前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『オンライン講座/日本興亡史の研究②』★『明治大発展の影のキーマンは誰か?①』★『インテリジェンスの父・川上操六参謀総長ー田村 怡与造ー児玉源太郎の3人の殉職⓵』★『「インテリジェンスの父・川上操六参謀総長(50)の急死とその影響ー陸軍での川上の存在がいかに大きかったか』

      2021/08/30

2016/02/21  日本リーダーパワー史(670)日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(52)  

      前坂 俊之(ジャーナリスト)

(再録)日本リーダーパワー史(51) 名将・川上操六―陸軍のローマ法皇・山県有朋との死闘(7)

陸軍における川上操六の存在感がいかに大きかったかーー鵜崎鷺城「薩の海軍・長の陸軍」(政教社 明治44年刊)より。

『薩摩の陸軍の最大打撃は川上操六の死』

薩の陸軍に取って最大の打撃は黒田、野津、高島よりも川上操六の死であった。川上は背に薩摩陸軍の重鎮たるのみならず、帝国陸軍の最も大なる立役者なりき。参謀本部の設置に関しては山県の力は確かに大きいものがあったが、これを今日の如く完全なる作戦計画の府にした者は川上にして、日清戦争の如き、その根本計画はほとんど彼の頭脳より出でたものであった。

川上は当時すでに日露戦争の必ず近き将来においてに避けることはできないとを予測して、自ら満洲、西シベリアを視察し、病気となって帰国した。

ああ『川上あらしめば』とは天下、彼を知ると知らざるとを問はず、均しく発するところの嘆声にして、天のこの偉材を日露戦争戦前に奪ひ、彼の知能を傾倒することを不可能にしたのは、決してりのために不幸なるのみならず、また、実に帝国陸軍のために惜しむべしことであった。

当時さすがの伊藤も嘆声を発していわく、「天下のことほとんど自分の意のままにならぬものはないが、隅田川の水と川上とは自分の自由にはならず」と。
しかして山県及びその一党は川上が薩閥の一後進を以てして陸軍の首脳たる参謀本部により、あたかも長州のために隠然一敵国をなすの感があるを見て、これを喜ばず。

しかし、山県は陸軍大輔だったころより薩摩の勢力を殺ぎて、陸軍の長の権下に置く意図をもって、その徴兵制実施に際しても、薩摩排除の密計をめぐらせていたのは隠すことのできないべ事実であった。

川上を憎んだ山県これによって参謀本部をのっとり長州の勢力を擁護せんと機会の至るを待ちにき。ちょうど参謀総長小松宮殿下の薨去に際して、山県自ら総長になることを望んだが、事成らずして川上は次長より総長に進み、その後も自ら川上と代わる計画を廻らしていた。

明敏なる川上は山県一派の密謀を観破していたが、来るべき第二の戦争(日露戦争)を自ら計画するの考絵だったので、山県の如き老物にこの重要なる椅子を渡すべきではないと頑然としてその位置をを固守した。

ああ一葉落ちて天下の秋を知る。川上の死は陸軍における地図の彩りを一変した。

しかし山県一派が畏怖したのは川上一人だけで、他は自家薬籠に収むる易々たればなり。薩長互角の勢ひを有する時に方り、大山厳は薩の陸軍を代表して、あたかも山県の長におけるとその位置を伺おうとたれど、被は過去の陸軍を飾る一骨董品にして現実に活動すべき人物にあらず。

その茫洋として捕捉すべからざる人格、大量にして清濁併せ呑むの概ある、その円満にして福福しき形貌、これらは確かに将に将たるの器を共ふるに似たるも、軍事的才覚は川上の万分の一をも持ち合わせていない。また、山県の如くあくまでを権勢して保持して爪牙を養ふの執着心なく、いわば悪気のなき好々爺のみ。

日露戦事前、一たび参謀総長となり更に山でて満洲軍総司令官の大任を帯びたれど、その実権は山県及び児玉源太郎に在りて、彼は長派の傀儡に過ぎざりしなり。

かれは我軍の如何なる作戦計出によってロシア軍と戦い、またその日の戦争の如何なる地点において開かるゝやを知らず、砲撃の突如として起るを聴くや幕僚を顧みて何のための砲声なるやを問うこと一再ならざりき。かかるはその人物の大なるを示すとせんも、到底、彼の力をもって薩の陸軍を提げて長に対抗する能はず。

山県は元帥府に隠るるも依然として陸軍のローマ法王たるに反して、彼はご相伴的にその列に加はり黙々として長派の驕りをほしいままにするのを傍観するのみ。

 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, SNS,youtueで社会貢献する方法

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
人気記事再録『「新聞と戦争」の日本史』<満州事変(1931年)から太平洋戦争敗戦(1945)までの戦時期の新聞>

2009/02/10  「戦争と新聞」を検証する  講演録 1995年2月15日 …

no image
World Robot Summit 2018(10/17)-慶応大理工学部の「次世代人工知能・ロボットの「汎用人口手の研究開発」のデモ

日本の最先端技術「見える化」チャンネル Japan Robot Week2018 …

no image
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉞近代最大のジャーナリスト・徳富蘇峰の反省『なぜ日本は敗れたのか15の原因①』

  『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉞ 『来年は太平洋戦争敗戦から70年 …

no image
『昭和戦後史の謎』-『東京裁判』で裁かれなかったA級戦犯は釈放後、再び日本の指導者に復活した』★『A級、BC級戦犯の区別は一何にもとづくのか』★『日本の政治、軍部の知識ゼロ、日本語を読めないGHQスタッフ』★『ウイロビーは『日本を反共の防波堤』に』★『A級戦犯岸信介は首相にカムバック』●『右翼は裁かれず、児玉は日本のフィクサーへ』

裁かれなかったA級戦犯 釈放後、 再び日本の指導者に復活!した 前坂俊之(ジャー …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(189)記事再録/日中友好の創始者・岸田吟香伝②『 楽善堂(上海)にアジア解放の志士が集結』★『漢口楽善堂の二階の一室の壁に「我堂の目的は、東洋永遠の平和を確立し、世界人類を救済するにあり、その第一着手として支那(中国)改造を期す」と大書』

    2013/02/19 日本天才奇 …

no image
日本興亡学入門 ③ 米金融資本主義の崩壊による世界大恐慌へ突入!

cccccccccc 日本興亡学入門 ③                     …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(131)』『独 フォルクスワーゲン の排ガスデータ捏造問題、ドイツ経済にギリシャ危機以上の打撃』

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(131)』 『独 フォルクス …

no image
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』⑫ 英『タイムズ』、仏「ル・タン」の日中対立の見方と視点

  『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』 日中韓のパーセプ …

no image
『日米戦争の敗北を予言した反軍大佐/水野広徳③』-『その後半生は軍事評論家、ジャーナリストとして「日米戦わば、日本は必ず敗れる」と日米非戦論を主張、軍縮を、軍部大臣開放論を唱えるた』★『太平洋戦争中は執筆禁止、疎開、1945年10月に71歳で死亡』★『世にこびず人におもねらず、我は、わが正しと思ふ道を歩まん』

日米戦争の敗北を予言した反軍大佐、ジャーナリスト・水野広徳③  &nb …

●「鎌倉アジサイ(紫陽花)チャンネル① 」ー 長谷寺、明月院、御霊神社は3、4分咲き(2015/6/8-6/9)

 2014/06/10     鎌倉アジ …