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『Z世代のためのオープン講座』★『2022年の世界情勢はどう変化したのか(下)』★『習近平氏、異例の3期目で強権独裁時代を確立』★『「三重苦」の中国経済の失敗・低迷』★『●ウクライナ戦争、ロシアは敗北中へ』★『ロシア軍はクライナ南部の要衝ヘルソンから撤退』

   

前坂俊之(静岡県立大学国際関係学部名誉教授)

●『習近平氏、異例の3期目で強権独裁時代を確立』

 

「一方、米中対立の中国では5年に一度の 「中国共産党大会」が10月16日に開幕、23日に閉幕したが、習近平国家主席(党総書記)(69歳)は予想通り、2期10年の慣例を破り異例の3期目の就任となった。

党規約の年齢制限などを改正し、習近平総書記の「核心的な地位」と「指導的な地位の「2つの確立」を盛り込み、側近、子飼いの若手を集め、他派閥を切り、最高指導者として権力を一手に握った。「習近平独裁時代」の第2フレーズに入ったといえよう。トップ7人の政治局常務委員のうち、これまで最高指導部の李克強首相(67)ら4人が退任した。かわって発足した政治指導部のチャイナセブンの常務委員は李強氏(63)(習派)ら7人中6人が習近平派で占められた。さらに政治局委員(25人)中の7割が「習派」で占められ、反対派閥を一掃しての権力の一局集中で独裁的強権体制が極限まで進んでいるのです」

「ハプニングもあったね、10月23日、党大会最終日に党中央委員の新メンバー発表の席で、習近平氏の隣に座る胡錦涛前国家主席が机の上の中央委員名簿を見ようとすると周りから阻止され、突然、演壇から退席させられるという前代未聞の5分間の衝撃映像がテレビで放映され世界を驚かせた。胡氏が後継者として推薦した胡春華・副首相(59)が名簿に載っていなかったのに抗議した」(峯村健司青山学院大学客員教授)というのがどうやら真相のようだ。

「その時歴史が動いた」風に言えば「習近平氏の強権独裁政治と中国共産党の権力闘争の暗部をとらえたこの決定的瞬間のスクープ映像は中国共産党の正体を暴露したものとして永久に残るであろう。24日、米株式市場や香港市場では習近平氏の独裁体制強化によって中国経済の先行きを悲観して、中国株は大暴落した。今後の中国は日本と同じ「失われ30年」の低迷、停滞をたどるのではないかとの見方が強まっている。」

  • 「三重苦」の中国経済の失敗・低迷

(A)「今回、もう1つのはハプニングは11月16日、国家発展改革委員会の幹部は「7〜9月期の経済は明らかに回復している」と発言したが、この4時間後に国家統計局はGDPや、消費など主要統計の公表を突然、延期したことだね。中国の信用を台無しにするいつものドタキャンだが、GDPの数字が悪ったことを伏せのですね。中国は大借金を抱えて危機的な状況にある」。

 

「新華社によれば、今年8月までの地方債の累計発行額は約124兆2000万円)です。中国の財政部の発表では、地方政府の債務残高は2021年には約626兆5000億円でGDP比では2021年末には26.6%で、5年前より6.8%も上昇した。これまで中国経済は極端に不動産に依存してきた。不動産向けの融資は対GDP(国内総生産)で40%を超えている。2021年夏以降、一部の不動産会社の資金繰り問題が表面化、恒大集団が約40兆円という巨額の負債を抱えて、昨年12月には事実上のデフォルト(債務不履行)に追い込まれています」。

 

「さらにもう1つの爆弾を抱えている。習近平政権は国内投資の限界から、投資を外に向ける一大外国投資プロジェクト「一帯一路」を進めてきた。この10年間で、アフリカ、中近東、中南米のエクアドルや、太平洋島しょ国など約150カ国(低所得国)に激増し、その貸付額は約1兆ドル(約145兆円)にのぼる。この結果、世界最大の債権国に浮上した。習近平氏はこの世界戦略は「世界の貧困国家の救済策に貢献した」と自慢したが、米国の1%の低金利融資に対して9%もの高金利による「債務の罠」「借金漬け」に入まってデフォルト(債務不履行)に陥ち入る国が激増して、中国へのやり方に不満が爆発してきた。以上のような「三重苦」の中国経済の失敗・低迷は、米国での大幅利上げと並んで、世界同時不況の爆弾の引き金になると見込まれているのです」。

●ウクライナ戦争、ロシアは敗北中へ

 

「英タイムズ」(11月3日付)は、「ロシアのウクライナ侵攻の具体的な計画は、昨年の夏以降、プーチン大統領の最側近らが中心となって内密に計画、実行した」と戦争の内幕を暴露した。同紙によると、パトルシェフ安全保障会議書記(旧KGB=国家保安委員会出身)、治安機関のFSB=連邦保安庁のボルトニコフ長官、ショイグ国防相が企画。ゼレンスキー政権を完全に排除し、ロシアのかいらい政権を打ち立てるなどの3案が検討した。70歳となって判断力が低下する前にプーチンに強く献策、実行を促し、ラブロフ外相にも、作戦の詳細を直前まで知らなかったということです」

 

「また、退役軍人や招集した若い兵士の武器、弾薬不足と訓練不足、それに部隊同士の相互の連携不足と司令官の相次ぐ交代に伴う指揮命令系統の混乱が重なって、同士打ちを頻発している、という。今年5月中旬以降の戦死者の多くが同士打ちが原因とみられている。米軍の第2次世界大戦とベトナム戦争での同士打ちによる戦死者数は全体の最大約14%とされるがウクライナ侵略での露軍側の同士打ちは全体の60%と言う異常な高さになっている。露国防省は9月下旬、戦死者「5937人」と発表したが、米英側の見方では露軍の戦死や負傷などによる戦闘不能者は「9万人超」に達しているといいますからね」

 

「プーチン大統領は予備役を戦闘に動員しており、9月以降に動員された予備役約30万人のうち、約4万9000人がすでにウクライナにいる部隊に配属されたと発表した。しかし、脱走兵や同士討ちなどによる兵士の減少が止まらず、最近では刑務所の囚人や服役を終えた殺人犯や麻薬密売人までが軍に招集しているといわれる。国連が設置した独立国際調査委員会の9月の報告では民間人に対する即決処刑や、一部兵士による性暴力などの戦争犯罪とみられる事案を数万件を確認した。ロシア軍内部から崩壊しているのです」

 

(C)「このため、ロシア軍はこのためウクライナのダム、発電所や送電線、水道などの重要インフラを狙って空爆によりエネルギーシステムの約40%が損傷を受けたり破壊された。そのため、数百万人が断続的な停電と断水に見舞われている。キエフの冬の平均気温は氷点下で、夜間にはさらに気温が下がる。プーチンは我々を死なせ、凍りつかせ、あるいは我々の土地から逃がしてこの土地を手に入れようとしている「ジェノサイド」(人類・民族殺戮計画)と非難している」

  • ロシア軍はクライナ南部の要衝ヘルソンから撤退

「ロシア国防省は11月11日、一方的に「併合」を宣言したウクライナ南部ヘルソン州のうち、ドニエプル川西岸から軍の撤退が完了したと宣言。ウクライナ軍もヘルソン市を奪還したと発表した。ヘルソン市で3月初旬から8カ月にわたって続いたロシアの武力支配は幕を下ろしロシアの敗北が始まった瞬間です。

プーチンが併合を宣言したのは9月30日なので、わずか一ヵ月後の撤退です。この敗北にロシアの強硬派を中心にタブーだったプーチン批判が噴出してきた。その中心人物が「プーチンの頭脳」とよばれ彼の領土的野心に影響を与えた思想家アレクサンドル・ドルゥーギン氏です。

彼の娘のダリア氏は8月、モスクワ郊外で車の爆発により暗殺されたが、彼が狙われたのです。彼はプーチン氏を「独裁者」と称し「専制君主たるものは国民と国家を守るものだ」とヘルソンを維持することに失敗し「ロシアの都市を守れなかった」ときびしく批判した。米シンクタンク、戦争研究所は、直接的な批判が「前例がないほど高まっている」と指摘している」

「それに、ロシア国営テレビの著名なキャスターはロシアの敗北した戦争の中で、特に日露戦争(1904~05年)を例に出して、国民総動員令を呼びかけているね。ヘルソンからの撤退は『日露戦争以来の戦争になってしまうのではないか』という声が出ていると。それほどロシア全土で大ショックを受けている。米「戦争研究所」はヘルソン州から撤退させた部隊を東部ドネツク州の攻撃へ転進させるのではないかとみている」

「ロシアの軍事組織内部での亀裂がより深まってきた。米紙ワシントン・ポスト(電子版)によるとプーチン大統領の側近で「プーチンのシェフ」と呼ばれる民間軍事会社「ワグネル」(プリゴジン創設)の雇兵部隊は最初からウクライナ侵攻に参加しており、ロシア国防省内で力を増している。そのプリゴジン氏が公然と「ロシア国防省幹部の指導力のなさで、ワグネル雇兵に頼る一方で、必要な支援をしていない」とプーチン氏に厳しく直訴した。また、彼敗北チェチェン共和国のカディロフ首長(プーチンの同志)によるロシア軍指導部批判に同調したこともある。ショイグ国防相の解任論もくすぶっており、ロシア軍共同体の中の勢力地図のこの変化が今後の勝敗を左右するだろうね」

「プリゴジン氏は食品関連企業を経営するオリガルヒ(新興財閥)の1人で、9月に初めてワグネルの創設者だと認めていた。『ワグネル』という組織は2014年以降、アフリカに進出して政府軍をサポート。その代わりに、アフリカの10か国以上のダイアモンドの採掘権を得ている「軍産複合体」企業で、オリガルヒ(新興財閥)の中でも有数の大富豪です。雇兵にどんどん囚人の動員をかけて、『戦地に行けばお金を渡すが、裏切ったら殺害すると予告している』「ジェノサイド」企業でもあり、プリゴジン氏が目指しているのはウクライナの『焦土化』です。プーチン大統領はロシア軍がダメなので「ワグネル」に頼らざるを得ない悪循環に陥ちっている)

 

「一方、英国紙「ザ・サン」(11月1日付)は「プーチン大統領は初期のパーキンソン病と膵臓がんと診断された」と報じた。根拠として、右手甲にある注射痕をあげている。「最近診断されたすい臓がんを抑制するために、あらゆる種類のステロイドと鎮痛剤治療を定期的に受けている」と。

『また、2021年現在の総資産が6600億円というロシア大富豪のオンライン銀行の創業者、オレグ・ティンコフ氏が、自身のSNSで「私はロシアの国籍を捨てる。プーチンのファシズム政権とは付き合えない。どの国にも1割はバカがいるものだ。ロシア人の9割は戦争に反対している」と発信した。モスクワ市職員の2~3割がロシア国外に出国しており、住宅・医療・教育に影響が出ている。国外への出国数は、2022年7月~9月末の間に約1000万回に上ったが、これは4月~6月の約2倍にあたる。大国ロシアは崩壊の運命をまっしぐらに進んでいようだ」

つづく

 

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