前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

福沢諭吉の「韓国独立支援」はなぜ逆恨みされたか⑥「華兵(中国兵)凶暴」の記事が支那側から激しい抗議があり、辞職、帰国した。

      2015/01/22

 


「日本開国の父」『アジア開国の父』の福沢諭吉

の義侠心からの「韓国独立支援」はなぜ

誤解、逆恨みされたのかー

福沢の一番弟子「井上角五郎伝」から読み解く

井上が執筆した「華兵(中国兵)凶暴」と題する記事が

「漢城旬報」掲載されて支那側から激しい抗議が起こり、

井上は辞職、帰国へ追い込まれた。

 

<以下は「井上角五郎先生伝」(同伝記刊行編纂会、昭和1812月刊 、570非売品)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%95%E4%B8%8A%E8%A7%92%E4%BA%94%E9%83%8E

の『第2章、韓国顧問時代』(42-44P)から、転載する>」

 

                                                               

 

「華兵兇暴」の記事

 

 

明治十七年(25歳)二月発行の「漢城旬報」第10号に先生(井上)執筆の「華兵凶暴」と題する記事が掲載されて支那側から激しい抗議が起こった。

 

当時清国が朝鮮の内治・外交に対して干渉することまずく甚だしく、それにつれて支那兵の横暴は言語道断で、掠奪したり凌辱したり傍若無人の振舞は見るに忍びなかったが、この年二月、即ち朝鮮の正月二日の夜に、城内貞洞のある薬局へ支那兵がきて人参を買い、代金を払わないで立ち去ろうとするので、主人が出てそれを咎めたところが、支那兵はいきなりピストルを似て主人を射殺した。

 

その子がこれを支那兵営に訴へたけれども、支那兵衛では少しも犯人を探索する事なく、却って袁世凱は「我が中国の兵は紀律厳正である。此の犯行は惟うに他国人が仮に支那兵を装ってしたものであろう。」と声明したので、朝鮮人も多く憤慨したが、先生もまた人道上、捨て置き難く、右の事実を記して、その末尾に「支那兵の中には無頼の徒が少くない。その挙動が往々にして殺伐粗暴を免れない。今回の事、支那兵がこれを為したと云うも誰も怪むものはあるまい。」と付記したのであった。

 

「そんな事をすると危険だから」と忠告する人もあったが、先生は「何の、支

 那が如何に力んだところでこの俺を殺すより以上の事はできまい。」と平気で実行した。

 

  果して第10号が発行されると支那兵営は非常に怒って、直ちに朝鮮政府に迫ってその配布を禁ずる事を要求し、一方直接に博文局に詰問して来たが、先生は兵営からの詰問は相手にせず打ち捨ておいた。朝鮮政府に対しては、「この責任は井上角五郎の一身にあるから心配せず一任せよ。」といい、委細構わず発送を了へて、次々と発行を続けていた。

 

  するとそれから二ヵ月ばかりを経て、その年の四月、北洋大臣李鴻章は書を朝鮮政府に送って「『漢城旬報』は官報である。民間で随聞随録するものと同様に認める事はできない。然るに今回の事は明らかに礼を中国に欠くものである」と公然と譴責してきた。朝鮮政府は狼狽してなすべき所を知らない。そこで先生は初めに言明した通り、その責任を引き受け、「旬報」第16号を発行すると共に、外衛門顧問も博文局主宰も併せて辞職して帰国する事とした。

 

 

井上先生をして帰国の決心をさせた事情はそれだけではなかった。

 

その頃、日本政府の朝鮮経営に対する態度が急にかわってきたのである。先生が朝鮮政府の顧問となった当初などに、井上外務卿が自ら書を寄せて激励する有様であって、日本公使館も先生に好意を示して応接もいとまなかったものであったが、この年に入ってからは、井上外務卿は先生から手紙を出しても返事もせず、公使館もよそくしくなって、今庄の事件が起っても少しも援助しないばかりか、却って先生が非難を受けて帰り去るのを喜ぶような風さえ見えた。

 

この頃日本政府は内外多事で、殊に藩閥の間に勢力の争いが激しく、井上外務卿はその方に汲々としていたためであったとも言うけれども、単にそれだけの理由ではなく、当時日本に来ていた金玉均氏に対しても政府の態度はこれまでと打ってかわり、井上外務姉は面会もせず、金氏が頻りに資金の借入れに奔走しているのに、それを阻止した位であったから、政府の方針として、朝鮮に対しては手を収めて顧みない事に一時なったものと見る外はない。

 

とに角、日本政府の対朝鮮熱が非常に冷却したのを感じた先生は、一旦、帰国して朝野を覚醒させる必要をも感じたものであらう。

 

 博文局の編集印刷の事務は既に手順がついているから、先生なくとも継続発行するように局員たちに申し渡して置いて、先生は国王殿下に拝謁を乞うて、一編の封事を奉った。その大要は「教育の背及と産業開発の必要をのべ、就中浦漑水利の事業を企て海陸運輸の便利を図るべく、此等のためには国家が負債を海外に超す事も宜しい。」というので、国王は受けてこれを一読し、その詳細にわたって一々下問せられた後、「機を見て成るべく早く再びきてもらいたい。」と仰せられた。

 

先生はこの時の国王の言葉によって、国王が支那の横暴から脱れたいとの意図のある事を明らかに察した。かくいよいよ朝鮮を去って帰朝したのが、明治十七年五月であった。

 

 先生は帰国後も福沢邸に住んでいた。その頃は後藤伯も洋行から帰っていて、福沢翁と共に井上の労を慰め、「遠からず再び行ってもらう事になるだろうから、それまで十分に休息せよ。」といった。しかし先生は帰来早々から頻りに朝野の間に奔走して、朝鮮を決して捨てて置いてはならぬ事を説いて、その意見を「時事新報」に発表したり、三田演説館その他で演説したり、金玉均氏とも合ったり、中々多忙であった。

 

その夏には福沢氏は箱根の福寿楼に、後藤伯は熱海の樋口屋に居たので、先生は金氏と共に度々両地に往来した。後藤伯も先生の話によってますます深く朝鮮に関心を持ち、場合に依っては自分も朝鮮に出かけて働いて見ようかとまでで言っていた。

 

                               つづく

 

 

 - 人物研究 , , , , , , , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座㉟」★『120年前の日露戦争勝利の立役者は児玉源太郎』★『恐露派の元老会議に出席できなかった児玉源太郎』★『ロシア外交の常套手段の恫喝、時間引き延ばし、プロパガンダ、フェイクニュースの二枚舌、三枚舌外交に、日本側は騙され続けた』

元老会議の内幕   (写真右から、児玉総参謀長、井口総務部長、松川作戦 …

no image
知的巨人たちの百歳学(170)記事再録/元祖ス-ローライフの達人「超俗の画家」熊谷守一(97歳)●『貧乏など平気の平左』で『昭和42年、文化勲章受章を断わった。「小さいときから勲章はきらいだったんですわ。よく軍人が勲章をぶらさげているのみて、変に思ったもんです」

    2016/07/10 /百歳学入門(151 …

no image
正木ひろしの戦時下の言論抵抗(正木ひろし伝Ⅱ)(下)

1 <静岡県立大学国際関係学部紀要『国際関係・比較文化研究』第3巻第1号(200 …

「パリ・ぶらぶら散歩/ピカソ美術館編』①」(5/3日)周辺の光景 ー‏開館前から行列ができ、終日長蛇の列、20世紀最大の画家・ピカソの圧倒的な人気がしのばれる。

 2015/06/01  記事再録 『F国際ビジネスマンのワ …

no image
日中韓近代史の復習問題/『現在の米中・米朝・日韓の対立のルーツ』★『よくわかる日中韓150年戦争史ー「約120年前の日清戦争の原因の1つとなった東学党の乱についての現地レポート』(イザベラ・バード著「朝鮮紀行」)★『北朝鮮の人権弾圧腐敗、ならずもの国家はかわらず』

  よくわかる日中韓150年戦争史ー「約120年前の日清戦争の原因の1 …

no image
世界/日本リーダーパワー史(929)-『トランプ大統領が招く「米国孤立」と世界経済の混迷、世界恐慌の悪夢』(上)『米中関税戦争が本格化!』★『北朝鮮に完全非核化の意思なし』

  トランプ大統領が招く「米国孤立」と世界経済の混迷― 世界大恐慌によ …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座(43)』★『ロシアと違い日本は宗教が自由の国』★『ルーズベルト大統領は「なぜもっと早く来なかったのか!私は君を首を長くして待っていた」と金子特使を大歓迎』★『ル大統領「日本のために働く」と約束』

ルーズベルト大統領は金子特使を大歓迎 米国到着、米国民はアンダー・ドッグを応援 …

no image
日本風狂人伝⑱ 『中江兆民奇行談』(岩崎徂堂著,明治34年)のエピソード 数々

日本風狂人伝⑱             2009,7,13   『中江 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(225)』<日馬富士暴行傷害事件の問題点>『急速な少子化、サッカー、野球などの他スポーツへの若者の傾斜、過酷な肉体労働の忌避など、乾坤一擲の策を講じても「日本人中心の相撲界」の将来性は相当厳しいのではと感じられます』

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(225)』  <F国際ビジ …

no image
 世界、日本メルトダウン(1035)–『朝鮮半島チキンレースの行方はどうなる』★『連日、報道されている北朝鮮情勢緊迫について、北朝鮮、米国、関係各国の情報操作、プロパガンダ、ニセニュースが横行中』●『戦争の最初の犠牲者は真実である』●『空母の朝鮮半島派遣でトランプ政権が釈明 「今は朝鮮半島に向け航行中」』★『北朝鮮のミサイル実験失敗、米軍のサイバー攻撃の仕業か』

 世界、日本メルトダウン(1035)– 『朝鮮半島チキンレースの行方 …