前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』⑱「中国の対朝鮮政策、ロシアも朝鮮を狙う」(「ノース・チャイナ・ヘラルド」

      2015/01/01

  

 


『中国紙『申報』からみた『
日中韓150年戦争史

日中韓のパーセプションギャップの研究

 


日中150年戦争のルーツは中国が冊封体制によって属国としていた

『琉球王朝』(日中両方に朝貢していた)を明治維新
後に一方的に「琉球処分」して、日本が沖縄県に編入したことが

対立の発火点なのである。

これが「壬午事変」(明治15年)「甲申事変」

(明治17年)とエスカレートして、「日清戦争」(明治27年)へと爆発する。

 

この三国関係の外円には西欧列強の英国、フランス、ロシア,アメリカ、ドイツ

が加わって中国、日本、朝鮮をターゲットに19世紀の帝国主義的領土、

経済利権の分捕り合戦、戦争が繰り広げられたわけである。

現在の日中韓の対立、紛争の発火点もここにある。

 

 

 朝鮮で起きた反乱(甲申事変)は,

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B2%E7%94%B3%E6%94%BF%E5%A4%89

 

<壬午事変>

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%AC%E5%8D%88%E4%BA%8B%E5%A4%89

 

 

 1885(明治⒙)年626日「ノース・チャイナ・ヘラルド」

 

中国の対朝鮮政策、ロシアも不凍港を求めて朝鮮を狙う

 

ある通信員が述べているように,中国政府には政治的洞察力が著しく欠如している。だが,たいして政治的洞察力がなくとも,この地域でどの国が多少なりとも深刻な次の紛争の舞台となるかは,かなり正確に予想できる。

 

李中堂と伊藤伯爵(博文)との問で合意された協定(天津条約)は,朝鮮に関するすべての問題を完全に解決できるようなものではない。

われわれの見る限り,そこには,あの不幸な国が再び内紛や外患の犠牲となるのを防ぐ手立てがなにもない。大院君のソウル帰還によって内紛が起こる可能性は決して皆無ではなく.実際そうなれば,朝鮮は少なくともしばらく独力で対処せざるを得ないだろう。

 

なぜなら,中国も日本も,国王を助けるために,勝手に介入できないからだ。

(天津条約)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E6%B4%A5%E6%9D%A1%E7%B4%84_(1885%E5%B9%B44%E6%9C%88)

 

 

介入するためには,まずその意向をしかるべく文書で他方へ通知しなくてはならないから,外交文書の送達に時間を取られ,おそらくその間に朝鮮王朝は倒れ,何千もの生命が失われるだろう。

 

三たび日本公使館が焼け落ち,日本公使の命すら失われたとしても.日本は援軍派遣の意向をまずしかるべく中国へ通知しないと,派兵する権利が生じない。

 

一方中国は,そのいわゆる宗属国が外国に侵略されたのを知っても.救援の意向を日本に伝えるために貴重な時間を多く費やさないと,救援へ赴けない。

 

朝鮮は,国家としては全く取るに足らないが,地理的にはとりわけ重要な位置にある。朝鮮は3つの大国に取り囲まれている。その3国の各々が朝鮮に対して抱く感情はさまざまだが.そのいずれにとっても,現時点における朝鮮の保全はかなり重要な問題だ。

 

洋の制海権を握れるような拠点を朝鮮に得ようと,ロシアが機会をうかがっていないとは,中国も日本もおそらく決して信じないだろう。したがって,中国に対する朝鮮の現在の独立または保全は,ロシアには許容できる。

なぜなら.朝鮮半島が中国の領土でない限り.朝鮮を侵略しそうな国と中国政府との間の表面上の不和の原因が少くなるからだ。日本が朝鮮の宗主権を本気で主張したことは決してない。

 

日本が朝鮮の保全に関与しているのは自衛のために過ぎないと見てよい。しかし中国の立場は全く異なる。中国の振舞いがその主と一致しさえしていたら,現在の危険の一大要素は生じなかっただろう。中国は,朝鮮が中国の宗属国だと以前から主張している。

 

また.国内国外を問わず,迫りくるあらゆる危険から朝鮮を守るのが中国の任務であると自認している。だが,中国はこのような中途半端な策で満足し,朝鮮を守る意向を表明しさえすれば,他のすべての国はおびえて逃げ出すと考えていたようだ。

 

この点で中国に迷いはない。誤りを正すどころか,朝鮮を守る権利と権限のかなりの部分を自ら放棄して.さらに深刻な誤りを犯した。

 

中国は,伊藤伯爵との合意により,派兵の意向を文書で日本に伝えるまでは決して兵を送らないことにしたのだ。これが宗主国の振舞いだろうか。朝鮮が従来の保護者に感謝すべき理由はほとんどない。無節操が中国の政策の基調にある。この無節操と優柔不断によって中国がどんなジレンマに陥ったか,今やはっきりとわかる。

 

朝鮮に対する宗主権を主張する中国の考えは空想的で非現実的であいまいだと,われわれは常に批判してきたが,その正しさが現在の情勢によって証明された。

 

宗主権の主張に根拠があり,この主張が首尾一貫して実行されていたら,今日の情勢は現状とは大いに異なっていただろう。日本は,その古くからの属領である琉球を併合したとき.国王をその任から解いて帝国の上位の公爵に列し,日本の知事を派遣して領地を統治した。これは少なくとも首尾一貫していた。

 

中国も同じようにすればよかったのだ。朝鮮に対する宗主権を主張し.それが無視され,愚弄されるのを見て取ったら,主張を首尾一貫させるために中国は国王を退位させ,中回人総督をソウルへ派遣し,中国皇帝の名において朝鮮を統治すべきだった。

 

その場合,朝鮮への侵攻は.18省への侵攻に等しく,したがって,そのように規模が大きく重大な結果を伴う企てに軽々しく乗り出すヨーロッパ列強はなかっただろう。

 

しかし.これを中国は実行しなかった。それどころか,以前主張していた権限の一部を実際には放棄した。その結果,朝鮮の守りは以前より手薄になった。これは,中国自体の前線拠点の1つが中国自らの振舞いによって弱体化したことを意味する。

 

中国が,朝鮮を,ビルマ,シャム.安南の国々と同様に,帝国の防壁-いわゆる緩衝地帯-とみなしていたのなら,朝鮮を強化する方が確実に中国のためになった。

 

だが実際は,中国は朝鮮をほとんどほうっておいた。ヨーロッパ列強と見せふけの条約を結ぶように国王を仕向ける代わりに,中国が朝鮮に対する宗主権をあくまで主張して.朝鮮を帝国に併合しても,中国のそのような行動を妨げるなんらかの深刻な障害が発生したとは思えない。

だが,この無節操という呪いが,中国の行ったことすべてを支配している。そして今や中国を見舞おうとしているその帰結くらい,中国は予期してもよかったのだ。災難が到来するのは今年ではなく,あるいは来年ですらないかもしれない。だが.われわれの考えでは.そんなに先のことではないはずだ。

 

現在見られるような不本意な取決めは当然の結末をもたらすに違いない。その結末は中国の平和に害となろう。過去3年間の情勢の推移を見守ってきたすべての人々にとって,これは自明のことだとわれわれは思う。

 

 - 戦争報道 , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
クイズ『坂の上の雲』 ベルツの『日本・中国・韓国』五百年の三国志②<日露戦争はなぜ起こったのか>

クイズ『坂の上の雲』   ベルツの『日本・中国・韓国』五百年の三国志② …

『Z世代のための米大統領選挙連続講座② 』★『前代未聞の「81歳対78歳の老害・怨念デスマッチ」はますますエスカレートしている(下)』★『マイケル・ムーア監督は「最も残酷な形の高齢者虐待だ」と非難した』

2024/07/10 世界、日本リーダーパワー史(933) ●民主党でバイデン米 …

Z世代への遺言「東京裁判の真実の研究②」★『敗戦で自決した軍人は一体何人いたのか』★『東京裁判ではA級戦犯の死刑はわずか7人、BC級裁判では937人にものぼり、下のものに圧倒的に重罰の裁判となり、「復讐の裁判」との批判を浴びた』★『戦陣訓』で、捕虜になるより自決を強制した東条英機の自殺失敗のお粗末、無責任』

『リーダーシップの日本近現代史』(124)ガラパゴス日本『死に至る病』 &nbs …

no image
日本リーダーパワー史(803)ー『明治裏面史』★ 『「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス⑲『日露戦争開戦6ヵ月前』★『6ヵ条の日露協定書を提出、露都か、東京か、の交渉開催地でもめる』

   日本リーダーパワー史(803)ー『明治裏面史』★ 『「日清、日露戦争に勝利 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(150)再録★<『英タイムズ』(1906(明治39)年12月28日付記事)が報道したよくわかる日本史『海洋民族/海洋国家日本の900年の歴史★蒙古襲来から日露戦争までの海の道>―今こそ、第3の鎖国を解き、アジア太平洋海洋国家へ飛躍しようせよー

    2011/11/28 &nbsp …

no image
『「申報」などからみた「日中韓150年戦争史」 (67)イタリアにいたラクーザお玉は日清戦争の連勝にびっくり仰天!

   『「申報」からみた「日中韓150年戦争史」 日中韓のパ …

『史上最大のジャーナリスト・徳富蘇峰(94歳)の研究』★『近世日本国民史』(戦国時代から徳川時代末(全100巻)と明治期の人物伝などは約500冊近い本を出版』★『その長寿人生作家論の秘密』★「体力養成は品性養成とともに人生の第一義。一日一時間でも多く働ける体力者は一日中の勝利者となり、継続すれば年中の勝利者、人生の勝利者となる』

    2018/6/01  知的巨人の百歳学(1 …

『Z世代のための日本戦争報道論』★『 戦争も平和も「流行語」と共にくる』★『80年前の太平洋戦争下の決戦スローガン(流行語)』★『人々は「贅沢(ぜいたく)は敵だ」→「贅沢はステキだ」●「欲しがりません勝つまでは」→「欲しがります勝つまでは」●「足りん足りんは工夫が足りん」→「足りん足りんは夫が足りん」』とパロディー化して抵抗した』

2014/10/18 記事再録 月刊誌『公評』<2011年11月号掲載>決戦スロ …

no image
終戦70年・日本敗戦史(105)「情報タレ流し」から「情報正確追及・分析」企業へ脱皮を。製造物責任法(PL法)を自覚せよ

 終戦70年・日本敗戦史(105) 再録 <ネット時代の社説論説『本質に迫るため …

『Z世代のための日中韓外交史講座』⑨『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉔ 西欧列強下の『中国,日本,朝鮮の対立と戦争』(下)(英タイムズ)

  2014/07/21    …