前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『クイズ?Z世代のための日本最強のリーダパワーを発揮した宰相は一体誰か?②』★『原敬首相の「観光立国論」』★『周囲の猛反対を押し切って皇太子(昭和天皇)をヨーロッパ観光に旅立たせた国際的決断力』★『日本帝王学の要諦は ①可愛い子には旅をさせよ ②獅子はわが子を千尋の谷に突き落とす ③昔の武士の子は元服(14、15歳)で武者修行に出した』

   

「逗子なぎさ橋通信、24/06/16/am720]

 日本リーダーパワー史(221)記事再録
★『日本帝王学の要諦は ①可愛い子には旅をさせよ ②獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす ③昔の武士の子は元服(14、15歳)で武者修行に出した』
前坂俊之(ジャーナリスト)

日本が2019年に「2500万人」の訪日外国人を目標にした『観光立国』を目指し、「観光庁」を設置したのは3年前の2008年10月1日である。

経済の長期低迷のなかで第一期目標として年間1500万人(2013年)の外国人観光客の誘致をめざし、特に中国人観光客の富裕層の誘致PRを自治体、国を挙げて取組んできた。

しかし、3/11の原発事故によって、観光客の来日は激減しており、原発事故の収束の長期化を考えれば、「観光立国」そのものに赤ランプが点滅している状況である。

今年は来日外国人をふやすために数万人に航空機代10万円ほどを出すバラマキ政策を検討しているとの報道を見た。

この政策の効果については疑問である。観光客は放射能汚染に対する恐怖から見合わせているのであって、この長期化を考えれば、誘致計画を根本的に見直さざるを得ない状況になるであろう。

もともと、日本では観光を『物見遊山』『温泉旅行』『買い物旅行』と誤解している向きが多い。本来の観光の意味、語源については、次のような話がある。

観光の真の語源は「国の光を観る」こと。

中国の戦国時代(BC403年-221年)といえば、今から二千数百年前だが、宋・斉・梁・陳という4つの王朝が江南地方を支配していた。南北朝時代の末期に隋は、この陳を滅ぼして天下統一を成し遂げた。その陳国の国王は属公といい、その王子が敬仲といった。ある時、周の都から、占い大臣が来たので、敬仲の将来を占ってもらうと、「国の光を観よ」と説いた。

その意味は、敬仲は他国を旅行して、いろいろな国の制度、文化、生活の光を観るがよい。そして、自国と比較検討して、他国のすぐれた制度、法律、文化、人と交際しそのいい面を採り入れ、自国の改革、政治、生活の向上を図り、善政を実施すれば、人心は敬仲の徳を慕い、国勢の興隆と天下の泰平は間違いない、とその大官が説いた。「国の光を観よ」である。

この言に従い、敬仲はただちに諸国を「観光」の旅にでて、いまでいう海外視察、調査の旅を続けた。そして、国王となり明君として徳政を施したと言われる。

つまり、他国の美点を観察し、研究をすることを、『観光』という。本来の「観光」の意味は、決して日本の昔からあった物見遊山、湯治、漫歩、温泉旅行、お伊勢参りなどとは違ったもので、奈良、平安時代の「遣隋使」「遣唐使」と同じく、国外留学、国外研究、海外視察の意味に近い。

 歴代宰相の中ではベスト3には入る名宰相・原敬はこのことをよく理解していた。自らも外交官としてフランス公使館に長期駐在して、昭和天皇の皇太子時代には周囲の猛反対を押し切ってヨーロッパ旅行を実現した。本来の「観光立国」の実現である。

神格化されていた当時の天皇の海外旅行など想定外の時代である。

大正10年、原敬首相の時代に皇太子(昭和天皇)に欧州観光旅行を勧めて、断行した。前代未聞のこと。周囲は猛反対で、特に枢密院から強く反対が起った。当時、上海その他の地で、皇太子への不測の事態のリスク情報がピンピンと伝わってきて、万一の事があってはならぬと断固反対が沸き起こった。しかし、日本は国際連盟で[常任理事国で、新渡戸稲造が事務局次長(実質的な事務総長)をつとめており、将来元首となるべき皇太子はヨーロッパの実情をを知っておかねばならぬという帝王学の一環であった。

原首相は「万一、旅行中に、異変があれば、直ちに自匁して、罪を天下に謝す」の強い決意で密かに遺書を認めていた。幸いに皇太子が半年に及ぶ旅行を無事に帰国し横浜に入港せられた日、原は横浜港阜頭に出迎えて、感極まって、涙でハンカチを濡らしたのであった。

 極東アジアのユーラシア大陸から遠く離れた島国日本は地理的・地政学的に島国根性・内向き・引きこもり・鎖国・閉鎖体質がすべての点で抜きがたくある。いわば、ガラパゴスジャパン体質である。

そうした中で、日本の文化・文明の発展は古代から中世にかけて大陸中国・朝鮮・韓国からの文化の流入と日本からの遣隋使、遣唐使の派遣などによる相互交流、混合によって日本の独自文化が形成されていった。

明治維新もこの「観光立国」政策の産物なのである。吉田松陰の黒船への接触、高杉晋作の上海旅行、伊藤博文、井上馨のロンドン密航などの「観光」が明治発展の起爆剤となり、岩倉欧米使節団(大久保利通副使)という世界史に例のない「大欧米観光団」よって、「西洋文明」を全面的に導入し、『和洋折衷』により、「坂の上の雲」を目指し、20世紀の奇跡を生んだ。

明治大正時代の国費留学生もこの延長線上にある。幕末から明治まで、真に観光の線に沿って、強い志を抱いて旅立ち、苦心惨憺した志士たちに感謝しなけらばならない。その志士たちこそ今日われわれが謳歌している「豊かで恵まれた日本社会」の生みの親である。

 翻って現在の観光を見るとどうか。

観光の本来の意味をすっかり取違えている。観光が旗印の海外旅行、国内旅行も物見遊山、温泉、食べ歩き、おみやげもの、お寺まわりなどの遊宴、飲食旅行とハキ違えている。小中高校の修学旅行も同じではないのか。外国人観光もこの日本的な宴会旅行、温泉、買い物ツアーのりである。

日本の大学生の海外留学数が中国、韓国、アジアの大学生と比べてもこのところ、激減していると聞くが、日本の観光政策の根本的誤解と同じ根に由来している。文部省、教育関係者、父母の怠慢である。

 

 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『地球環境大異変の時代③』ー「ホットハウス・アース」(温室と化した地球)★『 日本だけではなく世界中で、災害は忘れたころではなく、毎年、毎月、毎日やってくる時代に』突入!?』

  『災害は忘れたころではなく、毎年やってくる時代に』         …

no image
東京理科大学・大庭三枝教授が著書『重層的地域としてのアジアー対立と共存の構図』について3/8日、日本記者クラブで講演動画(120分)

東京理科大学・大庭三枝教授が著書『重層的地域としてのアジアー対立と共存 の構図』 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(307)★『国難リテラシーの養い方③/ 辛亥革命百年⑬/『インド独立運動革命家の中村屋・ボースをわしが牢獄に入っても匿うといった頭山満』★『ラス・ビバリ・ポースの頭山満論』

      2010/07/16&nbs …

『Z世代のための生き方死に方講座』★『生死一如ー 鈴木大拙師(96歳)の老生学』★『今日から明日へ、今年から来年へと、将来に希望をかけることが私の九十三歳の健康法だ』●『特別に健康のことを考えて暮らすわけではないが、過去のことは考えんな。いつも未来のことを考えておる。あれをしなくてはならぬ、これをしなくてはならぬとな』

2017/03/30   百歳学入門(171)-「 …

『Z世代のための百歳学入門』★『知的巨人の百歳学(149)-失明を克服し世界一の『大漢和辞典』(全13巻)編纂に生涯を尽くした漢学者/諸橋徹次(99歳)」★『学問の大道は、読むべきものを読み、学ぶべきものを学んでから、本格的な研究に入らなければならぬ』

  2019/03/27  知的巨人の百歳学(14 …

no image
日本リーダーパワー史(106)伊藤博文③エピソード、女に殺された日本一の宰相

日本リーダーパワー史(106) 伊藤博文③エピソード、女に殺された宰相      …

no image
◎『ITS世界会議東京2013(10/14-10/18)-世界中から150社が出展―参加国や地域は65か国、約2万が参加した。

◎『ITS世界会議東京2013(10/14-10/18)-世界中から150社が出 …

no image
日本リーダーパワー史(315)「全政治家必読の(現状分析・国家戦略論)を読む」『大日本主義の幻想(中)』を読む③

·     &n …

『オンライン米大統領講座/トランプ米大統領の狂乱/断末魔、トランプ支持者が米議事堂に乱入、暴動!』★『1月20日以後はトランプ氏は反逆罪、脱税容疑など10数件の容疑で逮捕か?』★『トランプドタバタC級劇場の終焉』★『バイデン民主主義/修復劇場の幕開け!』

  時代は急テンポで変化する。 後世の人々は「トランプ米大統領の暴走、 …

no image
『オンライン講座』「延々と続く日中衝突のルーツ➈の研究』★『中国が侵略と言い張る『琉球処分にみる<対立>や台湾出兵について『日本の外交は中国の二枚舌外交とは全く違い、尊敬に値する寛容な国家である』(「ニューヨーク・タイムズ」(1874年(明治7)12月6日付)』

    2013年7月20日/日本リーダーパワー史 …