前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『リーダーシップの日本近現代史』(305)★『3・11国難リテラシー⑩「糸川英夫いわく」★『➀なぜ事故は起きたのか(WHY)ではなく「事故収束」「復興・再生」の「HOW TO」ばかりの大合唱で、これが第2,3の敗戦につながる』②『すべての生物は逆境の時だけに成長する』③『過去と未来をつなげるのが哲学であり、新しい科学(応用や改良ではなく基礎科学)だとすれば、 それをもたない民族には未来がない』

      2020/03/05

 
 
東日本大震災(福島原発事故)から「日本国難史」を考える。 
 
前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
 
<以下は
 
たまたま書斎を整理していると、古いメモ帳が出てきた。一時、その独創的な発想法にはまって読みふけったロケット博士・糸川英夫の言葉が書きつけてあった。3・11以降の日本メルトダウンの原因と、それへの対応をみていると、糸川英夫の言葉はズバリ当たっている。
「なぜ事故は起きたのか」(WHY)ではなく「事故収束」「復興・再生」の「HOW TO」ばかりの大合唱なのである。やばいよ。
 
●「すべての生物は逆境の時だけに成長する」
 
イスラエルの建国の父・初代首相のダビッド・ベングリオンは『この国の60パーセントを占めている沙漠を征服し,荒野の地に人が住むようにならねば、イスラエルに未来はない』-との言葉を聞いた時、糸川は電撃を受けたようなショックを受けた。
不毛と灼熱の大地、砂漠とくらべると,山岳と森に囲まれて、豪雪地帯もある日本は暮らしにくいなどと言う人があったら罰が当たる。日本はどこに住んでいても天国のなだと思った。
 
 
同じく、次の頁には利根川進の言葉が綴られていた。
1987年、ノーベ医学賞の生理学賞を日本ではじめて受賞した利根川進博士は『なぜ、日本人にノーベル賞の受賞者が少ないのか』と問われて、次のように答えた。
 
●『心が自由にならない限り、モノはつくれても、世界的な研究や発明は出てこない』(利根川進)
それをもたない民族には未来がないということになる
 
●「機械を動かすにはスパナと油で十分だが、人を動かすためには金と哲学が必要だ」(本田宗一郎)
 
 
 
そして、本をかき分けて、これも書斎の本箱の下に山積みになっている糸川英夫の『日本創成論』(1990年、講談社)を見つけ出した。日本とイスラエル、キリスト教を比較しながら「日本滅亡論」を展開しており、見事に当たっており、なるほどと感じた個所にはシオリが張ってあった。
 
日本人には原理原則、哲学がない。『HOWばかりで、WHYがない国』である。

『人類共通の原理・原則を発見するためには、「なぜ」(WHY)という問いかけが必要である。
「なぜ」の繰り返しなくしては、宇宙を支配する絶対的真理には到達できない。この「なぜ」と問う姿勢が、伝統的に欧米人の思考法の基盤になっている。
それに対し、日本的思考法の基盤は、「いかにして」(HOW)である。たと、えば、日米構造協議にしても、日本側は相手方の矛先をいかにしたら(HOW)うまくかわせるかに終始して、なぜ(WHY)このような問題が起こってきたかにかかわる部分はすべて素通りしてしまう』
「要するに、原理・原則、不滅の論理体系などというものは、日本人には関係なく、日本人にとって意味をもつのは、具体的な身のまわりの事実、現象にいかに対応するかということだけだというわけである」
「原理・原則をもたない民族は、過去を容易に忘れる。ユダヤ人は二千年、三千年前のことを昨日のことのように論じ合っているのに、日本では四十数年前の戦争体験も風化している。
 
 過去と未来をつなげるのが哲学であり、新しい科学(応用や改良ではなく基礎科学)だとすれば、
それをもたない民族には未来がないということになる
 
「ヨーロッパ人は日曜日には必ず教会に行く。そこでなにをするかというと、哲学、つまり人生や宇宙、世界のことを考えるのである。神と語り合うというのは、そういうことなのだ。
ギリシア語で余暇のことを「スコーレ」という。アリストテレスは、「われわれはスコーレをもつために働く」といっている。彼のいう余暇とは、考え、思索する時間のことであり、この「スコーレ」が「スクール」 の語源である
「スコーレ」が「スクール」 の語源であることを考えれば、そのことが容易に理解できる。そして現在のヨーロッパでは、学校は人間を完成させるために非常に重要な場所なのである」
 
ところが、日本の大学はみんなが行くから、いかないと恥ずかしいーと言うだけのもの、これで人間もエリートも育つわけがないではないか。
 

 - 人物研究, 現代史研究, IT・マスコミ論 ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
★<人気リクエスト記事再録 2009/02/10>昭和戦後最大の冤罪事件の真犯人が語る『全告白・八海事件-これが真相だ(中)』(サンデー毎日1977年9月11日掲載>

2009/02/10   <サンデー毎日1977年9月11日掲載> 八海事件の真 …

no image
『オンライン講座/作家・宇野千代(98歳)研究』★『明治の女性ながら、何ものにもとらわれず、自主独立の精神で、いつまでも美しく自由奔放に恋愛に文学に精一杯生きた華麗なる作家人生』『可愛らしく生きぬいた私の長寿文学10訓』

  2019/12/06 記事再録  作家・宇野千 …

『Z世代への遺言・生死一如』★『関 牧翁の言葉「よく生きることは、よく死ぬこと」★『一休さんの遣偈(ゆいげ)は勇ましい』★『明治の三舟とよばれた勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟の坐禅』

  2020/03/09  『リーダーシップの日本 …

no image
世界最先端テクノロジーレポート②「3Dプリンター革命」はモノづくりの革命となるかー「その現状と将来」

  世界最先端テクノロジーレポート②   「3Dプ …

no image
『世界サッカー戦国史』⑦『ベルギー戦・西野ジャパンは2-3で惜敗するも大健闘!』★『グローバル化する世界で多民族国家がほとんどの中で唯一の「ガラパゴス・ジャパン」(ほぼ単一民民族国家日本)の永遠の課題がこの試合でよく見えた』

W杯サッカー、西野ジャパンの惜敗するも大健闘!   予選敗退確実とみら …

no image
『日中コミュニケーションギャップを考える』(2005/6/30)―中国人の行動原理は➀面子(ミエンツ)②関係(グアンシ③「人情(レンチン)」)

『日中コミュニケーションギャップを考える』(2005/6/30) ―中国人の行動 …

オンライン講座・明治大正時代の政界黒幕・秋山定輔の国難突破力』★『秋山は日露戦争の勝因はロスチャイルド家のおかげだとして政敵の山県有朋・桂太郎首相を説得したインテリジェンスはスゴイよ』

2011年日本リーダーパワー史(121)日露戦争勝利はロスチャイルドの外債(戦費 …

『Z世代のための百歳学入門』★『日本一の百科事典派(google検索のアナログ版)物集高量(106歳)』★『百歳は折返し地点、百歳までは予習時代。これからが本格的な勉強ですよ』

物集高量氏(もずめ・たかかず)明治十二年(一八七九年)四月、東京生まれ。号は梧水 …

百歳学入門(154)『世界ベストの画家に選ばれた葛飾北斎(90歳)『創造力こそが長寿の源泉である』●『北斎こそ世界を席巻する「ジャパンアニメ」 「ジャパンクール」の元祖』

 百歳学入門(154) 世界ベストの画家に選ばれた葛飾北斎(90歳)・ 創造力こ …

no image
日本リーダーパワー史(551)「日露戦争での戦略情報の開祖」福島安正中佐①「シベリア単騎横断」や地球を1周した情報諜報活動こそ日露戦争必勝のインテリジェンス

 <日本リーダーパワー史(551) 「日露戦争での戦略情報の開祖」福島安正中佐① …