。大地震、大津波は自然災害なのでいつ起きるか予想不可能(想定外)ですが、戦争、原爆と原発は人間の判断によっておこる人知の範囲内、想定内のもので、しっかリスク管理していないと、戦争勃発、原発事故を招きます。
- 満州事変、日中戦争、太平洋戦争は「大東亜共栄圏」建設の国策遂行の一環だが、原発もクリーンエネルギー(絶対安全)として『経済大国』『工業立国』の国策推進されたもので、事故を想定外として、この狭い国土に48基も建設したのです。
- 日中戦争(支那事変)は『聖戦』、絶対負けない「皇軍」、「世界一の海軍」をスローガンとして、国策遂行したもので、大東亜戦争では敗北し、全滅しても国民には大本営発表で『勝った、勝った』「転進」と発表し、今回の原発事故では絶対安全、クリーンエネルギー(CO2を排出しないきれいなエネルギー)と宣伝し、事故後も事故の被害を過小評価し、虚偽の発表をしていたのは全く類似しています。
- 両者に共通するものは「国策遂行のインチキ、美名」でありリーダーシップとインテリジェンスの欠如が失敗の両輪なのです。軍人、政治家、官僚、マスコミ、リーダーたちの無責任、不決断、勇気の欠如、良心の不在、組織の対立、分裂など無責任体制の「日本病」(死に至る病)が根底にあるのです。
- 1990年のバブルの崩壊から20年続いた日本の金融政策の失敗と経済低迷、世界第2位への中国の躍進と日中逆転、尖閣問題での衝突と日中経済戦争の行方は安倍首相の誕生とともに一層、対立がエスカレートしている現状は70年前の日中戦争とウリ2つです。
ブログで「日本リーダーパワー史」の連載中
私は2010年ごろからブログ「地球の中の日本、世界史のなかの日本人」を立ち上げて、その中で「日本リーダーパワー史」なる連載コーナーを作って、毎日のように日本政治、外交、経済について過去現在のリーダーシップとの比較検証をしてきました。そこで2011年3月7日に次の原稿を書きました。
2011年3月6日夜にNHKスペシャル『日本はなぜ戦争へとむかったのかー開戦決定の驚きの真相、迷走する指導者たち』という番組が放送されました
。私はこれまでに『戦争と新聞』の関係本を5冊ほど単行本で出版しており、これをみたNHKのディレクターから取材を受けました。それで出来上がった番組なのです。ちょうどこの番組をみている途中に、前原誠司外務大臣の在日韓国人からの25万円の政治献金問題で辞任した臨時ニュースがテロップで流されました。
「3・11、東日本大震災、福島原発事故発生」の4日前のことです。当時は民主党政権、菅直人総理大臣のもとで1年以上にわたって政治の混乱と失敗、リーダーシップの不在が続いた時期です。NHKの番組と突然の外相辞任のニュースを見ながら、『大東亜戦争の大敗北』とそれに続く「第3の敗戦」へのデジャビュー(既視感)を覚えたので次のような原稿を書きました。
「日本リーダーパワー史(129)『自滅国家日本の悲劇』ー太平洋戦争開戦でのリーダーシップと比較検証する(2011/03/07)①
① いまわれわれがリアルタイムに目にしている政治状況は国家が崩壊していく過程である。
②なぜ、大東亜戦争がおこって、国が滅びていったのかと同じ道をーこれまた同じ責任のなすりあい、足の引っ張り合い、リーダーシップの欠如、不決断、問題先送りの政治的、外交的なミスを連発して、日本丸の国家運営を沈没させてしまった悲劇・喜劇が再現されている。
③菅民主政権も、鵜合の政治集団も官僚もメディアも、来るべき結果の重大性に目をつぶって自滅的な行動を繰り返している。
「自滅国家日本を止められるか」
2011/03/06日夜にNHKスペシャル『日本はなぜ戦争へとむかったのかー開戦決定の驚きの真相、迷走する指導者たち』をみた。ちょうどこの放送中に、前原誠司外務大臣の在日韓国人からの25万円の政治献金問題で辞任した臨時ニュースがテロップでながれた。
世界3位のGDP,国家予算90兆円の日本の表向きの代表外務大臣がわずかな25万円の金を昔からの知り合い在日外国人(いちいち献金者の国籍を外国人かどうかチエックしなかったということ)ということが、大臣が辞めなければならないという理由らしい。
これには各国の政治、外交当局者もクレイジー、理解できないと、あきれてものも言えないというコメントが載っていた。
法令に違反したからという問題と、対米外交、対中、対ロシア外交の要の外交責任者がわずか半年で引責させる悪影響を考えればこの問題をどう処理するかは前原個人の問題ではなく、国民、国家の将来にかかわることは言うまでもない。そして、ホンの小さなミス(このようなあらさがしを徹底してやれば、すべての政治家ばかりでなく、個人だって警察の別件逮捕のようにやられてしまう)
前原辞任の臨時ニュースが流れた瞬間、いよいよ菅政権だけでなく、日本の政治主体が末期症状からサムライの『ハラキリ』、自殺行為へ、70年前の誰も望まないのに国家滅亡に転落していった近衛内閣、東條内閣と同じ『不決断』『誤決断』『責任のなすりあい』との明白な既視感を覚えたので、ここにしっかりと書いておく。
迷走中の民主党菅内閣はさらに苦境となり、民主党内のバラバラの自覚なき当事者能力、自民党の国益のためというよりも党利党略による前原辞任要求(外務大臣は外国に対しては日本の交渉トップ、対外窓口責任者―これが半年間でコロコロ変われば外国は日本を相手にしない。
その方こそ国益を大きく損なう。わずか、20万円の『外国人の政治勢力が日本に影響を与えるといけない』という政治献金規制法の条項で、外務大臣をやめさせることのどちらがより国益にかなうのか。
政治家はことの軽重を判断する能力が欠かせない。法令違反追及の警察官ではないのだ。グローバル化した時代に、ドメスティック(国内的)な判断、法規よりも、グローバルな判断力、決断こそがリーダーには不可欠なのだ。
前原外相辞任に見る菅内閣のリーダ―シップの不在、問題先送り、国民に対しての毅然とした決意の表明と断固やるという意志の欠如がまたまた繰り返された。
同時に、他の民主党の小沢一郎、鳩山前首相、自民党の連中も含めてコップの中の論争不在の政争1点張り、国益無視、国民生活不在の党派、派閥優先の永田町の『世界の非常識サル芝居』が、鳩山のように口軽ではないので外国は全部見ていて口には出さないが、世界の物笑い、軽蔑のタネになっている。
前原辞任でさらなる国家破産のカウントダウンに一歩近づいたといえよう。まさに、太平洋開戦前夜である。
このブログの文章は一切変えておらず、そのまま掲載している、この番組の評価について以下のように書いた。
つづく
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