日本リーダーパワー史(825)『明治裏面史』 ★『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス㊴』戦争に勝つための必要条件は外交、軍事、財政の3本柱の協力一致である。』
日本リーダーパワー史(825)『明治裏面史』 ★
戦争に勝つための必要条件は外交、軍事、財政の3本柱の協力一致である。
日露戦争ではこの3条件が見事にうまくいったのである。
日本銀行総裁の任期は五年であった。その当時、期限が到来していたが、日露戦争の切迫で、時の日本銀行を大蔵省化する必要があった。日銀総裁山本達雄は手腕はあるが、官吏の経歴がなく、冷静理論派ではあったが財政の経験はなかった。
日露戦争の勃発によって、日本銀行を挙げて大蔵省の一局同様にするために、山本総裁の任期満了をとともに更迭する措置をとった。
そこで十月、松尾臣善理財局長
https://www.boj.or.jp/about/outline/history/pre_gov/sousai06.htm/、
の働きにより、日本銀行は大蔵省化した。一般社会には知られなかったところで、大蔵省は国を賭してまでも戦う決心をしたのである。
松尾局長を挙げて日銀総裁とし、大蔵省の肚も決った。貨幣や租税の調査に取り組み、財源を得るために煙草専売を行なう必要があるとして橋本圭三郎をヨーロッパに派遣して研究に当らせた。
わが国の財源の増加には、たばこの専売による外はなかったのである。
日露戦争開戦ギリギリの明治36年末に政府は専売を決意した。
ところで、当時のわが国の海軍力は全く微々たるもので、チリより一万二千トンの軍艦2隻(価格二千万円)を購入するように英国から勧められた。
海軍は強く購入を希望したが、大蔵省には到底、購入できる資金がなく、ロシアがこれを購入する様子が見えたので日英同盟を結んでいたイギリスは好意を以てこれを先に買収した。
わが国がその後、これを譲り受けの交渉をしたが、英国は一度自国の国旗を掲げた以上これを譲渡することはできないと拒絶した。
ところが、日露開戦の1ゕ月前の明治36年12月28日.海軍のヨーロッパ派遣員から
「ブラジルの注文でイタリア・ヴネチィアで建造した価格1600万円の二隻の軍艦がちょうど儀装まで出来たものがある。
もし、日本が買わなければロシアが購入するかもしれない。し機を逸するときは霹国の手に帰するかも知れない。直ちに購入すべし」という緊急電報があった。
海軍は、以前にも軍艦購入が実現せず、ロシアにわたれば日露間の軍艦保有数差はさらに開くので大蔵省に絶対購入するように懇願した。
しかし、当時大蔵省では、ロンドンにおいてようやく金貨二千万円を確保したのみで、軍艦を購入すれば資金消失の恐れがありとして熟考、躊躇した。
また、もし購入する場合には緊急勅令の発布によるしかなく、発布によって日本の戦意を表明することにもなるとなるとの意見や、逆にこの決意表明によってかえって戦争を避けることが出来るかも知れないとの説もあり、大蔵大臣室で大いに議論を戦わされたということである。
この二隻の軍艦は「日進」、「春日」であった。
水町袈裟六(みずまち、けさろく、明治24年大蔵参事官に任命され、31年経済状況視察のため、ヨーロッパ各国に出張。36年大蔵省理財局長、40年大蔵次官で財務特派員となる。日露戦争後の外債処理問題で、英・仏両国と交渉。44年退官。その後日本銀行副総裁兼横浜正金銀行頭取。)の話によると、
12月28日夜九時ごろ電話によって出頭したところ、曾禰 荒助、松尾臣善
https://www.boj.or.jp/about/outline/history/pre_gov/sousai06.htm/、
高橋是清等が集まっており、ロンドンに集積してある金貨2000万円を以て軍艦購入費に充てんとしたが、この金貨は現金にて保護するのは愚であるとし、既に以前にこれを公債に代えて有利に運転していた。
現金としてあるのではないので、日時切迫の折柄、軍艦購入費に充てることが出来ない。止むを得ず外国で高利の借金をして、かろうじて間に合わした、という。
この頃、政府は、12月中財政上の緊急処分として軍備充実に要する経費と京釜鉄道工事補助金支出のため、1時、借入金をなし、又特別会計に属する資金を繰替使用し、国庫債券を発行することとし、勅令を発布した。
当時緊急支出を必要とした陸海軍費は、2億5500万円で、これが財源としてほ国庫債券収入1億円、特別会計資金繰替2500万円、1時借入金3000万円を以てこれに充てて、焦眉の急に応ずることとした。
また、12月31日、小村外相は、林董在英公使に訓電して英国外務次官ランスダウン侯に財政上の援助を求めさした。しかし、1月1日、英国当局者より拒否されたと返電があった。
それより先、「日進」、「春日」の両艦がイタリア・ヴネチィアを出航して以来、ロシア軍艦が常に尾行し、事態が緊迫していたが、英国艦がわが艦を狭んで航行保護したので、砲火を見ずして無事右両艦はわが勢力圏内に入ることが出来た。これはひとえに同盟のタなものであった。
翌37年1月に至り、談判の結果はますます形勢険悪となり、
遂に23、4日の両日に至り、殆んど破裂となったが、伊藤公は「日進」、「春日」の両艦が2月5日シンガポール港を発し、日本の勢力範関に入るまで談判を長引かすよう尽力したのである。
いよいよ明治37年2月9日、開戦となった。
明治天皇は松方正義、井上馨同侯を召されて財政顧問とした。ここにおいて三人の大蔵大臣格の人物が財政顧問となり、松方侯は財政に、井上侯は経済に長ぜられ、特に井上侯は三井、住友等の実業家間に勢力を有し、三井、住友が大蔵省の論議に常に賛成の意を表したのは、専ら井上侯との関係ある故と思われる。
当時民間に於てしきりに曾禰蔵相排斥問題が起った。しかし、松方侯は、この機に臨み大臣を更迭するのは、わが国の弱点を示すものなりとし、若し財政に欠点が生ずるときは、松方侯自らその責任に当る旨を表明し、断固として排斥更迭論に対して反対した。明治天皇も国論統一の御主旨を以て人物の配置に御心を用いられ、誠に妙を得ておられた。
このようにして挙国一致を得られた。
陸軍は十箇師団を動かすのに要する費用が10億円の計算であり、これは免換券発行を以て充当して戦うより外にはなく、若し党換券の発行が多い時は、物価騰貴し、財政に不況を来たす恐れがある。そのため、免換券発行はするが、直ちに租税公債等によって、この引挙げには注意し、物価騰貴を防ぐことができた。
関連記事
-
-
日本メルトダウン脱出法(768)「債務の貨幣化:日本の解決策、経済的リスクの詰まったパンドラの箱」(英エコノミスト誌)」●「中国・韓国が日本との関係改善に追い込まれた事情」
日本メルトダウン脱出法(768) 債務の貨幣化:日本の解決策 経済的リスクの …
-
-
『Z世代への遺言』★『歴代宰相で最強のリーダーシップは終戦(1945年)を決断実行した鈴木貫太郎(77)』★『山本勝之進の講話『 兵を興すは易く、兵を引くのは至難である』★『プロジェクトも興すのは易く、成功させるのは難い』
オンライン/75年目の終戦記念日/講座④』2020/08/15 記事再録再編集& …
-
-
お勧めの歴史本1冊―2012年1月号『歴史人』(「日清・日露戦争の真実」特集号)
お勧めの歴史本1冊― 2012年1月号『歴史人』(「日清・日露戦争の真実」特集号 …
-
-
「今、日本が最も必要とする人物史研究①」★『日本の007は一体だれか』★『日露戦争での戦略情報の開祖」福島安正中佐①100年前の「シベリア単騎横断」や地球を1周した情報諜報活動こそ日露戦争必勝のグローバル・インテリジェンス』
2015/03/09   …
-
-
片野勧の衝撃レポート(65)戦後70年-原発と国家<1955~56> 封印された核の真実「平和利用で世論を変えよ」(下)
片野勧の衝撃レポート(65) 戦後70年-原発と国家<1955~56> 封印され …
-
-
日中北朝鮮150年戦争史(42)『日中歴史復習問題』★「日清戦争の内幕ー中国人民軍(清国軍)もらった「売命銭」分しか戦わない、汚職腐敗軍隊。 中国3千年の歴史は皇帝、支配者の巨額汚職、腐敗政治であり、「習近平政権」(1党共産党独裁)にも延々と続いている。②
日中北朝鮮150年戦争史(42) 『日中歴史復習問題』★「日清戦争の内幕ー中 …
-
-
世界が尊敬した日本人ー『エ・コールド・パリ』・パリ画壇の寵児となった『世界のフジタ』藤田嗣治
世界が尊敬した日本人 前坂 俊之静岡県立大学名誉教授 明治以降の日 …
-
-
日本リーダーパワー史(243)150年かわらぬ日本の派閥政治の根幹<尾崎咢堂の語る首相のリーダーシップとは
日本リーダーパワー史(243) <尾崎咢堂の語る明治の首相の …
-
-
★『2018年(明治150年)の明治人の歴史復習問題』-『西郷どん』の『読めるか化』チャンネル ➂<記事再録まとめ>◎『山県有朋から廃藩置県(史上最大の行政改革)の相談を受けた西郷隆盛は「結構です!」と一言の基に了承し、即実行した』◎『西郷の大決心を以て事に当たったからこそ 用意周到、思慮綿密なる大久保や木戸の危んだ 廃藩置県の一大事を断固として乗り切ることができた。 西郷こそは民主主義者である(福沢諭吉の言葉)』③
★『2018年(明治150年)の明治人の歴史復習問題』- 『西郷どん …
-
-
知的巨人の百歳学(128)ー大宰相・吉田茂(89歳)の晩年悠々、政治健康法とは①<長寿の秘訣は人を食うこと>『「いさざよく、負けつぷりをよくせよ」を心に刻み「戦争で負けて、外交で勝った歴史はある」と外交力に全力を挙げた。』
2013/11/04 記事再録/百歳学入門(83) 大宰相・吉田茂( …
- PREV
- 日本リーダーパワー史(824)『日本は今、「第3の国難<日本沈没>の危機にある。』 ★『明治の奇跡・日露戦争を勝利のスーパープロデューサーは児玉源太郎である』★『「国難にわれ1人立たん」の決意で参謀本部をになった児玉の責任感こそ見習うべきで時であろう。』
- NEXT
- <F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(211)>「6/8付『エルサレム・ポスト紙(6/8)のキャロライン・グリック女史副編集長の”カタール紛争を 取り巻く諸情勢”に関する分析記事は目からウロコ』★『現カタール首長に反旗を翻すどの様な動きも、イランとの開戦の公算を強める。 』●『エジプトとサウジアラビアがカタールを攻撃するならば、NATO同盟国のトルコとアラブの同盟国が戦争状態になる危険が増幅する』
