前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「『ニューヨークタイムズ』からみた『日中韓150年戦争史』(55)『(日清戦争開戦10日目)-イギリスは中国の勝利に期待」

      2015/01/01

  

 

「『ニューヨークタイムズ』からみた『日中韓150年戦争史』

日中韓のパーセプションギャップの研究」55

 

1894(明治27)年12日  米「ニューヨーク・タイムズ」

 

『(日清戦争開戦10日目)-イギリスは中国の勝利に期待

 

<もし朝鮮から中国勢力が排除されたならば,朝鮮海域にはすぐさま

ロシア艦隊が出現し,その国土にもロシア兵が到来するだろう。

ロシアは.日本が朝鮮半島においてわがもの顔に振る舞うことを

許さないはずだ。>

 

 

 

『以下のニューヨーク・タイムズ」の日清戦争勃発の論評が、この連載を読んできて最も正鵠を得たものと思う。

日清、日露戦争の原因は「中国」とその属国としての朝鮮がロシアの南下政策の軍事的な脅威に対して、日本の危機感以上に鈍感であり、日本に対して長年の『中華思想』による序列意識から、ロシア以上に脅威と感じていたことである。

ロシア側の強引、巧妙なの駆け引きの帝国主義的な砲艦外交が朝鮮王室の閔妃(ミンビ)に仕掛けられて、朝鮮は親ロシア、反日に完全になってしまった。その結果として「この際一戦あるのみ」と決断した陸奥宗光、川上操六、山本権兵衛、東郷平八郎らによって『日清戦争』開戦になったのである。

 

明治22年(1889年)の山県有朋首相が第1回帝国議会での施政方針演説で『朝鮮半島に「主権線」(国境)と「利益線」の確保する。ロシアがシベリア鉄道を完成させる侵略が始まる』と述べたのは、正確な危機意識の反映であり、危機認識であったといえよう。

(3/11を経験したわれわれには)『あらゆる危機に対して、想定外とせず、困難を克服して事前に対策を立てて断固決断した』明治のリーダーたちのグローバルインテリジェンスと軍事・外交戦略の勝利だったことがこの記事はではよくわかる。

もちろん情報収集と分析に最大限の力を注ぎニューヨーク・タイムズ」の記事などは当然含んだうえでのことだが、中国側の「申報」の分析力と比べれば雲泥の差であり、日清戦争の結果はこのあと完膚なきまでに証明された。
(前坂 俊之)

 

 

<ロンドン発 811日>

イギリスの日刊各紙は日本に対する猛烈な非難を書き立てている。朝鮮や同海域の日本軍が撃退されるたびに,あたかもイギリス軍の勝利でもあるかのように好んで社説に取り上げられ,日本軍が有利な展開をするたびに,非難のあらしが巻き起こり.国際法が持ち出されている。

 しかし各紙の唱えるところは,イギリス大衆の意見を反映したものではない。

大方のイギリス人は,この戦争に関し中立か,もしくは日本が中国の高慢の鼻をへし折ってくれることを期待している。しかし東洋

事情に通じた外交官や専門家の間には,日本に対する反発と憂慮の入り交じった感情があるといった状況だ。

 

 東洋の朝廷に長く出入りしたことのある者や,アジア諸国へ多く旅した者たちは.わずかな例外を除き,中国に対しなんら愛着を抱いていないのと同時に,もしこの戦争において日本が勝利を収めれば,必ずやそれが英露問の確執へつながるだろうという考えを明らかにしている。イギリス政府の見解も.これと同じだ。

 

 官界の見解では,もし朝鮮から中国勢力が排除されたならば,朝鮮海域にはすぐさまロシア艦隊が出現し,おそらくその国土にもロシア兵が到来するだろうという。

ロシアは.日本が朝鮮半島においてわがもの顔に振る舞うことを許さないはずだ。

 

自らを朝鮮の当然の継承者だと考えて久しいからだ。ロシアとしては,当面,現状維持を望んでおり,朝鮮の領土を獲得しようとする中国および日本のいかなる試みに対しても,大きな憤慨を覚えることだろう。

 

 ウラジオストクに投じている防衛費と.そこでふるわれる技師らの手腕にもかかわらず.同港は海軍基地として満足のいくものではない。気候は過酷なまでに厳しく,冬ともなると錨地は水で閉ざされてしまう。

 

ロシアは,ほんの少し南下しただけで,朝鮮沿岸にはまさにうってつけの港がいくつかあることを知っている。ブロートン湾のポート・ラザレフ[永興湾】などもその1っだ。

同国は,数年前からこの港に目をつけている。ロシアの官僚の中で,同港が太平洋における海軍行動の強力な基地となることに疑問を抱く者は少ない。また同港は.ロシアの対英戦略上も計り知れない利点を提供することになるだろう。

 

一方のイギリスは,このような要地を敵の手に握られれば,その海軍戦力の大きな部分をアジア水域に送らざるを得なくなるだろうし,

またインド.オーストラリア,および海峡植民地をも,ロシア海軍の脅威にさらすことになるだろう。

 

 こうした背景にこそ,現今のイギリスの不安と.日本に向けられた敵愾心の理由がある。イギリスは何にも増して,日本がロシアに朝鮮介入の口実を与えてしまうことを食い止めたいのだ。

ペテルプルグのだれも.この戦争をあおり立てるためにわずかな影響力も使わなかった以上,ロシアはもっともらしく介入してくるだろうし,イギリスはそのことをよく知っている。

 

ロンドンではこの1週間を通じて,すこぶる辛辣な反日記者たちが,日本はすでにロシアとイギリスとを敵対させるべく,画策を進め

ていると主張していた。

 

 この戦争の銀市場への影響は,現在までのところ軽微だが.欧米製の艦船や戦争関連資材に対する中国および日本の需要が高まっているため,最終的には銀の値段が上がるものとロンドンの株式取引所では見ている。

 

またロンドンで公債が募集され,収益が銀の買付と発送に使われる可能性があるので,為替相場もおそらく上昇することだろう。ここ数日中国がかなりの量の銀を,年末渡しの予定で買い付けているという話も、聞かれている。

 

 

 - 戦争報道 , , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破力講⑫』★『杉山の「バカとアホウの壁」解説②」★『約三千人の宮女に家の中で駈けっこをさせたいと「阿房宮」(長さ百里)を作ったのが「阿房(あほう)の語源』

明治末期の今の時代には、権力者や富豪の前へ出ても、違った事にも頭を下げ、「ご無理 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(33)記事再録/尖閣問題・日中対立の先駆報道の研究 (資料)『琉球処分にみる<日中誤解>(パーセプション・ギャップ)<歴史認識>の衝突④『 『琉球朝貢考』<香港3月6日華字日報より>』

  尖閣問題・日中対立の先駆報道の研究 (資料)『琉球処分にみる<日中 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(241)/★『1945年(昭和20)8月、終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「1億総ざんげ」発言の「 戦争集結に至る経緯,並びに施政方針演説 』の全文(昭和20年9月5日)

    2015/12/10 &nbsp …

no image
『リーダーシップの世界日本近現代史』(293)★『安倍・歴史外交への教訓(5)』「大東亜戦争中の沢本頼雄海軍次官の<敗戦の原因>」を読む―鳩山元首相の「従軍慰安婦」発言、国益、国民益無視、党利党略、 各省益のみ、市民、個人無視の思考、行動パターンは変わらず

    2015/11/08 &nbsp …

no image
日中韓外交の教科書―1894(明治27)年11月26日 英国「タイムズ」掲載 日清戦争4ヵ月後―『日本と朝鮮―日清戦争の真実』(上)

日中韓外交の教科書―英国タイムズ報道の「日清戦争4ヵ月後―『日本と朝鮮―日清戦争 …

no image
日本リーダーパワー史(865)『日本の「戦略思想不在の歴史⑰』『世界史の中の元寇の役(文禄の役、弘安の役)7回』★『計6回の使者派遣外交で日本に朝貢を迫ったモンゴルに対して、一貫して対話・交渉を拒否した鎌倉幕府』●『 千年も続く日中外交力格差ー河野太郎外相は外相専用機を要求』★『日本外相の各国訪数は中国の約3分の1』

 日本リーダーパワー史(865) 『日本の「戦略思想不在の歴史⑰』 『世界史の中 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(324)★『日露300年戦争史』(7回連載)-『鎖国・平和一国主義の徳川時代の日露関係 /日露交渉の発端から侵略へ』★『こうしてロシアは千島列島と樺太を侵攻した』★『露寇(ろこう)事件とは何か』★『露寇事件」はロシアの大植民地主義者のレザノフの対米、対日植民地化戦略の一環として生まれた』

  日露300年戦争(1)-『徳川時代の日露関係 /日露交渉の発端の真 …

no image
世界リーダーパワー史(933)ー『ウォーターゲート事件をすっぱ抜いてニクソン大統領を辞任に追い込んだ著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏が 今月11日に発売するの最新作「Fear;Trump in the White House」(恐怖─ホワイトハウスの中のトランプ)」の抜粋』★「トランプ大統領の無知な暴君、裸の王様の実態を完膚なきまでに暴露』

世界リーダーパワー史(933)  著名米記者の「トランプ本」が暴露 「 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(153)再録/『昭和戦前の大アジア主義団体/玄洋社総帥・頭山満を研究せずして日本の近代史のナゾは解けないよ』の日本リーダーパワー史(71) 『インド独立運動を助けた頭山満 運動翁<ジャパン・タイムス(頭山翁号特集記事)>

日本リーダーパワー史(71) 辛亥革命百年⑫インド独立を助けた頭山満 &nbsp …

no image
日本リーダーパワー史(683) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(62)『世界史の中の『日露戦争』<まとめ>日露戦争勝利の立役者―児玉源太郎伝(8回連載)

  日本リーダーパワー史(683) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 …