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 日本リーダーパワー史(798)ー「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、リスク管理 、インテリジェンス⑭『ロシアの韓国侵攻に対しての第一回御前会議に提出された小村外相の対霧交渉意見書全文』★『現在進行中の北朝鮮暴走と110年前の日露戦争前の軍事侵攻は類似パターン』

      2017/04/30

  日本リーダーパワー史(798)ー

「日清、日露戦争に勝利』 した明治人のリーダーパワー、リスク管理 、

インテリジェンス⑮

 

小村の対霧交渉意見書

 

 小村外相が第1回御前会議に提出して、元老の一致を得た「対露交渉意見書」の全文は次のとおりである。

 

 『東亜ノ時局二顧ミ、其ノ将来ヲ 慮ルニ於テ、帝国ノ執ルべキ政策ハ、其ノ細目二入レパ素ヨリ多岐ナルモ、要ハ帝国ノ防衛ト経済的活動トヲ主眼トシ、各種ノ経論モ主トシテ此ノ二大政綱二基カザル可カラズ。

而シテ此ノ政綱ヨリ打算スル二於イテ、帝国は南北二点二於テ大陸ト最モ緊切ノ関係ヲ有ス。即チ北ハ韓国、南ハ福建是レナリ。

 

 韓国ハ恰モ利刃ノ如ク、大陸ヨリ帝国ノ首要部二向ツテ 斗出スル半島ニシテ、其ノ尖瑞ハ対馬ト 相距ルコト僅二一葦水ノミ、若シ他ノ強国ニシテ該半島ヲ奄有スルニ至ラバ、帝国ノ安全ハ 常二其ノ脅カス所トナリ、到底無事ヲ保ツ可カラズ。

 

此ノ如キハ、帝国ノ決シテ忍容スル能ハザル所ニシテ、随ツテ之ヲ予防スルハ帝国伝来ノ政策トモ云フべク、又一方二於テハ京釜鉄道ノ完成ヲ急グト同時二、京義鉄道敷設権ヲモ獲得シ、進ンデ満州鉄道並二関外鉄道ト連結シテ、

大陸鉄道幹線ノ一部トナサザル可カラズ。是レ韓国二於ケル経済的活動ノ最モ主要ナルモノナリ。

 

 次二福建ハ、台湾二密接シテ 互二輔車ノ関係ヲ為シ、且、支那大陸二於ケル我ガ唯一ノ立脚点ナルヲ以テ、其ノ運命モ亦帝国二於テ 決シテ之ヲ傍視スルヲ得ズ。

 清国は病重症で、滅亡寸前!

 蓋シ、清国ハ 積弊日二久シク、所謂病既二、膏盲二入ルモノニシテ、如何二改革ヲ施サントスルモ、自力ヲ以テ其ノ独立ヲ全フセンコトハ覚束ナク、利益ノ分割ハ 既二今日二於テモ始マリ居リ、領土ノ分割ハ容易二行ハレザルべキモ、我ガ方二於テハ 或ハ結局右ノ場合二立到ルベキヲ予想シテ、之二備へンコト万全ノ策ナルべシ。

 

而シテ、右二関スル施設ノ骨子トモ言フべキ鉄道経営ハ厦門、福州ヲ連ネ、福建省ヲ貫キテ江西省二入り、分岐シテ一方ハ杭州ニ、一方ハ武昌二出ゾル重要ノ線路ニシテ、目下既二清国当路者ト交渉中二在リ。

右ハ所謂福建不割譲条約ノ精神ヲ追ヒ、勢城確立ノ目的二出デクルモノニシテ、其ノ他同地方二於ケル帝国勢力ノ扶殖ハ素ヨリ之ヲ努メザルべカラズ。

 然レドモ福建二関スル問題ハ 目下焦眉ノ急二迫レルニ非ズ、専ラ将来ヲ予想シテ、之二備フルニ過ギザルモ、韓国二於テハ事情大二之ト異リ、ロシアハ既二遼東二於テ 旅順大連ヲ租借セルノミナラズ 事実的二満州占領ヲ継続シ、進ンデ 韓国境上二向ツテ諸般ノ施設ヲ試ミツツアリ。

 ロシアの満州占領、韓国侵攻で、日本に危機迫る

若シ此ノ儘二看過スルニ於テハ、ロシアノ満州二於ケル地歩ハ、絶対的二動力ス可カラザルモノトナルべキノミナラズ 其ノ余波、忽チ韓半島二及ビ、漢城ノ宮廷及ビ政府ハ、其ノ威圧ノ下二唯ダ命是レ従フニ至ルべク、否ラズトモ、ロシアハ其ノ欲スル所ヲ行フべキガ故ニ、多年該半島二扶殖セラレクル帝国ノ勢力下利益トハ、支持スルニ由ナク、其ノ結果 終二帝国ノ存立ヲ危殆ナラシムル迄二推移スべキヤ疑ヲ容レズ。

 ここがポイント

(韓国においてが、ロシアが既に遼東の旅順、大連を租借したほか 事実上、満州占領を継続し、さらに進んで韓国境上に向って軍事施設を建築中である。

もし、このまま見過ごせば、ロシアの満州での地歩は、絶対的に動かせないものになるのみならず、その余波は韓半島におよぶ。ソウルの宮廷、政府はロシアの威圧にその命令に従って、ロシアの欲しいままに多年該半島に投資した我が国の利益は奪われて、その結果は日本の存立を危うくすることは間違いない。)

 故二帝国ノ為メニ計ル二、今二於テロシアニ対シテ直接交渉ヲ試ミ、以テ時局ノ解決ヲ図ランコト極メテ緊要ニシテ、今日ハ既二其ノ機熱シクリト云フべク、若シ今日ヲ空過セバ、将来再ビ同一ノ機会二逢着スルコト能ハズ、大局巳二去リテ憾ヲ万世二胎スニ至ラン。

 

 就テハ、此ノ際速二廟議ヲ定メテレ、其ノ結果ヲ以テ露国ト交渉ヲ開クべク、卑見二依レバ、交渉ノ主眼ハ韓国ノ安全ヲ図リ、随ツテ又満州二於ケル露国ノ行動ヲ可成条約ノ範囲内二限リ、之ヲシテ韓国ノ安全二影響スルコトナカラシメ

以テ帝国ノ防衛ト経済上ノ利益トヲ全ウスルニ在リ。而シテ右二関スル協商ノ基礎ハ大約左ノ如クシテ然ルべキ乎、即チ

 一、清韓両国ノ独立、領土保全、及ビ商工業上機会均等ノ主義ヲ維持スルコト。

 二、日露両国ハ、互二其ノ韓国又ハ満州二於テ、現二保有スル正当ノ利益ヲ認メ、之ガ保護上必要ノ措置ヲ執り得ルコト。

 三、日露両国ハ上記/利益ヲ保護スル為メ必要ナルカ、又ハ地方ノ騒乱二拠リ、国際的紛擾ヲ惹起スべキ恐アルトキハ、之が鎮圧ノ為メ出兵ノ権アルヲ認ムルコト、但シ出兵ノ目的達セラレタルトキハ、直チニ之ヲ撤スべキコト。尤モ鉄道電信線保護ノ為メニ必要ナル警察兵ハ、此ノ限ニアラズ。

 四、日本ハ韓国内政改革ノ為メ助言叉ハ助力ノ専権ヲ有スルコト

 若シ上記ノ主義ヲ以テ露国ト協商ヲ遂グルニ於テハ、帝国ノ権利ト利益トハ保障セラルべキモ、露国ヲシテ之ヲ承諾セシメソコトハ極メテ難事ト思考スルニ付、一旦之ヲ掟議スル以上、万難ヲ排シ、飽ク迄我ガ目的ヲ貫徹スルノ決心ヲ以テ着手スルコト最モ肝要ナリト思惟ス』

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

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