『Z世代のための明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破力講座⑦』★『古旅館のボロボロの6畳間で「玄洋社社主」頭山と会談、意気投合』★『才は沈才たるべし。勇は沈勇たるべし。何事も気を負うて憤りを発し、出たとこ勝負で無念晴しをするな』★『名誉を欲せず富貴を求めず終生、黒衣に徹し、国家国民のために奔走する決意を固めた』
1887年(明治20)3月。杉山茂丸(23歳)は同郷の大先輩で「怪物」「玄洋社代表」の頭山満(32歳)に面会に行って、意気投合する。
会談場所は頭山の宿泊先、東京芝口一丁目(現新橋駅北口附近)の旅館「田中屋」。茂丸は紀州フランネルの荒い立縞の軍衣に、初めてかぶった古いシルクハットに尻切れ草履といった何とも珍妙な格好で出かけた。
旅館「田中屋」部屋の入口には「御宿料一八銭前金」と書いた紙が張付けてあり、案内されて2階の6畳間に入ると、襖(ふすま)は破れ、明けると柱も鴨居も菱形に曲り、壁は落ち、障子は破れた凄じい部屋。
その真中、一枚の赤ゲットの上の欠け火鉢の向う側に、久留米絣(がすり)の羽織りを羽織った五分刈り頭でショボ髭を生やした三十四、五才の男が座っていた。
「サアこちらえ」と言った。その声に応じて部屋の中に入ろうとした178センチの大男・茂丸は、初めて被ったシルクハットが鴨居にぶっつかり、ぺこんと潰れて畳に落ちたが、知らん顔で頭山と火鉢を挟んで向合って座り、初対面のあいさつをした。
頭山も大変に丁寧であったが、その眼光は炯々として正に人を射るが如しであった。
初対面のあいさつが終ると間もなく、隣室より出てきた面々は的野半助、月成元義、来島恒喜、大本常三郎等々の錚々(そうそう)たる連中であった。
頭山は、茂丸が被って来て、目の前に転がっているシルクハットを見詰めながら、「あなたは官員(公務員)ですか」と聞くので茂丸は「官員などには一度もなったことはありません。この帽子は木村屋のパン屋が被るものと同じです」と答えたことがきっかけとなりいろいろと話が進み、夕食も共にし、深夜まで話し会った。
その話の中で頭山の言った次の言葉は茂丸の心を大きく動かし「あれは自分にとって天使の声であった」という。
●頭山の説諭は「天使の声であった」
「才は沈才たるべし。勇は沈勇たるべし。孝は至孝たるべく忠は至忠たるべし。何事も気を負うて憤りを発し、出たとこ勝負で無念晴しをするな、その事が仮に忠孝の善事であっても不善事に勝る悪結果になるものだ。
故に平生無私の観念に心気を鍛練し、事に当っては沈断不退の行いををする。あなたのお考えはどうか知らぬが、お互いに血気にはやって事を過らぬよう注意しなければならぬーと説いた。
古歌に「斯くまでにゆかしく咲きし山桜 惜しや盛りを散らす春雨」
私は有為の知人朋友のために、常に心中この感じを持ち、忘れることがない」
茂丸は頭山の真情から発した忠告とも取れる話を聞いて宿に帰えったが、どうしても眠れず、展転反側あれこれと思い巡らしているうちに、自分の考えが余りにも小さ過ぎたことに気がつき、これからは大きく開眼して変化する国情を見極め、人と世のため、自己を捨てて働こうと決意した。
思いがけない結末となった伊藤総理との出会い、そしてまたこの日の頭山との出会い、この2つの出会いが茂丸の人生を大きく転換させた。
茂丸はその国家主義が余りにも偏狭であり過激であったこと大いに反省。以後、名誉を欲せず富貴を求めず終生、黒衣に徹し、大所高所の視点に立って‐国家国民のために国事に奔走しようと固く決心したのである。
関連記事
-
日本リーダーパワー史(346)●『TPP,中韓との外交交渉にも三浦梧楼の外交力に学べ②』自主外交のこれが要諦』
日本リーダーパワー史(346) 歴史的外交テクニック ●『TPP,中韓との外交交 …
-
速報(140))『日本のメルトダウン』『民主党は政治主導の公約を果たしていない』(ファイナンシャル・タイムズ』9/5』
速報(140)『日本のメルトダウン』 『 DPJ falls sh …
-
「オンライン・日本史決定的瞬間講座⑩」★『「電力の鬼」松永安左エ門(95歳)の75歳からの長寿逆転突破力①』昭和戦後の日本が敗戦によるどん底から奇跡の復活を遂げたのは松永安左エ門(95歳)が電力増産の基盤インフラ(水力発電ダムなど)と9電力体制を万難を排して実現したことで高度経済成長が実現した』①
第4章 「電力の鬼」・松永安左エ門(95歳)の「岩は割れる」① 昭 …
-
日本リーダーパワー史(329)空前絶後の参謀総長・川上操六(43)鉄道敷設による兵站戦略こそ日清戦争必勝の戦略であった
日本リーダーパワー史(329) 「坂の上の雲」の真の主人公「日本を救った男」 空 …
-
オンライン講座/日本は新型コロナパンデミックを克服できるのか(上)』★「インド変異株で五輪開催か、中止の瀬戸際に(上)」★『「死に至る日本病」の再来か』★『3度目緊急事態宣言再延長(5月末)』★『死に至る日本病」の再来か』(5月15日までの状況)★『菅首相のリーダーシップとインテリジェンス(見識)』★『SNS上で「玉砕五輪!」「殺人五輪」の非難合戦』
「インド変異株で五輪開催か、中止の瀬戸際に」 前坂 …
-
『F国際ビジネスマンのワールド・メディア・ウオッチ(199)』-「劇場アニメ『この世界の片隅に』を感銘、庶民には大変説得力のある反戦映画です」●『『この世界の片隅に』監督が語る、映画に仕込んだ“パズル”(上) 片渕須直・『この世界の片隅に』監督インタビュー』●『映画「君の名は。」が中国でも支持される秘訣 作品力だけでなく、数多くの仕掛けがあった』
『F国際ビジネスマンのワールド・メディア・ウオッチ(199)』 < F氏のコ …
-
日本メルトダウン脱出法(572)☆「なぜ香川真司はドルトムントで復活したのか」◎「2戦連続弾の本田に高評価
日本メルトダウン脱出法(572) 本日の …
-
<まとめ>児玉源太郎について ―『坂の上の雲』の主人公― 明治陸軍の名将・児玉源太郎を研究せずして『日露戦争勝利』の要因を知ることはできない。
2013/02/03 記事再録/ <まとめ>最強の …
-
日本メルダウン脱出法(667)「歴史的演説!首相を支えた10のプレゼン技術」◎「ナイ教授「辺野古移転を強行すべきではない」
日本メルダウン脱出法(667) 歴史的演説!首相を支えた10のプレゼン技術― …