『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』⑨日中韓のパーセプションギャップの研究』「中国は海軍を建設すべし」
2016/03/19
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』
日中韓のパーセプションギャップの研究』⑨
中国の習近平主席は3日、韓国を訪問、韓国の朴(パク)槿恵(クネ)大統領との首脳会談に臨み、歴史認識問題などで共闘し、対日圧力を強めている。以下の130年前の『申報』の記事は、日清戦争前に日本を仮想敵国として清国が海軍力を大増強して、日本など全く物の数ではないという大威張りの記事である。現在の中国の海軍力、軍事費の大膨張(日本側の防衛費の伸びはマイナス)に対して一切口をつぐんで説明しいない態度と全く同じ。日清戦争に負けたから侵略されたと非難する中国流の詭弁である。
1884(明治17)年6月10日光緒10年、甲申5月17日『申報』
中国は海軍を建設すべし
中国政府は水師建設に対しては.きわめて真剣であるということができる。福州に船政局を設置して水師に必要な軍需物資を貯蔵するようになって以来.すでにかなりの年月を経過し.また天津に水師学童を開設して水師に必要な人材を養成するようになって以来.すでにかなりの年月を経過している。
その上,外国から艦船・武器類を購入し.各地の製造局では西洋人を教師とし招聘して教学に当たらせるなど数えきれないほど巨額の軍事費を支出している。
このため,中国の水師は西洋各国と相拮抗して甲乙つけがたいばかりではなく,当然西洋諸国を凌駕し,彼らを上回っている。
しかしながら,その実態について論じると,あえて実情を曲げて手放しでこれを称賛するわけにはいかない。日本が西洋を手本としてこれを模倣したのは中国よりも遅く,その艦船・兵器類はすべて中国よりもはるかに少なく,その性能も劣っているが,日本の艦船は外海を航海することができるよう懸命に努力している。たとえば,最近上海に来航した軍艦扶桑は.すでに出航したが、乗組員はすべて日本人で.西洋人は1人もいない。
現在聞くところによると.同艦は長江を航行したのち煙台に向かったということだが.波濱を越えて進むその雄姿は,いかにも壮観で威風堂々としていた。
これに対し,中国には外海を航海できる軍艦は1隻もないが,それはなぜなのだろうか。日本人の方が中国人よりも聡明であり,勇敢だとでもいうのだろうか。だが,中国人が日本人と比べ著しく劣っているとは思えない。また,日本人の方が中国人よりも困苦欠乏に耐えられるとでもいうのだろうか。
だが.なおさらそうだとは考えられない。さらに,日本人は惜しみなく軍事費を支出しているというが.中国では水師の創設以来今日に至るまで支出した軍事費は数千万両を下回ることはなく.日本のとうてい及ぶところではない。
日本の将官の統率ぶりは真剣であり.その号令は厳粛であるというが,中国の軍隊の統率ぶりも真剣でないわけではなく.その号令も厳粛でないわけではない。
日本は沿海地区が多く.海浜の民は勇猛を事とし,風波に慣れているので,水師は中国よりすぐれているとでもいうのだろうか。だが.中国の福建・広東・江蘇・浙江各省の沿海地区の民は少なくなく,もし統計数字から日本と比較するならば,中国が日本を上回ってはいても下回るということはない。
ましてや近年来中国政府は水師建設をきわめて重視しており.北洋艦隊は呉清師がほう弁.風洋艦隊は張●憲がほう弁としてそれぞれ指揮をとり,いずれも軍情に関しては直接皇帝に上奏文を奉呈して報告することができ.政府は彼らに水師建設に専念させている。このように沿岸防備・水師に関する事項に対しては,政府は一意専念し,人材の登用も慎重だ。
このため.今後中国の水師は旭日昇天の勢いで発展し,日本を凌駕するだけではなく,西洋各国すら凌駕してますます精鋭となるだろう。ところが.論者の中には.今日依然として迅速かつ顕著な成果や効能が見られないと主張する者もいる。
だがこれは.中国政府が水師建設に真剣でないためではなく,その弊害は旧来の随習を打破しようとしないからだ。そもそも中国には従来水師はなく.太平天国の乱の際.長江水師を創設してから初めて水師の名称が生まれた。しかし長竜砲船,紅単船や広艇八装船のたぐいは内陸河川で使用するには適しているが.もし巨額逆巻く外海で敵に遭遇すれば物の役にも立たないので.長江水
師は長江で使用できるに過ぎない。
もしひとたび海港を出れば,外海では頼りにすることはできない。彰官保が熱心に部隊を巡検し,兵士の統率ぶりは厳格であり.部隊の演習は真剣でないわけではないし.兵士たちも精悼でないわけではなく.彰官保の指揮ぶりは意のままでないわけではなく.また部隊の行動は機動性に富み敏捷でないわけではないので.水師は長江では十分使用に堪えて余力さえあるけれども.もしこ
れを河川から外海に移して使用すれば,従来艦上で使用していたものはすべて海上ではなんの役にも立たないので手の施しようがないのだ。
このため,中国には水師がないと言えば,中国政府はこれを認めようとはしないが.中国には水師があっても実際には水師がないのも同然だと言えば,中国政府もこれを認めざるを得ないのだ。なぜだろうか。
中国には水師があってもそれは名目に過ぎず,実軌は水師がないのと同じで,有名無実だからだ。そうだとすれば中国の水師は結局無用の長物なのだろうか。いや,そうではない。
かつて高邁な見識の持主である来客が私とこの問題について話し合った際.憤然としてこう語っている。「中国に自国の強兵化を図る自主的な決意があるならば,現行の水師制度を廃止して,新たに海軍を育成すべきであり.そうすると多分前途に希望を持てるでしょう」。
これに対し.私が「水師と海軍とでは異なっているのですか」と聞くと,来客はこう答えた。「水師と海軍は異なっています。中国のいわゆる水師は,内陸河川における戦闘に習熟しているに過ぎず.外海に出ることはできません。
この点から見て.水師と海軍とは大いに異なっています。現在中国政府が購入した艦船はすべて海洋で使用することは難しくなく,艦上のいっさいの火砲・武器類は海上で成果をあげることができます。ただ乗組員の兵士たちが習得しているものは.内陸河川における水師の戦闘に関することで.海洋における戦闘とは全く無関係です。試みに内陸河川用の艦船を見ると,数種類あり,乗組員の中には櫂(かい)をこぐことに習熟していても.多分櫓をこぐことには習熟してなく.また舵をとることに習熟していても.おそらく帆を操ることはできないかもしれないのです。
平素習練したことも,場所が変わればうまく適応することができないので,どうして性質の異なったものを1つに統一し,水師に海軍の役割を果たさせることができるでしょうか。
現在中国のために考えれば,「これを東隅に失うも,これを桑楡に収める」
で,初めは失敗しても最後に成功すればよしいのです。すべての水師をことごとく長江などの内陸河川に配置して国内の防衛に当らせると同時に,別途に海軍という名の艦隊を建設し,強健な子弟をえりぬき,海軍やことに専念させ,学堂を開設して彼らを教育し,現在のいわゆる水師学堂を多少改善すれば.海軍の人材を育成する方法はますます適切で申分のないものとなるでしょう。
さらに海戦に精通し名声と人望に富む西洋の人物を招解して彼らに学ばせれば,およそ3年で軍艦の操縦技術を習得することができ.また3年で海洋の特性を熟知することができ,さらに3年で海洋の風浪に慣れることができ,さらには砲座・地形・海路などについても.数年もたたないうちに精通することができるでしょう。
中国には聡明で意志が強く胆力に富み困苦欠乏に耐える子弟たちがいるので.彼らに海軍に関する学習に専念させ,反復訓練し,精魂を傾けて指導すれば.遅くとも10余年後には必ず顕著な成果をあげるでしょう。
現在(門構えの中に虫)洋・南洋・北洋各艦隊に対して,政府はほう弁を専任して派遣しているので各洋艦隊にそれぞれ学堂を開設させるとよい。
福州船政局にはもともと前後学堂が設立されているので.それを拡充・整備することによって実際的な効果をあげることができます。北洋艦隊では水師学堂の基礎の上に改善を加えることによって海軍の人材を養成することができるのです。
南洋艦隊では,あるいは江南製造局に.あるいは上海広方言館などに.あるいは別個に学堂を開設することによって教育・訓練に当たらせ,海洋に関する各種技術・知識の習得に専念させるとともに,従来の水師の規模に対しては徹底的にこれを改め,速やかにその様相を一新するよう努めなければなりません。
もしこのようにすれば,中国の軍艦は十分足りていて.火砲・武器は完備し・それらによって散に当たれば.敵を壊滅し,それらによって辺境の防衛に当たれば,辺境を防衛することができるのです。こうして今後敵の侵攻を防ぐことができるばかりではなく,従来の敵艦に対抗できるのです。西洋諸国はもともと中国の『地大物博」を恐れているが,もし海軍の建設が軌道に乗って日増しに強盛になれば.どうして取るに足らぬ日本ごときが中国と肩を並べることができるでしょうか」。私はこの来客の卓見に感服したので.ここに書き記して読者の参考に供する次第だ。
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