日本リーダーパワー史(288)<山本五十六海軍次官のリーダーシップー日独伊三国同盟とどう戦ったか? >
この2国防共協定は1年後の12年11月には「日独伊防共協定」に拡大したが,ソ連の欧米接近と米英の結束強化を引き起こした。ヒトラー政権はワシントン体制と、第一次大戦後の世界秩序を構成するベルサイユ体制を打破する強硬路線を突っ走った。昭和13年(1938)年3月には、オーストリアを併合、同9月には、ミュンヘン会議での英仏の宥和政策に乗じて、チェコスロバキアの1部を割譲させた。
その当初のドイツ案では敵国は英仏とソ連を共に対象としていた。陸軍は日中戦争の長期化の背後には英国とソ連による対中支援があるとみていたので、これに全面的に賛成した。一方、海軍、外務省、宮中グループは、独案では英仏米を敵にまわすと、反対した。
それ以来、山本は連合館隊司令長官に転身する14年8月31日まで実に2年9ヵ月もの長期にわたって海軍次官を続けた。この間が防共協定から3国同盟への過程と全くダブっている。山本次官は、米内光政海軍大臣、井上成美軍務局長のトリオでスクラムを組み三国同盟に死を賭して反対したのである。
週に何回かの次官会見もいい加減にお茶をにごさなかった。微妙な質問にも直裁簡明に答えて、機密事項もあけすけに話した。三国同盟に関しても、歯に衣着せぬ反対論を展開した」と当時の黒潮会記者・萩原伯水(元日経記者)は語る(
『山本五十六と米内光政―海軍裏面史』(『政治記者OB会報』平成6年8月23日)海軍は広い太平洋で戦わねばならん。が、五・五・三の比率でやって来た海軍力でアメリカを向こうに回して戦う場合、三で五をどうして破るか。しかも対米戦となれば英の五が当然アメリカ側に加わる。つまり10対3の戦いだ。戦いの帰趨は明白ではないか。こんな簡単な算術の問題が奴らには分からんのだから困りものよ……」
(「山本五十六の思い出」(政治OB会報、平成6年1月号)このため、海軍では不測の事態に備えて横須賀鎮守府から一個小隊などの兵力を派遣して、海軍省表玄関脇の宿直士官室や構内の東京通信隊で、拳銃武装させえ常時警戒にあたったほどである。
難きを知らむ。
一身の栄辱生死、あに論ずる閑あらんや
8月28日、「欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じた」と平沼首相は声明を発して総辞職した。
http://maesaka-toshiyuki.com/detail/441
http://maesaka-toshiyuki.com/detail/439
関連記事
-
『リーダーシップの日本近現代史』(248)/『1894年(明治26)単騎シベリア横断をした福島安正大佐のインテリジェンス』「シベリアには英仏独のスパイが50年前から活動、日露戦争では英、仏、独のいずれかを味方とし援助を受けるべし』
2016/02/26日本リーダーパワー史(674)/『戦略思考の欠落 …
-
日本リーダーパワー史(267)名将・川上操六伝(39)野田首相は伊藤博文首相、川上参謀総長の統帥に学べ②山県有朋を一喝
日本リーダーパワー史(267)名将・川上操六伝(39) <野田首相は明治のトップ …
-
★10・世界一人気の世界文化遺産『マチュピチュ』旅行記(2015 /10/10-18>「神秘に包まれた『マチュピチュ』の全記録、一挙公開!」水野国男(カメラマン)③
2015/11/09< 世界一人気の世界文化遺産『マチュピ …
-
『世界サッカー戦国史』②ー『W杯ロシア大会と日露戦争(1904)の比較』★『児玉源太郎参謀次長と西野新監督の戦略論は的確』★『W杯日露戦争で10対0で最強ロシアを破った児玉の戦略と東郷平八郎の決定力(1発必中の砲は100発一中の砲に勝つ)』
W杯ロシア大会2018と日露戦争(1904)の戦略を比較すると、 …
-
『オンライン講座/百歳学入門』★『日本一の大百科事典を創るため土地、家屋、全財産をはたいて破産した明治の大学者(東大教授)物集高見(82歳) と長男・物集高量(元朝日記者、106歳)は生活保護の極貧暮らしで106歳まで長生きした長寿逆転人生とは①』
★高見は「学者貧乏、子孫に学者は出さぬ」と遺言し、高量はハチャメチャ流転物語」 …
-
『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座㊱」『120年前の日露戦争勝利の立役者は明石元二郎と金子堅太郎』★『金子は米国ハーバード大学出身で、同窓生のルーズヴェルト米大統領を日本の味方につけた<金子工作>』★『「明石元二郎大佐による「帝政ロシア破壊工作の<明石工作>の謎を解く』
『金子工作』『明石工作』と日露インテリジェンス戦争の内幕 &nbs …
-
日本グローバル/リーダーパワー史(661)本田、ミラン残留へーその逆転のサバイバル・コミュニケーション、タフネゴシエイションに学べ『ミラン会長の心をつかむ「彼は賢くイタリア人とは全く異なる…」「私は大好きだ」』(動画あり)②
日本グローバル/リーダーパワー史(661) 本田、ミラン残留へー その逆転のサ …
-
日中韓異文化理解の歴史学(3)<まとめ記事再録>『日中韓150年戦争史の原因を読み解く』(連載70回中、37-50回まで)★『甲午農民戦争、閔妃と大院君の朝鮮王宮の腐敗と内部抗争、金玉均の暗殺、李鴻章の陰謀、日本の圧力、 ロシアの侵攻の三つどもえの対立が日清戦争へと爆発』●『英タイムズの警告(日清戦争2週間前)「朝鮮を占領したら、面倒を背負い込むだけ(アイルランドと同じ)』★『「日清戦争開戦10日前『中国が朝鮮問題のため日本と一戦交えざるを得ないことを諭ず(申報)』●『<日本はちっぽけな島国で鉱山資源には限度があり,倉庫の貯蔵も 空っぽで,戦争になれば紙幣も流通しなくなり,商店は寂れて.たちどころに困窮してしまう。 中国は日本に必ず勝利するのだ』
『日中韓150年戦争史』㊲ ロシア皇太子暗殺未遂事件(大津事件 …
-
オンライン講座・明治大正時代の政界黒幕・秋山定輔の国難突破力』★『秋山は日露戦争の勝因はロスチャイルド家のおかげだとして政敵の山県有朋・桂太郎首相を説得したインテリジェンスはスゴイよ』
2011年日本リーダーパワー史(121)日露戦争勝利はロスチャイルドの外債(戦費 …