前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『各国新聞からみた日中韓150年対立史⑦』●『朝鮮は中国の属国であり、一朝事あると中国が朝鮮を助ける』(『申報』)

   

 『各国新聞からみた東アジア日中韓150年対立史⑦』

 

   最近の日中韓の対立のコジレをみていると、日中韓の150年戦争史の既視感(レジャビュ)がよみがえります。あと5年(2018)後は明治維新(1868年)からちょうど150年目に当たります。この間の三国関係を振り返ると、過去100年以上は対立、紛争、戦争の歴史であり、仲良くしていた時期はこの最近3,40年ほどの短いものであり、単に「近隣関係、近隣外交は仲良くしなければ」という建前論からではなく、その対立、戦争のとなった原因までさかのぼって客観的に調べなければ、何重にもモツレた歴史のネジレを解いて真の善隣友好関係は築くことができません。その意味で、150年前の対立、戦争となった事件の各国の報道をたどってみたいと思います。

 

131年前の日韓第一次戦争

 

1882年の壬午の変)、中国紙『申報』は「朝鮮は中国の

属国であり、一朝事あるときに中国が朝鮮のために計る』と報道⑥

―中華思想華夷秩序」の中での朝鮮の位置関係

           

●『朝鮮対策(上)朝鮮が中国の属国であり、一朝事

あるときに中国が朝鮮のために計る

(『申報』1882(明治15)年317日、光緒8年壬午74日)

     

朝鮮が中国の属国であることは,もとより天下万民の知るところだ。したがって.朝鮮に一朝事あるときに中国が朝鮮のために計ってやらなければ,いったいだれが計るだろうか?

 

このたびの朝鮮の軍乱≪壬午の変≫は実は大院君が後ろで糸を引き.朝鮮の国政を乱し.王妃や大臣を殺害したのだ。この軍乱に際して朝鮮人は日本公使館を攻撃し.使節に危害を加え随員らを殺した。

 

日本公使は窮地に置かれたが,ようやく身をもってこれを逃れた。これは実際に公使だけの辱めではなく,日本国家の恥辱だ。今や日本は戦備を整え兵士を集結させ.併せて定員外の兵士をも一律に集め,朝鮮の罪を問いただすべく大挙して兵を起こそうとしているが.これによって日本を一方的に非難することはできない。

 

日本がすでに通商を開き,使節を派遣して朝鮮に駐箚させたからには.朝鮮人は当然使節を保護することが道理であるにかかわらず.ひとたび騒乱が起きるとその混乱の中,使節は危害に遭った。このため.日本人は官員から商人,さ

 らには一般庶民に至るまで悲憤慷慨しない者はなく,一丸となって敵愾心を抱くことになった。

民心がこのようなら,兵士の士気は推して知るべきだ。日本人はかねてから朝鮮に野心を抱いていたが.まさにこの時期朝鮮は内乱状態にあり.加えて国益を図る有能な中心人物もいない今.どうして日本に手向かうことができるだろうか?

 

勝敗の帰趨はおのずから予見できる。しかしながら,朝鮮は本来中国の属邦であり.朝鮮が日本に対して罪を犯したからにはその過失は全く自ら招いたものではあるが,日本がこの機に乗じて急きょ戦端を開き併呑の非望をとげようとするのは,かつて琉球が打ち滅ぼされたことの再演であり,これを中国がどうして手をこまねいて見過ごすことができようか?

 

したがって,中国が急きょ軍艦を派遣し,朝鮮に赴かせても当然だろう。ただし,現在の朝鮮保護政策は簡単なものとは言えない。中国と朝鮮との関係は父子の関係以上のものだ。たとえば子供が他人に被害を与えたため殴られそうになれば,父としてはこれを手をこまねいて傍観するには忍びないものだ。

 

そこでこっぴどく子供をしかって相手を慰めるよりほかなく.礼を尽くして罪を償えばまずは円満に一件落着するだろう。現在日本は朝鮮の罪について問責しているが,日本側の主張は理にかない.朝鮮は理に欠けるとはいえ,中国はなんとしても日本軍の侵寇を阻止しなければならない。

 

思うに.まず朝鮮人の罪を明らかにし.日本人をなだめるとともに.朝鮮人にも日本人の気分を和らげさせ.そうしてとりなせば.事態はなんとか好転するだろう。

そこで日本人が自分の意見を捨て相手に従うならば,それはそれでまたよしとしよう。もし.日本人がかえってこの弱みにつけこんで拒むとすれば.必ずや朝鮮人を死地に追い込むこととなり.中国がたとえ尽力して調停に努めたとしても,日本がこれを無視して顧みないとなれば.またどのような手だてを講ずればよいだろうか? 

 

しかし,みすみす朝鮮の破局を座視してどうして耐えられようか?もし1個旅団を編成して朝鮮に援軍を派遣すれば,これまた中日両国の友好関係を失うこととなり,どうしてこれが良策と言えるだろうか?要するに,中回は父が子供に対するようにまず子供を戒めると共に.相手をなだめ慰め.しかる後にひそ

かに子供を保護することができるのだ。

 

したがって,中国は高官を使節として任命し,精鋭部隊を結集して朝鮮に派遣させ,罪状を取り調べて処罰し,朝鮮王に責任があればその罪を指摘して王位を廃し.さらに賢君を擁立して将来に備えるとともに,反徒に罪があれば彼らを誅伐することによって.朝鮮を日本人に謝罪させることとする。

 

日本がなお正義の怒りにかき立てられているとしても.中国がすでに釈明して朝鮮人の罪を認めて謝罪させ日本人をなだめたのだから,日本人がなおも頑なに自己の主張をまげず,臨機応変に態度を変えず何がなんでも自らの野望をとげようとするならば.むろんその非は日本側にあって.中国側にあるのではない。この道理はだれの目にも明らかだ。

 

そもそも日本は全く朝鮮の国土を領有する必要はない。朝鮮の土地はやせ民衆は貧しく.この不毛の地を奪い取ったところで,全く無用の長物を手に入れ

たも同様で,かえって日本は国中の兵士と軍費を投入して防衛に当たらねばならない。

ひとたび事変が起これば,そのつど奔命に疲れ苦しむこととなる。イギリスは海外に雄飛しているにもかかわらず.ヨーロッパ内部では領土を拡張しようとしないのは,おそらくこのためにはかならない。今朝鮮は日本とその距離わずか一衣帯水の近きにありとはいえ,琉球のように簡単に併呑することはできない。

 

にもかかわらず,どうしてこの領土をあえて収奪する必要があるのか?ただ日本が武力を盾にとってさまざまな駆引きを用いて,朝鮮の内乱を平定した上で新しい君主を擁立し.日本の属国としただ日本の指示のみに従わせ,再び中国の属国とはしないという大義名分を掲げることが懸念される。

 

また,このときになれば朝鮮人の中にもその恩徳に感じ.またその威勢に恐れをなし.よんどころなくすべてが日本の命ずるままとなれば.とりもなおきず中国はこのときから属領のl国を失うこととなり,どうしてこの状況で日本と相争うことができようか?


 - 戦争報道 , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』(59)『(日清戦争開戦3週間後)-日本の謀略がすでに久しいことを論ず』

   『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』 日中 …

no image
日本リーダーパワー史(926)-『良心と勇気のジャーナリスト桐生悠々の言論抵抗とは逆のケース』★『毎日新聞の「近畿防空演習」社説訂正/言論屈服事件の真相』

  毎日新聞の「近畿防空演習」社説訂正事件 桐生悠々の「関東防空大演習 …

『オンライン講座・日本政治はなぜダメなのか、真の民主主義国家になれないのかの研究』★『議会政治の父・尾崎行雄が語る明治、大正、昭和史での敗戦の理由』★『① 政治の貧困、立憲政治の運用失敗 ② 日清・日露戦争に勝って、急に世界の1等国の仲間入り果たしたとおごり昂った。 ③ 日本人の心の底にある封建思想と奴隷根性」

       2010/08/ …

no image
 日本リーダーパワー史(785)「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、リスク管理 、インテリジェンス②『最強の外交力で日英米の協力でロシアとの外交決戦を制する

   日本リーダーパワー史(785) 「日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝 …

no image
終戦70年・日本敗戦史(102)昭和天皇による「敗戦の原因分析」①憲法改正もでき、勝利の結果、極端なる軍国主義となるよりも 却って幸福ではないだろうか」

終戦70年・日本敗戦史(102)  ー昭和天皇による「敗戦の原因分析」①ー    …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(60)記事再録/『高橋是清の国難突破力②』★『「明治のリーダー・高橋是清(蔵相5回、首相)は「小さな 政治の知恵はないが、国家の大局を考え、絶対にものを恐れない人」 (賀屋興宣の評)

  2013/11/11    …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座㉜』★『海軍の父・山本権兵衛の最強のリーダーシップと実行力に学ぶ』★『最強のリーダーパワーとは『無能な幹部は首にして、最強の布陣で臨め』

2011/02/12  日本リーダ―パワー史(122)東日本大震災の1 …

no image
日本リーダーパワー史(841)★☆(人気記事再録)『明治維新150年』★『日本人だけが忘れ去った世界的英雄/革命家としての西郷隆盛を再評価する』★『世界革命史に例のない<江戸城無血開城>を実現した西郷 隆盛、勝海舟の超リーダーシップを見よ』●『一個の野人・西郷吉之助を中心とし、一万五千の子弟が身命を賭して 蹶起し、うち9千人までも枕を並べて討死するとは、じつに 天下の壮観であります。』

 日本リーダーパワー史(841) ★☆(人気記事再録)『明治維新150年』 &n …

no image
●「日本の新聞ジャーナリズム発展史(下)-『 昭和戦前期 ・軍ファシズムと新聞の屈伏』★『新聞と戦争「新聞の死んだ日」』★『 昭和戦後期・占領時代の検閲』★『「60 年安保からベトナム戦争まで」』★『「安保で死んだ新聞はトベトナム戦争でよみがえった」』

「日本の新聞ジャーナリズム発展史」(下)   2009/02 …

no image
 世界も日本もメルトダウン(962)★『ポピュリズム跋扈の中、日露急接近で世界史は動く 米国が最も恐れる対米独自外交路線に安倍は踏み切れるか』●『コラム:北方領土問題で急接近するロシアと日本』●『 パックンのちょっとマジメな話 盛り土は気になるけど、北方領土もね』●『米国には「二重投票」する有権者が百万人! 大統領選のインチキ暴く』●『  未来の電子社会に影を落とす過去の冷戦、 米大統領選の電子投票システムもハッキングされる? (英FT紙)』●『ノルウェーの巨大ファンド:国富を使わない方法 (英エコノミスト誌)』●『ついにスマホブームは終わるのか? 今年の世界出荷台数、ほぼ横ばいとの見通し』

 世界も日本もメルトダウン(962)★   ポピュリズム跋扈の中、日露 …