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地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

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『リーダーシップの日本近現代史』(197)『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』㉘『開戦1ゕ月前の「独フランクフルター・ツワイトゥング」の報道』ー「ドイツの日露戦争の見方』●『露日間の朝鮮をめぐる争いがさらに大きな火をおこしてはいけない』●『ヨーロッパ列強のダブルスタンダードー自国のアジアでの利権(植民地の権益)に関係なければ、他国の戦争には関与せず』★『フランスは80年代の中東に,中国に対する軍事行動を公式の宣戦布告なしで行ったし,ヨーロッパのすべての列強は,3年前,中国の首都北京を占領したとき(北支事変)に,一緒に同じことをしてきた』

      2019/12/14

 

   / 『日本戦争外交史の研究』記事再録

『世界史の中の日露戦争』㉘『開戦1ゕ月前のドイツ、フランス、ロシアとの関係』

  1903(明治36)1221

  「独フランクフルター・ツワイトゥング」(夕刊)

          『露日間の朝鮮をめぐる争いがさらに大きな火をおこしてはいけない』

この記事を読むと、ヨーロッパとアジア、日本との越えがたいパーセプションギャップ(思い違い、認識ギャップ)が見える。

当時の西欧における植民地主義は西欧にとってアジア、中東、アフリカにキリスト教的文明、科学、経済を普及するための

善的行為であり、日本の朝鮮をめぐる日露戦争の開戦は、このドイツ紙も植民地獲得戦争ととらえている。

しかし、日本側の認識では「朝鮮を占領、支配する植民獲得」は二の継ぎで、世界一の軍事侵略国家が朝鮮に軍事基地を建設して、支配すると、次は日本が中国に次いで狙われて、侵略されるという危機感であり、国難至るという国民全体の一大危機意識である。

その意味では、日露戦争は隠忍自重の末、つにい堪忍袋の緒をきった『自衛、防衛戦争」であったことは、このシリーズを読むとよくわかる。

 ①日本自身はこの日英同盟パートナー(イギリス)をたぶんあてにしていない。もしペテルプルグにおける平和維持のあらゆる努力にもかかわらず(実際は引き延ばし、日本がまさか戦争に踏み切るとは思っていなかった).戦争が避けられないと思われたら、ロシア側では,日本を侵暗者呼ばわりしようとするだろう。(これはその通り、先に手をださせる戦略)

②これはイギリスがプール共和国に対して使った戦術で、それ故,仮に日本が朝鮮の23の地点を占領しても,ロシアが宣戦布告で応えるかどうかはまだ疑わしい。(この通り、もし、日本が宣戦布告することなく、軍事占領しても、同じ穴のムジナのロシアは300年間、一貫して領土拡大、武力占領を国是として続けてきたので、紛争、衝突はあったにしても、世紀の大戦争にはまだならなかったかも知れない)

要するに,ヨーロッパ的戦争基準を東アジアのできごとに適用することはできないのだ。フランスは80年代の中東に,中国に対する軍事的作戦行動を公式の宣戦布告なしで行ったし,ヨーロッパのすべての列強は,3年前,中国の首都を占領したときに,一緒に同じことをしてきている。

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  「独フランクフルター・ツワイトゥング」(夕刊)の報道

露日間の戦争は回避され得るし,回避されるだろうという希望を捨てる必要はまだないとはいえ,どう見ても露日間の交渉は危機的な局面に至っている。

日本はこの争いの収拾のために提案をし,ロシアもこの提案に対抗提案で応えている。両国の見解はまだお互いにかなり離れており,調停の余地は十分とは言えない。ともかく,ハーグ仲裁裁判所に訴えを起こすなど,この両当事国は考えていないようだ。

日露双方とも,すでに国の「名誉」と「威信」を盛んに問題にしているのは,たしかに容易ならざることだ。なぜなら,もし,もはや正義ではなく力だけが問題なら,いさかいをする者たちに理性を説いて聞かせるのはきわめて困難だからだ。

アジアにおけるロシアの侵略は,ひと言で言って,以前,アジア諸民族に手を焼いたときに用いたむき出しの脅しやロシア自身の小規模な軍事行動によっては屈服させることのできない抵抗に,今や直面している。

日本はむろん,当然他のアジアの民族のように自らの財産を防衛するのではなく,ロシアのように自らの征服欲に取りつかれ,その支配地域を拡大しようとしている。

すでに9年前に朝鮮は日本に戦争の契機を与えたが,日本はそれ以前にヨーロッパの技術を導入することによって実際に強力となった自らの力を自覚して,中国の支配を朝鮮から駆逐し,自ら遼東半島に確固とした足場を築くことを決意していた。

当時も今も戦争へと駆り立てたのは日本の急進派だったが,その彼らが8年前には日本の凱旋を止めようとしたロシアとの正面衝突をためらったのだ。

しかしながら,ロシアがフランスとドイツの支援を受けて日本の南満州の確保を妨げ,その後その全地域を占領したことに,日本はひどい国民的侮辱を常に感じてきた。

ついでに言えば,日本に向けられたロシアとフランスの行動にドイツが同調したことは,外交上の一手に過ぎなかった。なぜなら.フランスは当時新たに結ばれた露仏同盟の効果の最初の印象的な見本を実行したからであり,ドイツが両同盟の間に割り込むことで,われわれの予想通り,フランスの意図をくじき,ロシアの大きな内心の満足を得ることになった。

ドイツ政府が今この争いに割って入ることも,また完全にロシアと共同で事を進めることもわれわれには論外のことに思われる。

もっともロシアと日本の間の戦闘の結果は,もし,どちらも疲弊して終わるのではなく,一方が他方に決定的な勝利を収めたとき,わが国の東アジアにおける経済的利益に重要な意味を持つことになるだろう。

日本がこれまで短気な態度をとってきたとはだれも言えない。なぜなら日本は,満州撤退に関して,ロシアにその約束を実行させる時間を与えてきたからだ。

ロシアが約束を果たすようなそぶりも見せず撤退の期日が過ぎて,初めて日本は代償の要求をもって迫った。日本が満州に,たとえばイギリスやアメリカ合衆国よりも擁護すべき重大な利益を持っているとは.日本は主張するつもりはなかっただろう。

日本がロシアに立ち向かう気になったのは,日本の朝鮮における利益が直接傷つけられたことよりむしろ,まさしく国家的名誉心からだろう。どのような提案を日本が行い,どのような対抗提案をロシアが行ったかについては正確で確実なことはまだ分からない。

しかし次のことが推測されている。東京の政府は,もし日本が朝鮮南部をその良港とともに確保するなら,朝鮮北部をロシアに譲ることをすでに覚悟している,ということだ。

ロシア政府はそれを拒否し.それに対して,日本の朝鮮に対する一種の保護権は承認するが,その代り,ロシアに朝鮮南岸および南東岸にある両港,すなわち馬山浦と木浦の両港か,少なくとも前者を軍事基地として譲るよう提案をしたという。

日本がこの不当な要求をきっぱり斬ったことは明白だ。なぜなら馬山浦は日本にはど近く対馬からたった60キロ,長崎から300キロしか離れていない-ロシアが馬山浦を占拠すれば,きわめて深刻な脅威を受けることになるからだ。

しかし,ロシアがこの土地を日本に譲るつもりはないことも明らかだ。

それというのも,日本は馬山浦によってロシアの東アジアの2大軍事基地,ウラジオストクと旅順の連絡をいっでも遮断できるからだ。この間題に関する平和的な解決はこれによって考えられなくなり,朝鮮の独立が失われることが避けられないなら,だれが朝鮮南部の支配者になるべきかを決定できるのは剣だけになる。

そのため別の解答を探さなくてはならない。ペテルプルグの決定権のある人々がまだ真剣に平和を守るために努力しているということや,天皇とその責任ある助言者たちも平和的解決を不可能にするあらゆることを今まで避けてきたということは,疑い得ない。

 

朝鮮に対する日本とロシアの関係は1896年と1898年の協定によって決められている。もし日本がロシアの満州占領に対して朝鮮に代償を求める主張をまず放棄し、次に満州に関してロシアが日本に重大な商業的譲歩を行う場合,この決定が守られない理由はない。

ロシア政府は,そうすることで,日本や他の列強に以前与えた約束に従うことになるだけなので,いっそうそれが可能なのだ。その場合,ロシアの「威信」が落ちることにならないのは確かで、産業的、商業的利益も重大な被害を被

ることはまずないだろう。

日本の「威信」も同時に守られる。日本の威信は,朝鮮征服を義務づけておらず,ロシア側の経済的譲歩の実施があれば,それは日本の名誉心をさしあたり満たすのに十分だろう。

完全武装して敵と対峠しているこの両国に外からどのくらいの働きかけが成功し得るのれということは明言しにくい。

ロシアの新聞は,イギリスが日本をしてロシアと事を構えさせていると,イギリスに罪を押しつけているが、この主張には全く根拠がない。それどころか,イギリスはロシアと日本の間の戦争を阻止しようと努力していると言ってもまず間違いではなかろう。そういう戦争の結果にまだ確信が持てないからだ。

イギリスは,仮に日本自身と同じく日本の優位を確信していても,もちろん異なる姿勢をとるだろう。なぜなら.イギリスは東アジアでロシアを弱める努力をしなくてはならない一方,日本を優位にさせることで利益を得ることはできないからだ。

 

ここ数十年のほとんどの戦争では,事前の一般的な期待がかなえられたことは

なく,イギリスもそのため,露日間の力試しをできる限り先に延ばす方がより堅実だと見なしているようだ。

 

その場乱日本に対するイギリスの,ロシアに対するフランスの,同盟上の義務は計算しなくてよいかもしれない。というのも,この義務は第三国が戦闘に参加したときのみ実際効力を持つものでこの第三国は中国でしかあり得ないからだ。

しかし、日本自身はこの同盟パートナーをたぶんあてにしていない。もしペテルプルグにおける平和維持のあらゆる努力にもかかわらず.戦争が避けられないと思われたら、ロシア側では,日本を侵暗者呼ばわりしようとするだろう。

ちょうどイギリスがプール共和国に対して使ったように。それ故,仮に日本が朝鮮の23の地点を占領しても,ロシアが宣戦布告で応えるかどうかはまだ疑わしい。

要するに,ヨーロッパ的基準を東アジアのできごとに適用することはできないのだ。フランスは80年代の中東に,中国に対する軍事的作戦行動を公式の宣戦布告なしで行ったし,ヨーロッパのすべての列強は,3年前,中国の首都を占領したときに,一緒に同じことをしてきている。

さて,露日間の朝鮮をめぐる争いがさらに大きな火をおこしてはいけないし,両国がお互いにまだ交渉している間は,平和的合意もあり得るだろう。

 – IT・マスコミ論戦争報道現代史研究

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